バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

限界バトル

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kyogokurowa

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ズン、ズン、と地鳴りがしていると聞き間違えるほどに重厚な足音が鳴る。
巨漢、ヴライは魔法学園より東に向かっていた進路を再び戻していた。
数時間後に展開される禁止エリア。
いま、彼のいるB-4は数時間後に禁止エリアに囲まれる場所だからだ。
死者への手向けなどは必要ない。
呼ばれた中で知った名は一つだけであり、その一人は己の前に立ちふさがりこの手で葬ったからだ。
故にヴライは止まらない。ただただ目的に向けて前進するのみ。
その巨体を隠そうともせず悠然と歩くその姿、まさに威風堂々。
常人ならば恐れ戦くその威圧感にも怯むことなく立ちふさがる影は一つ。
道士・安倍晴明。
彼は口角を釣り上げヴライを見据えていた。

「何用だ」
「尋ねたいことがある...流竜馬、神隼人、武蔵坊弁慶...この三人の名に覚えはあるか」
「知らぬな」

一言でそう切り捨てる。
最初にやりあったウサギや剣士、学園で遣り合った植物の男らの中にいたのかもしれないが、そんなものは知ったことではない。
ヴライにとって有象無象の名など掃いて捨てるもの。
彼にとって価値ある名とはヤマトの為に忠義と身命を尽くす者か、あるいは己に並ぶ実力者である。
故に『知らない』。
その三名と邂逅していても、彼が覚える価値なしと判断していれば同じ答えを返していただろう。

「用件はそれだけか...ならば失せよ」

ヴライの目つきが鋭くなり強烈な威圧感を放つ。
その重圧は歴戦の猛者ですら戦くほどのもの。
しかし、清明は意にも介さずその笑みを絶やさない。

「逃がすつもりなどないだろうに...ククッ、我ももとよりそのつもりだがな」

清明の言いぐさにヴライの眉根がピクリと動く。
ヴライから見て、清明は如何にも直接対決の苦手な術師といった風体である。
その男が、この距離でヤマト最強を誇る男に『逃がすつもりはない』と言ったのだ。
ヴライは苛立ちはしないものの、これは挑戦状だと受け取った。
ならばその挑発、見逃す謂れなどなし。

ズンズンと歩み寄るヴライからも一歩も退くことなく、笑み絶やさず迎え入れる清明。
手を伸ばせば相手に届く距離で止まり、二人はにらみ合う。
見下ろすヴライと見上げる清明。
風が吹き、両者の着物がたなびくも動かない。
沈黙。
第三者が見れば腰を抜かすほどの重圧が辺りを包む。
風が止み、完全な静寂が訪れた―――刹那。

動いた。

先んじて動いたのは―――武士(もののふ)、ヴライ。

眼前の男がどのような術を用意していようとも構わない。
如何な策も力で蹂躙する。それがヴライ。ヤマト最強の漢。
振るわれる拳は、これまでに数多の戦士を、この会場ではヒイラギイチロウへと致命傷を与えたもの。
清明は動かず。反応する気すらないと言わんばかりに迫る拳を睨みつけている。
あと瞬き一つするうちに、清明の身体を貫きこの戦いは終わる。
それがヴライの脳裏で描かれる光景。覆せぬ力の見せる未来。

が。

ガキィ、と激しい音が鳴り、鋼鉄を殴ったかのような感触が拳を伝わる。
拳は清明を貫いていない。
止められたのだ。清明の眼前に浮かぶ五芒星の結界に。

(これが奴の術か)

眼前の奇怪な技にもヴライは動揺しない。
拳が受け止められているという事態を冷静に受け止め、そのうえで踏み込みを強くする。
彼は決して考える頭を持っていないわけではない。
ただ、戦闘においては道を譲るという選択肢を知らぬだけだ。

ぐ、ぐぐっ、と押し返されるのをこらえ、より深く、より強く脚に、拳に力を籠める。
ほどなくして、両者の力が器から零れるように弾け、ヴライと清明、両者の身体が後方へと吹き飛ばされる。

