19:51 路上
未だになんの当てもなく学校町を走り回る三人。だがそのときだった。
「少年!上です!」
「!」
「!」
オーナーの言葉に頭上を仰ぎ見ると、そこには巨大な鳥の姿が見えた。
「あれが……教会に落ちてた羽の持ち主か…?」
「そうでしょうね。あれも都市伝説の様です。まさか本当に飛行機サイズとはとは思いませんでしたが」
「ふむ、どうやら中央区の高校の真上辺りぢゃのぅ?」
「よっしゃ行くぞ!」
「あ、待って下さい……って行ってしまいましたね。転移した方が早いんですが……」
「あほぢゃからのう、あの子は」
「そうでしょうね。あれも都市伝説の様です。まさか本当に飛行機サイズとはとは思いませんでしたが」
「ふむ、どうやら中央区の高校の真上辺りぢゃのぅ?」
「よっしゃ行くぞ!」
「あ、待って下さい……って行ってしまいましたね。転移した方が早いんですが……」
「あほぢゃからのう、あの子は」
そう言って二人は少年の後を追う……
20:15 職員玄関前の塀
「あの鳥は!?」
「…もう見えませんね。それと、校舎の中から幾つかの都市伝説の気配がします。都市伝説そのものか、契約者かは直接見ないと解りませんが」
「…もう見えませんね。それと、校舎の中から幾つかの都市伝説の気配がします。都市伝説そのものか、契約者かは直接見ないと解りませんが」
鳥の事は気になるが、このタイミングで校舎内にたまたま別の都市伝説が居たとは考えにくい。
「……中に入ろう。携帯のにーちゃんや司祭さん、あとよく知らねー兄ちゃんとかが居るかもしんない」
「ですが気をつけて下さいね?何があるか解りませんから」
「ああ。んじゃばーちゃん。一丁頼む」
「やれやれ、人使いが荒いのぅ?……よっこいせっと!」
「ですが気をつけて下さいね?何があるか解りませんから」
「ああ。んじゃばーちゃん。一丁頼む」
「やれやれ、人使いが荒いのぅ?……よっこいせっと!」
ひきこさんが少年とオーナーを壁の上まで放り投げる。壁の上に着地した二人は、下にいるひきこさんを二人がかりで引き上げ、そのまま敷地内へと降りた。左には校舎。右は壁だ。
先に見える職員玄関から校舎の中に入ろうとする一行だったが、その時、少年が何かに気付く。
先に見える職員玄関から校舎の中に入ろうとする一行だったが、その時、少年が何かに気付く。
「なんだ?この模様?」
「どうしましたか?」
「いやなんか至る所に変な落書きが…」
「どうしましたか?」
「いやなんか至る所に変な落書きが…」
その模様を目で追っていった時、屋上に人影が見えた。
「屋上に……女の人?…携帯のにーちゃんじゃないな。ってゆーかなんか持って「こんのバカ孫!見てないで避けなっ!」ぐふぉっ!?」
いきなり祖母に蹴り飛ばされた少年。抗議の声を上げようとしたが、目の前に突き立った物を見て顔色を変える。
「矢!?」
「オーナーさん、何か盾になる物出せるかのぅ?」
「そうですね……これなどはどうでしょう?」
「オーナーさん、何か盾になる物出せるかのぅ?」
「そうですね……これなどはどうでしょう?」
そう言ってオーナーが呼び出したのは全長が少年程もある大きさのおろし金。刺の部分がギラギラと光っている。
「また凶悪そうなもんを……」
「ちょうどいいぢゃろ。あんたはそれを持っておいき」
「ひきこさんは何かいりますか?」
「いんや、あたしはこの身体一つで十分ぢゃよ」
「ちょうどいいぢゃろ。あんたはそれを持っておいき」
「ひきこさんは何かいりますか?」
「いんや、あたしはこの身体一つで十分ぢゃよ」
そうですか?と呟くとオーナーは自分用に中華包丁を呼び出す。こちらは1.5m程の大きさだ。
「しっかし、なんだあのねーちゃんは!?いきなし弓矢とかマジありえん!」
「襲ってくるならば倒すだけですが…少々距離がありますね。中から階段で行きますか?」
「まあ、それがいいだろうねぇ」
