「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - ハーメルンの笛吹き-18c

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「……zzz」
俺こと上田明也は菱縛りをされていた。
今目の前に居るのは例の狼男に魔法少女。
まあ今回は負けたのだし素直に縛られておくのが流儀だ。
妙な薬を飲まされてネコ耳になったとしても今回は素直に負けを認めておこう。
俺はずるいがそこら辺ははっきりさせておきたいのだ。
しかし、ただ負けるつもりはない。
香水。
すこしばかり香水を身体に掛けていたのだ。
女性であれば不自然ではない。
そしてついでに銃器にもいくらかふりかけておいた。
匂いがどこからするかなど中々気づきはしない。
俺の香水の香りが移ったとしか思わないだろう。
そしてこの匂いを鼠に教えて追撃できるとしても……気づきはしないだろう。
まあそれには兵力がいささか少なすぎるのだが。


「それはさておきそろそろ脱出しても良いはずだニャン。」
服の中に仕込んでおいた武器や薬品の類はあらかた持ち去られてしまった。
この分だと先程使っていた銃器もそうだろう。
「……にゃんってにゃんだ?」
成る程、ネコ耳だから語尾がにゃん、か。
とても理にかなっている。
わけねえよ!!

「それはそうと脱出するかにゃん。」

口をもぐもぐさせて中にある入れ歯を外す。
入れ歯を外すと中からトロッとした液体が流れ出す。

「この縛り方は女性だから抜けづらくなるんだにゃ。
 だから……、
 男に戻れば良い。」

こちらには凄腕の錬金術士が居る。
女体化ガスの解毒薬など必要とあらば何時でも作ってくれるのだ。
口の中に広がる甘い感覚。
身体が熱い。
内側に溜まっていた余計な何かが汗と一緒に急激に抜け落ちる感覚だ。
更に言うとCVが中田譲治に戻った感覚とも言うべきだろうか?

「まぁ……、ネコ耳はとれてないけどにゃん。」
首をゴキゴキとならして身体の調子を確かめる。
先程くらったぎっくりごしも治っているがネコ耳だけはとれなかったようだ。
縄の結び目に出来たわずかな隙間だけを使って縄抜けに成功する。
時計は既に午後九時十五分を指し示している。

さて今回の失敗の原因を冷静に考察してみよう。
まず第一に俺の短慮だ。
確実に勝てる作戦を立案、遂行せずに戦闘の快楽に酔って暴れるに良いだけ暴れた。
ああ、男に戻ると頭がすっきりしてくる。
これが俺にとって一番良いのだろう。
第二には戦闘的な相性だろう。
元々至近距離で戦うこと自体向いていないのだ。
やむを得なかったとはいえそれを避ける努力をしなかった。
第三は?
俺は先程まで一緒に樹に縛られている少女を見た。
やはり……俺も甘いなぁ。
そんなに甘ければ大切な物も失うのにな。
ああ、駄目だ駄目だ、思考が暗くなっている。

「上田明也、これからどうするんだ?」
「アキナリ、遊びに来ましたよ。」
思案していると背後から急に声を掛けられた。
「なんなんだにゃ、おまえら。」
俺はやれやれといった感じで返事をする。

暗がりから一人の少女と一人の青年が現れる。
俺がこの国の政府から盗んだ少女でラプラスの悪魔の契約者である橙・レイモン。
全ての都市伝説の自由と解放を目指す悪の都市伝説、貴人サンジェルマン。
「面白そうな遊びです、私も参加したいのですが……。」
「やめておけ、大惨事になるにょ。」
「上田明也、手ひどくやられていたみたいだな。」
「ああ……、すこしばかり昔を思い出したにゃ。」
「ぼくは過去を匂わせる男は嫌いだ。」
「そのうち話すよ。だけど今は見るにゃよ。
 さて……。」

サクッ

ロープを切ってメルを樹から解放するとサンジェルマンに投げ渡す。
「そいつ頼んだ。」
まず今回は甘えを捨ててみようか。

「おっと……アキナリ、都市伝説無しで戻るのですか?」
驚いたようにサンジェルマンが俺に問いかける。
「能力は俺だって使える、そいつが居なくても戦える……にゃ。」
「上田明也、一人じゃ危ないだろう?手を貸さなくても……。」
橙も心配そうにしている。

答える代わりに口笛を吹く。
チチッ!チチチチチチッ!
その音色に答えて鼠達がぞろぞろと集まり始める。

橙の肩に手を置いて一言だけ呟く。


「任せろ……だにゃ。」


低い声、橙の肩が小さく震える。
そうだ、少しだけだ。
ほんの少しだけ、本気を出す。

「解りました、アキナリ、僕は子守をおおせつかさるとしましょう。
 行きますよ、レイモン。」
全てを理解したような様子でサンジェルマンは帰ることを決めてしまった。
二人と俺のつながりがばれると色々問題だから早くこいつらには帰って貰いたいのだ。
「うん……。」

