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連載 - 三面鏡の少女・小ネタ-16

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小ネタその16 IMOUTO~疾風伝~


中央高校の制服に身を包んだ少女は、靴を馴染ませるようにとんとんと地面を蹴る
「ターゲット確認っ、と」
山間部の曲がりくねった道路を見下ろし、その遥か下方を遠ざかっていくバイクのヘッドライトを見詰めて口元を引き締める
少女はスカートのファスナーを下ろし、その場でぱさりと脱ぎ捨てた
だからと言って下着を丸出しにしているわけではなく、スカートの下はぴっちりとした黒いスパッツで覆われている
何度か屈伸運動をした後、両手を冷たいアスファルトについて膝を立てる
「いくよ、ノコ」
その言葉に応えるように、襟元で何かがもぞもぞと動く
「レディ」
ぐいと腰を引き上げたその姿勢は、クラウチングスタート
「ゴッ!」
気合の声と共に地面を蹴った少女は、人類では有り得ない初速で飛び出し、更に加速を続けていった
曲がりくねる道路を身体を大きく横に倒しながら駆け抜け、時には岩壁やガードレール、立ち並ぶ木々までもを足場にして
減速する気配も見せず、それどころか速度は加速する一方
片側が崖下になっているS字カーブに差し掛かると、その速度を維持したまま地面を蹴って、空中で膝を抱えた姿勢で空気を切り裂き回転しながらすっ飛んでいく
その勢いは全く衰えず、回転したまま着地した少女はフォーミュラーマシンのタイヤのように加速を続けてアスファルトの上を転がり抜けていった
そして回転状態から一切の減速も無く、流れるようにまた走行フォームに戻る少女
その視線の先には、先程確認したバイクの姿
バイクに乗ったライダーが、後方を確認するかのようにその身体を傾け
頭部の無い『首なしライダー』は自分を追いかけて走ってくる少女の姿に驚いたように身を竦ませる
「はいはい、そこのバイクの人! 大人しく路肩に寄せて止まってね!」
高速により相対的に暴風が吹き荒れる中、よく通る声が肩を掴むかのように投げかけられる
そんな呼び掛けを振り切るかのように、それまで無音だったバイクがけたたましい排気音を放つ
「うわ、やる気?」
少女の呟きに呼応するかのように、バイクの速度が跳ね上がり少女との距離を一気に引き離す
「んなろっ!」
少女の体がより深い前傾姿勢になり、負けじとその速度を上げていく
全速力であろう『首なしライダー』に、じりじりとその距離を詰めていく少女
だがその速度が仇となった
月明かりに浮かぶそれは一瞬で眼前に迫り
「やばっ!?」
それは道路を塞ぐように張られた一本のピアノ線
丁度少女の首の高さに張られたそれを避けるために、無理矢理身体を捻りアスファルトの上をもんどりうって転倒した
「あたた……くっそぅ、やるなぁ」
道路のど真ん中で大の字になって寝転び、月を見上げている少女
「次こそ勝つ!」
「次こそ勝つ、じゃないでしょう?」
その顔に、ふわりと覆い被さる布切れ
それは少女がスタート時に脱ぎ捨てたスカートだった
「声を掛けないで倒せば良かったの。あいつのせいで何件も死亡事故が起きてるんだから」
真夜中にも関わらずサングラスを掛けた黒いスーツ姿の女が、呆れたように溜息を吐く
「んー」
少女は寝転んだままスカートを履き、身体の砂埃を払いながら立ち上がる
「事故って死んだのって、全員族野郎でしょ? まあ死んで良いとは言わないけどさ、そいつらから吹っ掛けたんじゃないかなぁと思うわけよ」
「あなたも死にかけたでしょうに」
「バイクに乗ってて、徒歩で追いかけられたらびっくりすると思うけどなぁ。『ターボ婆ちゃん』みたいな都市伝説もあるわけだし」
そう言うと少女は、ぐいぐいと足のストレッチを始める
「まあアレよ、追い越したら話ぐらいは聞いてくれそうな気がするんだよね」
「その根拠は何処に?」
「勘」
その言葉に黒服の女は、先程より深い溜息を吐いて額を手で覆う
「という訳で、来週の土曜の夜。もっかいチャレンジするからよろしく」
「好きにして下さいよもう」

