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穿く

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穿く 05/01/18

  何かの験を担いでいるわけではないし殊更意識するわけでもなく、なのに自覚のないまま確立された方針のひとつに「ズボンをどちらの足から穿くか」という事例が挙げられる。手前の場合は常に右足から穿くことになっていたらしい。それを知るには次の行動が必要だった。

  まず火鉢のような形に脱ぎ捨てられていたズボンを穿こうとして、ひとまずベルトごと掴み上げると蛇腹式に折り畳まれていた足の筒が伸びる。そしてまず左足を突っ込むと狂おしいほどの違和感とともに重心が後方に移動する。右足だけで立っていて重心が後方に移動した場合、左足を後方に差し出せばそこで落ち着く。ただし足がズボンに引っ掛かっていないことが前提条件となる。

  足を突っ込んで体勢を崩したのだから当然左足は途中まで差し込まれている。慣れている足ならばいっそ穿いてしまってから後ろに足を出せばよい。しかしズボンを穿く際に右足一本で立つことが既にぎくしゃくした動きなのであって、また穿く際には引き上げる手との連携も重要となるが、普段必ず右足から穿いている以上右足の為の動きしか出来ないので左足からズボンを引き上げる所作がぎこちない。

  そうなると右足一本で跳びながら均衡を維持するか潔く受身をとるかの選択しかないわけであり、咄嗟に「今片足で跳び廻ったら悲劇の連鎖が確実に発生する」と直感したので引力に従い後ろ受身をとった。そして無意識ながら常に右足から穿いていたことを知り、折角転がったのだからと両足を上げて一気に通し、足を下ろした反動で立ち上がると、長めに設定してある裾を踵で踏み再び後ろに倒れた。いくら何でも裾は予想していなかったので受身をとる暇はなく大の字に伸びた。

  だから例えば映画などで慌ててズボンを穿こうとしているシーンを撮影するならば、役者に対して「普段と違う足から穿け」と指示するだけで慌てている雰囲気が完全に再現出来るだろうと思う。
 
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