「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 花子さんと契約した男の話-51c

最終更新:

guest01

- view
だれでも歓迎! 編集
 それは、中央高校の学園祭が近くなって来た頃の事


「さてっと。宣伝宣伝。本番までにできることはやらないとな」

 校内を歩き回るややぽっちゃりな少年一人
 中央高校2年B組所属 花房 真樹だ
 今回の学園祭において、クラスの模擬店を「メイド&執事喫茶」に仕立て上げた張本人の一人
 妙なところで努力家な彼は、学園祭を前に、メニューのサンプルを何品か用意
 他のクラスや学年の生徒や教師陣に試食してもらい、味の評価をもらったり「ぜひ、当日も食べにきてほしい」と宣伝してまわっているのだ
 真樹一人で、ではなく、もちろん、クラスメイトにも何人か、手伝わせて

 さて、そうやって、校内を歩き回り続け、何人かに試食してもらっていると

「…あ、今度は、あの子に頼んでみるかな」

 見つけたのは、隣のクラスの少女
 小学生に見える外見だが、れっきとした高校二年生
 真樹からして見れば、ずいぶんと可愛らしい少女だと言うのに、なぜか存在感が希薄らしい不思議な少女だった
 せっかくの機会だ
 話し掛けてみよう

「ねぇ、ちょっといい?」
「………え?」

 真樹に、話し掛けられて
 その少女は、ずいぶん、驚いていたようだった
 そんなに驚かせてしまっただろうか
 真樹は慌てて、謝罪する

「あ、ごめん。驚かせた?」
「う、ううん。平気だよ。私に私に何か用かな?」

 あぁ、良かった
 思ったよりは、驚いてなかったのか
 真樹はほっとしつつ、喫茶店で出す予定の試作品であるプリンを、少女に差し出した

「これ、学園祭でうちのクラス…2年B組で出すメニューのひとつなんだけど。試食してくれるかな?」
「いいの?」
「あぁ。できれば、でいいけれど」

 強制はしない
 そんな事をしては、逆効果である
 真樹の言葉に、少女はじっと、そのプリンを見つめて

「…それじゃあ、もらってもいい?」
「もちろん、どうぞ」

 そっと、器に盛ったプリンとスプーンを手渡す
 少女は、廊下に出されていた椅子に腰掛けると、ちゃんと「いただきます」と挨拶してから、もむもむプリンを食べ出した
 …しばし、じっくり味わって

「美味しいと思うけど、私の私の好みより、ちょっと甘すぎるかな?」
「う~ん、甘味が強いか…」
「でも、甘い物が好きな人とか、子供にはいいんじゃないかな?」

 なるほど、と少女のアドバイスをメモにとる真樹
 ……ふむ、現状の味のままの物と、甘味を抑えた大人向きの物と二つ用意しようか…?

「ありがとう、拝戸さん。いいアドバイスもらったよ」
「…あれ?私の私の名前、知ってるの?」
「もちろん。可愛い子の名前と顔は忘れないから」

 むしろ、この花房 真樹
 中央高校の女生徒および、女性教師&講師の顔と名前は全て把握している!!
 基本モテない男だが、妙な情報網があるのである
 自慢できるかどうかはさておき

 改めて少女、拝戸 純に礼を述べ、真樹はこの場を後にした
 さて、持ち歩いていた試作品の感想は大体聞いた
 後はメニュー係と相談しつつ、当日に向けて調整だ

「今年の模擬店賞…必ずもぎ取ってやるぜ!」

 ぐ、と気合を入れながら、自分のクラスに戻っていく真樹
 その後姿を、純はどこか不思議そうに、見送っていた



 …何故
 何故、「異常(アブノーマル)」の能力の影響で、どこか存在感が希薄な純を、真樹はあっさりと認識し
 そして、なおかつ、顔も名前も覚えていたのか?

 その理由は、誰にもわからない
 ただ単に、彼の女好き故の執念なのかもしれないし
 …もしかしたら
 彼には、他者の「異常」の影響を受けない、特殊な才能でもあるのかもしれない


 しかし、真樹はそんな事実に気づかない
 彼は、どこまでも普通の人間なのだ
 どこまでも普通で、どこまでも一般人
 この学校町のどんな異常もスルーしてしまうという点だけを除けば、彼はどこまでも普通の人間だ
 そもそも、この学校町において、異常をスルーするなんてよくある事
 やはり、彼は普通である
 どこまでもどこまでも、普通の一般人


 そうなのだ、と彼本人も、彼の周囲も全て、疑っていないのだ






fin




タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー