「……。ここ、は……」
浜面仕上の意識が戻る。どれだけ気絶していたか、だが、太陽の上り具合からしてそこまで時間は経っていなかったようだ。周囲には溶解して朽ち果てたらしき建物の残骸、飛び散った瓦礫。恐らく破片の衝撃で壊れたらしき、そもそも作動していたかどうかすらわからない電気器具……その残骸の数々
「……ッ!高千穂は……!」
真っ先に脳裏に浮かんだのは、爆発に呑まれた高千穂麗の事だ。あの時自分は爆発の衝撃で飛ばされ、気を失った。広がってる光景こそこの有様であるが、おそらくそこまで遠くには飛ばされていないはず
吹き飛ばされた衝撃で身体を叩きつけられた痛みや、妙な身体のこそばゆさ感こそあるものの、歩けないほどでなはい。立ち上がり、周囲を見渡しながら駆け出す。
吹き飛ばされた衝撃で身体を叩きつけられた痛みや、妙な身体のこそばゆさ感こそあるものの、歩けないほどでなはい。立ち上がり、周囲を見渡しながら駆け出す。
駆けながらエリアを巡るもそこかしこに広がるのは廃墟と化した街並み、辛うじて形を保っている建物。
まるで戦禍の後の街並みという有様であり、焦げた匂いが街中を漂っている。だが、今はひたすら高千穂の行方を探して走るしかなかった
まるで戦禍の後の街並みという有様であり、焦げた匂いが街中を漂っている。だが、今はひたすら高千穂の行方を探して走るしかなかった
駆け抜けても駆け抜けても広がっているのは廃墟。だが目を横に向ければ――そこにあったのは誰かだったはずの黒焦げた肉塊。麦野の攻撃に巻き込まれたのか、それとも既に誰かに殺されたものだったのか
「……!」
だが、死んでいたのが誰だったのかはわかってしまった。僅かに残り、焦げ付いていなかった亀甲柄の衣。――錆兎のものだと
(……すまねぇ)
巻き込まれて死んだのか、あの時襲ってきた女に殺されたのか、浜面にはわからなかった。ただ、歯を食いしばり、悔しさを胸にすることしか出来なかった
少し進めば、最初に女に襲われた時の場所。運良くあの黒いバイクは被害を受けていない。だが、麦野と遭遇してしまった以上、バイクがあったとしても不安でしか無い。生半可な乗り物ではすぐにぶち抜かれてジ・エンドである
「………? これ、は……?」
ふと目を向ければ。バイクの一部分が蠢いているように見えた。まるで生物のように。そもそも生物的に蠢くバイクなんていくら学園都市でも見たことがない代物だ
だが、その御蔭で一つだけ案が浮かんだ。思い切った話ただの賭けだ。だが、麦野との戦いはいつもいつもギリギリなところでの綱渡りだ。だから……
だが、その御蔭で一つだけ案が浮かんだ。思い切った話ただの賭けだ。だが、麦野との戦いはいつもいつもギリギリなところでの綱渡りだ。だから……
「なあ、もし俺の言葉がわかるんだったら―――」
○ ○ ○
時は少し遡る
「………私、まだ、生きて……」
燃え盛る廃墟の中で、高千穂麗は意識を取り戻す。広がっているのは余りにも殺風景
「……浜面はっ!?」
あの時助けるために突き飛ばした彼は無事なのだろうか。瓦礫の直撃は避けたものの、衝撃波で吹き飛ばされたのはどちらも同じ。
「……ッ! 無事で、いてくれればいいのだけれど――」
「ああ。あたしも同じさ。死んじまったら殺せねぇからな」
「――なっ!?」
「ああ。あたしも同じさ。死んじまったら殺せねぇからな」
「――なっ!?」
高千穂が痛みを我慢してでも浜面を探しに行こうとした途端、背後から聞き覚えるのある憎たらしい声。だが気付いた時には反応するには遅すぎる
高千穂の身体に大振りの蹴りという名の衝撃が襲う。その人間離れした蹴りは高千穂の身体を瓦礫を突き破りながらボールのように飛ばし、地面に2・3回バウンドし、最後に残っていた瓦礫の壁に叩きつけられ、止まる。所持していた二丁拳銃は蹴られた弾みに手から外れ瓦礫の中に突き刺さる
