黒猫さんが横切る 02
白いしなやかな曲線が視える。とても綺麗で、気付くと涎が垂れていた――
目を開ける。時刻は7時過ぎ、あの骸骨たちに襲われてから六時間近く経った。くろねさんは僕の横で丸まって寝ている。
取りあえず布団から出て着替える事にした。何故か立ち上がるだけで体中が悲鳴を上げた。
くろねさんが取り付いて人間として不可能な動きを次々とやったせいだ。全身とまではいかないが、かなりの筋肉痛。服を脱ぐだけでも痛みを感じた。
「……ふぅ」
いつもの倍の時間をかけて着替えをした。それだけで汗をかいたので余り意味は無かったが。
物音がしたので後ろを見てみるとくろねさんが起きて、伸びをしているところだった。
二又の尻尾も伸びをするとピンと立って愛らしい。
「おはようございます、くろねさん」
「ん、おはよう」
取りあえず僕は、朝ごはんを作ることにした。フライパンに油を引いて卵を二つ割って目玉焼きを作る。
「あ、くろねさんって何食べるんです?」
二つの目玉焼きを焦がさないようにフライパンを弄りながら僕は質問した。
「私か?いろいろ食べるぞ、死体とか人とか」
なんて、恐怖的なことを何の事も無いように軽々と気だるそうに答えた。
僕は一瞬強張ったが直ぐにフライパンに目をやった。そうだ、彼女は頭のいい喋る猫ではなく、都市伝説の猫又なのだ。
「後は人の精とかかな、夢魔の一面も持っているしな、キャットフードも一応食べる。
何を怖がっているんだ?あはは、安心しろ、お前の体は食べないよ。お前は生身も美味しそうだが契約者を食べては話にならないだろ?まぁ精は頂くがな」
あ、だから初めて現れたときが淫夢の中だったんだ。納得……とは成らないか、何しろ起きなかったらあのまま精を吸い取られていたんだ。
「えーっと……じゃあ僕と契約したのは、その、僕の精が欲しかったから……?」
「そういう事だな、生身を食べられないことはヒジョーに残念だが私は貧乏性らしくてな、美味しい物が永く食べられるのならそれでいい。」
どうやらこの人(?) にとって僕はパートナーではなく餌という事が判ってしまった。この質問をした自分を悔いる。
白煙が上がり少し焦げ目の付いた目玉焼きが出来上がる。それをすくい、それぞれを二つの皿に入れた。
「さ、出来ましたよ。熱いから気をつけて下さいね」
くろねさんの前に皿を出す。僕の注意も聞かず、彼女は出された物を直ぐに食べかかった。
目を開ける。時刻は7時過ぎ、あの骸骨たちに襲われてから六時間近く経った。くろねさんは僕の横で丸まって寝ている。
取りあえず布団から出て着替える事にした。何故か立ち上がるだけで体中が悲鳴を上げた。
くろねさんが取り付いて人間として不可能な動きを次々とやったせいだ。全身とまではいかないが、かなりの筋肉痛。服を脱ぐだけでも痛みを感じた。
「……ふぅ」
いつもの倍の時間をかけて着替えをした。それだけで汗をかいたので余り意味は無かったが。
物音がしたので後ろを見てみるとくろねさんが起きて、伸びをしているところだった。
二又の尻尾も伸びをするとピンと立って愛らしい。
「おはようございます、くろねさん」
「ん、おはよう」
取りあえず僕は、朝ごはんを作ることにした。フライパンに油を引いて卵を二つ割って目玉焼きを作る。
「あ、くろねさんって何食べるんです?」
二つの目玉焼きを焦がさないようにフライパンを弄りながら僕は質問した。
「私か?いろいろ食べるぞ、死体とか人とか」
なんて、恐怖的なことを何の事も無いように軽々と気だるそうに答えた。
僕は一瞬強張ったが直ぐにフライパンに目をやった。そうだ、彼女は頭のいい喋る猫ではなく、都市伝説の猫又なのだ。
「後は人の精とかかな、夢魔の一面も持っているしな、キャットフードも一応食べる。
何を怖がっているんだ?あはは、安心しろ、お前の体は食べないよ。お前は生身も美味しそうだが契約者を食べては話にならないだろ?まぁ精は頂くがな」
あ、だから初めて現れたときが淫夢の中だったんだ。納得……とは成らないか、何しろ起きなかったらあのまま精を吸い取られていたんだ。