「ヌゥ...!」
「ほぉう。我が結界にもここまで拮抗するか。どうやら、威勢だけの雑魚ではないらしい」

甘く見ていた。
両者は、先の衝突において己の見解を改める。
清明の術はデコポンポの腰巾着とは練度も強さも違うと。ヴライの力は人体を容易く破壊する鬼すらも凌駕すると。

「浜面仕上に早々に見切りをつけた甲斐があったわ...ようやく退屈凌ぎに値する玩具が現れたというものだ」

清明の呟きを意にも介さず、ヴライは一足飛びに清明に肉薄し再び拳を振るう。
静止した状態ではなく、跳躍による速度を加算した攻撃である。

「その身の胸元四方さんずら微塵と乱れよ」

清明は経を唱え、人差し指と中指を揃えて迫るヴライの拳へと重ねる。
するとどうだろう。
ヴライの拳と身体は指先で硬直したかのようにピタリと止まったではないか。

「ふんっ!」

清明が指を雑に横なぎに払うと、ヴライの身体が横殴りに倒れ、その巨体が地を舐め尻餅を着く。

「貴様...!」

ヴライのこめかみに青筋が走る。
この会場に来てからヴライが地に背を着けるのは初めてではない。
鎧塚みぞれ。
戦う力を手に入れた彼女にも半ば相殺という形でヴライは背を地に預けていた。
だがそれは彼女が己の命と信念を籠めた、文字通りの全身全霊の一撃である。
今回は違う。
清明にはそんなものはない。ただの技の一つで、ヤマトの誇る最強の肉体を転がしたのだ。
その事実にヴライの怒りが湧き表情に現れたのだ。

「フフン、その程度で怒っていては身が持たんぞ?貴様はこれより為す術なく我が手で葬られるのだからな」

清明が呪符を取り出し、ヴライへと投擲する。
放たれた札はヴライの周囲を五芒星を描きながら飛び、その軌跡が陣となり拘束する。

清明が右の人差し指と中指を揃え、ぼそぼそと呟くと同時、ヴライの身体に電撃のような衝撃が走った。

「ッ!!?」

身体を奔る痛みにヴライは顔を強張らせ、悲鳴を嚙み潰す。
怯んだのはその一瞬だけ。
電撃に耐えながらも息を大きく吸い込み、全身の筋肉に力を籠める。

「ヌゥン!!」

気合い一徹、力が解放され膨張した筋肉が纏わりつく結界を破壊する。
痛みが収まると同時にすかさず放たれる炎の槍は、清明の五芒星の結界に弾かれた。

「消え失せよ」

怒りと共に炎の槍が幾多も放たれる。
その全てを結界で防ぎつつ清明は嘲笑する。

「なるほど。肉体だけでなく技の練度も中々のものだが...ならば刻み込んでやろう。本物の炎獄の術というものを!」

清明は懐から水晶を取り出し、眼前に掲げ水晶越しにヴライの姿を映し出す。

「ふんっ!」

清明が目を見開き、力を籠めると水晶の中で炎が渦巻き一筋の線となって放たれる。
清明の炎はヴライの炎の槍を取り込みながら飛翔する。その姿はまさしく蛇。
己の技が食われているとヴライが理解した時にはもう遅い。
蛇はあっという間に巨大になり、ヴライのもとに辿り着くころには大蛇、否、龍の如き形と大きさにまで成長していた。

粉砕せんと放たれるヴライの拳を躱し、炎龍はヴライの身体を飲み込みその全身を焼き上げる。

「――――ッ!!」

先の結界による電撃とは比べ物にならないほどの痛みがヴライの全身を襲う。
灼熱。
つま先から頭部まで余すことなく全身を激痛が駆け巡る。

「クククッ、私の術と貴様の炎を食らいし式神だ。いくら貴様が頑健でも耐えられるものではあるまい」

清明の言葉の通りだ。
炎龍のもたらす灼熱はヴライの鋼鉄の如き筋肉の身体でも耐えきれぬ程の激痛を齎し続けている。
数多の戦場を駆け、名だたる武将たちとの戦いを繰り広げてきたヴライの肉体の歴史にもこれほどの痛みは味わったことがない。
このまま続ければヴライとてその息の根が止まるのは疑いようのない事実。

(―――笑止、千万ッ!!)