「襲ってくるならば倒すだけですが…少々距離がありますね。中から階段で行きますか?」
「まあ、それがいいだろうねぇ」
喋っている間にも次々と矢は降ってくるが、ひきこさんはひらひらとした身の動きで。オーナーと少年は手にした武器で全て防いでいた。
「クソッ!しつっこいなー……って、攻撃が止んだ?」
じりじりと職員玄関に向かって進んでいた時、不意に降り注いでいた矢が止んだのに気付く。
さっきまで金属同士がぶつかる甲高い音が鳴り響いていた場所は、今は静まり返っていた。
さっきまで金属同士がぶつかる甲高い音が鳴り響いていた場所は、今は静まり返っていた。
「諦めたのかな?」
「いえ、違うでしょう。彼女も契約者でした。今の攻撃はただの弓だったようですし、次はおそらく契約した都市伝説で来ると思います」
「………むぅ?二人共静かにっ!」
「いえ、違うでしょう。彼女も契約者でした。今の攻撃はただの弓だったようですし、次はおそらく契約した都市伝説で来ると思います」
「………むぅ?二人共静かにっ!」
そう言って身構えるひきこさん。少年とオーナーも遅れて気付く。
ズルッ、ズルッと、どこからか巨大な何かが這い寄ってくる音が聞こえる。しかしその姿は見えない。
ズルッ、ズルッと、どこからか巨大な何かが這い寄ってくる音が聞こえる。しかしその姿は見えない。
「なんだこの音?一体どこから…」
「下ぢゃっ!」
「下ぢゃっ!」
下?
辺りを見渡してみると、少し先にあるマンホールの蓋がカタカタと揺れているのを見つける少年。それを見た瞬間、過去の記憶が噴き出てきた。
辺りを見渡してみると、少し先にあるマンホールの蓋がカタカタと揺れているのを見つける少年。それを見た瞬間、過去の記憶が噴き出てきた。
「……っ!……マンホール……そんな………そんな筈はっ……!」
脳裏に過ぎるのはオーナーと契約した時の記憶。
助ける事が出来なかった同級生達の記憶。
目の前で失われた、少女の記憶。
手にしたおろし金を握りしめる。ギチギチと手の中で歪む金属の音がする。
なぜか解るのだ。そこから何が出て来るのか。……『何』が居るのかが。
助ける事が出来なかった同級生達の記憶。
目の前で失われた、少女の記憶。
手にしたおろし金を握りしめる。ギチギチと手の中で歪む金属の音がする。
なぜか解るのだ。そこから何が出て来るのか。……『何』が居るのかが。
……そして、悪夢は蘇る……
「来るぞい!二人共、用心せい!」
「解っています。……少年?」
「……あ……あぁあ……」
「少年!?」
「解っています。……少年?」
「……あ……あぁあ……」
「少年!?」
明らかに様子のおかしな契約者に向かって声をかけるが全く反応が無い。……いや、目の前のマンホールをじぃっと見つめたまま、動かない。
オーナーが一旦この場から離れる事を提案しようとしたその時、マンホールの蓋を押し退けて中から何かが這い出して来た。
オーナーが一旦この場から離れる事を提案しようとしたその時、マンホールの蓋を押し退けて中から何かが這い出して来た。
「あれは……【下水道の白い鰐】!?まずいっ!」
「ほっほっほっ、こりゃ大物だねぇ?何、やり甲斐があるってもんさ」
「違います!ひきこさん、少年を止めて下さい!」
「むぅ?どういう意味ぢゃ?……ぬぅっ!?」
「ほっほっほっ、こりゃ大物だねぇ?何、やり甲斐があるってもんさ」
「違います!ひきこさん、少年を止めて下さい!」
「むぅ?どういう意味ぢゃ?……ぬぅっ!?」
オーナーの言葉を疑問に思い、ひきこさんが振り向こうとすると、突然背後から突き飛ばされる。
その相手は自身の孫。
しかしその目は血走りその体からは異様な雰囲気が漂っていた。
その相手は自身の孫。
しかしその目は血走りその体からは異様な雰囲気が漂っていた。
「なんデだ…なんでテメエがコこニ居ル…
……こンドは、ダれヲ、クウツもリダァぁアァァッッ!!!」
