さんざん泣きわめき、言葉で責め立てた少女は膝を折り、嗚咽と共に俯いている。
それを見届けた夜叉・ロクロウは無言のままに彼女を見下ろす。
だが、彼女に声をかけないのは、なにも彼が非情であるのを示す証左ではない。
巨大獣と化した武士の一撃をモロに受け、吹き飛ばされ、甚大なダメージを受けながらもどうにか戦場に戻る道中で遭遇した少女・久美子。
彼女に対しては、欲求に駆られて同行者を傷つけた負い目がある。撃ち込まれた毒を軽減してもらった恩もある。
そんな彼女が齎した「自分がいなかったせいで大勢の仲間が死んだ」という情報は、ロクロウの心に負荷をかけた。
だが、それは彼の心を縛る鎖までには成り得ない。
もしもこれが、ヴァイオレット・エヴァーガーデンや間宮あかりのように不殺を信念とする者たち、あるいは牧歌的な平和を愛する者であれば、その心に爪痕を残せただろう。
ロクロウは違う。
ロクロウの住んでいた世界は、人の理不尽な死などありふれていた。時には、自分たちが齎していた。
そしてなにより、彼自身が戦いを、血肉を好む戦闘狂。礼儀作法は心得ているため、平和や一般的道徳に理解は示せど、重視するのは己の欲求。
平和な現代世界で生きてきた久美子とは価値観が違う。世界が違う。
ロクロウの住んでいた世界は、人の理不尽な死などありふれていた。時には、自分たちが齎していた。
そしてなにより、彼自身が戦いを、血肉を好む戦闘狂。礼儀作法は心得ているため、平和や一般的道徳に理解は示せど、重視するのは己の欲求。
平和な現代世界で生きてきた久美子とは価値観が違う。世界が違う。
自分のあずかり知らぬところで少し話した程度の少女が、久美子の友達が、名前も知らぬ青年が死んだと聞かされても、悼む気持ちはあれど自罰には至らない。
よほど自分を占めるものでもなければ、終わってしまったものは、そういうものだと割り切ってしまえる。
よほど自分を占めるものでもなければ、終わってしまったものは、そういうものだと割り切ってしまえる。
(...嬢ちゃんの言う通り、うかうかしてられねえのは事実だが)
自分がいれば悲劇が収められた―――それは、この混沌とした戦場ではまだ潰えていない。
先ほどまで響き渡っていた轟音は既に途切れており、戦場を蹂躙していた巨大獣の姿も消え去った。
どういう形であれ、奴との戦いが終わっているのは察せられる。
残っているのは、奴が齎した戦火の痕、そして早苗とオシュトル。
先ほどまで響き渡っていた轟音は既に途切れており、戦場を蹂躙していた巨大獣の姿も消え去った。
どういう形であれ、奴との戦いが終わっているのは察せられる。
残っているのは、奴が齎した戦火の痕、そして早苗とオシュトル。
早苗のオシュトルへの憎悪は要領をえないものだった。
一緒に行動していた時にはおくびも見せなかったのに、突然、オシュトルを悪しように吹聴し。
こちらがその否定や矛盾点を挙げれば、今までの言動を改竄・翻してでも己の主張を正そうとし。
挙句の果てには、同調していたはずのクオンですら困惑するほどに狼狽し、オシュトルに味方をするもの全てを否定するようになって。
一緒に行動していた時にはおくびも見せなかったのに、突然、オシュトルを悪しように吹聴し。
こちらがその否定や矛盾点を挙げれば、今までの言動を改竄・翻してでも己の主張を正そうとし。
挙句の果てには、同調していたはずのクオンですら困惑するほどに狼狽し、オシュトルに味方をするもの全てを否定するようになって。
どうにかして、自分やヴァイオレットへの否定は収まったものの、未だ、オシュトルへの嫌疑は晴れていない。
そして自分から見たオシュトルという漢が、早苗の言っていた人面獣心の大悪漢などではないことも相まって、自分かヴァイオレットが間に入り仲裁しつつ立ち回らなければ、ロクなことにならないのを確信している。
そして自分から見たオシュトルという漢が、早苗の言っていた人面獣心の大悪漢などではないことも相まって、自分かヴァイオレットが間に入り仲裁しつつ立ち回らなければ、ロクなことにならないのを確信している。
恩人の一人である早苗に、恩を返すこともなく死なれてしまえば寝覚めが悪いというもの。
「悪いが、こっちも先を急ぐ身でな。詳しい話はあとで聞かせて貰う」
「えっ、わっ」
「えっ、わっ」
ロクロウは久美子の身体を軽々と持ち上げ、肩に担ぐとすぐに駆け出す。
久美子がもがくも、ロクロウが止まることはない。
久美子がもがくも、ロクロウが止まることはない。
(何事もなけりゃあいいんだが...)
その願いが既に潰えているのを知るのは、ほんの数分後の話である。
☆
ゴッ
慟哭、そしてしばしの静寂の後に肉を打つ音が鳴った。
右頬を殴られ、地を舐める巫女・早苗は尻餅をついたまま細かに後ずさる。
右頬を殴られ、地を舐める巫女・早苗は尻餅をついたまま細かに後ずさる。
その胸中を占めるのは、恐怖。
右頬に走る痛み。
己を殴った女傑―――クオンから迸る殺意と悲哀の気配。
取り返しのつかないことを犯した己の罪。
右頬に走る痛み。
己を殴った女傑―――クオンから迸る殺意と悲哀の気配。
取り返しのつかないことを犯した己の罪。
それら全てと直面させられ、早苗のぐちゃぐちゃになった心は、その身体から防衛以外の選択肢を奪い取る。
再び振り上げられる左拳に、ひぃと小さく悲鳴を漏らし、反射的に両手を盾にし。
その上から振るわれた拳に再び地を嘗めさせられ。
それでも怒ることも立ち上がることもできず。
ただ逃避するかのように縮こまることしかできない。
再び振り上げられる左拳に、ひぃと小さく悲鳴を漏らし、反射的に両手を盾にし。
その上から振るわれた拳に再び地を嘗めさせられ。
それでも怒ることも立ち上がることもできず。
ただ逃避するかのように縮こまることしかできない。
振るわれる右足。
来るとわかっているのに、避けられない。
アルマジロのように丸まろうとする身体を打ち上げるような襲撃に、身体こそ浮かないものの、ゴロゴロと蹴鞠のように転がされる。
来るとわかっているのに、避けられない。
アルマジロのように丸まろうとする身体を打ち上げるような襲撃に、身体こそ浮かないものの、ゴロゴロと蹴鞠のように転がされる。
距離が離れ、身体が仰向けになったところで顔を上げる。
クオンと目が合った。
そこにはもはや、己を気遣ってくれた優しい薬師の面影などなく。
涙を流しつつも、全ての感情を削ぎ落した能面のような表情が張り付いており。
涙を流しつつも、全ての感情を削ぎ落した能面のような表情が張り付いており。
それがいっそう、痛みと共に早苗の恐怖を掻き立てる。
なにもできない。
己の命を脅かす存在が目の前に迫っているというのに、ただ傷つけられるのを恐れる被虐待児のように、震え縮こまることしかできない。
己の命を脅かす存在が目の前に迫っているというのに、ただ傷つけられるのを恐れる被虐待児のように、震え縮こまることしかできない。
