「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 人肉料理店とその契約者-10

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人肉料理店とその契約者 10


 夕暮れ時の町を歩く三人の女性。そのうち若い二人は土埃にまみれていた。

「本日の特訓とゆー名の虐待終了っと……さっさと帰って風呂はいろ…」
「なーにが虐待ぢゃ?まだまだ無駄な動きが多いから余計疲れるんぢゃよ」
「ですが2対1でも敵わないとのは少々ショックでしたね」

 年の功ぢゃよ、と答えながら歩く姿は、疲れ一つ見えない。二人を相手にして息も切らさなかったのだ。軽く化け物じみている。

「戦闘経験の差、ですか。殆どの攻撃をいなされましたからね」
「年の功で岩だの丸太だの投げてくんのかよ……あれ?あそこに居るのって……」
「どうしたんぢゃ?」

 視界の隅に見覚えのあるヴェールがちらつく。
 あれは確か、【爆発する携帯電話】の契約者と一騒ぎあった時に見た姿。

「やっぱあん時の司祭さんか。こんばんはー」
「……?ああ、あの時の。こんばんは。どうしました?そんな泥だらけで」

 向こうもこちらに気付いたようだ。しかし流石に全身真っ黒なのを真っ先に聞かれた。

「あ、いやこれは…」
「どうぞお気になさらずに。ちょっとはしゃいでいただけですよ」
「はしゃぐ?」
「まぁ、うちのばーちゃんのちょっとは死に繋がるけどな……そーいえば携帯のにーちゃんは元気?」

 あまり続けたい話題でもなかったので話しを逸らす。
 だがその問いに驚いたような顔を見せる司祭。

「どしたの?なんかあった?」
「……いや失礼。彼も変わりありませんよ」
「そう?会う度に鼻血噴いてたからさ。ちょっと心配になってなー」

「彼は、あまり女性が得意ではありませんから」
「少年も同じ様なものですよね?」
「やかましいっ!」

 オーナーの生乳見てぶっ倒れた事がある手前、下手に笑えない。
 ……しかしあれはヤバイ。乳的にも出血的にもヤバイ。流石に心配にもなるというものだ。

「ところで、『携帯』のにーちゃん、と言いましたか……何処で彼の能力を?」

 ほんの一瞬、二人に気取られない程度に目を細め、問う。

「あれ、聞いてない?コーク・ロアの契約者、一緒に倒したんだけど」
「…ああ、なるほど」

 確かに、二人組の女性に助けられた、と言っていた。その答えに司祭の仮面を被り直す。

「あなた方の事でしたか。ご迷惑をおかけしました。私からもお礼を言わせてもらいますよ」
「いえ、ああいった者を止めるのが、この町に来た目的ですから。気にしないで下さい」

「そーいや、あん時居なかったみたいだし、携帯のにーちゃんと契約してるわけじゃないんだよね?
 司祭さんはなんの都市伝説なの?」
「……!」

 少年の問い掛けに、マリ・ヴェルテは考える。
 …どうしてこの二人は、自分が都市伝説だと知っているのか?
 【爆発する携帯電話】の契約者が喋った?……いや、多少面識がある相手とはいえ、彼が仲間の能力を簡単に話すわけがない。
 それに、もし知っていればこんな世間話などしていないだろう。
 何かしらの都市伝説、と気付いているが、自分が【マリヴェルテのヴェート】だとは気付いていない?
 ……恐らくは何らかの感知能力。それでどんな都市伝説なのか気になった、といったところか。

(面倒ですね…やりますか?しかし……)

 完全に油断している今ならば、仕留めるのはたやすい。

 ……だが、周りに人が多過ぎる。

「………」
「司祭さん?」
「何故、私が都市伝説だと?」
「へ?あの、それは……」
「私の都市伝説としての性質のようなものです。ある程度まで近付けば、相手が人か、それ以外なのか判るんですよ」

 こちらの緊張が伝わったのか、オーナーが一歩前に出つつ答える。

「気に障ったのであれば謝罪します」
「そ、そうそう!別に無理に聞き出すつもりなんかないから!」

 どうやら戦う必要はなさそうだ、とマリ・ヴェルテは思う。
 今の姿は善良な司祭。絶好の隠れ蓑なのだ。一瞬で姿を変えられるとはいえ、目立つのはまずい。
 なによりも教会から近すぎた。先程からちらほらと見知った礼拝者の顔も見える。