青年と二人の少女は宵闇の中に消え去った。
今回は負けた。
いっそ清々しい位負けた。


「ここから先は男一匹上田明也によるたった一人の戦争だ。
 死者は無いが生者も無し、勿論聖者は絶え果てた。
 天地に一人生まれたからには一人で咲かせる男道。
 やってやれないことはない。
 見せてやろうか………、マッドガッサー!」

負けたのは良いが……、その事実は許すが。
メルを勝手に触られたという事実が、今妙に頭に来ているのだ。
否、それすら嘘だ。
本当に頭に来ているのは過去、あの時に守れなかった人間のことを思い出しているから。
俺が心の柔らかい部分を失った理由。
もう十年前になるのか、あの頃俺は只の小学生だったのだ。
自分に力がないから、無いから、無いから、無いから……!
いや落ち着け、激情は身を滅ぼす。
冷静に、頭を働かせて、最良の手を打とう。

口笛を吹き鳴らすと生き残りの鼠達がじぶんの元に大挙して押し寄せる。
ざっと見回すと百匹ほどだろうか?
ずいぶん減らされたものだ。
まあ、問題は無い。
新しく鼠を呼んでおこう。
最初の作戦と同じように一階、二階、三階にそれぞれ百匹ずつ。
ただし今回は隠れることを主眼に於いてぎりぎりまで戦闘は行わない。
鼠の侵入経路は換気扇がベストだろう。
俺の予測が間違っていなければ二階の科学室が鼠にとって一番潜入しやすい筈だ。

まずは先程通りかかった学校正門を正面から抜ける。

時刻は午後九時四十八分。

階段にある罠のことは既に聞いているので階段は回避だ。
保健室を真っ直ぐに目指す。
途中にいるゴキブリは鼠に食い殺させようか。
先程まで人の居た形跡があるが気にしない方が良いだろう。
今回は直接マッドガッサーに会いに行く。

「真剣な遊びの時間の始まりだ。」
ガラガラガラとドアを開けて保健室の中に入ると誰もいない。
都合がよい。
ベッドを積み上げてタワーにする。
丁度天井に届くサイズになると俺はその上に乗って蜻蛉切を振るった。

豆腐を切るように天井は崩れてしまう。
崩れた天井の隙間からそのまま二階へ上がることにした。
「……おや?」
上がってきたところは化学準備室らしい。
すこし切る方向を間違えた為か真上に辿り着かなかったようだ。
鼠達は既に待機させているので化学室に繋がるドアは簡単に突破できる。

ガリガリガリガリ……
バキーン!

化学準備室のドアが鼠によって食い破られる。
そのまま化学室に入って辺りを見回す。
危険な物は何も無い。
ついでにいうと普通なら有る筈の人体模型もない。
妙な雰囲気だ。
当然ながら階段を使わずに三階へ抜けるルートも見つからない。

「集中するにょ、意識を極限まで研ぎ澄まして鼠達の声を聞くんだにゃ。
 今こそ俺がより強くならなければならないとき、
 より強くなって、守るべき物を守る力を、自分が正しいと思える力を手に入れるときだにゃ……!」

二階中に鼠を解き放つ。
時刻は午後九時四十五分。
鼠は何者の手でかは知らないが小型の動物と戦闘を始めている。
鼠の死んでいく感覚
鼠の向かっていく感覚
鼠の死んだ場所
そこから敵の動いているルートもまた完全に把握できる。

「解る、解るぞ!俺は今!完璧に!
 この能力を使いこなしている……にゃ!」

自分の身体がまた一歩都市伝説に近づいているのをはっきりと感じる。
だが飲み込まれてはいない。
驚くほど明瞭な意識の中で自分が次に取るべき行動を選択する。

廊下に出た鼠が倒された以上、表は危険。
三階に向かうルートはあるのだろうか?
三階に既に潜入している鼠達を二階に呼び戻すと大半が階段に飲まれていったが一部帰ってくる物があった。
どこだ?どこから帰ってきた?
更に感覚を集中させる。
美術室の辺りだろうか?
そこで何匹もの鼠が爆死している。

罠か?
何故罠を仕掛ける?
それは守りたい物がそこにあるから。
もっとだ。
もっと悪意が必要だ。
他人が厭がること、他人が呪うこと、他人が悲しむこと、他人が苦しむことを考えろ。
守ろうとした物を奪われた人間はどれだけ悲しむ?
自分で解っているはずだ。
ならば罠を仕掛けた人間が守りたがった物を壊してやろう。
悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意
悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意
悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意
悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意
悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意悪意

そうだ……コワシテヤル

「窓伝いに美術室に入り込むにゃ。
 鼠共は別ルートを迂回してくるんだにゃ。」
てきぱきと鼠に指示を出すと自分は化学室の窓を割ってから窓伝いに隣の美術室に入り込む。
鼠が入り込んでいる気配を濃く感じる。
天井裏か何かがあるのだろう。

ピューッピュピューッピュ、ピュ~ピュ、ピュピュ!

