「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ハーメルンの笛吹き-14

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上田明也の綺想曲3~まだまだmadgas~


学校町の南区の商店街へ用があって買い物に行った日のことだ。
町は珍しく雪に包まれていてそれはそれは幻想的な風景が広がっていた。
俺は人気のないビルの隙間の路地裏から真っ白になった町を唯々眺めていた。
どんな日常でも白く染めればそれは立派な非日常たり得るのだろうか?

「マスター。も、もう帰りませんか?」
俺の隣で寒さに打ち震えているこいつの名前はメル。
ハーメルンの笛吹きという都市伝説なのだがいかんせんへたれである。
「もうすこしこの雪を見詰めていたいんだ……。」
雪なんて久しぶりだ。
もう少し見とれていたって良いじゃないか。
「い、いや雪見るだけなら家で良いじゃないですか!」
「そうだな、雪を見るだけなら家で良いよ。」

町では最近マッドガッサーなる都市伝説が女体化ガスをばらまくと騒ぎになっているようだった。
しかしこの騒ぎすら学校町の人間は日常にしてしまう。
日常が非日常を飲み込んだのか非日常が日常を侵しているのか、それを判断する神経すら摩耗してきたみたいだ。
俺がそんな事を考えながら白く染まる町を眺めていた時だ。

ブシュウ!!

真後ろからピンク色のガスを吹きかけられる。
「マスター、来ました!」
「よし、ビンゴだ!」
吹きかけられると同時に、俺はその方向へ走った。

「マッドガッサー、ゲットだぜ!!」
ドスン!
「うわ?何しやがる!」

なにっていうか思いっきり体当たりである。
いかんせん女性の身体になっている為に威力がイマイチだ。
だがマッドガッサーには直撃。
思わず体勢を崩したようだ、完全に予想外の反応だったのだろう。

「今だ、メル!!」
「了解です!!」
透き通った笛の音色が町に届く。
どこからかともなく数人の子供がやって来てあっという間にマッドガッサーを押さえつけた。

「なんだ?うわ、やめろ!離しやがれ!!」
幾ら都市伝説と言っても数人がかりで押さえつけられては敵うまい。
マッドガッサーは地面に倒れている。

「くっくっくっ………、作戦通り捕まってくれたな。
 ―――――マッドガッサー。」

ピシ、と指を差してポーズを決めてみる。
パチィン!
ポーズを決めるとお気に入りだったシャツのボタンが外れた。
丁度見下ろす格好だったのでマッドガッサーに谷間をみせつける格好になってしまった。

「やたら胸でかいなおい!ていうかお前ら何者だ?」
ガスはどうやら連射出来ないらしい。
マッドガッサーは俺の胸にツッコミをいれたあとも騒いでいる。
そして下調べ通りガスの殺傷能力は0。
狙い通り生け捕ることが出来たか……。

「俺たちはハーメルンの笛吹き……、しがない都市伝説と契約者だよ。」
正直笑いが止まらない。
これでショタッ子もロリっ子に出来る!
捕まえたら男の娘で涙する必要が無くなるのだ!
ヒャッハー!
「チッ……、俺を嵌めたな?」
「そうだよ。ビルの隙間の路地裏であれば外からガスは簡単に届かない。
 よって俺の近くまで来て貰う必要がある。
 さらに人気がないとは言え一歩外を出れば近くは商店街だ。
 操る物には事欠かない。
 勿論俺にも逃げ場はないがガスを喰らう覚悟さえ前もってしておけば、
 まあぶっちゃけ女の身体になる覚悟さえしておけば、
 お前の攻撃も二つしかないこの場所への出入り口のどちらにお前が居るかを教えてくれる材料になる。
 更に言えば俺の契約する都市伝説も特性上、性別はどちらでもないしな。」
「一々、考えていやがる……。」
マッドガッサーは忌々しげに呟いた。

