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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 恐怖のサンタ-a01

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恐怖のサンタ 日常編01


「む……くっ……」

 とある廃ビルの屋上。
 隣町との境界付近に位置するそのビルの上で、その男は目を覚ました。
 辺りは闇に包まれ、月明かりだけが男を照らし出している。
 男がその地へと落下してきてから、優に8時間が経過していた。
 普通の人間ならば、痛みと寒さですぐにでも目が覚めそうな状況。
 しかし、男の体は少々丈夫だった。良い意味でも、悪い言意味でも。

「全く、酷い目にあった……」

 元より、それは男の邪心と軽率さによって引き起こされた事態であるのだが……彼はそのことに、気づいてすらいない。
 こきこきと何度か首を鳴らして、男は自らの服を探り始めた。
 拳銃が数丁に、良く砥がれたナイフ、そしてなぜかネコミミなど、ごちゃごちゃと色々なものが、ビルの屋上に並べられていく。
 そして、屋上で闇市でも開けそうな量へと、それは達し

「…………ないか」

 並べられたそれらを見て、男――上田明也は小さく、溜息をついた。
 彼が捜していたのは、モバイルPCか、あるいは携帯電話のような小型通信機。
 もしモバイルPCがあれば「赤い部屋」で、もし携帯端末があればメルにでも迎えい来させるつもりだったのだけど――
 上田は、自らの置かれた状況を再認識して

「…………ふぅ」

 また一つ、小さなため息をついた。
 そのまま座った状態で、広げた所持品を一つ一つ、回収しては服へとしまい込んでいく。

「さて、と……これからどうするか」

 ――数分後、全ての所持品を元の状態へと戻し、上田は静かに立ち上がった。
 普通なら、このまま一直線に家へと帰るべきなのだろう。
 ……しかし、「それではつまらない」と、上田の心のどこかが叫んでいた。
 もっと正確に言うならば、「俺は何も悪くないのに、何故こんな目にあわされるのか?」という腹立ちからきているのだが……もちろん彼は、それに気づいていない。

 ――――さあ、何をしよう
 上田は心の声にひかれるまま、そう無邪気に、しかし残酷に思考を巡らせ

「…………ん?」

 ふと、自分の背後に人の気配を感じた。
 ハーメルンの笛吹きと契約した彼だからこそ感じる、かすかな気配。
 それを明確に認め……上田はすぐに、振り返った。
 いつの間に取り出したのか、その両手には大きな、黒光りする拳銃が一丁ずつ、握られている。

「こんな夜更けに気配を消して人の背後に立つなんて、趣味が悪いとしか思えないな」

 銃口の向けられた先。
 闇に紛れるように、一人の少女が立っていた。
 赤い服を着た、16才くらいの女の子。
 ……残念ながら、上田の趣味からは少し外れている。

「上田明也さんですね?」

 向けられた銃口に全く臆する事無く、少女は質問を返した。
 にこにこと変わらない笑顔は愛嬌があるようにも、また挑発しているようにも見える。
 ――――撃てるものなら、撃ってみろ、と。
 それを見て、上田はしかし、眉一つ動かさず

「上田明也? 知らないね。俺は笛吹丁、勤労意欲の塊みたいな私立探偵だ」
「ああ、笛吹丁さんでも構いませんよ、私としては」

 にっこりと、笑みを作って答える少女。
 どこから取り出したのか、その手には一枚の紙が握られていた。
 紙を右手に、少女は淡々とそれを読み上げていく。

「さっさと終わらせちゃいましょう。上田明也。契約都市伝説はハーメルンの笛吹き、村正、赤い部屋。また付喪神も同様に使用可能、と。……で、肝心の今日に至るまでのあなたの振る舞いですが――――」

 ――殺人、虚言、二股などなど。
 今まで上田の行ってきた数々の暴虐(+α)が読み上げられていく。
 それも事細かに、その話の細部に至るまで。

「――――以上の点をもちまして、上田明也に対して、担当者はできる限り最大限、彼を苦しめること、と。……あ、ちなみに偽名に関しては数が多すぎたんで割愛しました」

 少女が話し始めてから約二十分。
 その間、二人の立ち位置は全く変化していなかった。
 上田は銃口を下げた状態で、少女は片手に紙を握ったままの状態で。
 ……そんなどこか硬直したような空気を全く気にすることなく
 少女は楽しそうに、口を開いた。