ガチガチと歯の根が合わない早苗にも構わず、その緑の髪が掴み上げられ、無理やりに顔を持ち上げられる。
再び目が合う。
再び目が合う。
直視することができず、ヒイッと喉を鳴らして両手で顔を隠す早苗の顔面に、クオンの右拳が放たれる。
ゴッ、と鈍い音を響かせ、まだ端整さを保っていた早苗の鼻が歪む。
小さく悲鳴を漏らすも、クオンの拳は止まらない。
小さく悲鳴を漏らすも、クオンの拳は止まらない。
ゴッ ゴッ ゴッ
まるで壊れた人形のように振るわれる拳は、早苗の顔に幾度も降りかかり、肉を打ち、その奥にある骨を打ち。
痣を刻みつけ、唾が飛び、歯が欠け、顔の形状を変えていく。
痣を刻みつけ、唾が飛び、歯が欠け、顔の形状を変えていく。
美少女といっても過言ではなかった早苗の顔は、もはや見る影もない。
目。鼻。唇。頬。
至る箇所が膨れ上がり、まるで不出来な葡萄のように凹凸激しく無様極まりないものとなっていた。
目。鼻。唇。頬。
至る箇所が膨れ上がり、まるで不出来な葡萄のように凹凸激しく無様極まりないものとなっていた。
はあ、はあ、はあと荒い息遣いだけが空気を支配し。
ありとあらゆる激痛が脳髄を支配する中、早苗の胸中を占めるのは、自分をこうしたクオンへの怒りや憎悪ではなく。
ありとあらゆる激痛が脳髄を支配する中、早苗の胸中を占めるのは、自分をこうしたクオンへの怒りや憎悪ではなく。
「ころ、ひて...ころひて、くだひゃい...」
贖罪と逃避、ただそれだけだった。
―――どうして、あんなことをしたんだろう。
クオンに嬲られている間、ずっと考えていた。
もともと、オシュトルと自分の関係は決して悪いものではなかった。
この殺し合いにおいて、最初に出会い、共に対主催を掲げる者同士。
首輪を調達するにあたる参加者の生死についての価値観の相違こそあれど、それがああも嫌悪と憎悪に繫がるものではなかったはずだ。
もともと、オシュトルと自分の関係は決して悪いものではなかった。
この殺し合いにおいて、最初に出会い、共に対主催を掲げる者同士。
首輪を調達するにあたる参加者の生死についての価値観の相違こそあれど、それがああも嫌悪と憎悪に繫がるものではなかったはずだ。
それからも、オシュトルになにかされたというわけではないというのに。
なぜか、オシュトルが悪しように記憶が塗り替えられていた。
一度、恐怖を抱けば火をつけた導火線のように憎悪と嫌悪が留まることを知らなかった。
一度、恐怖を抱けば火をつけた導火線のように憎悪と嫌悪が留まることを知らなかった。
いつからそうなったというのか―――ビルドたちの名前が連ねられた放送を聞いてからという、大雑把なことしかわからない。
なにか、妙な刺激があったような気もするが、その正体もわからない。
ただ、いまの早苗がわかるのは、勝手な思い込みでオシュトルを殺し、それがクオンを絶望に追いやったということだけ。
ただ、いまの早苗がわかるのは、勝手な思い込みでオシュトルを殺し、それがクオンを絶望に追いやったということだけ。
原因も。取り返す手段も。何もわからないというなら、せめて彼女の手で殺されよう。
そうすることで罪を償おう。それがきっと正しいのだ。
そんな逃避でしかない自己満足の自暴自棄―――諦観にはこれ以上なく相応しい、麻薬の如き事後犠牲の美徳に、身を任せようとする。
そうすることで罪を償おう。それがきっと正しいのだ。
そんな逃避でしかない自己満足の自暴自棄―――諦観にはこれ以上なく相応しい、麻薬の如き事後犠牲の美徳に、身を任せようとする。
「......ッ!!」
クオンの目が見開かれ、感情が息を吹き返す。
掴んでいた早苗の髪を乱雑に地面に引き倒し、ぶちぶちと千切れる嫌な感触を掌から感じ取り、噛み締めた唇からは血が流れる。
掴んでいた早苗の髪を乱雑に地面に引き倒し、ぶちぶちと千切れる嫌な感触を掌から感じ取り、噛み締めた唇からは血が流れる。
仰向けに倒れ、視界いっぱいに映るのは、こちらを涙ながらに見下ろすクオン。
きっと、数秒後にはその拳で心臓を貫くのだろう。
その運命を受け入れるように、脱力感に身を任せるように、早苗は瞼を閉じる。
きっと、数秒後にはその拳で心臓を貫くのだろう。
その運命を受け入れるように、脱力感に身を任せるように、早苗は瞼を閉じる。
真っ暗になった視界の中、拳が迫るのを感じ取る。
ガキン、と金属を打ち付けるような甲高い音が鳴った。
「なにがあったかは知らんが...恩を返さないまま死なれては堪らん。ひとまず話だけは聞かせてくれねえか」
早苗が瞼を開けると、そこには、眼前にまで迫った拳を剣で受け止めていたロクロウの姿があった。
「っ...!」
ロクロウが剣を振り上げると、クオンは後方にたたらを踏み、距離を取らされる。
「ロク、ロウ、ひゃん...」
「おう。随分酷い有様になってるが...さっきのヴライって奴にやられた...わけじゃ、ねえなあ」
「おう。随分酷い有様になってるが...さっきのヴライって奴にやられた...わけじゃ、ねえなあ」
早苗の顔に刻まれた幾多の打撲痕から、殴打による怪我だと察することが出来る。
先の巨大獣・ヴライにやられたとすれば、あの巨大な拳を顔面に受ければ、もはや顔など存在すらしていないだろう。
となれば、やはり見間違いでもなんでもなく、先ほどまで共闘していたクオンが早苗を殺そうとしていたのは明白で。
先の巨大獣・ヴライにやられたとすれば、あの巨大な拳を顔面に受ければ、もはや顔など存在すらしていないだろう。
となれば、やはり見間違いでもなんでもなく、先ほどまで共闘していたクオンが早苗を殺そうとしていたのは明白で。
「邪魔、しないでほしいかな...その娘は、ハクを...ハクを!!」
「ハク...?よくはわからんが、どうしても早苗を殺りたいんなら、俺を倒してからにしてもらおうか。久美子、早苗を看てやってくれ」
「ぅえ、えっと...ひっ」
「ハク...?よくはわからんが、どうしても早苗を殺りたいんなら、俺を倒してからにしてもらおうか。久美子、早苗を看てやってくれ」
「ぅえ、えっと...ひっ」
送れて辿り着き、早苗の惨状を見た久美子の悲鳴がゴングとなり、ロクロウとクオンの戦闘が始まった。
駆け出すはクオン。
跳躍しての踵落としを、ロクロウは剣で受け、かかる衝撃をそのまま受け流せば、クオンはロクロウの手前に落下する。
その隙を突き、ロクロウは剣を逆手に持ち替え、柄の方でクオンのこめかみを殴りつける。
クオンは頭部に奔る痛みに怯むも、すぐに地面を蹴り抜き、右の拳を振るう。
ロクロウはそれを身を捩り回避。
躱された傍からクオンは左の拳を振るい、ロクロウはそれもまた回避。
クオンが拳を振るい、ロクロウが回避するというやり取りが数度続いたときだった。
跳躍しての踵落としを、ロクロウは剣で受け、かかる衝撃をそのまま受け流せば、クオンはロクロウの手前に落下する。
その隙を突き、ロクロウは剣を逆手に持ち替え、柄の方でクオンのこめかみを殴りつける。
クオンは頭部に奔る痛みに怯むも、すぐに地面を蹴り抜き、右の拳を振るう。
