「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - わが町のハンバーグ-03b

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「…そろそろじゃな」
時刻は午後7時。本来ならば野球部やラグビー部が練習をしているはずだが、今、人影は一人も見えない。
なぜなら今日は雨。外で行われる部活動の大半は休みとなり、屋内部活動の生徒も比較的早く帰らされる。
それにある理由で今週から放課後の部活動が禁止となっている。じゃあなぜ部活にも入ってない俺がここにいるのかというと…
「あぁ、そろそろ目撃時間だ」

…今回の討伐目的、『羊男』を倒すためだ。今まで戦った中でも最も危険だと思われる。
まぁ店長の話だと、もっと危険なのは沢山いるらしい。赤眼の黒い犬だとか、飛び跳ねるピエロだとか…
尤もそんな危険な都市伝説は他の契約者たちが倒しているらしい。まぁ戦いたくないしそれはそれでいいわけだが。
それならその強い奴に羊男の討伐頼めば、とも思ったが、その強い契約者たちはどうやらほかの学校の人らしい。
つまり他の学校の人間が他の学校に入るのは不自然だから不可能、と。
そして俺の通う学校には能力者はいるにはいるものの場所が限定されてたりで力が発揮できないんだとか。
だからこその俺たち、らしい。どこまで本当かは定かではないが…

「おっ、来たかも知れんぞ。人が向かってきておる」
爺さんに言われてみた先には、雨の中の校庭に不釣り合いなスーツ姿の人影が見えた。

「…あんなやつなのか?もっと野性的なあれかと思ってたんだが…」
正直上半身裸の筋肉男で顔が羊とかいうのを予想してたのだが…
だがそいつが近づいてくるにつれ俺の疑心は消えた。


なぜならそいつの髪の毛は、耳を覆い隠すほどに多く、白く、そしてカールしていたからだ。


「すまないがねそこの君たち。いつも雨の日は人が少ないのはわかるのだがなぜ今日は人がいないのだ?」
校庭に隠れるところなどないので、普通に羊男は俺を見つけ、話しかけてきた。
「なんだか最近物騒でね。放課後の校庭で誰かが生徒を感電させてるってんで、放課後はすぐに帰るようになってんだ」
「ほぅ、そいつは物騒だね。じゃあなぜ君はお爺さんと一緒にここにいるんだい?」
「その感電の原因の人を探しにね」「…ほぅ?」羊男はその白で覆われた首をかしげる。
「で、その感電の原因が羊の頭の人間だっていうからね、好奇心って奴だよ」あまり相手を挑発するものでもないので俺の正体は明かさないでおく。
「へぇ…君はなかなか度胸があるようだ。でもね…
    人は君のような存在を『 無 謀 』って言うんだよ」奴の手が俺の脇腹に向かって伸びていく。銀色の何かとともに…


「ふぅん…まぁ、嘘なんだけどさ」
俺は、その銀の電極板を止める。無論、素手ではなく、作りだした「ハンバーグ」によって。

「俺は、あなたを討伐しに来た」「ほぉ…そうか。君は契約者なのか…じゃぁ… 本 気 で 殺 れ る ね 」
そういうと羊男はスーツの上を一気に破き、筋肉だらけの上半身をあらわにする。その肩には、電極板。
「ちっ…やっぱり筋肉ムキムキかい」「じゃが、生身の人間なら熱が効くじゃろ」
しかしまぁ、なぜ今回はこんなにも冷静でいられるのだろうか。あれほど危険だと言っていたくせに。と思ってる方もいることだろう。

理由は2つ。1つ目は「改造人間といっても元は人間」ということだ。
さっきも言ったように、人間ならば熱が効く。二ノ金みたいな無機物系には効かないハンバーグでも、元が人間なら効かないことはないだろう。
2つ目は、「毛を無くせば相手は電気を出せない」ということである。あくまで予測だが…
先日店長からのヒント、『け』。ここから俺はあることを考えた。羊男の電気の発生源について。
バッテリーがあるとは考え難い。かといって外部の電気を使うということもないだろう。
雨の日ということで雷のエネルギーかとも思ったが、羊男の目撃される日には雷は落ちていないらしい。
そこで自らの毛を利用した自家発電という結論に至ったわけである。昔やったゲームにそんな奴いたしな…

「ほらほらどうした?攻撃してこないのかい?」
電極板を振り回しながら近づいてくる羊男。近づけば感電だろう。
「よし、爺さんあれやるぞ」「やれやれ、もうかい…もう少し遊ばせてもよかろうに」
そして俺はハンバーグを作る。ただ今回はいつものとは違う。
今回の肉はまだ「生」なのだ。力の入れ具合でこういったこともできると知ったときは驚いた。
「はははっ、そんな生肉で私をたおそうというのかい?」「ああ、爺さん頼むぜ」
「任せんしゃい!いくぞ、”肉塊移動”!!」そしてハンバーグは俺の手元から姿を消し、羊男の頭の上に叩きつけられる。

