上田明也の綺想曲4~断片兆候(バラバラフラグメンツ)~
(※ただしイケメンに限るより)
空は快晴、風は爽快。
優しく流れる初秋の風を切り裂いて一台の赤い車が高速道路を駆けていた。
乗っているのは俺こと上田明也と我が忠実なる都市伝説、“ハーメルンの笛吹き”ことメル。
車は東北にあるとある県の番屋町と呼ばれる町に向かっていた。
優しく流れる初秋の風を切り裂いて一台の赤い車が高速道路を駆けていた。
乗っているのは俺こと上田明也と我が忠実なる都市伝説、“ハーメルンの笛吹き”ことメル。
車は東北にあるとある県の番屋町と呼ばれる町に向かっていた。
「マスター、なんで今日はまた遠出なんか……。
もうすぐマッドガッサーの捕獲作戦もやるんだから準備しておくべきなんじゃないですか?」
車内に流れるメタリカの曲が五月蠅いらしく、メルはカーステレオの音を下げながら俺に尋ねた。
「そうなんだけどもさぁ……。そうも言ってられないのよ。指輪買ってやったんだから黙って付き合え。」
「むぅ……、従弟が都市伝説関係の事件に巻き込まれたんでしたっけ?」
そういう少女の首にはネックレス代わりの指輪が光っていた。
「そう、俺の従妹が都市伝説と契約しちまったらしい。恐らく、“※ただしイケメンに限る”だろう。」
「そんなの解るんですか?ああ、教えて貰ったのか。」
「いいや、事件のあらましを聞けばそれしかありえないから予想しただけ。」
「へへぇ……、流石というかまあそうだろうなというか……。」
魔法を見たときのような顔をしているが単純な推理である。
誰だって家の冷蔵庫に入れていたプリンが食べられていたら一定の根拠を元に犯人を予想するだろう?
そんなもの、そんな程度のものである。
もうすぐマッドガッサーの捕獲作戦もやるんだから準備しておくべきなんじゃないですか?」
車内に流れるメタリカの曲が五月蠅いらしく、メルはカーステレオの音を下げながら俺に尋ねた。
「そうなんだけどもさぁ……。そうも言ってられないのよ。指輪買ってやったんだから黙って付き合え。」
「むぅ……、従弟が都市伝説関係の事件に巻き込まれたんでしたっけ?」
そういう少女の首にはネックレス代わりの指輪が光っていた。
「そう、俺の従妹が都市伝説と契約しちまったらしい。恐らく、“※ただしイケメンに限る”だろう。」
「そんなの解るんですか?ああ、教えて貰ったのか。」
「いいや、事件のあらましを聞けばそれしかありえないから予想しただけ。」
「へへぇ……、流石というかまあそうだろうなというか……。」
魔法を見たときのような顔をしているが単純な推理である。
誰だって家の冷蔵庫に入れていたプリンが食べられていたら一定の根拠を元に犯人を予想するだろう?
そんなもの、そんな程度のものである。
数時間後
車は順調に飛ばしていたのだが、諸事情から番屋町近郊の道の駅に寄り道していた。
「マスター、ちょっと……その………トイレに。」
「オッケー、じゃあ休憩しているからさっさと行ってこい。
なんか変なのが居たら一般人の振りして適当に助けを求めろ。」
まあ大した用事ではない、車で待っていればすぐに帰ってくるだろう。
しかし秋の風景があまりにも綺麗だったので自分も車から降りて煙草を吸うことにした。
「プハァー………。」
煙草を吸いながら辺りを見回しているとすこし珍しい車を発見した。
デロリアン、DMCー12
デビルメイクライでもデトロイトメタルシティでもないぞ。
有名な映画“バックトゥザフーチャー”で使われてから人気に火がついた車だ。
どうでも良いが火と人って似ているよね。
この国でこんな妙な車に乗っている奴って一体どんな奴なんだろう……?
気になってしまったので近くによって細部を確認させてもらうことにした。
「ここが開くのか……、ガルウィングドアねえ。
塗装も凝っているなあ、ただ金色って趣味が頂けねえけど……最終生産モデルか?