しかし。
激痛に苛まれながらも、ヴライの目は冷静に清明の姿を捉え、その掌は炎龍の中を渦巻く炎を捕らえる。

「仮面(アクルカ)よ」

ヴライの仮面が光り、己の身体より業火を沸き上がらせる。
その業火を体内で食らい、炎龍はいっそう勢いと強さを増していく。

「愚かな。貴様の力の源が炎である以上、その龍も火勢を増していくだけぞ!」
「我が魂魄を喰らいて、その力を差し出せ!!」

仮面の力が解放され、業火は一層勢いを増し、龍も巨大さを増していく。
当然ながらヴライの身体を苛む激痛は増していくが―――それでも清明を睨みつける眼光は微塵も揺らいでいない。

「オオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」

ヴライは雄叫びと共に清明へと突貫し拳を突き出す。

「チィッ!」

清明は眼前に五芒星の結界を張り防御。
交わる拳と結界。
それは先も行われた攻防。しかし。

ピシリ

結界にヒビが入り、亀裂は瞬く間に結界を破壊していく。
ヴライの仮面の力により生み出された炎と清明自身の炎による火勢、それらを加えたヴライの拳の威力にはさしもの結界も耐え切れなかったのだ。

「なにっ!?」

清明の顔が驚愕に包まれる。
いくら主催の制限により結界の弱体化があれど容易く粉砕される壁ではない。
しかし、ヴライの攻撃は確かに結界を崩壊へと導いている。

当然ながら、そんな威力の炎を纏っているヴライの身体は悲鳴を上げている。
しかしヴライは揺らがない。
彼が膝を着くのは、鋼鉄の如き身体をも蝕む灼熱などではない。
己が認めた唯一の漢、オシュトル。
そして―――己が唯一敬愛し忠誠を誓うさるお方の威光。
彼らでなければ、ヴライの魂は、忠義は打ち崩せない。故に肉体も滅びない。
そんな馬鹿げた精神論。根性論。
しかし、それを実現実行させられるのがヤマト八柱将、剛腕のヴライである。

「消え去れぇぇぇぇいい!!!!!」

叫びと共に火勢は更に増す。
結界が崩壊する寸前に、清明は新しい結界を展開。

「ぐ、お、お、おおおお...!」

清明の消え入りそうな叫びもなにもかもを飲み込み、業火は拳へと収束し、そして―――閃光と衝撃が、周囲を包み込んだ。



「......」

爆発が収束し、周囲は静寂に包まれている。
巨大なクレーターの中央に拳を突き出した姿勢で佇む漢は、ヴライ。
その拳の先には道士はおらず。
しかし、手ごたえからしてまだ息はあるのだろう。何処へ消えたのかは見当もつかないが。
ひとまずの標的の消失を確認したヴライの身体は膝を着き、体内に溜まっていた血の塊が吐き出されれ、地面を赤く染める。
己の身体から放っていた業火が一応の壁となり、炭化までは防いでいたが、それでも火傷とダメージは甚大であった。