高千穂の身体に大振りの蹴りという名の衝撃が襲う。その人間離れした蹴りは高千穂の身体を瓦礫を突き破りながらボールのように飛ばし、地面に2・3回バウンドし、最後に残っていた瓦礫の壁に叩きつけられ、止まる。所持していた二丁拳銃は蹴られた弾みに手から外れ瓦礫の中に突き刺さる
「が……あ゛ッッ………!!」
叩きつけられと同時に、口から血反吐が飛び散る。蹴られた際に骨が何本かへし折れる音が聞こえた
高千穂が起き上がる暇もなく、自分の首を片手で持ち上げ睨みつける麦野沈利の姿が高千穂の瞳に映し出されていた
高千穂が起き上がる暇もなく、自分の首を片手で持ち上げ睨みつける麦野沈利の姿が高千穂の瞳に映し出されていた
「み~つけた……ってなぁ!」
「く……ぅ……ッ!」
「く……ぅ……ッ!」
麦野本人としては少々手加減しているつもりでの行為だろうが、少しでも力が入ればそのまま高千穂の首をへし折りそうな程の腕力。どう考えても手加減が手加減になっていない
「てめぇも運がねぇなぁ? あんな無能力者と組んだばっかりにあたしに狙われてよぅ?」
「あいにく、武装弁護士高千穂家の出として、他人から恨みを買うのは色々と慣れていますわ」
「へぇ。そのザマで減らず口叩けるぐらいの根性はあるってか」
「あいにく、武装弁護士高千穂家の出として、他人から恨みを買うのは色々と慣れていますわ」
「へぇ。そのザマで減らず口叩けるぐらいの根性はあるってか」
この危機的状況下でも凛とした目で高千穂は麦野の邪悪な形相を見つめる。そんな膠着状態に陥るかと思いきや背後からやってくる人影
「あら、そっちは済んだかしら?」
「……!」
「……てめぇか」
「……!」
「……てめぇか」
やってきたのはベルベット。その業爪に付着しているのは返り血。面倒くさそうに顔を向ける麦野とは対照的に、ベルベットの返り血から錆兎が殺されたことをなんとなく察してしまい、悔しさに思わず食いしばる高千穂
「……とりあえず一人は殺った。で、浜面除けば残ってるのはこいつかしら?」
「今ぶち殺すか嬲ってから浜面の前でぶち殺すかは今決めるところだったんだがな、てめぇが横槍入れなきゃな」
「横槍を入れるつもりはなかったんだけど。……まあ、どうせ殺すにしても、まだ殺していないのならそれはそれで都合は良いわ」
「……チッ」
「今ぶち殺すか嬲ってから浜面の前でぶち殺すかは今決めるところだったんだがな、てめぇが横槍入れなきゃな」
「横槍を入れるつもりはなかったんだけど。……まあ、どうせ殺すにしても、まだ殺していないのならそれはそれで都合は良いわ」
「……チッ」
ベルベットの意図を察したようで、舌打ちしながらも高千穂の身体を離す。離されたは良いが先のダメージや、この状況で二人に囲まれて下手に動ける状況でもない高千穂。そんな高千穂の、なぜ自分を殺すのを後回しにした疑問に対しベルベットが問いかける
「私に、なんのようですの……?」
「別に。ただ情報が欲しいだけよ。……そうね、どうせなら今後の事を含めて知ってること全部吐いてもらったほうが早いかしら? 武偵のこととか、ね」
「仲間のことを吐けと私に言ってるのかしら? 残念ですが私があかりさん達を裏切るなんて――」
「別に。ただ情報が欲しいだけよ。……そうね、どうせなら今後の事を含めて知ってること全部吐いてもらったほうが早いかしら? 武偵のこととか、ね」
「仲間のことを吐けと私に言ってるのかしら? 残念ですが私があかりさん達を裏切るなんて――」
拒絶の意思を言葉で表明した高千穂の返事に間を開かず、そっけない態度でベルベットが軽く業爪を振るい、高千穂の眼前で止まる
「へぇ。動揺しないのね。流石の武偵サマね」
「恐怖を与えれば命乞いして裏切ると思いまして? あかりさんの友達として、高千穂家の一人として、何より武偵の一人として、あなたのような極悪非道の輩に屈するなどありえないわ」
「……」
「あなた達にとっては馬鹿らしいとは思うでしょうね、人を殺すことに何も思わないあなた達にとって、自分の力だけでなんとか出来ると思っている方は特に」
「……で」
