エンジェルさん 03
ルーモアのマスターが亡くなった。たまに行く程度だったが、マスターはいつも笑顔を向けてくれた。
俺は、初めてあの店に行ったときのことを思い出した。
俺は、初めてあの店に行ったときのことを思い出した。
――
「……」
「……」
あんな占い紛いの事をしていれば、色々な噂が耳に入ってくる。
そしてその時に聞いた『都市伝説が集まる店』という所に来てみたんだが……
そしてその時に聞いた『都市伝説が集まる店』という所に来てみたんだが……
「割と普通なんだな」
「ああ……」
「ああ……」
予想外だった。もっと人間離れした人たちがいるのかと思っていたが、ほとんどが普通の人だ。もっとも、内面まではわからないが。
「むしろ俺たちの方がういてるな……」
ヒラヒラの服着たおっさんと頭だけの男をつれて歩いてる俺は、かなり怪しい人物だろう。
とりあえずカウンター席に座る。
とりあえずカウンター席に座る。
「ご注文は?」
おそらくこの喫茶店のマスターであろう人物が聞いてきた。
「コーヒーで……お前らは?」
「俺はビーr「やめろ」……コーヒーで」
「私は紅茶! 紅茶!」
「かしこまりました」
「俺はビーr「やめろ」……コーヒーで」
「私は紅茶! 紅茶!」
「かしこまりました」
ふふっ、とどこかから小さな笑い声が聞こえた。……やっぱり俺たちは怪しいのか!
「青年、何を悩んでいるんだ?」
「お前のせいだよおっさん」
「お前のせいだよおっさん」
可愛い女の子を連れている契約者が沢山いるってのに、俺だけおっさんなんて悲しすぎる。
「はい、どうぞ」
そんなことを考えているうちに、頼んだものが出てきた。
特に猫舌ではないのですぐに口をつける。
特に猫舌ではないのですぐに口をつける。
「……うまい」
「確かにうまいな……」
「確かにうまいな……」
うまく表現できないが、心が温まるような味がする気がした。
何か言わなければ、と思った。
何か言わなければ、と思った。
「……俺、占い師兼情報屋やってるんですよ。あの……よかったら今度来てください。安くしますんで」
突然何を言い出すのか、と頭の中で聞こえた。でも、言わずにはいられなかった。
「それは、ありがとうございます。必ず行きますね」
社交辞令だろうとは思っても、嬉しかった。なぜか安心するのは、この人の持つ父性のなせる業だろうか。
「……お連れさん、困ってますけど……」
「あ」
「あ」
目を向けると、出てきた紅茶を前にして困っているアンサーが居た。
「どうした?」
「……カップを持てない。持てない」
「……カップを持てない。持てない」
そういえばこいつには手がない。
「……すみません、ストローもらえますか」
また、笑い声が聞こえた。
――
「マスター、結局来てくれませんでしたね」
「マスター、結局来てくれませんでしたね」
葬式からの帰り道、誰に言うでもなく呟く。
都市伝説の契約者に※されてしまったマスター。もしも、マスターが俺の占いを聞いていたら助かったんだろうか。
……そんなことを考えても無駄だとわかってる。けれど考えずにはいられない。
都市伝説の契約者に※されてしまったマスター。もしも、マスターが俺の占いを聞いていたら助かったんだろうか。
……そんなことを考えても無駄だとわかってる。けれど考えずにはいられない。
「なあ、おっさん、アンサー」
「なんだ、青年」
「どうした? どうした?」「俺もいつか死ぬかな?」
「なんだ、青年」
「どうした? どうした?」「俺もいつか死ぬかな?」
馬鹿なことを聞いたと思う。けれど、聞かずにはいられなかった。
「まあ、可能性はあるな」
「死ぬかもな! かもな!」
「……オブラートに包むとかないのか」
「死ぬかもな! かもな!」
「……オブラートに包むとかないのか」
ずいぶんはっきり言う奴等だ。
「殺されようが、自殺しようが、老衰だろうが、いつか人間は死ぬだろう?」
「……まあそうだが」
「死にたくなければ逃げれば良い。護りたいものがあれば護り通せ……好きなように生きれば良いさ」
「……まあそうだが」
「死にたくなければ逃げれば良い。護りたいものがあれば護り通せ……好きなように生きれば良いさ」
……マスターは護りたいものを護った。それがマスターが選んだ道。
「……私は、契約者が死んだらいやだな。いやだな」
「……そうだな、俺もまだ死にたくないわ」
「……そうだな、俺もまだ死にたくないわ」
俺にも、護りたいものがある。それを護るためには生きなくちゃならない。
「……これからもよろしくな」
二人に向けて言う。ちょっと恥ずかしかったので早足で歩く。
また、夜が明ける。
また、夜が明ける。