「...まだだ」

しかしそれでもなおヴライの眼光は微塵も衰えない。
全身に刻まれた痛みには不釣り合いなほどに威圧感を放っている。

「この程度で足を止めてなにがヤマトの帝か...この程度であのお方を継げると思うな剛腕のヴライ...!!」

痛みがなんだというのか。火傷がなんだというのか。
あのお方の忘れ形見―――皇女アンジュは、この程度で膝を、魂を折りはしなかった。

故に進む。
彼女に勝利を収めた者として恥じぬ姿を示す為に。
先の帝に恥じぬふるまいを示すために。


全てはヤマトという国への忠義のために。



【B-4/朝/一日目】
※近くにあったスポーツジムは戦闘の余波で破壊されました。


【ヴライ@うたわれるもの 二人の白皇】
[状態]:ダメージ(絶大)、疲労(大)、額に打撲痕、左腕に切り傷(中)、火傷(絶大)
[服装]:いつもの服装
[装備]:ヴライの仮面@うたわれるもの3
[道具]:基本支給品一式、不明支給品2つ
[思考]
基本:全てを殺し優勝し、ヤマトに帰還する
1:次の戦場へと赴き、参加者を蹂躙する
2:アンジュの同行者(あかり、カタリナ)については暫くは放置
3:オシュトルとは必ず決着をつける
4:デコポンポの腰巾着(マロロ)には興味ないが、邪魔をするのであれば叩き潰す
5:皇女アンジュ、見事な最期であった……
6:あの術師(清明)は再び会ったら葬る。
[備考]
※エントゥアと出会う前からの参戦です



「...ククッ、まさかゲッター以外に不覚を取る羽目になろうとはな」

吹き飛ばされた先で清明は愉快気に嗤う。
防ぐだけでなく反射も込めたのが最後の結界であった。
しかし、反射してなお、防御してなおヴライの一撃は防ぎきれず、清明もまた身体に火傷とダメージを負うのを免れられなかった。
あの結界を張るのがほんの僅かにでも遅れていれば、間違いなく死に至っていただろう。

「テミスにμよ。感謝せねばなるまい。あれほどの力によくぞ引き合わせてくれた」

ヴライが力を発揮する寸前、彼の着けた面が光ったのを確認した。
あの仮面がヴライに力を与え、清明を敗走させるに至ったのだろう。
目的地の魔法学園が既に焼き尽くされていたのには残念だったが、あの仮面はそれ以上に大きな収穫である。

「この地に集いし数多の"力"...それらを統べればゲッターとて敵ではない」

清明はくつくつと笑みを零す。
己に刻まれた痛みの恨み以上に、会場を統べる"力"への期待が上回っているのだ。

「待っておれ、『ゲッター』。私が全ての力を手に入れた暁には手始めに貴様らを歓待してやろうぞ」

目を瞑り、己がゲッターチームを蹂躙する様を思い浮かべる。
己に辛酸を嘗めさせてくれた彼らをあの仮面を筆頭とした力で叩き潰す姿を。

その次は自分を手駒のように操る『神』だ。
奴らという枷を破壊し、全ての頂点に立って見せよう。

そこで終わりではない。
『ゲッター』も神々をも超えたその果て。ゲッター線の進化の果てに行きついたモノを斃してこそ清明の乾きは埋められる。
万物を支配し、進化させ、数多の生命を地獄に送り込むモノ。その名は、全ての宇宙生命体の忌むべきモノの名は―――

「ゲッターエンペラー...!」



【D-4/朝/一日目】

【安倍晴明@新ゲッターロボ】
[状態]:疲労(中)、火傷(大)、ダメージ(大)
[服装]:いつもの服装
[装備]:ハクの鉄扇@うたわれるもの 二人の白皇
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2、田中あすかの首輪。
[思考]
基本方針:闘争と混乱を愉しむ。
0:早乙女研究所を中心に行動する。
1:ゲッターチームを探し出し殺す。
2:陰陽術やゲッター線以外の異能に興味。
3:残った獲物(高千穂麗)は殺す
4:垣根帝督の未元物質を手に入れたい所
5:休戦協定が解けたその時、あの小娘共を殺し、素養格付を手に入れる
6:ヴライと再び会えたら殺す。そしてあの仮面を手に入れる。
[備考]
※参戦時期は黒平安京で竜馬たちに負けた後です。

前話 次話
散りゆく者へ 投下順 Go frantic

前話 キャラクター 次話
炎獄の果てに ヴライ カラスウリの咲く頃に
撫子乱舞 -凛として咲く華の如く-(後編)- 安倍晴明 From the edge -Scarlet Ballet-
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