「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 怪奇チャンネル-一回線

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―アメリカの調査結果により、パンはとても危険な食べ物だということがわかった。以下がその理由である。
1) 犯罪者の98%はパンを食べている
2) パンを日常的に食べて育った子供の約半数は、テストが平均点以下である。
3) 暴力的犯罪の90%は、パンを食べてから24時間以内に起きている。
4) パンは中毒症状を引き起こす。被験者に最初はパンと水を与え、後に水だけを与える実験をすると、2日もしないうちにパンを異常にほしがる。
5) 新生児にパンを与えると、のどをつまらせて苦しがる。
6) 18世紀、どの家も各自でパンを焼いていた頃、平均寿命は50歳だった。
7) パンを食べるアメリカ人のほとんどは、重大な科学的事実と無意味な統計の区別がつかない。


「パンを食べると、人は幸せになるんだよ」
公園のジャングルジムの上で、白いツナギにマスクで、髪の毛一本も出さない帽子をかぶった大人は言った。
目元だけが見える白い作業服は、何故だかはんぺんを思い出させた。
「オレはパンよりご飯派なんだよ、てか日本人なら白米食え」
凶器のスプーンをちらつかせて、少年は言う。
心の底で、「僕は、白米もパンも食べる」っている声がしたのは知らん顔した。

ジャングルジムの下には、すでに人だかりが出きている。
二十人弱はいるだろうか?
大半はホームレスだろう。見た目からして。
一人二人は、頭の薄いサラリーマンが混じっていた。
全員が最早、人間として死んでいる。
社会的地位とか、見た目じゃない。
誰が見てもあの集団は、ゾンビの集団だった。
バイオ○ザードとかと決定的に違うのは、ジャングルジムの下で、ゾンビが貪るのは人肉じゃなく、菓子パンだった。
「むしろ感謝して欲しいんだよ。本人達には、世捨て人が、本当に人間を捨てれたことを。世間には、社会のゴミを管理していることを。地球には、廃棄処分の商品を消費していることを。作られたパンには、ちゃんと食べてもらっていることを。会社には、ボクが働いていることを。国には、きちんと納税していることを」
はんぺんは、ジャングルジムの上で熱弁に語る。
お山の大将かよ。
少年は、呆れながらも、挑発しないように言葉を飲み込んだ。
危険なニオイがしたから追ってみたら、都市伝説自体は余り危険ではなく。
ヤバいのは、契約者の脳味噌の方だった。というオチ。
良くある話で片が付けばいいのだが、今回は難しい。
正直、二十人の犯罪者(に、仕立てあげられただけだとしても)相手に今の装備じゃちょっとつらい。
少年には、二十人の大人を相手にしてもちょっとつらいで済むレベルがあった。
自意識過剰に過大評価を加えれば、紙で作ったナイフでこの場を切り抜けることが出来ると言える。
少年は、ジャケットのポケットに手を突っ込み装備を確認した。
右ポケット、左ポケット共にフォーク四本、ナイフ三本。手にすいかスプーン
我ながら、ネタ装備に泣きたくなるがまともな武器になりそうな物は、先週で切らしてしまった。バイト代も、まだ出ない。
だが、都市伝説との勝負は止められなかった。
それだけが存在意義であり。それだけが目的であり。それだけが彼の人間に近づく、彼の夢だった。

「ボクは、そろそろ引き上げるよ。今日の餌やりは済んだし。寒いし。明日休みだから、作業服洗わないと。そうだ、君。君は、何て言うの?」
はんぺんは、見下しながら言う。まだ一ミリも、自分の優位を疑ってなかった。
「ムサシ」
ムサシは、すいかスプーンに気を送り込む。
月の光に、鈍く光ったそれは、瞬く間に凶器へ変貌する。
青白く光を発したのは、送り込まれた気により、金属が人を殺せる武器に成った証拠だった。
しかしはんぺんは、そんな些細な変化には気が付かない。
自分は他者を支配できる都市伝説と契約した人間という、特別意識を未だに持っていた。
むしろ、ナンバーワンよりオンリーワン。全てをそつなくこなせる人間と、一芸に秀でた人間に、本当の意味で特別な物など存在しない。
特別と言うこと自体が、その人間の限界のその先であるか。あるいは、対人において、特出した感情を持ち合わせているときにだけ使われるものだ。
リップサービスと、オカルトを除いて。
「スプーンで、どうにかなるの?」
はんぺんは、向けられた敵意にようやく気が付くとせせら笑った。
ムサシは、負けじと唇を釣り上げる。
「魅せてやるよ。スプーンで、人は殺せる」
ムサシがスプーンを構えた、瞬間だった。