偶然とはいえそんなモデルが有って良いのかよ……。」
「DMC-12なら無塗装モデルも家にありますが?」
背後から急に声をかけられた。
後ろに立っていたのは男。
車は順調に飛ばしていたのだが、諸事情から番屋町近郊の道の駅に寄り道していた。
「マスター、ちょっと……その………トイレに。」
「オッケー、じゃあ休憩しているからさっさと行ってこい。
なんか変なのが居たら一般人の振りして適当に助けを求めろ。」
まあ大した用事ではない、車で待っていればすぐに帰ってくるだろう。
しかし秋の風景があまりにも綺麗だったので自分も車から降りて煙草を吸うことにした。
「プハァー………。」
煙草を吸いながら辺りを見回しているとすこし珍しい車を発見した。
デロリアン、DMCー12
デビルメイクライでもデトロイトメタルシティでもないぞ。
有名な映画“バックトゥザフーチャー”で使われてから人気に火がついた車だ。
どうでも良いが火と人って似ているよね。
この国でこんな妙な車に乗っている奴って一体どんな奴なんだろう……?
気になってしまったので近くによって細部を確認させてもらうことにした。
「ここが開くのか……、ガルウィングドアねえ。
塗装も凝っているなあ、ただ金色って趣味が頂けねえけど……最終生産モデルか?
偶然とはいえそんなモデルが有って良いのかよ……。」
「DMC-12なら無塗装モデルも家にありますが?」
背後から急に声をかけられた。
後ろに立っていたのは男。
男と言うにはまだ若い、20才にもなっていないような雰囲気を醸し出していた。
「おっと、すまないね。日本でも珍しいからついつい見入っちゃってたよ……!」
そして
男は黒いスーツを着ていた。
新手の都市伝説契約者か?俺は怪しまれないように男と雑談を続ける。
どうやら気取られなかったらしく奴は車についての蘊蓄を一くさり述べた後に行ってしまった。
車に戻るとメルが不機嫌そうに待っていた。
「何やってたんですか、ずいぶん遅いですね。」
「悪い悪い、ちょっと煙草吸ってた。」
「やめた方が良いですよ、健康に悪い。」
「健康が煙草に悪いのさ。」
「ふ~ん……、それはそうとしてマスターの靴紐切れてますよ。煙草吸うにしたって何処行ってきたんですか?」
「いや、駐車場で珍しい車見つけてさ。その持ち主と雑談していた。
黒いスーツだったから組織の人間かと思ったんだけど違ったみたいで助かった。」
「亜阿相界。」
「つれない返事だね、まあ良い、行くぞ。」
「ああ、そういえばこんなの勝ったんですよ。」
渡されたのは鉄でできたお守り。
「この辺りの伝統工芸らしいです。鋳物が人気らしいんで。」
「ふふ~ん……、成る程ねえ。悪くないデザインだ。」
車は再び走り始めた。
走り始めてからすぐに異変は生じた。
「おっと、すまないね。日本でも珍しいからついつい見入っちゃってたよ……!」
そして
男は黒いスーツを着ていた。
新手の都市伝説契約者か?俺は怪しまれないように男と雑談を続ける。
どうやら気取られなかったらしく奴は車についての蘊蓄を一くさり述べた後に行ってしまった。
車に戻るとメルが不機嫌そうに待っていた。
「何やってたんですか、ずいぶん遅いですね。」
「悪い悪い、ちょっと煙草吸ってた。」
「やめた方が良いですよ、健康に悪い。」
「健康が煙草に悪いのさ。」
「ふ~ん……、それはそうとしてマスターの靴紐切れてますよ。煙草吸うにしたって何処行ってきたんですか?」
「いや、駐車場で珍しい車見つけてさ。その持ち主と雑談していた。
黒いスーツだったから組織の人間かと思ったんだけど違ったみたいで助かった。」
「亜阿相界。」
「つれない返事だね、まあ良い、行くぞ。」
「ああ、そういえばこんなの勝ったんですよ。」
渡されたのは鉄でできたお守り。
「この辺りの伝統工芸らしいです。鋳物が人気らしいんで。」
「ふふ~ん……、成る程ねえ。悪くないデザインだ。」
車は再び走り始めた。
走り始めてからすぐに異変は生じた。
「おい、メル。ブレーキが上手くきかない。」
「はあ?故障ですか!」
「故障だとは思うんだけど……。」
パー!
ドカァン!
「うわっ、マスター!目の前で事故です!」
「嘘だろ……?」
前で二台の車が衝突していた。
丁度、俺たちの車の進路をふさぐかの如く並んでいる。
「はあ?故障ですか!」
「故障だとは思うんだけど……。」
パー!
ドカァン!