「自分勝手なだけでは世界は回らない。誰かが支えてくれるから自分の過ちを止めてくれる。あかりさんとの出会いで私は変わることが出来た。あなた達の様な、人としての理を軽んじて、ただ自分の欲望だけで人を殺すような、あなた達に――」
「……こいつに任せときゃぺらぺらぺらぺら勝手に余計なことほざき―――?!」
「恐怖を与えれば命乞いして裏切ると思いまして? あかりさんの友達として、高千穂家の一人として、何より武偵の一人として、あなたのような極悪非道の輩に屈するなどありえないわ」
「……」
「あなた達にとっては馬鹿らしいとは思うでしょうね、人を殺すことに何も思わないあなた達にとって、自分の力だけでなんとか出来ると思っている方は特に」
「……で」
「自分勝手なだけでは世界は回らない。誰かが支えてくれるから自分の過ちを止めてくれる。あかりさんとの出会いで私は変わることが出来た。あなた達の様な、人としての理を軽んじて、ただ自分の欲望だけで人を殺すような、あなた達に――」
「……こいつに任せときゃぺらぺらぺらぺら勝手に余計なことほざき―――?!」
高千穂の言葉の途中から苛つき始めた麦野が思わず手を出そうとした瞬間――
高千穂の左腕が、何の躊躇いもなく振るわれたベルベットの業爪によって切り裂かれ、向こう側に血飛沫を撒き散らし飛んでいた
「ツ゛ツ゛ツ゛ツ゛ツ゛ツ゛ツ゛ツ゛ツ゛ツ゛ツ゛ツ゛――――ッ゛!?」
「……ねぇ、あなたはその『人としての理』のせいで大切な人を奪われた事、ある?」
「……ねぇ、あなたはその『人としての理』のせいで大切な人を奪われた事、ある?」
苦悶の表情を浮かべ激痛に耐えながら裂かれた右腕から血を吹き出させる高千穂を、ベルベットは誰も見たことがない冷たい表情で見つめ、言葉を投げかけている
「……私はね、『そんなもの』の為に弟を、信じていたはずの男に奪われたのよ」
最早別人だった。それを傍目から見た麦野からしても。怒りと冷たさが入り混じった無茶苦茶などす黒さを、暗部を行きている麦野沈利からしても確かに感じられた
そして麦野の態度を察したベルベットが翻し、麦野に声を掛ける
そして麦野の態度を察したベルベットが翻し、麦野に声を掛ける
「そいつ、もう好きにしていいわよ」
「……そうかよ」
「何? 『傷物』もダメだったかしら?」
「別にそこまでは言ってねぇぞ。そもそもこいつに関しちゃてめぇが殺しても良かったんだがな」
「元々はそのつもりだったわよ。気が変わっただけ」
「そうかよ……そんじゃま、てめぇは―――ブ・チ・コ・ロ・シ・だ」
「……そうかよ」
「何? 『傷物』もダメだったかしら?」
「別にそこまでは言ってねぇぞ。そもそもこいつに関しちゃてめぇが殺しても良かったんだがな」
「元々はそのつもりだったわよ。気が変わっただけ」
「そうかよ……そんじゃま、てめぇは―――ブ・チ・コ・ロ・シ・だ」
高千穂に興味がないと言わんばかりに背を向けたベルベット。そしてそんなベルベットのことは一旦忘れて邪悪な笑みを高千穂に向ける
麦野の目線からは、目を伏せ、少しばかり衰弱しているように見えう高千穂。
麦野の目線からは、目を伏せ、少しばかり衰弱しているように見えう高千穂。
「……」
「何か言い残すことはねぇか、遺言の一つぐらいは遺してもかまわねぇぞ?」
「何か言い残すことはねぇか、遺言の一つぐらいは遺してもかまわねぇぞ?」
この言葉は挑発及び後々浜面への精神的動揺を誘うための土産物だ。どっちにしろ殺す。嬲って殺すにしても、一瞬で殺すにしても
「……じゃあ、一つ。訂正して欲しい事があるの」
「……は?」
「……は?」
だが、顔を上げた高千穂のその表情は絶望してる人間の顔ではなく
「――浜面仕上は、私の下僕は、約立たずなんかじゃ―――ないって事よ!」
「高千穂ぉぉぉぉぉっっっ!!!」
「……何ぃ!?」
「高千穂ぉぉぉぉぉっっっ!!!」
「……何ぃ!?」
男の叫び声が聞こえる。ベルベットも麦野も、高千穂もその方向を向けば、見えたのはバイクに乗った浜面仕上
(あいつの乗っている……姿が違う?)