ロクロウはそれを身を捩り回避。
躱された傍からクオンは左の拳を振るい、ロクロウはそれもまた回避。
クオンが拳を振るい、ロクロウが回避するというやり取りが数度続いたときだった。
「......」
ロクロウは動くのを止め、振るわれた拳をその腹で受け止める。
ドッ、と肉を打つ音がする―――が、しかし、ロクロウの上半身は微塵も動かない。
ドッ、と肉を打つ音がする―――が、しかし、ロクロウの上半身は微塵も動かない。
「...どうしたよ。そんな拳じゃ、早苗どころか猫だって殺せないぜ」
数度のやり取りでイヤでも理解させられた。
今のクオンの拳に、先ほどヴライとやり合っていた時ほどの威力や覇気は無い。
疲労で動かないだとか、技が使えないだとか、そんな次元ではなく。
今のクオンの拳に、先ほどヴライとやり合っていた時ほどの威力や覇気は無い。
疲労で動かないだとか、技が使えないだとか、そんな次元ではなく。
拳が泣いている。力を振るっている本人が己の心を傷つけている。
今のクオンが、本当に早苗を殺そうとしているのかさえ疑問を抱くほどに。
まるでそよ風のようになびいているだけの軽い、軽い拳だった。
だから、あの巨大獣を怯ませるほどの威力を間近で見ておきながら、躱すこともなく受け止めることに躊躇いもなかった。
まるでそよ風のようになびいているだけの軽い、軽い拳だった。
だから、あの巨大獣を怯ませるほどの威力を間近で見ておきながら、躱すこともなく受け止めることに躊躇いもなかった。
「......!」
クオンの唇を噤み、目元が歪んでいく。
身体が弛緩していくその隙に、ロクロウはクオンの伸ばされた腕を掴み取る。
身体が弛緩していくその隙に、ロクロウはクオンの伸ばされた腕を掴み取る。
「なんで...」
疑問の言葉が漏れる。
「なんで、早苗なの」
溢れ出した想いは止まらない。
「なんで、ハクが早苗に殺されなくちゃいけないの...!?」
ずっと会いたかった。
ずっと後悔していた。
また会えて嬉しかった。
今度こそ共に歩めると思っていた。
ずっと、ずっと大好きだった。
ずっと後悔していた。
また会えて嬉しかった。
今度こそ共に歩めると思っていた。
ずっと、ずっと大好きだった。
そんな想い人を殺されたのだ。
絶望せずにはいられない。
現実なんかじゃないと逃避せずにはいられない。
現実なんかじゃないと逃避せずにはいられない。
それでも、ハクがオシュトルに成り替わっていたのを知らなかった時は。
この殺し合いで仇を―――ヴライを討てると思えば、それも一つの活力とすることができた。
何故か。
自分の知る限りで、ヴライが冷徹で力を至上とする暴君だと認識していたからだ。
だから、最初にリゾットと出会い、問答した時も、復讐の是非はおいておいて『奴を斃す』ということ自体には忌避感すら湧かなかった。
この殺し合いで仇を―――ヴライを討てると思えば、それも一つの活力とすることができた。
何故か。
自分の知る限りで、ヴライが冷徹で力を至上とする暴君だと認識していたからだ。
だから、最初にリゾットと出会い、問答した時も、復讐の是非はおいておいて『奴を斃す』ということ自体には忌避感すら湧かなかった。
そう。
もしも早苗が、他者の命を軽視し弄ぶような鬼畜外道であれば、悲しみに沈められようとも、躊躇わず拳を振り抜くことが出来た。
復讐という大義名分に酔うことができた。
彼女を殺した後に、命を断ち、この地獄から逃れハクのもとへ逝くことができた。
もしも早苗が、他者の命を軽視し弄ぶような鬼畜外道であれば、悲しみに沈められようとも、躊躇わず拳を振り抜くことが出来た。
復讐という大義名分に酔うことができた。
彼女を殺した後に、命を断ち、この地獄から逃れハクのもとへ逝くことができた。
けれど、下手人が早苗であるがゆえに、そうはならなかった。
クオンとてわかっていた。
早苗が、オシュトル―――否、ハクを殺したのは、本意ではないと。
短い付き合いながらも、早苗がどういう人物かは理解している。
彼女は決して、デコポンポのように私欲で他者を害し悦に浸るような下衆ではない。
なにより、命を賭けて破壊神と戦い、その身を挺して皆を護ったのだ。彼女という人間を疑う余地はない。
ハクを撃ち抜いたのも、クオンを護ろうとしての行為だ。
だから、仮に本物のオシュトルに危害を加えられていたとしても、ハクの事情を知っていれば、決してそんなことはしないのだ。
短い付き合いながらも、早苗がどういう人物かは理解している。
彼女は決して、デコポンポのように私欲で他者を害し悦に浸るような下衆ではない。
なにより、命を賭けて破壊神と戦い、その身を挺して皆を護ったのだ。彼女という人間を疑う余地はない。
ハクを撃ち抜いたのも、クオンを護ろうとしての行為だ。
だから、仮に本物のオシュトルに危害を加えられていたとしても、ハクの事情を知っていれば、決してそんなことはしないのだ。
もしも自分が早苗の豹変に気づき、安易に彼女に同意しなければ。
もしも皆で話し合う時間があれば。
もしも戦いが終わった時、自分と早苗が同じ場所にいることができていれば。
もしも早苗と合流した時に、オシュトルがハクであると伝えることができていれば。
もしもハクが自分と再会し、詰められた時にオシュトルではなくハクであると明かしてくれていれば。
もしもそれらを許さぬ程、ヴライが猛威を振るっていなければ。
もしも皆で話し合う時間があれば。
もしも戦いが終わった時、自分と早苗が同じ場所にいることができていれば。
もしも早苗と合流した時に、オシュトルがハクであると伝えることができていれば。
もしもハクが自分と再会し、詰められた時にオシュトルではなくハクであると明かしてくれていれば。
もしもそれらを許さぬ程、ヴライが猛威を振るっていなければ。
決して、こんなことにはならなかった。
わかっている。
状況が、戦況が、時間が、そして誰もが悪かった。
早苗一人が悪いのではないことは、全部、わかっているのだ。
状況が、戦況が、時間が、そして誰もが悪かった。
早苗一人が悪いのではないことは、全部、わかっているのだ。
それでも止められなかった。
身体は勝手に動き、早苗を、己の心までを傷つける自傷行為に走るほかなかった。
ハクが戻るわけでもないのに、復讐という大義名分すらない、自慰行為に等しき最低最悪の児戯に身を任せるしかなかった。
身体は勝手に動き、早苗を、己の心までを傷つける自傷行為に走るほかなかった。
ハクが戻るわけでもないのに、復讐という大義名分すらない、自慰行為に等しき最低最悪の児戯に身を任せるしかなかった。
「...もう、やだよ、こんなの...」
ガクリと膝を折り、涙に沈むクオン。
その嗚咽に、ロクロウも、早苗もかける声が見つからなかった。
その嗚咽に、ロクロウも、早苗もかける声が見つからなかった。
「だったら、戦おうよ」
ただ一人、黄前久美子を除いて。
☆
みんなが悲しみと戸惑いに暮れる中、私の思考はイヤなほどに冷静だった。
きっとそれは、麗奈がいなくなってしまったからだろう。
きっとそれは、麗奈がいなくなってしまったからだろう。
麗奈。高坂麗奈。
麗奈はただの同じ部活の友達、なんてものじゃない。
彼女は誰の代わりにもならない『特別』だ。
麗奈はただの同じ部活の友達、なんてものじゃない。
彼女は誰の代わりにもならない『特別』だ。
同じ咎を背負い。
共に血を交わらせ。
禁忌と背徳に浸りながら共に墜ちると契りを交わし。
もはや私の番いと言っても過言ではない、半身とも言える存在だった。
それがなくなった。
二人で潜っていた暗い地の底に、私だけが取り残されてしまった。
共に血を交わらせ。
禁忌と背徳に浸りながら共に墜ちると契りを交わし。
もはや私の番いと言っても過言ではない、半身とも言える存在だった。
それがなくなった。
二人で潜っていた暗い地の底に、私だけが取り残されてしまった。
だからだろう。
これからしようとしていることが最低だと理解していても。
本来なら私自身が忌避すべきものだとしても。
半身を失った私に、今さら恐怖なんてものはなく。
あとはもう生きるか死ぬか、それだけの世界でしかない。
踏み出すことでしか、光を掴むことができない。
本来なら私自身が忌避すべきものだとしても。
半身を失った私に、今さら恐怖なんてものはなく。
あとはもう生きるか死ぬか、それだけの世界でしかない。
踏み出すことでしか、光を掴むことができない。
そう、理解しているから。
悪魔が、背中を押すのを感じ取りつつも、その言葉に震えは微塵もなかったのだと思う。
☆
「こんなの、納得できないんだよね」
早苗の看病もそこそこに、久美子は涙ぐみながらクオンに投げかける。
「だったら、取り戻そうよ。なんで諦めようとするの?私たちにはその権利があるのに」
「ぇ...?」
「ぇ...?」
その言葉に、思わずクオンは顔を上げる。
「だってこんなの、おかしいよ。やりたいことも、頑張ってたこともたくさんあるのに。無理やり殺し合いなんかに連れてこられて、本当ならしなかったこともさせられて...どうしてそんなもの、受け入れなくちゃいけないの?」
「おい、久美子。おまえ、まさか...」
「貴方は黙ってて!」
「おい、久美子。おまえ、まさか...」
「貴方は黙ってて!」
何を言おうとしているのか察したロクロウを、彼の強く出られない立場を利用し久美子は吐き捨てるように制する。
久美子の狙い通り、ロクロウは立場を顧みて一歩退き、久美子に場を譲った。
久美子の狙い通り、ロクロウは立場を顧みて一歩退き、久美子に場を譲った。
その実感に、彼女は、いま、この場の支配権は自分にあると言わんばかりの全能感に浸り、まるで逸材を見出した部活動の顧問のようにクオンの肩に手を置き問いかけた。
「本当に貴女はそれでいいの?建前なんか使わないで、ちゃんと、本音で言って」
「ほん、ね...?」
「こんなわけのわからない状況で、色んな人が死んじゃって、早苗さんがハクって人を殺しちゃって...それが、貴女の望んだ未来なの!?」
「ほん、ね...?」
「こんなわけのわからない状況で、色んな人が死んじゃって、早苗さんがハクって人を殺しちゃって...それが、貴女の望んだ未来なの!?」
久美子の言葉にクオンは息を呑む。
自分はハクの死を―――否、ハクが死んだという事実自体を受け入れようとしていた。
だから束の間の誘惑に身を委ねようとしていた。死に逃げようとした。
自分はハクの死を―――否、ハクが死んだという事実自体を受け入れようとしていた。
だから束の間の誘惑に身を委ねようとしていた。死に逃げようとした。
「わた、くしは...」
でも。
本当に望んでいるのは、そんなのじゃなくて。
苦しいだけの地獄なんて微塵も望んでいなくて。
彼女が欲しいのは、たった一つの日常だけ。
本当に望んでいるのは、そんなのじゃなくて。
苦しいだけの地獄なんて微塵も望んでいなくて。
彼女が欲しいのは、たった一つの日常だけ。
「そんなの、望んでない...」
かつて過ごしたあの賑やかな日々。
ネコネ。
ルルティエ。
アンジュ。
マロロ。
アトゥイ。
ノスリ。
オウギ。
ムネチカ。
キウル。
シノノン。
ヤクトワルト。
ウルゥルにサラァナ。
ミカヅチ。
オシュトル。
ルルティエ。
アンジュ。
マロロ。
アトゥイ。
ノスリ。
オウギ。
ムネチカ。
キウル。
シノノン。
ヤクトワルト。
ウルゥルにサラァナ。
ミカヅチ。
オシュトル。
共に戦った皆がいて。
「あの頃に、戻りたい...こんなの、受け入れられない!!」
なにより。
ハクがいた、あの愛おしき日々への回帰。
ただそれだけが、クオンが『本当にしたいこと』だ。
「...だったら、ぜんぶやり直そう?」
クオンの慟哭に報いるように、久美子の掌が差し出される。
「私は貴女の願いを否定しない...だって、私も、その為に戦ってるんだから」
彼女の言葉が、胸にストンと落ちてくる。
自分の醜く弱い部分を受け入れてくれるかのような、不思議な温もりさえ感じてしまう。
自分の醜く弱い部分を受け入れてくれるかのような、不思議な温もりさえ感じてしまう。
「...早苗さんも、聞いてほしいんだ。私と麗奈が目指した道しるべを」
そして、久美子は抑揚のついた、幼児に言い聞かせるような柔らかい口調で、ポツリポツリと語り始めた。
「μの力をうばって...全部なかったことにする...」
ロクロウより軽い応急処置を受けながら、早苗は久美子が語った目的を反芻する。
「そう。私と麗奈は、こんな殺し合いを否定して、全部無かったことにしようとしてるの。そうすれば、私たちだけじゃない...死んじゃった人たちも、みんなひっくるめて幸せになれるんだよ」
みんなが幸せになれる。
その誘惑に、早苗の頭が蕩けそうになる。
無かったことになる、ということはつまり、霊夢たち同郷の者、この殺し合いで関わり合い散っていった者たち、そして自分がオシュトル―――否、ハクを殺してしまったことをも取り返せるということで。
それは今の早苗にとって麻薬の如き甘言だ。
それは今の早苗にとって麻薬の如き甘言だ。
「ロクロウさんにはもう話は通してあって...二人も、手伝ってくれるよね」
同意前提の久美子の言葉に早苗の心境は一気に傾く。
確証はないものの、一応の理屈は整っていて。
金銀財宝の類のような私欲ではなく、かつての日常を取り戻したいという共感のできる目的であり。
なにより、この地獄のような現実から逃げ出すことができる。
確証はないものの、一応の理屈は整っていて。
金銀財宝の類のような私欲ではなく、かつての日常を取り戻したいという共感のできる目的であり。
なにより、この地獄のような現実から逃げ出すことができる。
否定する理由はどこにもない。
にべもなく、早苗は肯首しようとして―――
にべもなく、早苗は肯首しようとして―――
―――カラァン
不意に、脳裏に鐘の音が過る。
ビルドが己の全てをかけ高らかに打ち鳴らした鐘の音が。
(ぁ...)
躊躇いが生まれる。
久美子の言う通り、全てを無かったことにするということは。
あの破壊神との戦いで参加者たちが見せつけた覚悟やビルドの想いすらも否定するということ。
無論、散った者たちがそのままでいいなどと思っているわけではない。
しかし、彼らが生きた証を、ただ己が楽になりたいというだけで否定していいものか。
久美子の言う通り、全てを無かったことにするということは。
あの破壊神との戦いで参加者たちが見せつけた覚悟やビルドの想いすらも否定するということ。
無論、散った者たちがそのままでいいなどと思っているわけではない。
しかし、彼らが生きた証を、ただ己が楽になりたいというだけで否定していいものか。
「...わ、私は...」
「...クオンさんは?」
「...クオンさんは?」
返答を戸惑う早苗の様子に、これ見よがしにため息を吐きつつ、久美子はクオンへとかぶりをふる。
「わたくし、は...」
瞼を閉じ、考える。
この殺し合いを否定し無かったことにすれば。
この催しで出会った者たちとの縁や覚悟、今の自分たちをも否定することになる。
それを良しとしない者も多いだろう。
この殺し合いを否定し無かったことにすれば。
この催しで出会った者たちとの縁や覚悟、今の自分たちをも否定することになる。
それを良しとしない者も多いだろう。
例えば、散ってしまった中ではミカヅチにビルド。
例えば、生きている中では隼人やブチャラティ。
彼らの想いや信念とて、蔑ろにしたい訳ではない。
けれどそれ以上に。
自分には、ハクのいない世界など耐え切れない。
そもそも。
マロロの言を信じるならば、本来は、もっと早い段階で自分はオシュトルの正体を知っていたのだ。
でなければ、オシュトルの下に着いて共に戦うなどあり得ないのだから。
自分には、ハクのいない世界など耐え切れない。
そもそも。
マロロの言を信じるならば、本来は、もっと早い段階で自分はオシュトルの正体を知っていたのだ。
でなければ、オシュトルの下に着いて共に戦うなどあり得ないのだから。
それを、理不尽な横やりで無かったことにされたのが今なのだ。
例え我儘で傲慢だと罵られても―――それを運命だと受け入れられるはずもない。
例え我儘で傲慢だと罵られても―――それを運命だと受け入れられるはずもない。
「私は...久美子に、賛成、するかな」
「!」
「私も...久美子と同じ気持ちだから」
「!」
「私も...久美子と同じ気持ちだから」
遠慮がちでありながら、しかしここにきて真っ当な賛成意見に久美子の顔は綻びた。
そう。そうなのだ。
こんな理不尽で出鱈目な異変に唐突に巻き込まれて、その中で一生懸命に生きて、それでも殺される。殺してしまう。
そんなものをどうして受け入れる必要があるのか。
だって、本当なら、そんなことをすることもされることもなかったはずなのに。
だから、彼女たちはその運命を否定し、拒絶する。
そう。そうなのだ。
こんな理不尽で出鱈目な異変に唐突に巻き込まれて、その中で一生懸命に生きて、それでも殺される。殺してしまう。
そんなものをどうして受け入れる必要があるのか。
だって、本当なら、そんなことをすることもされることもなかったはずなのに。
だから、彼女たちはその運命を否定し、拒絶する。
「ありがとうクオンさん!...それで、早苗さんは?」
お礼を言ったクオンに対してとは対照的に、早苗に対しては露骨に声音が下がる久美子。
さっさと答えを出せと言わんばかりの久美子の視線に早苗の胸が締め付けられるような息苦しさを覚える。
「わ、私は...その...」
「早苗さんはハクさんを殺したことに後悔はないんですか?」
「!!」
「早苗さんはハクさんを殺したことに後悔はないんですか?」
「!!」
久美子の言葉に動悸は更に早くなる。
後悔が無い、だなんてそんなことは口が裂けても言えない。
あの瞬間まで時間が巻き戻せるなら、どんな手段を使ってでも止めたいと思っている。
後悔が無い、だなんてそんなことは口が裂けても言えない。
あの瞬間まで時間が巻き戻せるなら、どんな手段を使ってでも止めたいと思っている。
「こ、後悔がないなんて、そんな...」
「じゃあなんで躊躇うんですか。ハクさんだけじゃなくて、カナメさんやみぞれ先輩にマロロさん、霊夢さんに弁慶さんに志乃ちゃん...早苗さんが関わってるだけでもたくさん死んじゃった人たちがいるんですよ。みんな、みんな見捨てるんですか」
「じゃあなんで躊躇うんですか。ハクさんだけじゃなくて、カナメさんやみぞれ先輩にマロロさん、霊夢さんに弁慶さんに志乃ちゃん...早苗さんが関わってるだけでもたくさん死んじゃった人たちがいるんですよ。みんな、みんな見捨てるんですか」
強い語気になっているのは、心を抉るような酷いことを言っているのは久美子自身も自覚していた。
きっと、自分が早苗の立場で同じ言葉を投げかけられれば、もう立ち直れなくなってしまうだろうと。
しかしそれでも、久美子は早苗には味方に付いてほしかった。
破壊神との戦いで共に生き延びた仲、というのは勿論のこと、同じ咎を背負った者同士だからこそのシンパシーも感じているから。
きっと、自分が早苗の立場で同じ言葉を投げかけられれば、もう立ち直れなくなってしまうだろうと。
しかしそれでも、久美子は早苗には味方に付いてほしかった。
破壊神との戦いで共に生き延びた仲、というのは勿論のこと、同じ咎を背負った者同士だからこそのシンパシーも感じているから。
早苗が、本来は殺すはずのないハクを殺したのと同様に、久美子もまた、本来は殺すはずのないジオルドやカナメを殺している。
同じような境遇にある者同士で敵対し、排除するようなことはできればしたくはない。
だから、酷い言葉をぶつけてでも、彼女の反抗する意思を削ごうとした。
同じような境遇にある者同士で敵対し、排除するようなことはできればしたくはない。
だから、酷い言葉をぶつけてでも、彼女の反抗する意思を削ごうとした。
「わ、私、は」
「流されるなよ、早苗」
「流されるなよ、早苗」
久美子の思惑通りに同調しようとした早苗をロクロウが遮る。
「誰の意思も関係ない。お前が、お前の意思で決めればいい。でないと、どんな結末になっても後悔しちまうぞ。それと先に言っておくがな、ここで久美子に同意しなけりゃ俺たちを敵にまわすことになるし、俺たちに着いても反対するやつらと敵対することになる。そいつだけは頭に置いておきな」
「ロクロウさん...!」
「ロクロウさん...!」
順調だった流れに横やりを入れられた久美子は、キッとロクロウを睨みつける。
が、しかし、ロクロウは意にも介さず言い返した。
が、しかし、ロクロウは意にも介さず言い返した。
「久美子。お前は確かに恩人だが、同時に早苗もまた俺の恩人だ。その恩に報いるにはこうするより俺は知らん。心配すんな。契約通り、お前が諦めない限りは手伝ってやるさ」
肝心な時にいなかったくせに、役立たず。と心の中で悪態をつきつつ、やはりこの人は嫌いだと久美子は改めて思うのだった。
「とにもかくにもだ。まだ近くにヴァイオレットたちもいるかもしれないんだろ?探しに行かねえとな」
「うん...けど、あかりちゃんはともかく、ヴァイオレットさんはきっと反対すると思う」
「一人でも増えるなら探すべきじゃないかな」
「...そう、だね」
「うん...けど、あかりちゃんはともかく、ヴァイオレットさんはきっと反対すると思う」
「一人でも増えるなら探すべきじゃないかな」
「...そう、だね」
躊躇いつつも、久美子はしぶしぶとロクロウとクオンに同意する。
反対する気配の濃厚だった琴子が死んだ以上、あかりはおそらくこちらに引き込める。
ただ、先のウィキッドとの戦いのこともあり、彼女と面を合わせるのも気が引けてしまう。
戦わせてばかりで、且つあれほどの暴言を浴びせ、挙句の果てにカナメにトドメを刺して逃亡したのだ。印象はかなり悪くなっているだろう。
できれば彼女とは会わずに終わらせたい。
反対する気配の濃厚だった琴子が死んだ以上、あかりはおそらくこちらに引き込める。
ただ、先のウィキッドとの戦いのこともあり、彼女と面を合わせるのも気が引けてしまう。
戦わせてばかりで、且つあれほどの暴言を浴びせ、挙句の果てにカナメにトドメを刺して逃亡したのだ。印象はかなり悪くなっているだろう。
できれば彼女とは会わずに終わらせたい。
あわよくば。自分のあずかり知らないところで、散っていてほしい。
どうせ無かったことにできるのだから―――
どうせ無かったことにできるのだから―――
そこまで考えて、久美子は己を嫌悪する。
結局、なんだかんだと理屈を着けながら、自分は己の保身ばかりしか考えていないのだと。
結局、なんだかんだと理屈を着けながら、自分は己の保身ばかりしか考えていないのだと。
あすか先輩が見ていたら、その辺りを容赦なくつっつかれそうだ。
それでも進むしかない。
麗奈のいない今、どんな手段を使ってでも生き残り、全てを無かったことにするしかないのだ。
麗奈のいない今、どんな手段を使ってでも生き残り、全てを無かったことにするしかないのだ。
久美子は拳を握り、決意を新たにする。
早苗に先行して足を進めていく三人の背中を見ながら、早苗は思う。
この殺し合いを全てを無かったことにして、悲しみも、罪もなくしてしまう。
もしも実現すれば、それはきっとすばらしいことのはずだ。
なのに、自分の前の三人が進む先が、ひどく暗く見えてしまうのは気のせいだろうか、と。
もしも実現すれば、それはきっとすばらしいことのはずだ。
なのに、自分の前の三人が進む先が、ひどく暗く見えてしまうのは気のせいだろうか、と。
【E-6/更地/夜中/一日目】
【ロクロウ・ランゲツ@テイルズオブベルセリア】
[状態]:全身に裂傷及び刺傷(止血及び回復済み)、疲労(極大)、全身ダメージ(極大)、反省、感傷、無惨の血混入、右腕欠損、言いようのない喪失感
[服装]:いつもの服装
[装備]: オボロの双剣(片一方は粉砕)@うたわれるもの 二人の白皇、ロクロウの號嵐(影打ち)@テイルズ オブ ベルセリア
[道具]:基本支給品一色、不明支給品0~2
[思考]
基本:主催者の打倒
0:ひとまずは周囲の参加者を探す。
1:久美子達の計画に賛同するつもりはないが、久美子には借りがあるので、暫くは共闘するつもり
2:無惨を探しだして斬る。
3:シグレを殺したという魔王ベルセリア(ベルベット)は斬る。
4: 早苗が気掛かり。號嵐を譲ってくれた借りは返すつもりだが……
5: 殺し合いに乗るつもりはない。強い参加者と出会えば斬り合いたいが…
6: 久美子達には悪いことしちまったなぁ……
7: マギルゥ、まぁ、会えば仇くらい討ってはやるさ。
8: アヴ・カムゥに搭乗していた者(新羅)については……。
[備考]
※ 参戦時期は少なくともキララウス火山での決戦前からとなります。
※ 早苗からロクロウの號嵐(影打ち)を譲り受けました。
※ オシュトルからうたわれ世界の成り立ちについて、聞かされました。
※ 垣根によってマギルゥの死を知りました。
※ 無惨との戦闘での負傷により、無惨の血が体内に混入されました。
※ 更新されたレポートの内容により、ベルベットがシグレを殺害したことを知りました。
※ 久美子が作った解毒剤によって、毒は緩和されており、延命に成功しました。
※ 殺し合いの全てを無かったことにしようとする久美子達の計画を知りました。
【ロクロウ・ランゲツ@テイルズオブベルセリア】
[状態]:全身に裂傷及び刺傷(止血及び回復済み)、疲労(極大)、全身ダメージ(極大)、反省、感傷、無惨の血混入、右腕欠損、言いようのない喪失感
[服装]:いつもの服装
[装備]: オボロの双剣(片一方は粉砕)@うたわれるもの 二人の白皇、ロクロウの號嵐(影打ち)@テイルズ オブ ベルセリア
[道具]:基本支給品一色、不明支給品0~2
[思考]
基本:主催者の打倒
0:ひとまずは周囲の参加者を探す。
1:久美子達の計画に賛同するつもりはないが、久美子には借りがあるので、暫くは共闘するつもり
2:無惨を探しだして斬る。
3:シグレを殺したという魔王ベルセリア(ベルベット)は斬る。
4: 早苗が気掛かり。號嵐を譲ってくれた借りは返すつもりだが……
5: 殺し合いに乗るつもりはない。強い参加者と出会えば斬り合いたいが…
6: 久美子達には悪いことしちまったなぁ……
7: マギルゥ、まぁ、会えば仇くらい討ってはやるさ。
8: アヴ・カムゥに搭乗していた者(新羅)については……。
[備考]
※ 参戦時期は少なくともキララウス火山での決戦前からとなります。
※ 早苗からロクロウの號嵐(影打ち)を譲り受けました。
※ オシュトルからうたわれ世界の成り立ちについて、聞かされました。
※ 垣根によってマギルゥの死を知りました。
※ 無惨との戦闘での負傷により、無惨の血が体内に混入されました。
※ 更新されたレポートの内容により、ベルベットがシグレを殺害したことを知りました。
※ 久美子が作った解毒剤によって、毒は緩和されており、延命に成功しました。
※ 殺し合いの全てを無かったことにしようとする久美子達の計画を知りました。
【黄前久美子@響け!ユーフォニアム】
[状態]:全身に火傷(冷却治療済み)、右耳裂傷(小)、右肩に吸血痕、深い悲しみと喪失感、琴子とカナメに対する罪悪感、精神的疲労(絶大)
[役職]:ビルダー
[服装]:特製衣装・響鳴の巫女(共同制作)
[装備]:契りの指輪(共同制作)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1、デモンズバッシュ@テイルズオブベルセリア、セルティ・ストゥルルソンの遺体、シグレ・ランゲツの片腕、クロガネ征嵐@テイルズオブベルセリア、点滴セット複数@現実
[思考]
基本:歌姫(μ)に勝って、その力を利用して殺し合いの全てを無かったことにする。
0:ひとまずは周囲の参加者を探す。
1:どんな手段を使ってでも、麗奈と共に描いた道しるべを達成する。もう、迷うことは無い。
2:ロクロウさんは嫌いだけど、利用はするつもり
3:ヴァイオレットさんには、改めて協力をお願いしたい
4:ウィキッドは絶対に許さない
5:例え隼人さん達を敵に回したって、もう私は迷わない。望みを叶えるまで逃げ切ってやる。
6:あかりちゃんも、仲間になってほしいけど……
7:魔王ベルセリアという存在には最大限の警戒
8:岩永さん、ごめん。必ず生き返らせるから……
[状態]:全身に火傷(冷却治療済み)、右耳裂傷(小)、右肩に吸血痕、深い悲しみと喪失感、琴子とカナメに対する罪悪感、精神的疲労(絶大)
[役職]:ビルダー
[服装]:特製衣装・響鳴の巫女(共同制作)
[装備]:契りの指輪(共同制作)
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1、デモンズバッシュ@テイルズオブベルセリア、セルティ・ストゥルルソンの遺体、シグレ・ランゲツの片腕、クロガネ征嵐@テイルズオブベルセリア、点滴セット複数@現実
[思考]
基本:歌姫(μ)に勝って、その力を利用して殺し合いの全てを無かったことにする。
0:ひとまずは周囲の参加者を探す。
1:どんな手段を使ってでも、麗奈と共に描いた道しるべを達成する。もう、迷うことは無い。
2:ロクロウさんは嫌いだけど、利用はするつもり
3:ヴァイオレットさんには、改めて協力をお願いしたい
4:ウィキッドは絶対に許さない
5:例え隼人さん達を敵に回したって、もう私は迷わない。望みを叶えるまで逃げ切ってやる。
6:あかりちゃんも、仲間になってほしいけど……
7:魔王ベルセリアという存在には最大限の警戒
8:岩永さん、ごめん。必ず生き返らせるから……
※少なくとも自分がユーフォニアムを好きだと自覚した後からの参戦
※ロクロウと情報交換を行いました
※ビルドの『ものづくり』の力が継承されました。現状は麗奈と一緒に衣装やら簡単なアイテムを作れる程度に収まっています。
※麗奈がビエンフーから読み取った記憶を共有し、ビエンフー視点からのロワの記録を入手しました。
※μの事を「楽器」で「願望器」だと独自の予想しました
※ロクロウと情報交換を行いました
※ビルドの『ものづくり』の力が継承されました。現状は麗奈と一緒に衣装やら簡単なアイテムを作れる程度に収まっています。
※麗奈がビエンフーから読み取った記憶を共有し、ビエンフー視点からのロワの記録を入手しました。
※μの事を「楽器」で「願望器」だと独自の予想しました
【クオン@うたわれるもの 二人の白皇】
[状態]:全身にダメージ(絶大)、疲労(極大)、出血(絶大)、精神的疲労(絶大)、ウィツアルネミテアの力の消失、悲しみと絶望(極大)、喪失感(絶大)
[役職]:ビルダー
[服装]:皇女服
[装備]:
[道具]:基本支給品一色、薬用の葉っぱ@オリジナル、不明支給品0~2、マロロの支給品3つ
[思考]
基本:久美子の願いの手助けをする。ハクを取り戻す。
0:ひとまず久美子に着いていく。
1:隼人達とも協力できるかは会って聞いてみたい。できなければ...?
2:早苗だけが悪いわけじゃないのはわかってる、でも...いまは...
[状態]:全身にダメージ(絶大)、疲労(極大)、出血(絶大)、精神的疲労(絶大)、ウィツアルネミテアの力の消失、悲しみと絶望(極大)、喪失感(絶大)
[役職]:ビルダー
[服装]:皇女服
[装備]:
[道具]:基本支給品一色、薬用の葉っぱ@オリジナル、不明支給品0~2、マロロの支給品3つ
[思考]
基本:久美子の願いの手助けをする。ハクを取り戻す。
0:ひとまず久美子に着いていく。
1:隼人達とも協力できるかは会って聞いてみたい。できなければ...?
2:早苗だけが悪いわけじゃないのはわかってる、でも...いまは...
