「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 黒猫さんが横切る-01

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黒猫さんが横切る 01


黒い画用紙にコンパスで基準を作って切り抜いたようにその月はあった。
眩しさを覚えた僕は俯きながら、家へと向かう道を歩いた。
今日の僕は良く判らない悪寒の様なものを覚えていた。今日寒いのはきっとそのせいなんだろう。
 そうして眩しくぎらつく月から目を背けて歩いていると、僕の前でビー玉をはめ込んだ黒い何かが横切ったのを見た。
自然と目がその物体を追う。その正体は黒猫だった。黄色に輝く目が僕を見ている。
 黒猫が横切ると良くない事が起こるという。魔女の化身だったり、なんだったり。色々と意味嫌われる物らしい。
この悪寒がこの猫が横切るだけの事であったらいいのにと僕は思いながら、寒さに震える体を抱いて歩を早めた。
 一つ気になる事があった。暗くてよく見えないので勘違いしたのか判らないが、あの猫の尻尾は二つある気がした。

 その夜、夢を見た。
一言で言ってしまえば淫夢だ。僕は十八年生きてきて、まだ数回しか見た事がない。
何も無い空間に僕は裸で立っている。そしてその向かいには少女が。
少女は艶やかな黒髪のツインテールで、僕を見てニコニコと笑っている。空間に極上の墨を落とした様に酷く美しい黒だった。
「おい、お前。名前はなんと言う?」
少女が僕に問う。可笑しな話だ。これは僕の夢で僕の妄想なのに僕を知らないなんて。
取りあえず答えておく、彼女の黄色い目が僕を急かすから。
 「……間崎啓太」
「ケイタか、ふふ、良い響きだ。」
彼女がクスクスと笑っている。とても綺麗な動作だった。
髪まで彼女の神経が通っているみたいに黒いツインテールがくねくねと動く。頭がクラクラする。
 「ケイタ、私はお前が欲しい。お前はとても美味しそうだ……」
 彼女が軽やかなステップで僕に近づく。彼女の動き全てが麻薬のように僕を狂わせる。
彼女が僕の顎を掴んだ。そして段々と唇が近づく、赤く染まる彼女の唇は瑞々しい。
 僕は赤い唇を目に焼き付けてから――目を開けた。