ベルベットが気になっていたのは浜面が乗っている乗り物の種類だ。ベルベットがバイクという概念を知らないためその様な認識ではあるが、明らかに載っていた乗り物――バイクの真横に一人分の座席が追加されている。所謂サイドカーと呼ばれるものでかつ、そのサイドカーの助手席に乗せられていた太鼓のようなもの
浜面の急な運転からか太鼓は助手席から溢れ、跳ねながらこちら側に向かってくる
浜面の急な運転からか太鼓は助手席から溢れ、跳ねながらこちら側に向かってくる
「……やってきたか浜面ァァァァ!!!!」
麦野は浜面の姿を見るなり『原子崩し』によるビームを射出。だが歓喜によるものなのか怒号によるものなのかビームを無茶苦茶な方向に射出している
「ちょうどいいぜぇ浜面ぁ! この女の前でてめぇをぶっ殺して――」
「待ちなさい! あの太鼓……!」
「待ちなさい! あの太鼓……!」
ベルベットが嫌な予感を察知して麦野の抑えようとするが、その時にはビームが太鼓を貫き、弾けた太鼓より大量の光弾がばら撒かれる
「……ちぃっ! やってくれたわね!!」
麦野の近くにいた為、光弾を捌く事に集中せざる得ないベルベット。更に無闇矢鱈に麦野が『原子崩し』を発動したことで砕けた瓦礫等による煙幕が発生。視界が悪くなる
「どこだぁ!! どこだぁ浜面ぁ!!」
等の麦野は最早浜面を殺すことしか考えていない。故に――誰かに足を掴まれた
「――!?」
「足元掬われるとはこういう事、ですわね――」
「足元掬われるとはこういう事、ですわね――」
掴んでいたのは高千穂麗。先の騒ぎの内に切断された左腕を止血、残った右手で麦野沈利の足を掴んでいたのだ
「てめぇ――な、あ――!?」
「二度あることは三度あるってやつだ、なぁ麦野!」
「二度あることは三度あるってやつだ、なぁ麦野!」
それに気付いた時には既に遅し。真正面にはバイクに乗った浜面仕上が煙より姿を現し、バイクの速度そのままに、麦野の顔面に拳を叩き込む。拳を叩き込まれた衝撃で遠くに飛ばされ、地面に小さなクレーターを作る程の衝撃を叩きつけられた
「はまづらぁぁぁぁ! はまづらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
だがそんな衝撃なんぞ知らないと、何本か骨が折れていることすら無視してビームを乱発。だが先の煙などの要因もあって最早ただの災害のごとく能力を振りまく暴獣と化していた
○ ○ ○
煙に紛れビームが未だ飛び交うが、そのビームは明後日の方向に向かうばかり
「……えっと、その。すまねぇ。腕の事とか、錆兎の事とか」
「………いいえ。まあ成り立てとしては上出来よ、浜面」
「………いいえ。まあ成り立てとしては上出来よ、浜面」
一応に高千穂麗を見つけ助け出すことに成功した浜面であったが、その表情はあまり優れない。錆兎の死、高千穂麗の左腕、その事実はある程度浜面の心に傷を残すには十分である
だが、そんな浜面の心情を察してか、素直に感謝と称賛の言葉を呟く高千穂であった
だが、そんな浜面の心情を察してか、素直に感謝と称賛の言葉を呟く高千穂であった
「それで、これからは?……なんて言っても、逃げる以外の道はないでしょうけど。それとそのバイク、確そんな助手席無かったはずでは」
「こっちもよくわかってねぇんだ。しかもなんかこっちと意思疎通出来るらしいし。まあ、万が一俺がやられても高千穂だけは逃がすようには言ってるし、ちゃんと高千穂に懐くようにはなってるさ」
「それもうほとんど小動物の類では? それと浜面、いくら冗談でもそんな事を言っては――」
「こっちもよくわかってねぇんだ。しかもなんかこっちと意思疎通出来るらしいし。まあ、万が一俺がやられても高千穂だけは逃がすようには言ってるし、ちゃんと高千穂に懐くようにはなってるさ」
「それもうほとんど小動物の類では? それと浜面、いくら冗談でもそんな事を言っては――」
なんて言いながら高千穂は助手席に、浜面は運転のためにバイクに乗った瞬間。ボンっという音が近くで鳴る
「……早くここから脱出する必要がありますわ。……浜面?」
麦野が冷静さを取り戻したと考えた高千穂が浜面を急かすも、浜面は何故か反応しない
「浜面、何をぼーっとしてるの、早くここか、ら――――?」
改めて声を掛けるも、浜面は反応しない。反応してくれない。そして、浜面仕上の身体は何の予兆もなくバイクより地面に崩れ落ちた
「はま、づら?」
――浜面仕上から血溜まりが生まれていた。そして、麦野沈利の発射した『原子崩し』のビームが浜面に直撃し、その衝撃と炎上で飛び散った瓦礫の破片が高千穂の頭にぶつかり彼女が気絶させる
「――あ」
