「あ、えっと、一度部屋に戻ってていい?」
「うん、その間に準備しておくから 」
「ありがとー♪」
「うん、その間に準備しておくから 」
「ありがとー♪」
麻夜が自分の部屋に入る姿を見届け、買ってきた食材を取り出す漢
キャベツ、ミンチ、ニンニク、長ネギ・・・そして極めつけの、餃子の皮
キャベツ、ミンチ、ニンニク、長ネギ・・・そして極めつけの、餃子の皮
「すごいなぁ、麻夜は」
ぽつりと、彼は誰に言うでもなく呟いた
「女の子なのに・・・たった一人で、怖い怪物に立ち向かって、やっつけて・・・」
今度は、菜箸、スプーン、ボウル、まな板を取り出す
「・・・ホントなら、僕が守らなきゃいけないのに・・・」
包丁を取り出そうとして、動きが止まった
柄を持つ手に力が入り、小刻みに震えている
柄を持つ手に力が入り、小刻みに震えている
「僕も、強くならなきゃ・・・ううん、僕が、強くならなきゃ
僕が、妹を・・・麻夜を、守っていかなくちゃいけないんだ・・・」
僕が、妹を・・・麻夜を、守っていかなくちゃいけないんだ・・・」
――――麻夜は僕の、たった1人の家族なんだから
【 神 力 秘 詞 】
五之巻 ~運命 ノ 別 レ 道~
五之巻 ~運命 ノ 別 レ 道~
(漢>ま、麻夜、やっぱり帰ろうよ・・・
(麻夜>もぉ、にぃにぃは心配性なんだから
(漢>ででで、でも・・・
(麻夜>もぉ、にぃにぃは心配性なんだから
(漢>ででで、でも・・・
夕飯を食べ終え、彼らは夜の散歩をしていた
麻夜としては、暗い公園で兄とイチャイチャラブラブしようと思っていたのだが、漢は違う
麻夜としては、暗い公園で兄とイチャイチャラブラブしようと思っていたのだが、漢は違う
(漢>ひ、昼間みたいに、都市伝説が現れたら・・・
(麻夜>大丈夫! 私がにぃにぃのこと守ってあげるから!
(漢>で、でも本当は僕が麻夜を―――――――伏せて!
(麻夜>へ?
(麻夜>大丈夫! 私がにぃにぃのこと守ってあげるから!
(漢>で、でも本当は僕が麻夜を―――――――伏せて!
(麻夜>へ?
近くの壁に手を触れた後、麻夜を抱き寄せて『壁』を具現化し、黒く平らな盾を作り出す
カラン、と甲高い音を響かせて路上に落ちたのは、銀色のメス
カラン、と甲高い音を響かせて路上に落ちたのは、銀色のメス
「ほぅ、能力者でしたか・・・楽しめそうですね」
少し高い男声
盾が消えた向こう側に、黒いコートを羽織った、長髪の男が立っていた
その手にしっかり握られているものは、月光に輝く3本のメス
盾が消えた向こう側に、黒いコートを羽織った、長髪の男が立っていた
その手にしっかり握られているものは、月光に輝く3本のメス
(漢>・・・もし、かして・・・「切り裂きジャック」・・・?
(ジャック>くくく、ご名答・・・なら私の獲物が何なのかも知っていますよね、お嬢さん?
(ジャック>くくく、ご名答・・・なら私の獲物が何なのかも知っていますよね、お嬢さん?
また盛大な誤解を受けている漢だが、それはこの際どうでもいい
コートを靡かせながら、メスを構えて2人に襲いかかる
コートを靡かせながら、メスを構えて2人に襲いかかる
(ジャック>そうですね、では心臓を貰いましょうか―――――
(麻夜>にぃにぃに手を出すなぁ!!
(麻夜>にぃにぃに手を出すなぁ!!
漢の前に飛び出し、向かい来る「切り裂きジャック」の腹部に重い蹴りを入れる
そのまま上空へ飛ばされるが、堪えて態勢を立て直し、着地して距離をとる
そのまま上空へ飛ばされるが、堪えて態勢を立て直し、着地して距離をとる
(ジャック>くっ・・・ふっ、なかなかやりますね
(漢>ま、麻夜・・・
(麻夜>任せてにぃにぃ、私がこの変態さんからにぃにぃを守るから!
(漢>ま、麻夜・・・
(麻夜>任せてにぃにぃ、私がこの変態さんからにぃにぃを守るから!
