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連載 - 黒服Hと呪われた歌の契約者-54n

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「なぁ、辰也」
「何だよ」
「もっと怒ってもいいんだぞ?」

 佳奈美に想いを告げて以降
 黒服Hは、復讐のために利用していた相手に、謝罪をしていた
 …復讐を、やめるつもりは毛頭ないが
 利用していたその事実を、佳奈美に言われたとおり、謝罪していたのだ
 ヘンリエッタとG-No.1に謝罪して…その次の謝罪相手が、辰也だった
 その謝罪に、ほぼノーリアクションだった辰也にかけた言葉が、冒頭のそれである

「別に、俺だってお前を利用してるんだし、怒る必要はねぇからな」

 さらりと、そう答える辰也
 どっちもどっちだ、と割り切った表情で言ってくる

「お前が復讐を止める、とかぬかしやがったら、怒るがな」
「安心しろ、止める気はさらさらねぇ」
「なら、いいんだよ」

 辰也の答えに、Hは小さく苦笑した
 ……いっそ、怒ってくれた方がどれだけ楽だったか
 このような態度をとられると、逆に申し訳なくなってしまう
 …自分にも、その程度の良心は残っていたらしい事実に、少し驚いてもいるが

「で?その謝罪行脚、残りは誰相手だ」
「んー、愛華と明日達だな」
「どマゾ女と正義の味方気取りか。正義の味方気取りにたっぷり怒られとけ。どマゾは怒らないだろうからな」

 その呼び方はやめとけ、と嗜めつつ…辰也の言葉を、あまり否定できない


 きっと、愛華は怒らないだろう
 むしろ、「もっと利用してくださいまし」、と、それくらい言ってきそうで怖い

 彼女からの好意には気づいていた
 ただ、気づかぬふりをし続けた
 こちらが気づかぬふりをしている事すら、彼女は見抜いてきて
 決して叶わぬ想いと知りながらも、それを貫き続けてきていたのだ

 …その強さが、Hは少し、羨ましい
 自分は、叶わぬと思えば諦めて、その癖して未練を持ち続ける、タチの悪い性格だから


「……なぁ、辰也」
「あ?今度は何だよ」

 怪訝そうに、Hを見上げてくる辰也
 いつの間にか、自分が都市伝説に飲み込まれた頃と同じ歳になろうとしている辰也を見下ろし、Hは小さく苦笑し、尋ねる

「…俺は………人間に戻っても、いいのかねぇ…?」


 こんなにも、薄汚い血で汚れた復讐鬼が
 今更、化け物から人間に戻っても、いいのか?

 佳奈美と共に生きていこうと決めた今ですら
 それに、かすかに迷いを抱える


 だが、Hのその迷いに
 辰也は、呆れたようにため息をついて

「…誰よりも人間に戻りたがってたくせに、今更何言ってやがる。戻りたければとっとと戻れ」
「お前な…とっとと戻れ、つっても、ドクター次第だろうがよ。H-No.9のせいであそこの診療所も忙しいだろうに」

 それに、と
 体内に仕込まれた賢者の石の存在を感じつつ…低く、呟く

「……連中を皆殺しにするまでは………まだ、戻れねぇさ」

 復讐を果たすには
 脆弱な人間の身では、難しいから

 だから、残りあと四人
 それを全員殺すまでは、まだ
 まだ、人間に戻るわけにはいかないのだ

「別に戻ってもいいんだぞ。残りの連中は、全部俺が殺してやってもいいんだし」
「お前さんじゃ、全員はきついだろうさ。俺もある程度ヤるよ」


 ……特に
 H-No.1
 そいつだけは、自分が殺してやろう
 あの不死身の男の息の根を、自分が止めてやるのだ

 他の三人は、辰也に譲るとしても
 そいつだけは、必ず


(……辰也とあの野郎を、遭遇させる訳にゃあいかないしな)
「…………?何だよ」

 Hの視線に、何かを感じたのか
 やや気味悪そうに、後退してきた辰也

 何でもねぇよ、と子供相手にするように頭を撫でて
 子供扱いするな、と、Hはその手を叩き落とされたのだった












 世界には知らなくてもいい事実が存在している
 知らぬままでいた方が良い事実が存在している



 あんな事実を、お前さん達が知る必要なんざないんだ

                      Black Suit H





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