……こンドは、ダれヲ、クウツもリダァぁアァァッッ!!!」
地面を足でえぐりながら、一直線に白い鰐へ向かって駆け出す。
迎え撃つ白い鰐は、その巨大な顎で噛み付こうとする。が、直前で武器ごと回転し、その慣性で突進の方向を変えた少年。
迎え撃つ白い鰐は、その巨大な顎で噛み付こうとする。が、直前で武器ごと回転し、その慣性で突進の方向を変えた少年。
「アアァぁァっ!!」
その勢いのまま、がら空きになった白い鰐の横っ面におろし金を叩き付ける。
「どうしたっていうんだい、あの子はっ!?」
「トラウマみたいなものです!以前、彼の友人が別の白い鰐に殺されていて、その時も今の様に!」
「トラウマみたいなものです!以前、彼の友人が別の白い鰐に殺されていて、その時も今の様に!」
二人がかりで押さえ付け様としたが、おろし金を振り回している為、近付く事が出来ない。
そして少年の手にしている武器が武器なので、白い鰐に簡単には致命傷を与えられない。
そして少年の手にしている武器が武器なので、白い鰐に簡単には致命傷を与えられない。
「止めなくては……!このまま戦闘が長引けば、完全に都市伝説に……いや、私に飲み込まれるかもしれません!」
「ぢゃがどうやってぢゃ?ありゃあたしでも迂闊に近寄れんよ?」
「それは……」
「ぢゃがどうやってぢゃ?ありゃあたしでも迂闊に近寄れんよ?」
「それは……」
その間にも戦闘はますます激しさを増していく。
白い鰐の尻尾の一撃を受け流すとそのまま独楽の様に回転、縦にしたおろし金を白い鰐の後ろ脚の根元に振り下ろす。
何度も、何度も何度も。
白い鰐の尻尾の一撃を受け流すとそのまま独楽の様に回転、縦にしたおろし金を白い鰐の後ろ脚の根元に振り下ろす。
何度も、何度も何度も。
「クタばレくタバレくたバリヤガレェェェ!!」
「グルォォォ!」
「グルォォォ!」
流石に少しは効いたのか怒った様に体当たりを仕掛ける白い鰐。少年は足の裏でそれを受け止めると、土煙を上げながら一気に距離を空ける。
「…ダ…レモ……こロ……ス…ぎギ……マもル…守ッテ………
お…レ……が…貴サマ……シ、ね…………」
お…レ……が…貴サマ……シ、ね…………」
ギチギチと軋んだ声を放つ。そして再び突進しようとした時、ズンッ…、と遠くの方で爆発音が響く。
その音に動きを止める少年。
その音に動きを止める少年。
「…バ…ク……発…?」
(…っ!今なら…!)
(…っ!今なら…!)
動きを止めた少年にオーナーが駆け寄り、肩を掴んで叫ぶ。
「思い出しなさい!貴方はここに何をしに来たのですか!?こんなところで道草を食っている暇はない筈ですよ!
携帯の彼や司祭様を、助けに来たんでしょう!?」「おーナー…?……オレハ……デも…あいツヲ」
携帯の彼や司祭様を、助けに来たんでしょう!?」「おーナー…?……オレハ……デも…あいツヲ」
オーナーの呼びかけに少しだが応える少年。
その隙を逃さずひきこさんに指示を出す。
その隙を逃さずひきこさんに指示を出す。
「今です!校舎の中に入りましょう!」
「あいよっ!」
「あいよっ!」
職員玄関の扉を破るひきこさん。取って返して、二人で少年を引きずりながら中へと侵入する。
「そこに職員室があるみたいです。ひとまずそこに隠れましょう」
入ってすぐの所にあった職員室に入る三人。少年の意識は朦朧としているが、暴れ出す様子は無いようだ。
「…ゴメン……オレは…また……」
「このあほぅが。心配かけさせおって」
「仕方の無い事です。傷の手当てをしますから動かないで下さい」
「…うん」
「このあほぅが。心配かけさせおって」
「仕方の無い事です。傷の手当てをしますから動かないで下さい」
「…うん」
少年の皮膚は所々破れ、血が出ている。無理をした反動だろう。すぐには動けないかもしれない。
オーナーは少年の治療を開始した。
オーナーは少年の治療を開始した。
20:35 職員室侵入