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自販機
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自販機 04/11/24
とある港町の商店街には釣具屋があり、その横には自動販売機らしきものがある。
最初に見た時はやけに古びていて、選択釦も歩きながら横目で見たら四つだけであったから突撃一番かと思ったのだが、何か違和感があったので少し戻って確認してみると果たして直感は当たっていた。それは釣り餌の自動販売機であった。
仮に販売しているのが疑似餌や練り餌ならばそのまま通り過ぎるべきであるが、選択釦には「砂イソメ」「故障中」「青イソメ」「青イソメ(太)」とある。「故障中」は忘れるとして、生きている餌が自動販売機の中に待機しているのか!
改めて観察すると、販売機製造元の連絡先を発見出来ず元より活餌販売用だったものか別物販売機を活餌に流用したものかは判別不能であり、仕方がないから外観の印象を残すに留める。まず思ったのは「いつの時代の自販機やねん」であった。ステンレス製の本体は一応磨かれているようで不潔感を催すことはない。釦は餌名を手で書いた紙を貼り付けてあり、それを捲れば何らかの情報が確実に入手出来る筈でありながら、限界を超えた忍耐心を以って丁寧に捲ったとしても、一度剥がすと接着力は消えてしまい再度の貼り付けは不可能であることが簡単に予測されたから茫然と眺めるのみだった。
三種全て三百円である。五百円玉が使えないと張り紙してあることから少なくとも昭和五十六年以前に製造された自動販売機であろう。「販売中」と赤い文字が表示されているから今三百円を投入して釦を押せば浜辺ミミズがごとりと出てくるのだなと考え、しかし「販売中」の直下に「釣銭切れ」が赤く輝いている。五百円玉は使えず、はてお札の投入口はあっただろうか、もっと詳細に観察しておればよかった、しかし釣銭切れの表示があるならば千円札の投入は可能な理屈になる、いやいやこの販売機が纏う古ぼけた佇まいは相当古い可能性が高いから、つまり百円玉に対して十円玉のお釣りが出る機構なのかもしれない、つまり紙幣投入口はあってもなくてもそれぞれ矛盾しない。
取出口には通常自販機にあるような透明の雨避けはない。外れたものか元より存在しないのかを確認するべきであったが、取出口の中が錆びて赤茶色になっており、感触は確かめるまでもなく天然鑢であろうことを見て取り、雨避けに対する追求心は霧消してしまった。
しばらくして疑問が次々と湧いてくる。そもそも需要はあるのか?売れ残りは死んでしまうのではないか?冷蔵する機構が備わっていないならば夏には蒸し上がってしまうのではないか?活餌の自動販売機は釣り人にとって当然の光景なのか?自動販売機で甲虫を売ることに対して激しい非難が集中したのはかなり古い話であるが、イソメは問題なしと判断されたのか?
今書き起こしながら取出口の形状と大きさから考えて飲物四種だけの自動販売機を流用したものではないかとの推測に辿り着いたが、見本窓があったかどうかを思い出せない。仮に飲物販売機ならば冷蔵機構があるだろうから流用する確率が高い。缶と同程度の円柱に活餌入れておくなら問題はない。また釣具屋が店を閉めている時間帯だけ活餌を入れておけばよく、すなわち閉店前に補充・開店後に回収するならば活餌は簡単に死んだりしないだろう。
この件が何かの飛躍した結論に届くわけでもないが、それでもどうにか搾り出すならば、煙草の自動販売機を流用すれば煙草サイズの別商品を自動で売ることが出来るわけだから、買取の自販機を流用して例えば安くで仕入れてきた玩具や突撃一番などを無作為に詰め込んでおいて、何が出るかは買ってからのお楽しみ、そうかつまり大人を対象にしたガチャガチャというわけだ。値段を三百円のままに設定しておいて商品は百円均一店で仕入れてくればよい。どうでしょう、そういう自動販売機があったら買ってみたくなりますか?
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