「えーっと……じゃあ僕と契約したのは、その、僕の精が欲しかったから……?」
「そういう事だな、生身を食べられないことはヒジョーに残念だが私は貧乏性らしくてな、美味しい物が永く食べられるのならそれでいい。」
どうやらこの人(?) にとって僕はパートナーではなく餌という事が判ってしまった。この質問をした自分を悔いる。
白煙が上がり少し焦げ目の付いた目玉焼きが出来上がる。それをすくい、それぞれを二つの皿に入れた。
「さ、出来ましたよ。熱いから気をつけて下さいね」
くろねさんの前に皿を出す。僕の注意も聞かず、彼女は出された物を直ぐに食べかかった。
*
「くぅ……まだ舌がヒリヒリするぞ……ケイタのせいだ……」
「はは、くろねさんが悪いんじゃないですか。僕は『熱いですよ』って忠告したのに」
発覚!猫は本当に猫舌だった!!
場所と時間が変わって昼前、南区。僕たちはくろねさんの食べ物を買いに来た。そして何故かくろねさんは僕のワンショルダーリュックの中から顔を出している。
それは数十分前に遡るのだが、僕がくろねさんの餌……もとい食事を買いにいこうといつも小物入れとして使っているこれを背負って数分歩いたら、彼女が顔を出したのだ。
今日はよく消防車が通ると思いながら、ペットショップへと向かった。後々話を聞いたが放火魔が居るらしい。世の中物騒だ。
視界に映る黒煙を見ながら、近くにあったペットショップに入ってフードコーナーへ向かった。
「どれがいいですか、くろねさん――あれ?」
リュックに居るはずの彼女が居なかった。一瞬にして、居なくなった。音も無く。
少し心配になったが彼女は元々猫だ、気ままに何処かを歩いているのかもしれない。それに僕が居なくともなんとも無いだろう、あの強さなら。
そう考え、僕はくろねさんの事を余り気にかけない事にした。
「すみません」
近くに居た店員に声をかける。基本あの人なら何でも食べれそうだがまぁ、あっている物を選んでおこう。
「はい、なんでしょうか?あ、妹さんを連れて買い物ですか微笑ましい事ですね。
お兄ちゃんについてきて偉いねぇ」
100%の営業スマイルで店員が可笑しな事を言っている。妹?なんだそれ、僕一人暮らしで実家に弟は居るが妹いない。だからそんな筈は――
「うん!おつかい頼まれたの!」
あったみたいだ……黒髪のショートカットでその上髪を二つに結んでいる。年齢は小学四五年生と言った所。妙な既視感がある。
状況が飲み込めない。この子はちゃっかり僕と手を繋いでいる。頭がグルグル回る。
「えっと、あの、呼んでおいて凄く申し訳ないんですが、何を買えばいいのか忘れてしまったので、ちょっと両親に連絡してきますね」
少女の手を引いて、店員が見えなくなる位置まで連れて行く。少女は何の抵抗もなくなすがままに僕についてきた。
「ふう、『演技する』というのは中々に疲れるな。あんなに笑っていたら顔が戻らなくなってしまうぞ、全く……
ん?どうしたケイタそんなに私の顔を見て、私の顔に何か付いているのか?」
少女はまるで猫が目に付いたゴミを取るように顔を擦っている。妙な既視感はこれだったのかもしれない。
そう、この子は…………
「くろねさん?」
「何を言っているんだケイタ、私に決まっているだろ」
何となく昨夜のくろねさん(人間Ver)が幼くなった印象を受ける。性格は変わらないままだけれども。
「コンセプトは?」
「妹」
「実年齢は?」
「そう言うことはあまり率直に聞かないほうが女から嫌われずにすむぞ、ケイタ
まぁ、お前の数倍とでも言っておこう」
詐欺だ。完全に詐欺だ。こんな子の実年齢がウン十歳なんて誰がわかるだろうか。
「はぁ、もういいです。僕が適当に話をあわせておきますから」
「む、何故私が呆れなければないのだ。少なくともお前の安全は考えて行動したのに」
くろねさんが膨れる。こう見ていると妹に駄々を捏ねられている様に思えてくる。
一つ引っかかる言葉があった。
「僕の安全?」
「ああ。ここは少し危ない雰囲気がする、何かこう言い表せない嫌な気だ」
「はは、くろねさんが悪いんじゃないですか。僕は『熱いですよ』って忠告したのに」
発覚!猫は本当に猫舌だった!!
