小ネタその15 不良(チンチラ)
夜道を歩いていたら誰かに呼び止められ、振り返っても誰もいない
そこには猫が一匹いるだけだった
動物が喋る、そんな話は世界各地にあり神話から怪談まで幅広く存在しているのだが
そこには猫が一匹いるだけだった
動物が喋る、そんな話は世界各地にあり神話から怪談まで幅広く存在しているのだが
「おう、この辺りは誰のシマだと思ってんだ、アァ? ネズミみてぇにチョロチョロと目障りなんだよ」
「んだぁ? 毛並の良さそうなボンボンが。子猫ちゃんは家帰ってママのオッパイでも吸ってろ」
交錯する視線が火花を散らす
それぞれがこの界隈では札付きの悪で、やらかした悪事や喧嘩の数は半端ではない
「最近は骨抜きの犬っコロも姿を見せねぇ……邪魔ぁ入んねぇぞ?」
「そりゃあこっちのセリフだ……煽ってんのか? テメェから手ぇ出す度胸も無ぇか? アァン?」
血の気の多い雄が路上で出会えば、それが喧嘩にならぬはずはない
「英国生まれが紳士だけと思うな、ブッ殺してやらぁ!」
片方はエメラルドグリーンの瞳をした銀色の長い毛並をした猫
ペルシャ猫の一種で、毛色からチンチラと呼ばれる種である
「絶滅危惧種舐めんじゃねぇぞ! 窮鼠猫を噛むどころじゃねぇっての見せてやらぁ!」
片方は南アメリカ原産の齧歯類、やはりこちらもチンチラである
本来はどちらとも気性は大人しい種なのだが、これもまた都市伝説の影響なのだろうか
そんな二匹の獣がぶつかり合おうとしたその瞬間、首の後ろを摘み持ち上げられる
「あ、見つけたー。夜は出歩いちゃダメって言ってるでしょー」
「お前、体そんな強くないんだからケージから出るなって何度言えば判るんだ」
「あっ、てめぇ! 男の戦いを邪魔すんじゃねぇ!」
「男の戦いも良いけど、明日予防接種あるから早く寝るようにって言ったでしょ。ごめんねー、そっちの子にも迷惑掛けちゃって」
ペルシャ猫の飼い主の女性が、苦笑を浮かべて頭を下げる
「うちのもどうも喧嘩っ早くてね。今度お詫びに行くよ。ああ、暗いし家まで送っていくよ」
「俺ぁ頭下げるつもりは無ぇぞ! 聞いてんのか!」
チンチラの飼い主の男性が、人懐っこい笑顔を浮かべながら、女性と並んで歩き始める
仲睦まじい二人の飼い主をよそに、それぞれ逃げられないように抱えられた二匹は、別れるまでの間ずっと罵りあいを続けていたのであったとさ
「んだぁ? 毛並の良さそうなボンボンが。子猫ちゃんは家帰ってママのオッパイでも吸ってろ」
交錯する視線が火花を散らす
それぞれがこの界隈では札付きの悪で、やらかした悪事や喧嘩の数は半端ではない
「最近は骨抜きの犬っコロも姿を見せねぇ……邪魔ぁ入んねぇぞ?」
「そりゃあこっちのセリフだ……煽ってんのか? テメェから手ぇ出す度胸も無ぇか? アァン?」
血の気の多い雄が路上で出会えば、それが喧嘩にならぬはずはない
「英国生まれが紳士だけと思うな、ブッ殺してやらぁ!」
片方はエメラルドグリーンの瞳をした銀色の長い毛並をした猫
ペルシャ猫の一種で、毛色からチンチラと呼ばれる種である
「絶滅危惧種舐めんじゃねぇぞ! 窮鼠猫を噛むどころじゃねぇっての見せてやらぁ!」
片方は南アメリカ原産の齧歯類、やはりこちらもチンチラである
本来はどちらとも気性は大人しい種なのだが、これもまた都市伝説の影響なのだろうか
そんな二匹の獣がぶつかり合おうとしたその瞬間、首の後ろを摘み持ち上げられる
「あ、見つけたー。夜は出歩いちゃダメって言ってるでしょー」
「お前、体そんな強くないんだからケージから出るなって何度言えば判るんだ」
「あっ、てめぇ! 男の戦いを邪魔すんじゃねぇ!」
「男の戦いも良いけど、明日予防接種あるから早く寝るようにって言ったでしょ。ごめんねー、そっちの子にも迷惑掛けちゃって」
ペルシャ猫の飼い主の女性が、苦笑を浮かべて頭を下げる
「うちのもどうも喧嘩っ早くてね。今度お詫びに行くよ。ああ、暗いし家まで送っていくよ」
「俺ぁ頭下げるつもりは無ぇぞ! 聞いてんのか!」
チンチラの飼い主の男性が、人懐っこい笑顔を浮かべながら、女性と並んで歩き始める
仲睦まじい二人の飼い主をよそに、それぞれ逃げられないように抱えられた二匹は、別れるまでの間ずっと罵りあいを続けていたのであったとさ
続かない