「ささ、ちゃっちゃとやっちゃいましょー!」

 用紙を持っていない、片方の手。
 そこに、白い袋が出現していた。

「上田明也さんには、できる限り苦しんでもらわなきゃいけないんで、私もがんばりますよー!」
「…………もし、いらない、と言ったら?」

 軽く口元を曲げて、上田はどこか楽しそうに、面白そうに笑った。
 そんな上田に、少女は軽く首をかしげて

「じゃあ、逃げるか、私を倒せばいいんじゃないですか?」

 ――――もし出来るのなら、ですけど。
 そう少女は言い……同時に、上田は引き金を引いた。
 バン、と少しこもったような音が二度、屋上から響き渡る。
 発射された弾丸は、正確に少女の赤い服を、そして腹部を貫き

「……ほうほう、面白いじゃないか」

 少女の腹部に一瞬できた傷も、服も、しかしすぐに回復、再生した。
 それを見て、上田はくつくつと笑いを笑いを洩らす。

「もう、終わりですかー?」

 上田がそれ以上撃ってこないのを見て、少女はつまらなそうに、そしてどこか物足りなさそうに眉をひそめ
 その手に持った袋を、開けた。

ボウンッ!

 同時に袋から噴出する、大量の白い煙。
 一瞬にして、それが上田を、そして少女をも、包み込んでいく。

「袋から煙とはまた古典的な……吸ったら年でも取るのかい?」

 煙の中、どこか余裕のある顔で、上田は面白そうに笑い続けている。
 ……しかしそれとは対照的に、少女は全く笑っていなかった。
 今の内に笑っておけばいい、と。
 この後何が起こるのかを知っている少女は、ただそうとだけ思った。
 その間も、煙は辺りを満たしていき――――

 ――――そして、数分後。
 屋上から、だんだんと煙が薄れていった。
 徐々に、徐々に、ゆっくりと。
 ……やがて、屋上に立つ人間が視認できるようになり
 そこには、「三人」の人間が立っていた。

 一人は、赤い服を着た少女。
 一人は、黒く長い髪をした、女性。
 そして、もう一人は

「…………にゃ」

 ネコミミを生やした、上田明也。
 そして彼の全身を覆う服は、ゴスロリ。
 そして彼の頭から流れ落ちているのは、なぜか長くなった黒髪。
 ゴスロリに、ネコミミ。
 黒のロングに、ネコミミ。

「…………あら」

 突然現れた女性は、上田のその姿に気づき

「………………」
「………………」
「…………かぁいい」
「……っ!?」

 上田の頬を一筋の汗が、伝った。

――――――――上田明也 vs 追撃者――――――――ー        

 攻防戦開始の、合図である。

「かぁいい…………」
「待て! 俺は男だ! そしてさっきお前が殴り飛ばした男だにゃ!」
「ゴスロリにネコミミ…………かぁいい……」
「かぁいくにゃい! 断じて絶対かぁいくないにゃ!」

 上田がそう言った途端、さっと目の前に鏡が差し出された。
 赤い服の少女の持ったそれに映し出されたのは、うっすらと化粧すらした、ネコミミ姿の上田の顔。

「……あら、かぁいい」

 上田は思わず、そう呟いて
 ハッとすぐに、我に返った。

「かぁいくにゃい! ぜんっぜん、全く、これっぽちもかぁいくないにゃーっ!?」
「はううぅぅぅうううううううう」
「待て! 待つんだ二や! 話せばわかる。そうだにゃ、ここはじっくり話し合って――――」
「おっ持ちかえりぃぃぃいいいいいいーーーーーーーっ!!」
「ぎにゃぁぁあああああああああああーーーーーっ!?」

―――――――――上田明也 LOSE...―――――――――

 抵抗虚しく、追撃者に抱きかかえられる上田明也。
 一瞬で、彼女は闇へと紛れ
 後には少女が一人、残された。
 少女は、追撃者が見えなくなるまで、その後ろ姿を見送り

「今日のお仕事終了ー!!」

 んー、と大きく伸びをした。
 びりびりと、鼻歌を交えながら、用紙を引きちぎる少女。
 その顔は、満面の笑みで彩られていた。

「さーて、やることはやったし、『観察』に戻りましょー!」

 パチン! と。
 少女が指を鳴らした瞬間、少女の足元から煙突が一本、せり上がってくる。
 それはすぐに、少女を覆い――――

「待っててね、愛しの人よーっ!!」

 ――――ハートマークがついていそうな少女の言葉を残して、消えた。


「ぎぃにゃぁぁぁぁあああああああああああああああーーーーーーっ!!」

 ……その夜、一時間もの間猫の叫びが学校町中に響き渡ったとか、いないとか。
 その真偽は誰にも、分からない。

【終】




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