ガサガサガサ
葉の擦れあう音と共に、飛び出してきた少女。
ムサシとはんぺんの、ど真ん中に駆けて出てきた少女は、双方を見る。
電子機器を介した音声が、耳に届く。
『あ!今、少女が飛び出してきました!!少女です!!二人の契約者の間に少女が飛び出してきました!!ぶっちゃけ、ウチのスポンサーもとい契約者です!!何してんだ、あの人おおおお!!』
「まったく、何してるんだかね。自分でも」
少女は、自嘲的な笑みを浮かべる。
その時、はんぺんの周りにいたパンを食べた人間が、少女に向かって駆けだした。
はんぺんの契約した都市伝説により、パンを食べた人間は、犯罪者になる。
でも、法律的にはまだ犯罪者ではない。
厳密に言うなら、犯罪を犯したくなるきわめて危険な人間になるのだ。
そして、今、本物の犯罪者になろうと、少女に襲いかかってきた。
「チィッ」
ムサシは、はんぺんに向かって駆け出す。
契約をした都市伝説と契約者を片づけた方が、早い。
と、ついでに少女に群がるゾンビをケチらして、真っ正面から挑む。
そのハズだった。

少女は、持っていたヴァイオリンケースを落とす。
恐怖では無く、故意に落とした。
「逝きな、轟女鬼(ごめき)、諏女鬼(すめき)」
ヴァイオリンケースが、地面に着地したと同時に開く。
轟。
何も感じない人なら、強風により人が吹っ飛ばされたように、見えるだろう。
見える人は、最悪である。
黒いもやから、点でバラバラに散った四つの眼と、言うところの鬼の腕が人間を吹っ飛ばしていた。
そんなもんに、人間の犯罪者が勝てるわけがない。
二十人の犯罪者は、あっという間に公園の端まですっ飛ばされていた。

ムサシは、あ、コイツとも手合わせしたいな。何て思いながら、何が起きたかわからなくて放心しているはんぺんの場所まで、駆けり、跳んだ。
目の前をムサシが遮ると、はんぺんは慌てる。
無駄だ。
足場が悪い、遊具の上に逃げ場はない。
「まずは、都市伝説とオマエの契約を断ち切る」
「そ…んな」
はんぺんが小さく泣いたが、無視。
ムサシは、スプーンを振りかざし、空を切る。
はんぺんと重なる部分に、確かな手応えを感じる。
そのまま、二、三度切りつければ、何もない空間からドロリと、何かが溢れて消えた。
「ぎああああぁぁああああ!!!!!」
はんぺんが絶叫し、痙攣する。
「ありゃ、まだ憑いてたか」
ムサシは、凶器を握り直し、はんぺんの眼前に構えた。
「死ね」

少女は、一部始終を見守るだけだった。
目の前で、勝手に舞台が流れていくのと一緒。
面目のために言っておくが、轟女鬼と諏女鬼を使役するために神経を使っていたという、名目もある。
兎も角、終わったのだ。終わってしまったのだ。
能力同士の戦いは。全身白ずくめの人間の負けで。

疑問は、双方が凝固して未だ動かない、と言うことだった。
見えるタイプの人間の少女からは、全身白い方からは、もう何も感じない。
生体反応はあるが、オーラはない。生き物としてのオーラすらない。
片や、全身から殺気というオーラをまき散らす、さっきまで自分にスプーンを突きつけていた男性からも、何も動きがないのだ。
「もう止めよう、ムサシ」
スルリと、何かが男性から抜けていった。いや、厳密に言うなら、奥へしまい込まれた。
先程まで、凶器と化していた金属もただのスプーンへ戻る。
男性がこちらを向いた。ごく普通の少年だった。
「初めまして、こんばんわ。僕は宮下 武(みやした たける)といいます」
月を背に、少年は、穏やかに言った。

怪奇チャンネルのアナウンサーは、テレビの中で黙祷を捧げていた。
『インタビューしようと思っていた、パンを食べるとーの都市伝説の契約者様は、廃人と化してしまわれました。ご冥福をお祈りします』




第一回線 終

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