薄れゆく意識の中で、彼女が最後に聞いたのは、浜面仕上だったものが燃え盛る音、勝手に走り出す意志を持ったバイクの稼働音、そして
「あははははっ!! あははははははっっっ!」
浜面だった燃えカスに何度も何度もビームを浴びせ、悪魔のごとく邪悪に嘲笑う、麦野沈利の姿であった
【浜面仕上@とある魔術の禁書目録 死亡】
○ ○ ○
「あたしに歯向かった報いだ浜面ぁ! てめぇが余計なことしなきゃ滝壺が死ぬことも、あたしにこうやって無様に殺されることも無かったのによぉ!!! あははははっ!!!!」
最早燃えカスが燃えカスですら無くなっても、麦野沈利の狂喜は止んでいなかった、何度も何度もビームを照射していた。チリ一つにすら目を向け、丹念に、丁寧に
そして、その塵すら無くなった時、麦野沈利の狂喜は沈静化したのだ
そして、その塵すら無くなった時、麦野沈利の狂喜は沈静化したのだ
「……ふぅ」
「人が苦労してたってのに、そっちはご満悦のようね」
「人が苦労してたってのに、そっちはご満悦のようね」
賢者モードに入っていた麦野の背後より、所々服装が黒ずんだベルベットが姿を現す
「いや何、やぁっと浜面殺れたんだ。嬉しすぎて多少周りが見えなくなっちまうのはご愛嬌ってやつだ」
「……良かったじゃないの。正直羨ましかったり」
「そりゃ皮肉か?」
「半分本音よ。アンタのことは気に入らないけど」
「……その言葉は聞かなかったことにしてやるよ」
「そのぐらいに気遣いできるならせめて無闇矢鱈にビームを発射するのは自重して欲しいわ」
「やっぱてめぇは気に入らねぇ」
「それはお互い様」
「……良かったじゃないの。正直羨ましかったり」
「そりゃ皮肉か?」
「半分本音よ。アンタのことは気に入らないけど」
「……その言葉は聞かなかったことにしてやるよ」
「そのぐらいに気遣いできるならせめて無闇矢鱈にビームを発射するのは自重して欲しいわ」
「やっぱてめぇは気に入らねぇ」
「それはお互い様」
すべてが終わり、それなりに機嫌のいい麦野と会話が弾むベルベット。お互い睨み合いの関係ではあるものの、お互いは気付かずそれなりに距離が近づいた事には気付かない
「どうやらもう終わってたようね」
「……夾竹桃、遅かったじゃない。で、こいつは何者?」
「……夾竹桃、遅かったじゃない。で、こいつは何者?」
そんな空気に水を差すか、それとも丁度いいのか、やってきたのは夾竹桃と、白い衣装の男
「話が早いわよ。こっちは変な流星群のせいで足止め食らってたっていうのに。ああ、彼は安倍晴明。……訳あって『休戦協定』を結んだの」
「安倍、晴明だぁ……?」
「安倍、晴明だぁ……?」
○
夾竹桃曰く、あの襲撃の最中、夾竹桃はこの安倍晴明という男と単独で対峙する羽目となり、交渉の末なんとか休戦協定まで持ち込んだとのこと。元々浜面仕上らはこの男の獲物であったこともあり、夾竹桃は夾竹桃で別の意味骨が折れるぐらいには苦労していたとのこと
「そう。あんたもそれなりに苦労していたということね」
「他人事みたいに言われても困るんだけど」
「その貴様が一番他人事のように見えるがな、女郎蜘蛛。貴様の提案が無ければ貴様ら諸共殺しても構わなかっのだぞ?」
「……ナメてんじゃねぇぞおっさん」
「やめなさい麦野。協定相手に失礼よ。それに浜面は殺れたようだし、それであなたは納得じゃない?」
「……けっ。だが、てめぇのお陰で浜面を殺れたのは事実だ。……今回だけだクソ野郎」
「他人事みたいに言われても困るんだけど」
「その貴様が一番他人事のように見えるがな、女郎蜘蛛。貴様の提案が無ければ貴様ら諸共殺しても構わなかっのだぞ?」
「……ナメてんじゃねぇぞおっさん」
「やめなさい麦野。協定相手に失礼よ。それに浜面は殺れたようだし、それであなたは納得じゃない?」
「……けっ。だが、てめぇのお陰で浜面を殺れたのは事実だ。……今回だけだクソ野郎」
少しばかりの情報交換の後、夾竹桃ら三人は当初の目的通り渋谷駅へ、そして夾竹桃らと休戦協定を結んだ晴明はまずは魔法学園へ向かう形となった
結局の所逃げられた高千穂という女の対処は結果として晴明が担当することになった。麦野としては少々気に入らない所ではあったが、浜面を殺せたという点を含め機嫌が良い方であり、夾竹桃に「無闇に手を出せばこちら側が無事では済まない」と言われたことで、一応は引き下がる形となった
念の為夾竹桃は「絹旗とフレンダ、垣根帝督には手を出さないで」と晴明に忠告はしておいたのだが
結局の所逃げられた高千穂という女の対処は結果として晴明が担当することになった。麦野としては少々気に入らない所ではあったが、浜面を殺せたという点を含め機嫌が良い方であり、夾竹桃に「無闇に手を出せばこちら側が無事では済まない」と言われたことで、一応は引き下がる形となった