「今じゃ!」「焼き上がれ!”肉塊炎焼”!」

パチン。俺が指を鳴らすと一瞬でハンバーグのまわりを炎が包み、羊男とともに焼き上げていく。
「なぁぁぁ!熱いっ!あついぞぅぉぅぉぅ!」その燃え方は雨の中だということを忘れるくらいに激しく燃え上がっていた。


ハンバーグがうまい具合に焼き上がり、地に伏した羊男は羊とは思えないほどに毛を失っていた。
「わ、私の美しき毛がぁぁ!許さん!貴様らのような下等な人間どもにぃぃぃぃ!」
まずい、キレた。「やれやれ、最近の若者は怒りっぽいのぅ」まぁあんなことされたら誰だってキレるわな。
「愚かなる人間どもよ…私の真の姿を見せてくれる…うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「うぉぅ!?あいつ、まだ本当の姿じゃないってことか!?」

後半へ続く


あらすじ
ハンバーグジジイの契約者は新たな技”肉塊炎焼”によって羊男の毛を燃やし尽くし、勝利したかに思えた。
が、それによって羊男の怒りに火をつけてしまったらしく、男は真の姿を解放した…

「牛…男…?」「あぁそうさ。このミノタウロスこそが私の真の姿!ああ美しき私の肉体よ!」

ミノタウロスって…神話の類だろ…都市伝説ってレベルじゃねーぞ…

「もともと私は牛頭人間として改造されてきた…しかし、そこで実験ミスだよ。
 そのおかげで羊頭となった私は出来損ないとして捨てられたんだよ…あの研究室からね」

「羊男…お前に…そんな過去が…」「私はもう臆病で優雅な羊などではない!いまは獰猛で勇敢な闘牛!猛々しい闘牛なのだよ!」

「私はこの美しい姿を手に入れた。君を倒した後で私を捨てた研究者どもを血祭りにあげてくれよう…」「…じゃあ俺たちが今ここでお前を消す」
「ほぅ…ならばおしゃべりはおしまいにしようか…」羊男もとい牛男はこちらに角を向けて今にも突っ込んできそうな体勢だ。
「食らうがいい!わが角の味を!」そして全速力で突進してくる!
「なっ、早…」「遅い!死ね!タウロス・ハリケーン!!」


……何だ、この高さは。
牛男に吹っ飛ばされたらしく、気が付いたら俺の体は空中に浮かんでいた。腹のあたりから激痛がするがそんなことを考えてられる状況じゃなかった。
上昇しきったらしい俺の体は下降を始める。4階ある校舎をとうに超えている高さからだ。

…俺、死ぬのかな。
もちろん、こんな高さから地面へ叩きつけられたらいくら地面がぬかるんでるとはいえ、即死だろう。
下には笑みを浮かべた牛男と、恐怖に震える爺さんが俺を見て立っていた。
もう、無理かな…そんな事を考え出した矢先、



ふと、爺さんから聞いた話を思い出した。
『契約した都市伝説はな、契約者が死ぬと消えてしまうんじゃよ。
 その都市伝説の一番の理解者が死ぬと、都市伝説は力を失い、語られなくなる――つまり消失してしまうんじゃ』



つまり、俺が死んだら爺さんも死んでしまう。

―――それはいやだ。
無論、俺が死ぬのもいやだ。せめて死ぬなら女の子に泣きつかれながら死にたい。
それに、爺さんにはまださせてやりたいことがある。
びっく○ドンキーの食べ放題もそうだし、この前爺さんと行ってみた喫茶店が新しくハンバーグを始めたとか聞いた。
是非食わせて感想を聞きたいものだ。

そういう未来のこと、というかしたいことを考えると、死ぬ気は自然と消えていた。
そして今俺に出来ることを――――精一杯の力を手にこめ、ハンバーグを生み出す。
しかも、今回は限界までの力で、だ。今日食べたメニューたちの力をすべて使い、特大の肉塊を作り出す。
ちょうど俺の体が収まるくらいの大きさになったところで、俺の体から力が抜ける。

――これで全部か。
俺の力をすべて使って作りだしたハンバーグのベッドに全てを託し、俺は目を閉じた。



「すごい奴じゃわい、こいつは」
そう言ってわしは空から降ってきた巨大なハンバーグに包まれた若者を見る。

奇跡的にも落下の衝撃はほとんどなかったらしく、突進で受けた傷以外に大きな傷は見られない
まさか、ハンバーグをクッション代わりにするとは。正直驚きじゃわい。

「ふぅむ…爺さんが消えないってことは…どうやらその少年は生きているみたいだねぇ」
驚きとも感心ともとれる声をあげる牛男。

「こいつにはまだ触れるな。気絶しとるだけじゃ」「分かっているさ。さすがに気絶した人間を殺るほど卑劣ではないよ」

「じゃあ少年が起きるまでに、爺さんを潰しておこうか。爺さんがいなけりゃハンバーグは私に当たらないしね」
そう言って牛男は突進の体勢をとる。
「ふん、お主はわしをみくびっとるようじゃのぉ。ただ肉を飛ばすだけの爺と思うでないぞ…」

そう、わしの力はこんなものではない。現役の頃はぶいぶい言わせてたもんじゃ。
今こそわしの真の力を解放するとき…!





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