「そうでしたか。申し訳ありませんが、その事は「あたしは気になるねぇ?」……!?」

 これ以上詮索される前に、さっさと会話を終わらせて立ち去ろう
 そう思い話し始めた時、それを阻む者が居た。

「ばーちゃん!?」「ひきこさん?」

マリ・ヴェルテの言葉を遮って放たれた声。
 それを発したのは、今まで一言も喋っていなかった少年の祖母だった。

「ばーちゃん!いきなり何を」
「お前さん達はは少し黙っちょれ。今、あたしが話しとるのはこの男ぢゃよ」

 そう言って少年を押し退けると、マリ・ヴェルテの二、三歩前で立ち止まる。

「どういった意味でしょう?」
「そのまんまの意味ぢゃよ。あんたが一体何の都市伝説なのか……教えてもらえないかねぇ?」

 微笑んだまま、しかし明らかな敵意をもって相対する二人。

「……断る、と言った場合は?」
「さあ?どうなるのかねぇ……」

 マリ・ヴェルテのヴェールが揺らめく。
 ひきこさんが爪先で間合いを計る。
 そしていきなりの急展開に完全に蚊帳の外な二人。

「これは……参りましたね?」
「参りましたね?じゃねーよ!ナニしてくれてんだあのババァ!?
 あれか?新手の都市伝説【KYババァ】か!?折角丸く治まりそうだったっつーのに!」
「元々好戦的な方だったのではないでしょうか?ひきこさんの挑発にもあっさり乗りましたし。
 あと、もう少し落ち着いて下さい?」
「この状況で落ち着けるかっ!?っつか冷静に分析してんじゃねえ!?止めるぞ、あの二人!」

 今にも激突しそうな自分の祖母と知り合いを前にして、どうにかして止めようとする少年。
 それとは対象的になぜか動かないオーナー。

「いえ、止める必要はないと思いますよ?」
「はぁっ!?何言ってんだよ!早くしないと……!」

 そのまま無言で司祭の後方を指し示すオーナー。吊られて少年もその方向に目をやる。
 そこには小さな影が迫って来ていた。

「ここでやりますか?」
「いんや、ちょいと人が多いからのぅ。あんたがよけりゃ場所を移したいんぢゃが?」

睨み合ったままじりじりと移動する司祭と老婆。

「ええ、いいですよ。こちらとしても好都合です」
「ほんなら……………………………っ!」

 いきなり動きを停めたひきこさんに怪訝な顔をするマリ・ヴェルテ。
…誘っているのかもしれないが、叩き潰してしまえば問題無い。そう思い直し、全身に力を込め―――

「あー!しさいさまだー!」「どこどこ?」
「ほんとだー♪」「あたち、キレイー?」

 ―――襲い掛かろうとした所で、場の雰囲気をぶち壊す声が響いた。
 僅かに覚えのある、舌足らずな喋り方におもわず足を停めるマリ・ヴェルテ。確かハロウィンの時、教会に来ていた子供達だ。

「しさいさまーごほんよんでー」「あーわたしにもー」
「えーあそびいこうよー」「これでもかー?」

 割と予想外の事態に、どうするべきか考えていると、目の前の老婆がいきなり距離を詰めてきた。

「チッ!やる気「どれどれ、このババが絵本でも読んでやろうねぇ♪そっちの子は肩車でもするかの?あ、お嬢ちゃんべっこうアメ食べるかい?」

 そのまま、すっ、と横を帰ってり過ぎ子供達へと向かう。その顔には、先程とは違う満面の笑みが浮かんでいた。

「………ちょっと待て」
「なんぢゃ?あんたまだおったんか。ほれ、帰っていいぞい」
「んなっ!?」

 あっさりと言い放つ。もはや眼中にないらしい。ぷるぷると震える司祭を尻目に子供達へと向き直る。

「おばーちゃんだれー?」「えほんよんでくれるの?」
「ぐるぐるまー♪」「アメ、ウマー」
「ほっほっほっ、ババと一緒に遊ぼうねー♪」

 そのまま子供達を連れて去っていくひきこさん。後に残されたのは呆然とするマリ・ヴェルテと、諦めた表情の身内二人。

「予想通りですね」
「なんか一人ヘンなの混じってなかったか?」
「ナメてんのかてめぇら!?」
「キャラが変わってますよ、司祭様?」
「お、落ち着いて?ばーちゃんの『アレ』はほぼ病気みたいなもんだから……オーナー!司祭さんと教会まで転移!!」
「承知しました」
「ってオイ!ちょっと待t」

 なんか言ってた気もするが今は無視。それよりも優先すべき事がある。子供達の救出だ。

「……本読んだりお菓子やるくらいならまだいいよ?
 『高い高い』とかいって10㍍もぶん投げられたり、肩車したままムーンサルト(三回転)やられた日にゃートラウマ確定だ……!」

 幼少の頃に受けた数々の仕打ちが蘇る。本人は好意からやっているのだろうが、やられた方からすれば恐怖以外の何物でもない。
 …しかし問題点はこちらの言うことを素直に聞いてくれるかどうか。祖母の子供好きは、ある意味本能レベルである。
 最悪、力ずくで引きはがすしかない……可能かどうかは別として。

「やるしかねーか……」

 オーナーが戻って来るのを待っている暇は無い。救助が遅くなる程、子供達の心に傷が刻まれる危険が増える。
 溜息と共に歩き出す少年であったとさ。




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