念の為夾竹桃は「絹旗とフレンダ、垣根帝督には手を出さないで」と晴明に忠告はしておいたのだが
協力関係ではなく休戦協定。邪魔者が片付くまでのタイムリミットの先延ばしでしか無い
『アイテム』は武偵、残る元アイテム関係者と第二位、そしてオスカー・ドラゴニアと『ライフィセット』。安倍晴明はゲッターチーム
残る邪魔者が片付いたその時、待ち受けるのは、ただの狂争であることに、変わりはない
『アイテム』は武偵、残る元アイテム関係者と第二位、そしてオスカー・ドラゴニアと『ライフィセット』。安倍晴明はゲッターチーム
残る邪魔者が片付いたその時、待ち受けるのは、ただの狂争であることに、変わりはない
○
(……何はともあれ、麦野の目的の一つが解決したのは僥倖ね)
駅に向かう傍ら、夾竹桃は思考する。麦野が浜面を殺した事である程度は機嫌が良く、比較的こちらの意見に耳を傾けてくれるようにはなっている。ベルベットはまだ警戒を解かないものの現状に何ら問題はない
別に二人の目的の先に、夾竹桃の目的は関係ない。『鷹捲』を手に入れ、無事脱出する。そのために利用できるものを利用する。いや……新しい目的が出来た
(……ゲッター線。ゲッター線、ねぇ)
安倍晴明より享受された未知なる毒『ゲッター線』。人類にのみ利を与える猛毒。進化をもたらす存在
だが、夾竹桃には進化というものに興味など無い。進化しすぎた果てにあるものは碌なものではないのだから。然し――
だが、夾竹桃には進化というものに興味など無い。進化しすぎた果てにあるものは碌なものではないのだから。然し――
(……手に入れたい。どうやってでも、ゲッター線を! ふふふ、ふふ、あはははははっっっっ)
どうしても、その『毒』を手に入れたい。図書館でゲッター線に関する情報を得ればいいが、最悪晴明が狙っているゲッターチームの誰かから情報を抜き取るのも一つの手だ
だが、毒師は気づくことはない。彼女もまた、深淵の奥底へ足を踏み入れようとしてることに
――その顔は、明らかにゲッター線に魅了された者達と同じ、狂気を含めた笑みを浮かべていた
だが、毒師は気づくことはない。彼女もまた、深淵の奥底へ足を踏み入れようとしてることに
――その顔は、明らかにゲッター線に魅了された者達と同じ、狂気を含めた笑みを浮かべていた
○ ○ ○
(……余りにも馬鹿な小娘共だ。あの麦野なる女は、この手であの少年を殺したなどと思いこんでいるのだろうな)
夾竹桃達と離れ、魔法学園へと向かう道中、安倍晴明は不敵に笑う
実は浜面仕上の死はこの安倍晴明によって仕組まれていた出来事であった。わざと見失い、浜面仕上の服の中に符を忍ばせる。機を見て符を爆発させる予定であったが、夾竹桃との接触により予定変更をせざる得なかった
だからこそ、夾竹桃らを利用するため、符の発動タイミングをずらし、麦野沈利がとどめを刺したかのように錯覚させたのだ。半分天運を任す形となったが、たとえ失敗しても小娘達ごと始末してしまえばいいとそこは割り切っていた
実は浜面仕上の死はこの安倍晴明によって仕組まれていた出来事であった。わざと見失い、浜面仕上の服の中に符を忍ばせる。機を見て符を爆発させる予定であったが、夾竹桃との接触により予定変更をせざる得なかった
だからこそ、夾竹桃らを利用するため、符の発動タイミングをずらし、麦野沈利がとどめを刺したかのように錯覚させたのだ。半分天運を任す形となったが、たとえ失敗しても小娘達ごと始末してしまえばいいとそこは割り切っていた
休戦協定という形にはなったものの、夾竹桃にわざと教えたゲッター線の知識という『毒』は確実に効いている。たかが小娘ごときにゲッター線の真理を理解できるなどとは思えない。精々どこかで真理に呑まれ自爆するのが当然の結末だ。
(毒師に殺すことを咎められたあの三人のうちの一人、『未元物質』だったか。……その力、手に入れたい所だが)
だが、仮にも口約束を結んだ部類、下手に動けば先回りの策を取られる可能性も無きに非ず
(……まあいいだろう。もとより、獲物を逃すつもりなど無いのだからな)
残った獲物、高千穂麗。結果だけ言えば毒師に殺害を頼まれる形ではあったが、あれも結果的には自分の獲物の一人。どちらにしろ逃がすつもりは毛頭ない
(踊るが良い小娘共、貴様らは我の掌の内で蠢く蛆虫に過ぎんのだからな)
全てが実った時、あの毒師の持っている素養格付とやらも奪う。勿論小娘共も殺す
陰陽師は、まるで盤上を操る魔王が如く、笑っていた
陰陽師は、まるで盤上を操る魔王が如く、笑っていた
【D-2/一日目/早朝】
※Lucidの銃は瓦礫の海に呑まれ誰にも気付かれず放置されています