名前:ハーメルンの笛吹き[] 投稿日:2009/11/04(水) 21:05:23
「とにかくお前は俺に捕まった。そこで提案だ。マッドガッサー。」
長い髪が五月蠅かったので用意したゴムで後ろにまとめる。
ポニーテール……というのだろうか?
とにかく髪を整えながら俺は聞いた。
奴が聞くかどうかなぞ関係無い。
「俺が連れてきたショタをロリに変えることは可能か?」
「はっ、他人の言うことなんか聞く気は無いz………、可能だ。」
「じゃあ利害は一致する筈だ。
 俺は常々ロリと思って捕まえた女の子がショタで残念な思いをしていたのだ。
 あの忌々しいバベルの塔を取り払う能力が有るのならば……、俺たちは手を組めると思うのだが?
 誘拐に最適な能力と女体化能力は相性が良いはずだぜ……?」
「ふぅん……、だがやはり断るね。
 あんたは仲間を欲してなど居ないからな。」
「効率は良いだろう。」
「仲間を効率を上げる為の道具としてしか見なさないお前とは協力できないね。」
「お前とは……ってことはだ。」


空を裂いて上から巨大な何かが落ちてくる。

「なんだ、仲間でもいるのかい?」
ドォン!
そう言った直後に空中から巨大な物が降ってくる音がした。

「ひゃぁははははははぁあアアぁ!!!実戦慣れしているなあ!」

轟音を立てて俺の背後に降ってきたのは、ヴェールに覆われてはっきり解らないが獣の毛に覆われた狼のような男だった。
着地した地点のコンクリートがひび割れて破片が宙に舞っている。
見た目も登場の仕方も明らかに近距離パワータイプ。
「――――――やはり仲間!」
「マスター!指示を!」
メルが悲鳴を上げたかのように叫ぶ。
「無駄無駄ァ!解っているだろうがそこの女ァ!」
巨躯の狼男は吠えるように告げる。
「テメェの能力は見たところ操作系、
 近接戦闘に不向きなのは操作系の宿命だ!
 この狭い路地で
 この俺と
 しかも女体化した体力で俺とかち合っちまったのが運の尽きだ!
 策士策に溺れたんだよ!割と名が知れているようだが大人しく死んでおけ、笛吹き!」

まずい……。
この狼男、肉体面だけでなく頭脳面もかなりだ。
確実に状況を分析、しかも俺たちが不利であることがばれている。
メルはマッドガッサーを押さえつけている子供達に指示を加えるので手一杯だ。

「お前の仲間はまだ俺の手にあるが?」
「馬鹿野郎、そいつに致命傷を与える前にお前の首ぐらい簡単に飛ばせるよ!」
事実、そうだろう。
そもそも都市伝説のマッドガッサーに確実に止めを刺すには蜻蛉切りを使うしかないのだ。
追い詰められた?
追い詰められたのか?
いや、違う。

次の瞬間、狼男は俺の前に居た。

振り上げられる爪、世界は妙に遅く回る。
今まで生きてきた中での様々な記憶が脳裏には浮かんでは消えて浮かんでは消えていく。
ギリギリ、生と死の狭間のギリギリの瞬間。
体中の細胞が熱く泡立つような興奮。
世界の遅さと反比例するかのように俺の頭は速く回っていた。

思い出すのはにやけた碧眼金髪の男。
貴人サンジェルマン。
そうだ、奴はこう言っていた。
「操作系は嵌れば最強でしょうが近距離の直接戦闘では弱い。
 正直言って弱すぎます。
 そこで一つ禁じ手を教えておきましょう。
 そもそも都市伝説との契約とは都市伝説と繋がると言うことです。
 気づいていると思いますがハーメルンの笛吹きは男性の契約者との契約で始めて、
 “ハーメルンの笛吹き男”になります。
 つまりあなたはもうすでに彼女に半分は取り込まれているんですよ。
 完全に取り込まれれば貴方が自我を失うだけの筈なんですけどね。
 でもそこまで取り込まれておいて自我を完全に保っている人間も珍しい物です。
 さて、禁じ手の方を教えましょうか……。」
メルとのつながりを強く、強く思い出す。
期間はまだ短いが様々な修羅場をくぐり抜けてきた。
そうだ、俺とメルはすでに二つで一つ。
ならば……

