町中が寝静まった真夜中
ぽつりぽつりと灯っている街灯だけを頼りに、急ぎ足で家路を辿る青年の姿があった
真新しいスーツを見るに、まだ就職して間もないのだろうか
ぽつりぽつりと灯っている街灯だけを頼りに、急ぎ足で家路を辿る青年の姿があった
真新しいスーツを見るに、まだ就職して間もないのだろうか
「あぁ、くそっ、もうこんな時間かよ・・・」
思ったよりも仕事が長引いてしまった
早く帰って録画しておいた番組を見たいのに
そんな素朴な不満を抱えながら、彼は急ぐ
だが、悲劇は起きた
早く帰って録画しておいた番組を見たいのに
そんな素朴な不満を抱えながら、彼は急ぐ
だが、悲劇は起きた
「邪魔だっ!どけぇっ!!」
「え?」
「え?」
暗闇の向こうから、乱暴な声を吐き散らながら、金髪の男性が駆けてきた
荒い呼吸と汗だくになった表情から察するに、どうやら何者かから逃げているらしい
と、男性が青年を通り過ぎようとした時、男性が来た道からベルの音が聞こえた
ちりん、ちりーん、という、自転車のベルの音
その音を聞いた瞬間に、男性は立ち止まり、急遽行動を変えた
荒い呼吸と汗だくになった表情から察するに、どうやら何者かから逃げているらしい
と、男性が青年を通り過ぎようとした時、男性が来た道からベルの音が聞こえた
ちりん、ちりーん、という、自転車のベルの音
その音を聞いた瞬間に、男性は立ち止まり、急遽行動を変えた
「ッ!? な、何をっ!?」
「るせぇ! 騒ぐんじゃねぇぞ!」
「るせぇ! 騒ぐんじゃねぇぞ!」
金髪の男性は、青年の首を絞めるように左腕で拘束すると、
ポケットからナイフを取り出し、青年の首筋をすぅっとなぞった
静かに、血が流れる
ポケットからナイフを取り出し、青年の首筋をすぅっとなぞった
静かに、血が流れる
「ひっ・・・!?」
「っへへ、殺されたくなけりゃ大人しく―――」
「おいおい、まーた罪を重ねんのかよ」
「っへへ、殺されたくなけりゃ大人しく―――」
「おいおい、まーた罪を重ねんのかよ」
がしゃん、と自転車の倒れる音が響く
目の前に立っていたのは、紺色の服に、輝く金色の桜
男性を追っていた、若い警察官だった
青年は安心し、そして助けを求めた
目の前に立っていたのは、紺色の服に、輝く金色の桜
男性を追っていた、若い警察官だった
青年は安心し、そして助けを求めた
「っお巡りさん!助けてください!!」
「騒ぐなっつってんだろ!殺すぞオラァ!?」
「お前が騒ぐんじゃねーよ、こんな時間に面倒なことしやがってよぉ・・・」
「騒ぐなっつってんだろ!殺すぞオラァ!?」
「お前が騒ぐんじゃねーよ、こんな時間に面倒なことしやがってよぉ・・・」
ぶつぶつと文句を零しながら、警官は腰のホルスターから銃を抜き取り、
引き金に人差し指を添えて銃口を金髪の男に向けた
引き金に人差し指を添えて銃口を金髪の男に向けた
「つーわけで、あんまり時間使いたくないのよ
ちょっと寝ててくんない?」
「っは、やれるもんならやってみやがれ!
どうせ撃てねぇクセしやがって腰抜けが!!」
「あっそ」
ちょっと寝ててくんない?」
「っは、やれるもんならやってみやがれ!
どうせ撃てねぇクセしやがって腰抜けが!!」
「あっそ」
重い銃撃音
鈍い被弾音
血が噴き出す音、脳漿が飛び散る音、亡骸が倒れる音
全てが、ゆっくりと青年の頭の中に流れ込んでいく
彼が振り返ると、そこに血の海が広がっていて、彼の胃の内容物を押し上げる
鈍い被弾音
血が噴き出す音、脳漿が飛び散る音、亡骸が倒れる音
全てが、ゆっくりと青年の頭の中に流れ込んでいく
彼が振り返ると、そこに血の海が広がっていて、彼の胃の内容物を押し上げる
「あー、あんた怪我ない?」
警官が、青年を心配して歩み寄ってきた
だが、
だが、
「ちっくしょう、本当に面倒なことしやがって、このゴミが」
息絶えた男性の胸を、足を、腕を、目を、弾丸で撃ち抜いた
びちゃり、びちゃりと飛び散り続ける血と肉片の嵐に、青年の胃は限界を迎えた
びちゃり、びちゃりと飛び散り続ける血と肉片の嵐に、青年の胃は限界を迎えた
「・・・っと、悪いね、つい何時もの癖が出ちまって」
銃口から出る硝煙を吹き飛ばし、警官は銃をホルスターにしまった
粗方出し終え、気持ちが落ち着いた青年は、警官に問うた
粗方出し終え、気持ちが落ち着いた青年は、警官に問うた
「・・・どう、して・・・?」
「ん?」
「警察官、だからって・・・人を殺しても、良いのか?」
「ん?」
「警察官、だからって・・・人を殺しても、良いのか?」
真っ直ぐに、怒りの色を込めた目を警官に向ける青年
警官は、おどけた様に笑って、
警官は、おどけた様に笑って、
「んー、お前知ってるか? 「日本の法律は夜9時から無効になる」って話」
「・・・は?」
「都市伝説だよ、それも、中国のな
ほら、日本って夜になるとバカな餓鬼とか酔ったジジイとかが屯してっだろ?
それを見た中国人が勘違いして流布したんだよ、面白ぇ話だろ?」
「で、それが一体、何の―――」
「俺は“それ”と契約した」
「・・・は?」
「都市伝説だよ、それも、中国のな
ほら、日本って夜になるとバカな餓鬼とか酔ったジジイとかが屯してっだろ?
それを見た中国人が勘違いして流布したんだよ、面白ぇ話だろ?」
「で、それが一体、何の―――」
「俺は“それ”と契約した」
再び銃を引き抜き、青年の眉間に銃口を当てた
青年は訳が分からないといった表情をしている
青年は訳が分からないといった表情をしている
「夜9時から朝4時までの間、俺がやることは罪にはならない・・・
つまり、俺がやることは全部正しいって訳よ
だから・・・俺がここでお前を殺しても、誰からも何も咎められない」
「――――――――――ッ!?」
「秘密は隠蔽しないと。悪いね」
つまり、俺がやることは全部正しいって訳よ
だから・・・俺がここでお前を殺しても、誰からも何も咎められない」
「――――――――――ッ!?」
「秘密は隠蔽しないと。悪いね」
青年が助けを叫ぼうとした直後、真っ紅な華が咲き誇った
...fin