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連載 - Project-ACE-01

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kemono

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Project-ACE_case01:Testing /運用試験/


 ――――これは、朝比奈秀雄が倒される少し前のお話――――

「こちらNo.206。No.218、状況報告を。」
『黒服二名による誘導を継続中。数は17から変化なし。残り5分で目標地点へ誘導完了見込みです。』
「了解した。」

 そう言うと黒服は一旦通信を切り、再度通信をつなげる。

「こちらNo.206。回収班、状況報告。」
『こちら回収班、そこから南へ180mの地点で待機中。いつでも向かえますよ。』
「了解。フェイズ2へ移行する。」

 再び通信を切り、通信端末をしまう。
 その黒服のナンバーは、A-No.206。いわゆる強硬派に属する黒服である。
 No.206は一人の青年と共に、空き地の中央に立っていた。
 青年の目はうつろで、ボーっと一点を見つめている。
 黒服はその青年を見ず、一言呟く。

「code:06、スタンバイ。」

 その言葉に青年がピクリと反応し、目にかすかに光を宿す。

「命令、『不殺』、『制圧』。目標、『コーク・ロア被害者』。」
「命令了解。」

 黒服の言葉に短く返し、青年は宙の一点を見つめ続ける。
 さきほどとは違い、その目は鋭い眼光を放っていた。

*



 誰かが走る足音が空き地に響く。
 最初に空き地に入ってきたのは二名の黒服。だが青年はそれを一瞥すらしない。
 それに続くように、目に狂気を宿し、うなり声を上げる男たちが…コーク・ロアの被害者集団が、空き地へと足を踏み入れた。
 それを見た途端、青年が反応を見せる。

「目標補足。」

 青年が呟くと同時に、その体がかすかに震えた。
 それに呼応するように、彼の皮膚がピシリ、ピシリとひび割れる。
 メキメキと音を立てながら、骨格や筋肉が太く、大きく肥大する。
 身長もそれにあわせて伸びていき、2mは超えるであろう体躯へと成長する。

 その現象が止んだとき、青年の容姿はおおよそ人とは言えない物へと変貌していた。

「ウオオオオオォォォオオオム!!!!」

 ”青年であったもの”が雄たけびを上げ、コーク・ロア被害者の集団へ駆ける。
 そして彼と集団が激突…と同時に、コーク・ロア被害者のうち何人かが文字通り”吹っ飛んだ”。
 そいつらが落下するのも待たず、彼は周囲の無事だった人間たちへ襲い掛かる。
 あるものは足の骨を折られ、あるものは頭部への打撃で気絶し、あるものは腹部を殴られて血を吐く。
 最初に吹き飛ばされた者たちが地面に落ちたとき、既に全体の1/3が地面に横たわっていた。

「ひっ…ひいいいぃぃぃ!!?」

 それを目の当たりにした残りのコーク・ロア被害者たちが怯えている。
 麻薬作用によって頭が狂っていても、彼は恐怖の対象となりえたのだろう。

 彼はそんなものなどお構いなしに、手近なものから次々と倒していく。
 中には刃物を持っていた者もいたが、鱗のように硬質化した彼の皮膚に傷一つ負わせることすらできない。
 反撃しようと立ち向かった者も、逃亡しようと背を向けた者も、彼は残らず叩き伏せる。

「この化け物があああああああ!!!!」

 最後の一人が彼に襲い掛かる。
 彼は近づいてきた男にあわせ、横なぎに腕を振るった。
 それだけの動作で男の体が数メートルも吹き飛び、男は白目を剥いて気絶した。

*



 彼は周囲を見回す。
 空き地の中にいるのは、地面に倒れているコーク・ロア被害者たちと、彼らを誘導してきた黒服。
 そして最初に青年の傍らにいた黒服A-No.206が、再び彼の元へと歩み寄る。

「code:06、ダウン。」

 その言葉と同時に、彼の体が弛緩する。
 メリメリと音を立てて体が細くなり、身長が縮み、皮膚がポロポロと剥がれ落ちていく。
 その現象が止んだとき、彼の体は元の青年に戻っていた。
 それを確認した後、A-No.206は通信端末を取り出す。

「フェイズ3へ移行。」

 短く告げると、20秒もせずに黒塗りの高級車と黄色い救急車が数台、その場に到着した。
 それらから黒服と白衣の男たちが次々と降りてきて、地面に倒れているコーク・ロア被害者へと歩み寄る。
 それとすれ違うように、A-No.206と青年は黄色い救急車の一つへと乗り込んだ。

*



 白衣の男が倒れた男を確認した後、黒服の男がそれらを担いで黄色い救急車へと運んでいく。
 最後の一人が救急車に乗せられると、白衣の男の一人がA-No.206の乗っている救急車へと駆けてきた。

「全員分のチェックと収容完了です。重傷者ばっかりですけど、全員命に別状はありません。」
「了解。そいつらの処置はそちらへ一任する。」
「了解しました。…その化け物、使えますかね?」
「対象を認識し、殺さない程度の力の加減もできている。事後検査の結果次第で実用も可能だろう。」

 そう言って黒服と白衣の男は、傍らに横たわる大きなカプセルに目をやる。
 その中には先ほどの青年が、多数の管を体につけて眠っていた。

「燃費の悪さは問題だと思うんですがね。活動のたびに大量の栄養と睡眠が必要ってのはいかがなものかと。」
「大量の栄養と睡眠さえ与えれば、優秀な自立兵器と同義だ。」
「燃料さえ補給してやればあとは勝手にやってくれる、と。たしかに兵器としてこれ以上、魅力的なものはないですねぇ。」

 くっくっく、と低く、愉快そうに笑う白衣の男。
 黒服はそれにはかまわず、通信端末を取り出す。

「任務完了。帰還する。」
『No.206、任務完了を確認。お疲れ様でした。』

 黒服が通信を終えると同時に、黄色い救急車と黒塗りの高級車が走り出す。
 その車列が見えなくなったとき、空き地には血の跡すら残っていなかった。


【Project-ACE_case01:Testing /運用試験/】  END.

*



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