―――――ヒュ

風切り音の後にズシンと首に対して伝わる衝撃。
身体が宙に舞っているのが良く解る。
その瞬間、狼男と目が合った。
にやりと笑って自分の首を指さして見せた。

「こいつ、自分から都市伝説に近くなった!?」
狼男が一瞬だけ動揺を見せる。
その隙を突いてメルに指示を出した。
「今だ、メル。マッドガッサーを解放しろ!お前の出番だ!」
「アレですね、了解しました。」
子供達の拘束を解除しマッドガッサーを解き放つ。
地面に強かに打ち付けられた為に身体は強く痛むが構いやしない。
笛を取り出して一瞬だけ息を送り込む。

ピィ!

一瞬だけ響く音。
ギリギリギリ……
骨が、筋肉が、身体の様々な機関が悲鳴をあげる音。
それを立てているのは他ならぬ……

「はぁあ!」

ハーメルンの笛吹き、メルだった。

彼女の拳は彼女の数倍以上の大きさを持つ狼男を捉えている。
バキィ!
骨の折れるような嫌な音を立てて狼男が路地から殴り飛ばされる。
しかしその間にマッドガッサーは逃げ出し始める。
「マスター、追いますか?」
「追う振りだけしてすぐに逃げるぞ!」
俺はマッドガッサーに向けて威嚇射撃を何発か行うとメルと一緒にすぐにその場所を離れた。
そう、禁じ手は都市伝説との同化なんかじゃない。
本当の禁じ手は……。


一方その頃
「チッ……、味方を操ることまで出来たのか。」
マリ・ヴェリテはビルに食い込んだままぼやいていた。
「おい!マリ、大丈夫か?」
マッドガッサーが遠くから走ってくる。
「おお、大丈夫だったが……。奴らは?」
「銃をぶっ放しながら追ってくるぜ!丁度、今逃げてきたところだ!
 目的は達成したしもう逃げようぜ。」
「チッ……、あいつらまだ動けるのか?しかも銃、一旦引くか……。」
マッドガッサーとマリ・ヴェリテもまた、その場を急いで離れたのであった。

*



「本当の禁じ手は私の操作だったんですか?」
町を離れる車の中でメルは俺に尋ねていた。
「うん……、まあそういうことだ。」
漫画やアニメでも敵を操作する系のキャラの奥の手である。
「じゃああのまま二人を倒せたんじゃないですか?」
「それは無理だ。
 俺の都市伝説への同化もお前を操作するのもどちらも身体に負担をかけすぎる。」
「そんなことないですよ、ホラホラ!」
メルは俺の目の前でシャドウボクシングをし始める。
し始めるが開始二十秒で顔が青くなっていく。
「あの……、腕が……。」
「うん、折れてるよ。人間だったら折れるじゃ済まなかったはずなんだけどね。
 一週間は静かにしていろよ?」
今回使った奥の手は二つ。
俺の都市伝説への同化
ハーメルンの笛吹きでハーメルンの笛吹きを操作
前者は俺の耐久力を高められるし後者は一瞬だけとはいえメルを近距離直接戦闘に特化させられる。
しかし当然代償は大きい。
都市伝説に近づけば俺が飲み込まれかねないし、
メルを無理矢理動かせば彼女の身体が壊れる。

無駄に巨大になってしまった胸を持て余しつつ俺達は郊外の自宅に帰るのであった。
「ところで女になってしまったんだけどお前は男の子になる必要は無いからな?」
「は?」
「いや一度女同士というのも試してみたくて……。」
「何を言い出すんですかこの色欲魔人は!!」
メルは折れた腕で俺をチョップして悶絶するのであった。

【上田明也の綺想曲3~まだまだmadgas~ fin】



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