それは、中央高校の学園祭が近くなって来た頃の事
「さてっと。宣伝宣伝。本番までにできることはやらないとな」
校内を歩き回るややぽっちゃりな少年一人
中央高校2年B組所属 花房 真樹だ
今回の学園祭において、クラスの模擬店を「メイド&執事喫茶」に仕立て上げた張本人の一人
妙なところで努力家な彼は、学園祭を前に、メニューのサンプルを何品か用意
他のクラスや学年の生徒や教師陣に試食してもらい、味の評価をもらったり「ぜひ、当日も食べにきてほしい」と宣伝してまわっているのだ
真樹一人で、ではなく、もちろん、クラスメイトにも何人か、手伝わせて
中央高校2年B組所属 花房 真樹だ
今回の学園祭において、クラスの模擬店を「メイド&執事喫茶」に仕立て上げた張本人の一人
妙なところで努力家な彼は、学園祭を前に、メニューのサンプルを何品か用意
他のクラスや学年の生徒や教師陣に試食してもらい、味の評価をもらったり「ぜひ、当日も食べにきてほしい」と宣伝してまわっているのだ
真樹一人で、ではなく、もちろん、クラスメイトにも何人か、手伝わせて
さて、そうやって、校内を歩き回り続け、何人かに試食してもらっていると
「…あ、今度は、あの子に頼んでみるかな」
見つけたのは、隣のクラスの少女
小学生に見える外見だが、れっきとした高校二年生
真樹からして見れば、ずいぶんと可愛らしい少女だと言うのに、なぜか存在感が希薄らしい不思議な少女だった
せっかくの機会だ
話し掛けてみよう
小学生に見える外見だが、れっきとした高校二年生
真樹からして見れば、ずいぶんと可愛らしい少女だと言うのに、なぜか存在感が希薄らしい不思議な少女だった
せっかくの機会だ
話し掛けてみよう
「ねぇ、ちょっといい?」
「………え?」
「………え?」
真樹に、話し掛けられて
その少女は、ずいぶん、驚いていたようだった
そんなに驚かせてしまっただろうか
真樹は慌てて、謝罪する
その少女は、ずいぶん、驚いていたようだった
そんなに驚かせてしまっただろうか
真樹は慌てて、謝罪する
「あ、ごめん。驚かせた?」
「う、ううん。平気だよ。私に私に何か用かな?」
「う、ううん。平気だよ。私に私に何か用かな?」
あぁ、良かった
思ったよりは、驚いてなかったのか
真樹はほっとしつつ、喫茶店で出す予定の試作品であるプリンを、少女に差し出した
思ったよりは、驚いてなかったのか
真樹はほっとしつつ、喫茶店で出す予定の試作品であるプリンを、少女に差し出した
「これ、学園祭でうちのクラス…2年B組で出すメニューのひとつなんだけど。試食してくれるかな?」
「いいの?」
「あぁ。できれば、でいいけれど」
「いいの?」
「あぁ。できれば、でいいけれど」
強制はしない
そんな事をしては、逆効果である
真樹の言葉に、少女はじっと、そのプリンを見つめて
そんな事をしては、逆効果である
真樹の言葉に、少女はじっと、そのプリンを見つめて
「…それじゃあ、もらってもいい?」
「もちろん、どうぞ」
「もちろん、どうぞ」
そっと、器に盛ったプリンとスプーンを手渡す
少女は、廊下に出されていた椅子に腰掛けると、ちゃんと「いただきます」と挨拶してから、もむもむプリンを食べ出した
…しばし、じっくり味わって
少女は、廊下に出されていた椅子に腰掛けると、ちゃんと「いただきます」と挨拶してから、もむもむプリンを食べ出した
…しばし、じっくり味わって
「美味しいと思うけど、私の私の好みより、ちょっと甘すぎるかな?」
「う~ん、甘味が強いか…」
「でも、甘い物が好きな人とか、子供にはいいんじゃないかな?」
「う~ん、甘味が強いか…」
「でも、甘い物が好きな人とか、子供にはいいんじゃないかな?」
なるほど、と少女のアドバイスをメモにとる真樹
……ふむ、現状の味のままの物と、甘味を抑えた大人向きの物と二つ用意しようか…?
……ふむ、現状の味のままの物と、甘味を抑えた大人向きの物と二つ用意しようか…?
「ありがとう、拝戸さん。いいアドバイスもらったよ」
「…あれ?私の私の名前、知ってるの?」
「もちろん。可愛い子の名前と顔は忘れないから」
「…あれ?私の私の名前、知ってるの?」
「もちろん。可愛い子の名前と顔は忘れないから」
むしろ、この花房 真樹
中央高校の女生徒および、女性教師&講師の顔と名前は全て把握している!!
基本モテない男だが、妙な情報網があるのである
自慢できるかどうかはさておき
中央高校の女生徒および、女性教師&講師の顔と名前は全て把握している!!
基本モテない男だが、妙な情報網があるのである
自慢できるかどうかはさておき
改めて少女、拝戸 純に礼を述べ、真樹はこの場を後にした
さて、持ち歩いていた試作品の感想は大体聞いた
後はメニュー係と相談しつつ、当日に向けて調整だ
さて、持ち歩いていた試作品の感想は大体聞いた
後はメニュー係と相談しつつ、当日に向けて調整だ
「今年の模擬店賞…必ずもぎ取ってやるぜ!」
ぐ、と気合を入れながら、自分のクラスに戻っていく真樹
その後姿を、純はどこか不思議そうに、見送っていた
その後姿を、純はどこか不思議そうに、見送っていた
…何故
何故、「異常(アブノーマル)」の能力の影響で、どこか存在感が希薄な純を、真樹はあっさりと認識し
そして、なおかつ、顔も名前も覚えていたのか?
何故、「異常(アブノーマル)」の能力の影響で、どこか存在感が希薄な純を、真樹はあっさりと認識し
そして、なおかつ、顔も名前も覚えていたのか?
その理由は、誰にもわからない
ただ単に、彼の女好き故の執念なのかもしれないし
…もしかしたら
彼には、他者の「異常」の影響を受けない、特殊な才能でもあるのかもしれない
ただ単に、彼の女好き故の執念なのかもしれないし
…もしかしたら
彼には、他者の「異常」の影響を受けない、特殊な才能でもあるのかもしれない
しかし、真樹はそんな事実に気づかない
彼は、どこまでも普通の人間なのだ
どこまでも普通で、どこまでも一般人
この学校町のどんな異常もスルーしてしまうという点だけを除けば、彼はどこまでも普通の人間だ
そもそも、この学校町において、異常をスルーするなんてよくある事
やはり、彼は普通である
どこまでもどこまでも、普通の一般人
彼は、どこまでも普通の人間なのだ
どこまでも普通で、どこまでも一般人
この学校町のどんな異常もスルーしてしまうという点だけを除けば、彼はどこまでも普通の人間だ
そもそも、この学校町において、異常をスルーするなんてよくある事
やはり、彼は普通である
どこまでもどこまでも、普通の一般人
そうなのだ、と彼本人も、彼の周囲も全て、疑っていないのだ
fin