[備考]※ 参戦時期は皇女としてエンナカムイに乗りこみ、ヤマトに対しての宣戦布告後オシュトルに対して激昂した直後からとなります。オシュトルの正体には気付いておりません。
※マロロと情報交換をして、『いまのオシュトルはハクを守れなかったのではなく保身の為に見捨てた』という結論を出しました。
※ウィツアルネミテアの力が破壊神に破壊された為に消失しています。今後、休息次第で戻るかは後続の書き手にお任せします。
※ビルドの『ものづくり』の力が継承されました。いまはこのロワでビルドがやったことが出来るだけですが、今後の展開次第ではもっとできることが増えるかもしれません。
※ブチャラティ、九郎、ライフィセット、梔子と情報交換をしました。
※早苗から、オシュトルに対する悪評を聞きました。
※ウィツァルネミテアは去りましたが、残された残滓を元に、『超常の力』を発動することは出来ます。但し身体には絶大な負荷が掛かります。
※ヴライとの戦闘によって、E-6を中心として、E-5の一部、E-7の一部、D-6の一部、F-6の一部に、破壊の痕跡及び火災が発生しております。
※ 殺し合いの全てを無かったことにしようとする久美子達の計画を知りました。
※マロロと情報交換をして、『いまのオシュトルはハクを守れなかったのではなく保身の為に見捨てた』という結論を出しました。
※ウィツアルネミテアの力が破壊神に破壊された為に消失しています。今後、休息次第で戻るかは後続の書き手にお任せします。
※ビルドの『ものづくり』の力が継承されました。いまはこのロワでビルドがやったことが出来るだけですが、今後の展開次第ではもっとできることが増えるかもしれません。
※ブチャラティ、九郎、ライフィセット、梔子と情報交換をしました。
※早苗から、オシュトルに対する悪評を聞きました。
※ウィツァルネミテアは去りましたが、残された残滓を元に、『超常の力』を発動することは出来ます。但し身体には絶大な負荷が掛かります。
※ヴライとの戦闘によって、E-6を中心として、E-5の一部、E-7の一部、D-6の一部、F-6の一部に、破壊の痕跡及び火災が発生しております。
※ 殺し合いの全てを無かったことにしようとする久美子達の計画を知りました。
【東風谷早苗@東方Project】
[状態]:全身にダメージ(極大)、疲労(極大)、精神的疲労(絶大)、臓器損傷、悲しみ(極大)、脳内にウォシスの蟲が寄生(活動停止)、記憶改竄(修正済)、オシュトルへの不信(修正済)、クオンへの罪悪感(極大)、久美子の提案への不信感(微)、顔面ボコボコ(絶大)
[役職]:ビルダー
[服装]:いつもの服装
[装備]:早苗のお祓い棒@東方Project
[道具]:基本支給品一色、不明支給品0~1、早苗の手紙
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。この『異変』を止める...?
0:ひとまず久美子さんに着いていく。最終的に久美子さんに賛同するかは、まだ決めかねています。
1:クオンさん……
2:ロクロウさん、ヴァイオレットさんは信じたい
3:さっきの人が、ヴライ……。霊夢さんの仇……。
4:ブチャラティ(ドッピオ)さん、信じていいんですよね……?
5:幻想郷の知り合いをはじめ、殺し合い脱出のための仲間を探す
6:ゲッターロボ、非常に堪能いたしました。
7:シミュレータにちょっぴり心残り。でも死ぬリスクを背負ってまでは...
8:魔理沙さん、霊夢さん……。
[備考]
※ 参戦時期は少なくとも東方風神録以降となります。
※ヴァイオレットに諏訪子と神奈子宛の手紙を代筆してもらいました。
※オシュトルからうたわれ世界の成り立ちについて、聞かされました。
※霊夢、カナメ、竜馬と情報交換してます。
※ビルドの『ものづくり』の力が継承されました。いまはこのロワでビルドがやったことが出来るだけですが、今後の展開次第ではもっとできることが増えるかもしれません。
※ブチャラティ、九郎、ライフィセット、梔子と情報交換をしました。
※ウォシスの蟲に寄生されております。その影響で、オシュトルにまつわる記憶が改竄され、オシュトルに対する心情はかなり悪くなっています。今後も、記憶の改竄が行われる可能性は起こりえます。
※記憶の改竄による影響で、オシュトル、ヴァイオレット、ロクロウが殺し合いに乗っていると認識しました。
※ウォシスの蟲が活動停止したため、改竄された記憶が全て偽りだったと認識しました。
※殺し合いの全てを無かったことにしようとする久美子達の計画を知りました。
[状態]:全身にダメージ(極大)、疲労(極大)、精神的疲労(絶大)、臓器損傷、悲しみ(極大)、脳内にウォシスの蟲が寄生(活動停止)、記憶改竄(修正済)、オシュトルへの不信(修正済)、クオンへの罪悪感(極大)、久美子の提案への不信感(微)、顔面ボコボコ(絶大)
[役職]:ビルダー
[服装]:いつもの服装
[装備]:早苗のお祓い棒@東方Project
[道具]:基本支給品一色、不明支給品0~1、早苗の手紙
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。この『異変』を止める...?
0:ひとまず久美子さんに着いていく。最終的に久美子さんに賛同するかは、まだ決めかねています。
1:クオンさん……
2:ロクロウさん、ヴァイオレットさんは信じたい
3:さっきの人が、ヴライ……。霊夢さんの仇……。
4:ブチャラティ(ドッピオ)さん、信じていいんですよね……?
5:幻想郷の知り合いをはじめ、殺し合い脱出のための仲間を探す
6:ゲッターロボ、非常に堪能いたしました。
7:シミュレータにちょっぴり心残り。でも死ぬリスクを背負ってまでは...
8:魔理沙さん、霊夢さん……。
[備考]
※ 参戦時期は少なくとも東方風神録以降となります。
※ヴァイオレットに諏訪子と神奈子宛の手紙を代筆してもらいました。
※オシュトルからうたわれ世界の成り立ちについて、聞かされました。
※霊夢、カナメ、竜馬と情報交換してます。
※ビルドの『ものづくり』の力が継承されました。いまはこのロワでビルドがやったことが出来るだけですが、今後の展開次第ではもっとできることが増えるかもしれません。
※ブチャラティ、九郎、ライフィセット、梔子と情報交換をしました。
※ウォシスの蟲に寄生されております。その影響で、オシュトルにまつわる記憶が改竄され、オシュトルに対する心情はかなり悪くなっています。今後も、記憶の改竄が行われる可能性は起こりえます。
※記憶の改竄による影響で、オシュトル、ヴァイオレット、ロクロウが殺し合いに乗っていると認識しました。
※ウォシスの蟲が活動停止したため、改竄された記憶が全て偽りだったと認識しました。
※殺し合いの全てを無かったことにしようとする久美子達の計画を知りました。
前話 | 次話 | |
戦刃幻夢 ―お前に現実(じごく)を見せてやる― | 投下順 | 所詮、感情の生き物 |
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戦刃幻夢 ―お前に現実(じごく)を見せてやる― | 黄前久美子 | --- |
戦刃幻夢 ―お前に現実(じごく)を見せてやる― | ロクロウ・ランゲツ | --- |
戦刃幻夢 ―お前に現実(じごく)を見せてやる― | クオン | --- |
戦刃幻夢 ―お前に現実(じごく)を見せてやる― | 東風谷早苗 | --- |