「うわっ、マスター!目の前で事故です!」
「嘘だろ……?」
前で二台の車が衝突していた。
丁度、俺たちの車の進路をふさぐかの如く並んでいる。
「シートベルトはしてるな?捕まってろ!」
「へ?」
小刻みにブレーキを踏みながらハンドルをそれに合わせて回す。
車が途切れた一瞬の間に対向車線に入り込んでまた元の車線に戻ってくる。
後ろではガン!と音が車のぶつかる音がした。
「へ?」
小刻みにブレーキを踏みながらハンドルをそれに合わせて回す。
車が途切れた一瞬の間に対向車線に入り込んでまた元の車線に戻ってくる。
後ろではガン!と音が車のぶつかる音がした。
「危ない……、なんでいきなりあんなことが?」
「事故なんて大抵……。」
大抵そんなものだと、言おうとした瞬間だった。
一陣の風。
メキィ、と巨木の折れる音が響く。
「偶然が一日起きて良いのは三回までだよな?」
目の前にあった木が道を分断するように倒れてくる。
アクセルを踏み込んで木が倒れきる前に無理矢理突破した。
メリメリと後部のトランクが壊れた音。
「マスター!車が!!」
「知ってる!高かったのによおおおおおおお!!」
「事故なんて大抵……。」
大抵そんなものだと、言おうとした瞬間だった。
一陣の風。
メキィ、と巨木の折れる音が響く。
「偶然が一日起きて良いのは三回までだよな?」
目の前にあった木が道を分断するように倒れてくる。
アクセルを踏み込んで木が倒れきる前に無理矢理突破した。
メリメリと後部のトランクが壊れた音。
「マスター!車が!!」
「知ってる!高かったのによおおおおおおお!!」
パァン
―――――ガクン
―――――ガクン
「タイヤがパンクしたァァァァアァァアア!」
「それも知ってる!!」
今度はタイヤのパンクだ。
洒落になっていないぞ……。
運が悪すぎる。
「それも知ってる!!」
今度はタイヤのパンクだ。
洒落になっていないぞ……。
運が悪すぎる。
ふと、前を見ると見覚えのある金色の車。
「あれは……。」
「どうしたんですか?」
「さっきの車の持ち主だよ。」
「……まさか?」
「ああ、新手の契約者だな。」
「自律機動タイプの都市伝説ですかね?こんな遠距離から攻撃を開始できるなんて……。」
「車を運転しながら攻撃もできなくは……うっっわ!」
牧場から逃げ出した牛が飛び出してきた。
あんなのにぶつかったらこっちが危ない。
当然上手に回避。
「ねぇ、マスター。」
「ああ、そうだな。」
ハプニングがどんどんしょぼくなっている。
相手に近づけば近づくほどハプニングが地味になるのか?
カツン!
あ、鴉の落としたクルミを割ってしまったらしい。
「アザッスwwwwwwwwwwwサーセンwwwwwwwwwwwwwww」
鴉の声が聞こえた気がした。
「どうしたんですか?」
「さっきの車の持ち主だよ。」
「……まさか?」
「ああ、新手の契約者だな。」
「自律機動タイプの都市伝説ですかね?こんな遠距離から攻撃を開始できるなんて……。」
「車を運転しながら攻撃もできなくは……うっっわ!」
牧場から逃げ出した牛が飛び出してきた。
あんなのにぶつかったらこっちが危ない。
当然上手に回避。
「ねぇ、マスター。」
「ああ、そうだな。」
ハプニングがどんどんしょぼくなっている。
相手に近づけば近づくほどハプニングが地味になるのか?
カツン!
あ、鴉の落としたクルミを割ってしまったらしい。
「アザッスwwwwwwwwwwwサーセンwwwwwwwwwwwwwww」
鴉の声が聞こえた気がした。
しかし奴の都市伝説は何なんだ?
出会って
車を見て
靴紐が切れて
ハプニングに襲われて……
出会って
車を見て
靴紐が切れて
ハプニングに襲われて……
「そうか!」
靴を見てみる。
ひもは切れっぱなし。
ひもだけを抜き取って素早く捨てた。
靴を見てみる。
ひもは切れっぱなし。
ひもだけを抜き取って素早く捨てた。
効果はすぐに現れた。
「ブレーキが直った!」
「え、嘘?」
「だけどこれで解ったぞ……。」
「都市伝説の名前ですか?」
「ああ、“死亡フラグ”じゃねえかな。」
「そんなのまで都市伝説になるの!?」
「しらねえよ!」
「ブレーキが直った!」
「え、嘘?」
「だけどこれで解ったぞ……。」
「都市伝説の名前ですか?」
「ああ、“死亡フラグ”じゃねえかな。」
「そんなのまで都市伝説になるの!?」
「しらねえよ!」
次の瞬間、黒いネコが目の前を通り過ぎようと……。
「ちょ、マスター!黒猫!!」
「前さえ通られなきゃ良いんだろ?」
今度はハンドルを回してぐるぐると車も回転させる。
「スピンしてるぅう~!!」
「スピンさせたんだよ。」
これなら黒猫に目の前は通られない。
そうこうしていると金色のデロリアンが目の前に近づいてきた。
「ちょ、マスター!黒猫!!」
「前さえ通られなきゃ良いんだろ?」
今度はハンドルを回してぐるぐると車も回転させる。
「スピンしてるぅう~!!」
「スピンさせたんだよ。」
これなら黒猫に目の前は通られない。
そうこうしていると金色のデロリアンが目の前に近づいてきた。
「マスター!あれですね!」
「そうだ、捕まってろよ?一気に行く。近づけば近づくほど効果が弱まるんならば手段は一つだけだ。」
俺たちの乗ったポルシェは加速して加速して加速して……
「そうだ、捕まってろよ?一気に行く。近づけば近づくほど効果が弱まるんならば手段は一つだけだ。」
俺たちの乗ったポルシェは加速して加速して加速して……
ガァン!