場所と時間が変わって昼前、南区。僕たちはくろねさんの食べ物を買いに来た。そして何故かくろねさんは僕のワンショルダーリュックの中から顔を出している。
それは数十分前に遡るのだが、僕がくろねさんの餌……もとい食事を買いにいこうといつも小物入れとして使っているこれを背負って数分歩いたら、彼女が顔を出したのだ。
今日はよく消防車が通ると思いながら、ペットショップへと向かった。後々話を聞いたが放火魔が居るらしい。世の中物騒だ。
視界に映る黒煙を見ながら、近くにあったペットショップに入ってフードコーナーへ向かった。
「どれがいいですか、くろねさん――あれ?」
リュックに居るはずの彼女が居なかった。一瞬にして、居なくなった。音も無く。
少し心配になったが彼女は元々猫だ、気ままに何処かを歩いているのかもしれない。それに僕が居なくともなんとも無いだろう、あの強さなら。
そう考え、僕はくろねさんの事を余り気にかけない事にした。
「すみません」
近くに居た店員に声をかける。基本あの人なら何でも食べれそうだがまぁ、あっている物を選んでおこう。
「はい、なんでしょうか?あ、妹さんを連れて買い物ですか微笑ましい事ですね。
お兄ちゃんについてきて偉いねぇ」
100%の営業スマイルで店員が可笑しな事を言っている。妹?なんだそれ、僕一人暮らしで実家に弟は居るが妹いない。だからそんな筈は――
「うん!おつかい頼まれたの!」
あったみたいだ……黒髪のショートカットでその上髪を二つに結んでいる。年齢は小学四五年生と言った所。妙な既視感がある。
状況が飲み込めない。この子はちゃっかり僕と手を繋いでいる。頭がグルグル回る。
「えっと、あの、呼んでおいて凄く申し訳ないんですが、何を買えばいいのか忘れてしまったので、ちょっと両親に連絡してきますね」
少女の手を引いて、店員が見えなくなる位置まで連れて行く。少女は何の抵抗もなくなすがままに僕についてきた。
「ふう、『演技する』というのは中々に疲れるな。あんなに笑っていたら顔が戻らなくなってしまうぞ、全く……
ん?どうしたケイタそんなに私の顔を見て、私の顔に何か付いているのか?」
少女はまるで猫が目に付いたゴミを取るように顔を擦っている。妙な既視感はこれだったのかもしれない。
そう、この子は…………
「くろねさん?」
「何を言っているんだケイタ、私に決まっているだろ」
何となく昨夜のくろねさん(人間Ver)が幼くなった印象を受ける。性格は変わらないままだけれども。
「コンセプトは?」
「妹」
「実年齢は?」
「そう言うことはあまり率直に聞かないほうが女から嫌われずにすむぞ、ケイタ
まぁ、お前の数倍とでも言っておこう」
詐欺だ。完全に詐欺だ。こんな子の実年齢がウン十歳なんて誰がわかるだろうか。
「はぁ、もういいです。僕が適当に話をあわせておきますから」
「む、何故私が呆れなければないのだ。少なくともお前の安全は考えて行動したのに」
くろねさんが膨れる。こう見ていると妹に駄々を捏ねられている様に思えてくる。
一つ引っかかる言葉があった。
「僕の安全?」
「ああ。ここは少し危ない雰囲気がする、何かこう言い表せない嫌な気だ」
To be……?