【ベルベット・クラウ@テイルズオブベルセリア】
[状態]:健康
[服装]:いつもの服装
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考]
基本:他の参加者共を喰らって、主催共を喰らい、復讐のための力を貯める
1:夾竹桃、麦野沈利と共に行動する
2:ライフィセットの名を騙る『悍ましい何か』は私の手で殺す
3:あの時戦った対魔士(オスカー)は殺す
4:牢獄で会った女(マギルゥ)に関しては保留
5:夾竹桃の提案に乗りまずは紅魔館(の図書館)に向かう
[備考]
※牢獄でのオスカー戦後からの参戦です
※3人でアイテムを結成しました
[状態]:健康
[服装]:いつもの服装
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考]
基本:他の参加者共を喰らって、主催共を喰らい、復讐のための力を貯める
1:夾竹桃、麦野沈利と共に行動する
2:ライフィセットの名を騙る『悍ましい何か』は私の手で殺す
3:あの時戦った対魔士(オスカー)は殺す
4:牢獄で会った女(マギルゥ)に関しては保留
5:夾竹桃の提案に乗りまずは紅魔館(の図書館)に向かう
[備考]
※牢獄でのオスカー戦後からの参戦です
※3人でアイテムを結成しました
【麦野沈利@とある魔術の禁書目録Ⅲ】
[状態]:ダメージ(中)、少しばかり機嫌がいい
[服装]:いつもの服装(ボロボロ)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考]
基本:『願いを叶える力』とやらを手に入れる
1:気に食わないが、夾竹桃、ベルベットとともに行動する
2:絹旗とフレンダも見つけたら必ず殺す
3:夾竹桃の提案に乗りまずは紅魔館(の図書館)に向かう
[備考]
※アニメ18話、浜面に敗北した後からの参戦です
3人でアイテムを結成しました
[状態]:ダメージ(中)、少しばかり機嫌がいい
[服装]:いつもの服装(ボロボロ)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考]
基本:『願いを叶える力』とやらを手に入れる
1:気に食わないが、夾竹桃、ベルベットとともに行動する
2:絹旗とフレンダも見つけたら必ず殺す
3:夾竹桃の提案に乗りまずは紅魔館(の図書館)に向かう
[備考]
※アニメ18話、浜面に敗北した後からの参戦です
3人でアイテムを結成しました
【夾竹桃@緋弾のアリアAA】
[状態]:健康、ゲッター線に魅入られてる(小)
[服装]:いつものセーラー服
[装備]:オジギソウとその操作端末@とある魔術の禁書目録Ⅲ、胡蝶しのぶの日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、シュカの首輪、素養格付@とある魔術の禁書目録Ⅲ
[思考]
基本:間宮あかりの秘毒・鷹捲とゲッター線という未知の毒を入手後、帰還する
1:ベルベット、麦野と共に行動
2:紅魔館(の図書館)に向かう。首輪の解析は図書館到着後
3:神崎アリア及び他の武偵は警戒
4:ゲッター線の情報を得るためにゲッターチームから情報を抜き取ることも考慮
[備考]
※あかりとの初遭遇後からの参戦です
※3人でアイテムを結成しました
※晴明からゲッター線に関する情報を入手しました
[状態]:健康、ゲッター線に魅入られてる(小)
[服装]:いつものセーラー服
[装備]:オジギソウとその操作端末@とある魔術の禁書目録Ⅲ、胡蝶しのぶの日輪刀@鬼滅の刃
[道具]:基本支給品、シュカの首輪、素養格付@とある魔術の禁書目録Ⅲ
[思考]
基本:間宮あかりの秘毒・鷹捲とゲッター線という未知の毒を入手後、帰還する
1:ベルベット、麦野と共に行動
2:紅魔館(の図書館)に向かう。首輪の解析は図書館到着後
3:神崎アリア及び他の武偵は警戒
4:ゲッター線の情報を得るためにゲッターチームから情報を抜き取ることも考慮
[備考]
※あかりとの初遭遇後からの参戦です
※3人でアイテムを結成しました
※晴明からゲッター線に関する情報を入手しました
【安倍晴明@新ゲッターロボ】
[状態]:健康
[服装]:いつもの服装
[装備]:ハクの鉄扇@うたわれるもの 二人の白皇
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2、田中あすかの首輪。
[思考]
基本方針:闘争と混乱を愉しむ。
0:黒平安京、早乙女研究所、魔法学園を中心に行動する。
1:ゲッターチームを探し出し殺す。
2:陰陽術やゲッター線以外の異能に興味。
3:残った獲物(高千穂麗)は殺す