「純金モデルの癖に固い!?」
目の前の金色のデロリアンにぶつかった。
デロリアンはめちゃくちゃにひしゃげて路肩まで吹き飛ばされる。
しかしこちらにも純金ではなくステンレスにぶつかった以上相当なダメージは有ったわけで……。
「っつぅ~!」
車の中から這い出て来た。
太陽が眩しい。
「純金モデルの癖に固い!?」
目の前の金色のデロリアンにぶつかった。
デロリアンはめちゃくちゃにひしゃげて路肩まで吹き飛ばされる。
しかしこちらにも純金ではなくステンレスにぶつかった以上相当なダメージは有ったわけで……。
「っつぅ~!」
車の中から這い出て来た。
太陽が眩しい。
服が大分汚れてしまったのでパフパフ、と汚れを払っていると指先に痛みを感じる。
割と大きなガラスの破片が胸に刺さっていたのだ。
「……何故生きている?」
痛みはない。
胸ポケットの中を探ると先程メルから貰ったお守りが入っていた。
「生存フラグかい……?」
都市伝説だから大丈夫だとは思うが見に行ってやるか……。
車の反対側に行くとコクピット、もとい助手席は血塗れだった。
いやいやいやいや、●クロスだったら死亡だよ?これ完全死亡だよ?
覚悟してガチャリとドアを開けると中でメルは血塗れになっていた。
「っメル!!」
すぐに車から彼女を降ろすと脈を取る。
脈はある。
「マスター……、もうゴールしても」
「DAMEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!」
「さて、冗談は置いといて、私は大丈夫です。致命傷は避けてますし生存フラグ立ててますし。」
「生存フラグ?ああ、指輪か。」
「とりあえずあれが生きているか確認しません?」
メルが指さす先には森の中に突っ込んでいる金ぴかの車が転がっていた。
「そうしたい所なんだがな……。」
遠くからサイレンの音が聞こえてくる。
ここにやってくるのも時間の問題だろう。
「行くぞ、どうせあの状況じゃ生きてなんかいないさ。」
割と大きなガラスの破片が胸に刺さっていたのだ。
「……何故生きている?」
痛みはない。
胸ポケットの中を探ると先程メルから貰ったお守りが入っていた。
「生存フラグかい……?」
都市伝説だから大丈夫だとは思うが見に行ってやるか……。
車の反対側に行くとコクピット、もとい助手席は血塗れだった。
いやいやいやいや、●クロスだったら死亡だよ?これ完全死亡だよ?
覚悟してガチャリとドアを開けると中でメルは血塗れになっていた。
「っメル!!」
すぐに車から彼女を降ろすと脈を取る。
脈はある。
「マスター……、もうゴールしても」
「DAMEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!」
「さて、冗談は置いといて、私は大丈夫です。致命傷は避けてますし生存フラグ立ててますし。」
「生存フラグ?ああ、指輪か。」
「とりあえずあれが生きているか確認しません?」
メルが指さす先には森の中に突っ込んでいる金ぴかの車が転がっていた。
「そうしたい所なんだがな……。」
遠くからサイレンの音が聞こえてくる。
ここにやってくるのも時間の問題だろう。
「行くぞ、どうせあの状況じゃ生きてなんかいないさ。」
番屋町までは近い。
待ち合わせの駅ももうすぐだろう。
後部座席の下に摘んでいた着替えでメルの服を着替えさせた後で俺とメルは徒歩で町の中心部まで向かったのだった。
待ち合わせの駅ももうすぐだろう。
後部座席の下に摘んでいた着替えでメルの服を着替えさせた後で俺とメルは徒歩で町の中心部まで向かったのだった。
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