離れた「切り裂きジャック」に狙いを定め、飛びかかって拳を振りかぶる
しかし寸でのところで避けられ、拳はそのまま大地を抉った
今度はメスで麻夜の横っ腹を切り裂かんとする「切り裂きジャック」だったが、
彼女は地を突いた腕を軸にして脚を回転させて、彼の得物を弾き飛ばし、
体を押し上げ、くるりと宙で捻って両足で立ち構えた
しかし寸でのところで避けられ、拳はそのまま大地を抉った
今度はメスで麻夜の横っ腹を切り裂かんとする「切り裂きジャック」だったが、
彼女は地を突いた腕を軸にして脚を回転させて、彼の得物を弾き飛ばし、
体を押し上げ、くるりと宙で捻って両足で立ち構えた
(ジャック>面白い、ですが!
「切り裂きジャック」は背後に跳び距離をとりながら、麻夜に向けてメスを投げた
一瞬、反応が遅れ、
一瞬、反応が遅れ、
(麻夜>あ、遅―――
(漢>危ない!
(漢>危ない!
バチッ!!と稲光が辺りを包んだ
『神』の字から雷を発生させた漢が、飛んできたメスから麻夜を守ったのだ
『神』の字から雷を発生させた漢が、飛んできたメスから麻夜を守ったのだ
(漢>だだだ、大丈夫? 怪我はない?
(麻夜>に、にぃにぃ、それまだ使えたの?
(漢>うん、裂兄ぃに教えてもらったんだけど、これも都市伝説らしくて―――
(ジャック>余所見は禁物ですよ?
(麻夜>に、にぃにぃ、それまだ使えたの?
(漢>うん、裂兄ぃに教えてもらったんだけど、これも都市伝説らしくて―――
(ジャック>余所見は禁物ですよ?
迫り来る4本のメス、靡く髪
(麻夜>にぃにぃ、逃げて!!
(漢>ぇ、うわ!
(漢>ぇ、うわ!
麻夜に押し飛ばされ、尻餅をつく漢
(漢>ま、麻夜ッ・・・・・ぁ・・・・・
彼は己の目を疑った
目に飛び込んだのは、服を真っ赤に染めた妹の姿
腹部からメスを引き抜き、嘲笑う男の姿
思わず込み上げてきた酸っぱいものを飲み込む
目に飛び込んだのは、服を真っ赤に染めた妹の姿
腹部からメスを引き抜き、嘲笑う男の姿
思わず込み上げてきた酸っぱいものを飲み込む
(ジャック>ふぅむ・・・契約者の方を頂きたかったのですが、まぁいいでしょう
(漢>ま、麻夜を、放して!!
(漢>ま、麻夜を、放して!!
自分の身体に触れ、『神』の字を取り出す漢
(ジャック>おっと、少しお待ちを。でなければこの子の命はありませんよ?
(漢>えっ・・・!?
(漢>えっ・・・!?
麻夜の首根っこを掴み、メスをちらつかせる「切り裂きジャック」
(ジャック>取り引きしませんか? もし貴方が私に逆らうなら、この娘はこの場で殺す
(漢>や、やめてよ! 麻夜は、僕のたった1人の・・・
(ジャック>でしたら、貴方の命を私によこしなさい。この子は解放しましょう
(漢>っ・・・・・・!
(漢>や、やめてよ! 麻夜は、僕のたった1人の・・・
(ジャック>でしたら、貴方の命を私によこしなさい。この子は解放しましょう
(漢>っ・・・・・・!
浮かんだ文字が消える
嫌らしく笑う「切り裂きジャック」
血を噴き出しながら、眠るように気を失った麻夜
嫌らしく笑う「切り裂きジャック」
血を噴き出しながら、眠るように気を失った麻夜
――――ここで、僕が言う事を聞けば、麻夜は助かる
でも、そのあと麻夜はどうなるの?これから、ずっと独りぼっちになる・・・
だからって、麻夜を見捨てるなんて、僕には絶対出来ない!
だったら・・・・・・だけど・・・・・・それでも・・・・・・――――
でも、そのあと麻夜はどうなるの?これから、ずっと独りぼっちになる・・・
だからって、麻夜を見捨てるなんて、僕には絶対出来ない!
だったら・・・・・・だけど・・・・・・それでも・・・・・・――――
思ったことが、どれも頭の中に現れては弾けて消える
身体が震えだす
恐怖が漢の心を蝕む
身体が震えだす
恐怖が漢の心を蝕む
(ジャック>貴方は、自分の命と妹の命、どちらが大切なのですか?
蔑むように、にやりと笑みを浮かべる「切り裂きジャック」
つぅ、と麻夜の首筋から血が流れた
つぅ、と麻夜の首筋から血が流れた
―――――――僕は、弱い・・・
涙が、零れ落ちた
...物語猶続