生命は...生命は純粋になるほどに...
強大な宇宙を求めていく...
宇宙を食ってゆくのだ!!
☆
『...チィッ』
放送を聞き終えた魔王はつい舌打ちを漏らす。
冨岡義勇とシグレ・ランゲツ。この手で屠った二人が呼ばれたのはいい。
だが、間宮あかりとブローノ・ブチャラティ、そしてライフィセットと殺したい奴らはまだ生きている。
無論、自分で殺すつもりではいるのだが、憎き奴らが平然としていると思うとやはり苛立ってしまう。
魔王といえど生物。それは仕方のない生理的反応である。
冨岡義勇とシグレ・ランゲツ。この手で屠った二人が呼ばれたのはいい。
だが、間宮あかりとブローノ・ブチャラティ、そしてライフィセットと殺したい奴らはまだ生きている。
無論、自分で殺すつもりではいるのだが、憎き奴らが平然としていると思うとやはり苛立ってしまう。
魔王といえど生物。それは仕方のない生理的反応である。
(殺す手間が省けてよかったよ)
一方の琵琶坂は鼻歌でも鳴らしそうなほどに上機嫌だった。
鎧塚みぞれ。
琵琶坂が最初の敗北を喫した少女。
この手で殺してやりたいとは思っていたが、死んでくれたのならせいせいする。
ついでに自分をこきつかった片割れのマロロも死んだらしい。
もう一人のクソメイドが生きているのはちょっぴりの不満だがまあいい。
いまの自分ならば1対1でも遅れをとることはもうないだろう。
鎧塚みぞれ。
琵琶坂が最初の敗北を喫した少女。
この手で殺してやりたいとは思っていたが、死んでくれたのならせいせいする。
ついでに自分をこきつかった片割れのマロロも死んだらしい。
もう一人のクソメイドが生きているのはちょっぴりの不満だがまあいい。
いまの自分ならば1対1でも遅れをとることはもうないだろう。
「それで、予定に変更はないのかい魔王様?」
『...ああ。ひとまずは紅魔館に向かう』
『...ああ。ひとまずは紅魔館に向かう』
放送を聞いたとてやることは変わらない。
まずはベルベットと手を組んでいた夾竹桃と麦野沈利とついでにムネチカの処分を決める。
そのまま殺すか、あるいは利用し尽くして使いつぶすか。
まずはベルベットと手を組んでいた夾竹桃と麦野沈利とついでにムネチカの処分を決める。
そのまま殺すか、あるいは利用し尽くして使いつぶすか。
『それで、そいつはまだ殺さないのか』
魔王の指し示すソイツ―――リュージは、未だに目を覚ましていない。
先の戦闘での立ち回りを見る限り、この男にさしたる力はない。
そして自分たちのようにゲームに乗って優勝を目指しているわけではないので手を組むことも無い。
戦場からの脱出用の人質としての役回りも終えたのだ。
ここで食らって糧にしてしまった方が早い。
先の戦闘での立ち回りを見る限り、この男にさしたる力はない。
そして自分たちのようにゲームに乗って優勝を目指しているわけではないので手を組むことも無い。
戦場からの脱出用の人質としての役回りも終えたのだ。
ここで食らって糧にしてしまった方が早い。
「ああ。こいつにはまだ価値はある。きみの非常食としてのね」
だが琵琶坂は頑なにリュージを手放さない。
彼もわかっているのだ。
下手に魔王に餌を与えすぎれば自分にも牙を剥くことを。
それに、リュージは岩永琴子の連れだ。
当初の予定通りに彼女を連れてこられなかった代わりにはならないだろうが、麦野たちを支配する場合はそれでも体面くらいは保てるだろう。
彼もわかっているのだ。
下手に魔王に餌を与えすぎれば自分にも牙を剥くことを。
それに、リュージは岩永琴子の連れだ。
当初の予定通りに彼女を連れてこられなかった代わりにはならないだろうが、麦野たちを支配する場合はそれでも体面くらいは保てるだろう。
『いくぞ琵琶坂英至』
「了解だ」
「了解だ」
魔王とゲッターに選ばれた男。
二つの災厄はやがて紅魔館に訪れる。
二つの災厄はやがて紅魔館に訪れる。
静寂に包まれていた。
放送の後という情報整理のタイミングもあるのだろうか、それにしてもだ。
放送の後という情報整理のタイミングもあるのだろうか、それにしてもだ。
「...きみのお仲間、本当にここにいるのかい?移動した可能性もある」
『どっちでもいい。やることは決まっている』
『どっちでもいい。やることは決まっている』
魔王は息を大きく吸い込み、ピタリと止める。
『麦野沈利!!夾竹桃!!いるのならば十秒以内に出てこい!!出てこなければこの館を吹き飛ばす!!!!』
魔王の爆弾のような怒声が大気を震わす。
人間ではありえないその声量は聞く者の鼓膜に届くだけでなく腹の底まで恐怖を湧き立たせる。
人間ではありえないその声量は聞く者の鼓膜に届くだけでなく腹の底まで恐怖を湧き立たせる。
「すごい声量だ...ほんとに人間と同じ構造をしているとは思えないな...」
何をするのかを察した琵琶坂はあらかじめ耳を塞ぎつつも、衝撃を緩和しきれなかったことから苦い顔を浮かべる。
「......」
宣言通りに待つこと10秒。
返答は―――なし。
返答は―――なし。
『警告はした』
魔王は掌に力を貯めエネルギー波を放つ構えを取る。
その周囲の空気が湧き、塵が舞い上がる。
力が溜まり切れば、間違いなく紅魔館は一撃のもとに吹き飛ばされるだろう。
その周囲の空気が湧き、塵が舞い上がる。
力が溜まり切れば、間違いなく紅魔館は一撃のもとに吹き飛ばされるだろう。
「ギャーギャーギャーギャーやかましいのよ早漏女」
それを止めるように。
なんの小細工もなく、彼女は、麦野沈利は正面玄関からその姿を現した。
なんの小細工もなく、彼女は、麦野沈利は正面玄関からその姿を現した。
「おつかいご苦労...と言いたいけど、随分話が違うじゃねーか」
溜められるエネルギーにも動揺も恐怖も見せず、麦野は魔王に向き合う。
「あたしたちの依頼は『岩永琴子』を連れてこいって話だった。別に一緒にいる連中と戦りあうのも承認したし、あんたもそれで承諾した。
あいつと一緒にいた冨岡が呼ばれたんだし、ちゃんとこなしてきたのかと思えば...ハァ」
あいつと一緒にいた冨岡が呼ばれたんだし、ちゃんとこなしてきたのかと思えば...ハァ」
わざとらしくため息を吐く麦野に魔王の眉根がピクリと動く。
『...岩永琴子はいないが、μの関係者は連れてきた』
「それで?」
『それと、先の戦いにおいて分かったことがある。お前たちの同盟は私にとってなんの利にもなりはしない。だから選べ。私に服従するか、この場で糧になるか』
「言いたいことはそれだけかよ」
「それで?」
『それと、先の戦いにおいて分かったことがある。お前たちの同盟は私にとってなんの利にもなりはしない。だから選べ。私に服従するか、この場で糧になるか』
「言いたいことはそれだけかよ」
心底呆れたような侮蔑の視線に、魔王のこめかみに一筋の線が走る。
「...フレンダってヤツがいた。実力はそこそこあったしそれなりに使えたからある程度は許してやったが、頻繁にドジは踏むわすぐに油断するわ挙句の果てに保身で身内を売るどうしようもねえ馬鹿だった。いっぺんブチコロシてからは二度と『アイテム』に入れようとは思えない見下げたやつだったが、こんな形で再評価することになるとは思わなかったわ」
『......』
「あいつはやらかしを誤魔化すし、嘘も平気でつくし、最悪、私に押し付けて逃げればいいとか考えるカスだったわ。けど、あたしを殺して自分のミスを無かったことにしようとはしなかった。自分が悪いことしたって自覚はあったんだろうな。それがどうよ?あんたは大口叩いておいて結果を出せなかった事実から目を逸らして、あたしたちを切り捨てて自分の失敗を無かったことにしようとしている。自分がしくじったって自覚すら持とうとしないとは...いやぁ、下には下がいるもんだなぁ魔王サマ?」
『......』
「あいつはやらかしを誤魔化すし、嘘も平気でつくし、最悪、私に押し付けて逃げればいいとか考えるカスだったわ。けど、あたしを殺して自分のミスを無かったことにしようとはしなかった。自分が悪いことしたって自覚はあったんだろうな。それがどうよ?あんたは大口叩いておいて結果を出せなかった事実から目を逸らして、あたしたちを切り捨てて自分の失敗を無かったことにしようとしている。自分がしくじったって自覚すら持とうとしないとは...いやぁ、下には下がいるもんだなぁ魔王サマ?」
笑いをこらえるように微かに震わせた声音に、ギリ、と歯を噛み締める魔王に麦野は目を細め、その隙を見逃さんと言わんばかりに重ねて捲し立てる。
「私は裏切り者を許さない。いいか、絶対に私は裏切り者を許さないんだよ。ああ、そうそう、本気で本物の馬鹿にはこれくらいしつこく言わなきゃ伝わらないと思うからもういっぺんダメ押ししておくぞ。私は、裏切り者を、許さない」
『それが貴様の答えだな』
『それが貴様の答えだな』
瞬間、魔王の姿が消える。
駆けた。
ただそれだけで、常人では捉えられないほどの速さで魔王は麦野へと肉薄し、その身を引き裂かんと業爪を振り上げる。
駆けた。
ただそれだけで、常人では捉えられないほどの速さで魔王は麦野へと肉薄し、その身を引き裂かんと業爪を振り上げる。
無論、麦野とて常人ではない。
迫りくるその速さも、脅威もしっかりとその目で認識し把握している。
迫りくるその速さも、脅威もしっかりとその目で認識し把握している。
だが、彼女は笑っていた。
迫る脅威から微かにも目を逸らすこともなく、微塵も動揺することもなく。
数秒先に齎されるかもしれぬ死すらも嘲笑っていた。
迫る脅威から微かにも目を逸らすこともなく、微塵も動揺することもなく。
数秒先に齎されるかもしれぬ死すらも嘲笑っていた。
憤怒と憎悪の感情に塗り固められた形相の魔王。
余裕すら感じられるほどの笑みで迎え入れる原子崩しの女王。
余裕すら感じられるほどの笑みで迎え入れる原子崩しの女王。
互いに手を伸ばせば触れ合えるほどの距離で視線が交差するその時、言葉が重なった。
『「お前はここで死ね」』
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