桶狭間の戦い-決戦
雷が鳴り響き豪雨の中、影母衣衆は雨とは思えない速度で突き進んでいく。視界も悪く、敵から発見されることもないであろう。
やがて少し開けた山間で
「休息。各自腹ごしらえしておけ。」
これから戦闘なので過剰に食べるわけではないが各自戦中には持参してある干し飯を食べ始める。
「雲心様。」
楓がすぐそばでひかえている。
「この山向こうに今川本陣が。騎馬では超えにくいところと存じ上げます。」
「そうか・・・。手のものは?」
楓がすぐ後ろの林に向かって手を上げると30名ほどの忍びたちが現れた。
「よし、ではわれらここより徒歩で進むとする馬はそのほうらに任せたぞ。」
「それと信長殿の本隊がくる時に知らせられるか?」
「可能でござります。」
「信長殿本隊がくる直前にしらせてくれ。」
「御意。」
楓は忍び衆の中にはいり説明しているようだ。
「これより徒歩で進む。」
雲心の息子達が集まってくる。
長男、風心。次男、水心。三男、空心。四男、海心。
風心は雲心ににてがっちりした体格で威風堂々と言う言葉がよく似合う。水心は線は細いが鋭い眼をしている。空心は風心より体が大きくすべてを覆い尽くすようだ。海心はしなやかな身のこなしをしており猫科の獣のようである。
「今より部隊を三隊に分ける。わしの部隊を第一部隊150、風心と海心の部隊を第二部隊150、水心と空心の部隊を第三部隊200とする。」
「水心の部隊は先陣をとれ。そして敵をこちらに引き寄せるのじゃ。引き寄せたところを左翼からはわしが。右翼から風心が。」
「また兄者と同じかよ。」
空心がいやいやながら水心に向かって言う。
「こちらもお前ばかりで嫌になるわ。」
「お前ら二人は力が有り余ってるから先陣で暴れてこい。」
風心がいつものように二人の間にはいりなだめている。
「しょうがねえな。いっちょやるか。兄者。」
「おう。おくれをとるなよ。」
「兄者こそな。」
戦の前とは思えないほど軽い心情である。
海心は対照的に静かにたたずんでいる。
雲心は地図をだし埋伏の位置を確認させている。
「ここがお前らだ。こっちがお前達。ここで一斉に攻撃を仕掛ける。まずは弓で射掛ける。お前達は前に出過ぎぬようにさがれ。敵がひるんだときに突撃だ。その時には信長殿の本陣も敵を襲っているであろう。」
「では戦闘開始だ。敵に見つからぬよう隠れておれ。開始の合図は楓達がもってくるであろう。ここぞという瞬間をのがすなよ。」
さっと兄弟達がわかれていく。部隊の者たちは分かれる部隊がどうであるかわかってるようにさっと分かれていく。どの部隊も慎重に山にまぎれながら進んでいく。配置に付き報告を待つばかりである。
信長の本陣はというと雲心が動いた後もまだ動こうとはしない。
ちょうど大雨が振り出した頃
「出陣じゃ」
「殿この大雨では思うように動きが取れませぬ。」
「この大雨だからこそじゃ。今頃あやつらも向かっているであろう。」
「いくぞ。」
信長の本隊は大雨の中、桶狭間へ向かって雨をものともせず進んでいく。
「急げー。今こそ勝機ぞ。」
その頃各部隊に忍び達の報告が届いた。
「今こそその時である。ものども進めー。」
水心の部隊が今川軍の後ろから猛攻をかける。
「敵襲ー、敵襲ー。」
背後から襲われた今川軍はすぐには対応できず少しばかりの今川義元の隊のものだけで応戦を開始した。
水心達は被害を出さずに応戦しながら徐々に下がっていく。今川軍は勢いがあると勘違いしどんどん押してる気分になり進んでいく。いきなり水心の部隊がさっと下がり始める。その瞬間左右に隠れていた部隊からの矢の射撃、今川軍は乱れ混乱に陥った。一斉攻撃をかけたその時今川軍本隊が別の方向からの攻撃の圧力を受けた。
「今川義元の首じゃ。」
信長軍の正面攻撃である。今川軍は挟撃を受けた形で義元の親衛隊のみ義元を囲み守りぬこうとしている。
「あそこじゃ。義元の首は。」
水心と空心が部隊の先頭で大暴れしていく。だれも近づけずに周りのものをなぎ倒しながらどんどん突き進んでいく。水心の槍は刀のように返す速度が速く、突いて貫いた瞬間もうすでに次の突きに入ってるようにみえる。空心の槍はどの槍よりも大きく太く重い。八尺以上あるであろう。穂先で突くよりなぎ倒して殴られ殺されてるもののほうが多い。左右からは風心が刀で切り殺していく横で忍びのような動きで敵を次々と倒していく海心がいる。雲心の部隊では精鋭が集まっているようで周りの敵はあらかた片付けられたようだ。影母衣衆の攻撃に応戦した部隊はもうすでに散開している。今川軍はもう退却の体勢である。
その時信長の本隊から抜け出た服部一忠は義元を槍で突きさそうとした瞬間・・・
「さがれー雑兵が。」
義元の刀が一閃。居合い抜きで服部の槍を払い返す刀で膝を切りつけた。
「おぬしらのようなものに獲られるほどやわな首じゃないわ。」
その瞬間雲心は一直線に義元の元へ向かった。
「覚悟。」
義元に飛び掛り頭を抑え懐刀を即座にだし首をかききった。
「毛利新助!今川義元を討ち取ったり!」
雲心は借りた名前で大声で叫んだ。今川軍はその声を聞くや否や余計に混乱し逃げ遅れたものは討ち取られ総崩れとなった。
「みなのもの勝どきじゃ。大勝利じゃ。」
「えい、えい、おー。えい、えい、おー。」
今川軍は総大将が討ち取られ駿河に向かい退却していった。岡崎城の城守まで城を捨て退却していったそうだ。その隙に松平元康は岡崎城へと入城する。元康は人質としての人生の転機を迎えたのである。元康は忍びの報告から影母衣衆がこの戦に参戦していたことを知る。知ると同時に一通の密書を送っている。
その内容はこうである。今川とは離別しこれからは三河を領地とし戦続きになるであろう。ぜひとぞその時は力を貸していただきたいといった文面であった。
「今度は松平殿の戦にでることになるのかの。」
雲心はぽつりとつぶやいた。
織田軍は各地の城や砦を落とし尾張統合を図っていく。
雲心達は信長の元へ凱旋した。
「勝ったぞ。あの今川の大軍を破ったのじゃ。」
「おめでとうござりまする。」
「こちらが報酬じゃ。」
「それよりそちたちわしの元で働かぬか?」
「某ら一族の住む場所は信州の山の中でござりまする。」
「惜しいの。そなたらの力さえあれば天下は軽くわしのものになるというのに。」
「それではごめん。」
影母衣衆は来るときと同じように闇に紛れ尾張を後にするのであった。
最終更新:2008年04月01日 20:32