目覚めるとそこはいつもと何も変わらない、六畳のアパートの一室だった。
額には汗。200mを全力疾走したかの如く息が上がっている。
酷く官能的だった。しかし彼女が近づいてからは自分の内側から逃げろと言う信号が鳴り響いていた。
目覚めは悪くない。むしろ良い。唯一問題を挙げるとすれば――僕の体に、さっきの猫が乗っている事だ。
僕の後をつけたのだろうか?ドアは閉まっていた筈だ、つけていたとしても入れる筈が無い。だと言うのにどうして……?
「そんな事は簡単な事だろ?それは私が猫又だからさ」
「あ、猫又ってあの都市伝説とかの……って――猫が喋った!?」
「まあ、性格に言えば化け猫と猫又が混ざったような者なのだがな」
布団から飛び出して、壁側に張り付く。この黒猫は僕の常識を一瞬にして破綻させた。
「ん?何をそんなに驚く事がある、ケイタは私を知っているだろう?……まぁ最も先程はこの様な格好だったがな。」
猫はシルエットを変えて、夢の中の少女になった。今は黒いワンピースを着ているが。
やはり、彼女は綺麗だ。
「ほぉ……お前はこの姿に惚れているのか?」
性悪な黒猫がニヤリと笑う。その姿でも全てが許容できる訳ではなさそうだ。
 「そ、それはまぁ可愛い人だと思いますけど……」
 彼女は唇に指を当てて、僕に近づく。陽炎が揺らめく様に艶やかに。夢が醒めても彼女が麻薬なのは変わらないらしい。
後退りしようにも後ろは壁だ、これ以上下がれない。
 彼女は僕に体をもたれさせて、僕の匂いを嗅いだ。品定めをするように、嘗め回す様に上から下、下から上へと。
「やはりお前は美味しそうだな……そうだ私に考えがある。ケイタ、私と契約しろ」
「は?契約?」
少女が猫の姿に戻る。少し惜しいが今は話を聞くべきだ。
聞きやすいように黒猫の前に座った。この数分でこの状況に慣れる自分が悔しく思う。
 「そう、契約。私とお前が手を取り合って、宿敵を倒して、共通の目的を達成していくぞーって感じだ」
 「宿敵は?」
 「未定」
 「共通の目的は?」
 「その内決める」
 「アナタの目的は?」
 「ま、まぁそれはよいだろう?もうお前は私と関わってしまった。もう金網の中に放り込まれたのだよ」
 何故か話が僕の知らない方へと向かっている気がする。いや、気がするじゃなく完全に向かっている。
こうなる宿命なのだろうか……美少女(猫)と共にするのはありがたいのだが、イマイチツイていない気がする……
「嫌ですよ。そんないきなり現れて、僕が美味しそうだとか契約だとか訳がわからないですよ……」
 そうだ、おかしい。これは二度夢落ちってヤツじゃないのか?まるで漫画か小説かなんだか可笑しな話だ。
 「むう……だからお前はもう金網の中だと言っただろう?ほら、窓の外を見てみろ」
 言われて僕は窓の外を見た。そこに映る風景は無数の白骨死体がアパートへの道を占領して蠢いている様子だった。
 「なっ……!?えっ、な、何これ……!?」
「猫が墓の骨にでも憑いたのだろう。まぁ私狙いだ。いろいろと恨まれているからな。うん」
黒猫は詰まらなく下らない物を言うように答えて、僕の右肩に乗った。重みは無く、右肩を見るとそこには黒猫は居なかった。
“ケイタの体に憑かしてもらったぞ、こちらの方が何かと動きやすいからな。足場が出来てからは外に出る、それまでの辛抱だ”
「え?ちょっ――」
気付くと僕の体は窓から飛び出して骸骨の元へと飛び込んでいった。自分の体が言う事をきかない。何もしていないのに走る。
骸骨が一斉に襲ってくる。視界いっぱいの白が津波のように押し寄せる。その波を片手で――切り裂いた。
数体の骸骨はガラガラと崩れ落ち、数種類の猫が逃げ出した。その事に怯む事無く白い波は押し寄せる。
次々骨を切り裂く。途中で野良犬が一本の骨を拾っていった。さほど驚く様子も無かった。そしてようやくある程度の空間が出来た。
“ご苦労ケイタ、もういいぞ”
そういって猫は僕の体から飛び出した。それと同時に溜まり溜まった疲労が僕の体を襲った。
「うるさい奴らだ……私は細かいのが嫌いでな、一気に片付けるか」
猫の姿が変わる。先程の少女に化ける時とは違って、毛を逆立ててその姿が何十倍になり体の輪郭が歪んで見える程の気を纏い、顔は悪鬼に取り付かれたような恐ろしい顔をしていた。
圧倒的だった。先程まで脅威に見えたあの白い波は恐れをなして我先と言わんばかりに逃げ出している。それもそうだ、石ころが核ミサイルに立ち向かっても勝ち目が無い。
そして、ミサイルは発射された。

「ケイタ、大丈夫か?」
壁にもたれかかって休憩する僕に、一瞬にして骨たちを破壊した彼女が僕に近づいてきた。
「はい……凄く疲れましたけど大丈夫です……」
「そうか、それは良かった。」
答えると黒猫は僕の膝の上に乗った。
「……契約しますよ」
「ん?どうしたケイタ?」
「だから、こんな事が起こるなんて僕だけじゃ耐えられないから、契約しますよ」
猫は僕の膝の上で丸まった。何となくうなずいた様に見えた。
「まだ、アナタの名前聞いていなかったですね。なんていう名前なんですか?」
黒猫は眠たそうに片目を開けて、睡魔に襲われた黄色い目で僕を見て言った。
「……くろね」
「わかりました、くろねさん。よろしくお願い――って寝てるか」
僕は膝の上で眠る小さな猫を大事に抱いて、アパートへ戻った。



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