某ゲームの曲に合わせて口笛を吹き鳴らす。
天井の裏で鼠達がバタバタと騒ぎ出す。

コトン
鼠達が力を合わせたおかげか隣の美術準備室で何かの外れた音がする。
おそらく天井裏に繋がる道だ。

ドォン!
ドンドン!
ドゴン!
ドカン!


それと同時に次々と爆弾の爆発する音。
幸いこちらの部屋には何も無かったがかなりの鼠が美術準備室で爆死したにちがいない。
美術室から美術準備室に入り込む。
予想通り天井板がはがれていた。
上には天井裏に繋がる道がある。
しかし、爆発の為に机などがあらかた吹き飛んでしまっている。
美術室から適当に机を持ってきて足場にすることにした。
机を使って天井裏に登ると中々かび臭い。
這いながら進んでいくとなんとか出てこられそうな穴があった。


「にゃあああーーーー!到着!」


上田猫也、三階到着。
三階に残っていた鼠達と合流成功。
現在の時刻、午後十時丁度。

そのまま俺は教室を出て歩き出す。
後ろに引き連れるのは真っ黒い
鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠
鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠
鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠
鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠
鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠鼠
鼠達の群。

正しく伝説に詠われたハーメルンの笛吹き男そのままの悠然たる行進。


「そうだニャ、このままこの階に陣取ってやろうかにゃ。
 誰もいないようだし敵の本陣前で籠城戦だなんて中々酔狂な作戦だにゃあ……。」
ちなみにCV:中田譲治である。

あれほど障害になった階段も今では唯々見下ろすばかり。
見下ろしていると一人の男を発見した。
鼠と一匹つかみ取って投げつけるとその鼠が一瞬で異空間に引きずり込まれる。
あれが此処の階段の防御システムを司る男か……。
銃があれば倒せるのだが今回は殺し合いではない。
銃弾だってあの階段に防がれる可能性が高い。
そうだな、紳士的に挨拶と行こう。

「やぁ、そこのおにいさん。
 こんばんわだにゃ。」

何度でも言おう
CV:中田譲治だ。

「お、お前誰だ!?
 何故その場所に!三階にいる!
 何より何故猫耳をつけている!男の猫耳ってひどいってレベルじゃねえぞ!!!」
残念だがそれには同意だ。

「細かいことは良いではないか。
 俺の名前はハーメルンの笛吹き、少しばかり組織と縁のある契約者さ。
 以後お見知りおきを……。」
「ハーメルン……?まさか!!」
どうやら聞き覚えがあるようだ、ありがたい。

知名度があることは都市伝説同士の戦闘では優位に働く。
勿論それは弱点を露呈させることもあるがまあ素直に今回は喜ぼう。

「とりあえず俺は三階まで突破させてもらった。
 能力を見たところお前の契約能力は十三階段かな?
 今、俺はお前に手出しは出来ないが、お前も俺を仕留める時間はない。
 今、俺は屋上への階段を登ることもできないがお前のいる場所をこうやって上から眺め卸し続けられる。
 ………のだにゃあ。」

「だからどうしたっていうんだ?」

どうということはないのである。

「いやなに、暇だからあんたとおしゃべりしようかとおもってにゃあ。」
「断るぞ。」
「じゃあ俺もこの三階で後続を待たせて貰うニャア。あんたも仲間を呼ぶなりなんなり好きにするんだにゃ。
 俺はお前の仲間が来ない限りここでゆっくり休んで体力を回復するんだにゃ。
 何せ俺は男一匹たった一人の大戦争を繰り広げている最中だにゃ。
 あんたにはあのヴェートか魔女の一撃とやらを呼んでくれることを期待するにゃ。」
「………………お前はなんなんだ?」

十三階段の契約者に若干困惑の色が見える。
そうだろう。
奴に俺の狙いは解らない。

俺は大量の鼠を三階に展開して新たなる来訪者を待ち構えた。

【現在時刻、午後十時十分】

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