―――

「たーだいまっと」
既に寝静まった自宅の玄関に、出て行った時と同じようにこっそりと入り込む少女
足音を忍ばせながら、砂埃で汚れた髪を洗うべく風呂場へと向かう
ツーテールに結い上げた髪を解いて、チーターをデフォルメしたデザインのヘアピンを外す
「ノコもちゃんと洗ったげるからねー」
そう言って制服を脱ぎ下着姿になった、その時
「里予、帰ってきたのか? お前なあ、あんまり夜中に出歩くなよ」
一切の躊躇もなく脱衣所の扉を開け放つ男、銅島三矢
その目の前には、脱いだブラウスで包んだ何かを後ろに隠す少女、銅島里予の裸体
「……お前、脱ぐの早いな」
「言うべき事はそれだけかっ!?」
凄まじい柔軟性で振り上げられた片足が三矢の頭の天辺にぺたりと当てられると、そのまま踏みつけるようにして床へと押さえつける
「妹とはいえ! 一つしか違わない乙女の裸を見といて! 言うべき事はそれじゃないでしょ!?」
「うーん、殺意が足りないというかドスが効いてないというか。もっとこう、激しく抉るように詰ってくれた方がいいな」
「何の話よ!? ともかく、お風呂入るんだから出てけっ!」
脱衣所から兄を蹴り出し、扉を閉めてほっと一息
「危ない危ない……見つかるとこだった」
そう言って丸めたブラウスの中に隠していた、ノコと呼ばれた存在を抱き上げる
それは胴体の中央が膨れ上がった蛇、所謂ツチノコだった
「チー」
ネズミのような鳴き声を上げるノコ
それを言葉として聞き取れるのか、里予は何やら苦笑を浮かべる
「ん? いや、私としてはバレても平気なんだけどさ。ノコって地方によっては賞金掛かってるらしいしね、隠しておいた方が良いかなって」
「チー」
「んー、そりゃあ陸上部も辞めちゃったし、色々隠して暮らさなきゃいけないけど。私は好きでやってんだから気にしたらダメだよ?」
そう言ってノコの鼻先をくりくりと突付く里予
「さて、お風呂入ってじっくり休んで。来週はきっと勝つぞー」
片手にノコを抱いて、ぐっとガッツポーズを取る里予
そこへ再度開かれる脱衣所の扉
「お前、最近独り言多いな?」
完全な不意打ちに、一瞬硬直する里予
そして里予の抱いたノコに視線を向け、三矢は紳士的な声で静かに語る
「そのサイズは挿れるには流石にエグくないか?」
「何と勘違いしてるかなこのバカ兄貴は!?」
ノコを隠しながら、流れるような後ろ蹴りを三矢の顔面に叩き込む里予
「バカな! 大人の玩具じゃなかったら風呂場に何を持ち込むんだ!?」
「至極当然当たり前みたいに言ってんじゃないわよ!? 妹の風呂事情を覗き見た上に変な勘違いすんなバカっ!」

拝啓、神様
うちのお兄ちゃんはバカです
ちょっと前まではバカなだけだったのに、最近は結構なド変態です
本人の資質だったら仕方ないですが、何か原因があったとしたらそれを結構な勢いで怨みたいと思います、まる

―――

そんな里予の想いとは、時間も場所も離れたとある時のとある場所
「くちっ」
ディランの手を握ったままベッドに突っ伏した繰が、小さなくしゃみをしていたんだとさ


銅島三矢(どうじま・みつや)
モブその3
金田一樹(かねだ・かずき)、銀河源二(ぎんかわ・げんじ)と腐れ縁の友人関係
一年生の頃に逢瀬佳奈美にちょっかいを出し宮定繰に全員まとめてボコられた
春から三年生、ダブらなければ

銅島里予(どうじま・りいよ)
『ツチノコ』の契約者
元陸上部のエースだったが、契約により脚力が人外の域に達してしまったため自主退部
兄の事は嫌いじゃないがとりあえずまともになって欲しい
学業成績は下の上ぐらい、春から二年生

ノコ
都市伝説『ツチノコ』
冬の寒さにあてられて側溝で動けなくなっていたところを里予に拾われた
「素早い」「数メートル以上跳躍する」「尻尾を咥えて丸くなり転がって移動する」などから
契約者にSE○Aの青い音速ハリネズミのような身体能力を与える事ができる
地味に猛毒もある

黒服
モブ黒服でしかも性別は女
当方のストーリーでは超死亡フラグ


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