4:垣根帝督の未元物質を手に入れたい所
5:休戦協定が解けたその時、あの小娘共を殺し、素養格付を手に入れる
[備考]
※参戦時期は黒平安京で竜馬たちに負けた後です。
[状態]:健康
[服装]:いつもの服装
[装備]:ハクの鉄扇@うたわれるもの 二人の白皇
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2、田中あすかの首輪。
[思考]
基本方針:闘争と混乱を愉しむ。
0:黒平安京、早乙女研究所、魔法学園を中心に行動する。
1:ゲッターチームを探し出し殺す。
2:陰陽術やゲッター線以外の異能に興味。
3:残った獲物(高千穂麗)は殺す
4:垣根帝督の未元物質を手に入れたい所
5:休戦協定が解けたその時、あの小娘共を殺し、素養格付を手に入れる
[備考]
※参戦時期は黒平安京で竜馬たちに負けた後です。
○ ○ ○
「いや、何が一体超どうしてこうなったんすか……」
眼前に広がる、公園だったエリアの惨状に、絹旗最愛は呆然と立ち尽くしていた
ただでさえついさっき向こう側のエリアで発生していた謎の流星群に目を取られてしまって足止めを食らっていたというのに、更に進んだら公園がこの惨状
ただでさえついさっき向こう側のエリアで発生していた謎の流星群に目を取られてしまって足止めを食らっていたというのに、更に進んだら公園がこの惨状
「……なんかだ超まずそうな予感が」
どう考えても『このぐらいの事ができる参加者』がいるという証拠。麦野や第二位以外にもこんな化け物がいるなんて流石に笑えなくなってきた
「さっさとこっからトンズラして……って?」
などと考えていれば、向こう側から走ってきたのはサイドカー付きのバイク。だがバイクの方には誰も載っておらず、サイドカーには、未だ目を覚まさぬ左腕が欠損した少女が一人。そしてバイクが自分の前で動きを止める。まるでこのバイクがこちら側を見定めるかのごとく
「……ん」
左腕のない少女が目を覚ます。朝日が差す早朝。この様な場所で無ければ寝起きには十分であったはず。そして
「……あれ、私? はま、づらは……?」
「え……?」
「え……?」
その金髪の少女から出た浜面の名に、絹旗最愛は思わず思考を止める事となる。そして――
第一回目の死亡者放送が流れたのは、この出来事の――直後であった
第一回目の死亡者放送が流れたのは、この出来事の――直後であった
【C-3/一日目/早朝】
【絹旗最愛@とある魔術の禁書目録Ⅲ】
[状態]:健康
[服装]:いつもの服装(ボロボロ)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考]
基本:必ず主催はぶん殴らないと気がすまない
1:そこのあなた、どうして浜面の名前を……
2:浜面とカナメとかいう人を探す
3:浜面がいるかもしれないので「アイテム」アジトへ向かう
4:シュカの事が心配
[状態]:健康
[服装]:いつもの服装(ボロボロ)
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考]
基本:必ず主催はぶん殴らないと気がすまない
1:そこのあなた、どうして浜面の名前を……
2:浜面とカナメとかいう人を探す
3:浜面がいるかもしれないので「アイテム」アジトへ向かう
4:シュカの事が心配
[備考]
※アニメ18話、猟犬部隊に捕まった後からの参戦です
※アニメ18話、猟犬部隊に捕まった後からの参戦です
【高千穂麗@緋弾のアリアAA】
[状態]:左腕欠損(止血済み)、負傷(中)
[服装]:武偵高の制服
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一色、双眼鏡@現実
[思考]
基本:この殺し合いを止める
0:ここは……はまづらは……?
1:宮比温泉物語に向かう。
2:あかりと早く合流したい(出来れば佐々木志乃あの女よりも)。
3:夾竹桃には最大限の警戒
[備考]
※アニメ版最終回後からの参戦です
[状態]:左腕欠損(止血済み)、負傷(中)
[服装]:武偵高の制服
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一色、双眼鏡@現実
[思考]
基本:この殺し合いを止める
0:ここは……はまづらは……?
1:宮比温泉物語に向かう。
2:あかりと早く合流したい(出来れば佐々木志乃あの女よりも)。
3:夾竹桃には最大限の警戒
[備考]
※アニメ版最終回後からの参戦です
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