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連載 - こっくりさん-2

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尻尾モフモフこっくりさん  新規契約





連休を利用し、ちょっくら実家に帰ることにした。

里山な田舎を走る二両編成のローカル線の車内には自分以外には客はいなかった。

こ『築城よ、ワシはここに行きたいぞ!いい油揚げのお店じゃそうじゃぞ。』

錦戸の知人に作ってもらったコックリさんアプリによってスマホ内に召喚され、
画面に映るコックリさんは俺の地元関係の情報が表示された検索ページを指してはしゃぐ。

築「はしゃいでるとこ悪いが、そこがまさに俺の実家なんだ。
  いつも食ってる油揚げはその店で出すやつと同じってわけ。」

こ『なんじゃ、こう嬉しさ半分、落胆半分じゃな…。』

いつもより美味いものが食えると思ってワクワクしてたら、それが普段食ってる味と来たらなあ。
ワクワクをなくされる落胆と、普段からそんなうまいもんを食える幸福の間で揺れもするか。

築「でも、うちはただ油揚げとか売ってるだけじゃなくて、油揚げや豆腐中心のレストランだから、
  いつもより美味いもんは食えると思うよ?」

こ『ほんとじゃ、このページにもそう書いてあるな。口コミで満足度カンストしておる!』

しかし、コックリさんはスマホ内で自由な上に機能覚えるの早いな…

こ『しかしこの【ネット】というのは便利じゃな。知りたいことを入力すれば答えを示してくれる
  わしらコックリさんに似ておるな。』

コックリさんが言うには『ワシの場合じゃが、コックリさんが質問に答えるというのは別にワシらが何でも知っておるわけじゃないのじゃ。
ワシらコックリさんは質問の答えを知る霊などから答えを知り、それを回答するだけじゃ。例えば【意中の異性とは脈ありか】
という質問にはその意中の人とやらに詳しい霊に聞いている、とでも考えて良いじゃろう。
ワシらは霊的な検索エンジン、コックリさんという行為は霊的なクラウドコンピューティングだとでも言えるかの。
まあ、あくまでワシのやり方の場合じゃがな。』だそうだ。わかるようなわからんような…

こ『まあ、コックリさんと違って、ネットは祟らぬがな』
築「ネットも使い方を間違うとウイルスに請求にと災厄に見舞われるけどね。」
こ『はは、ネットも祟るのか(笑)』


そんなことを言いながら実家へ向かう汽車のなか、カタンコトンと揺られるのであった。



実家の最寄り駅で降りたは良いが、ちょうど良いバスがなく
歩いて帰れない距離でもないので歩いて帰ることにした。

道中、小学生の頃よく遊んだ神社のことをふと思い出し、立ち寄って一休みすることにした。
杉並木の中を少し歩くと、一軒家程度の大きさの神社が見えてくる。
近くに神主の家があるわけでもなく、地域の中高年で定期的に当番制で手入れをしてるような、けっして立派な社ではない。

築「とりま、喉が渇いたからなぁ。」

当時よく飲んだ湧き水はいまだ健在で市販のミネラルウォーターなんかよりずっと美味しく、なにより冷たかった。

こ『築城よ、ワシも飲みたいからここから出すんじゃ。』
築「でもここ屋外だよ!?」
こ『神社の周りなら、こうイロイロな力の関係で大丈夫じゃ。』

なんつー、テキトーさだ。まあアレか、「泳げないけど浅いところなら水に入れる」みたいなもんか。
手順を踏み、コックリさんを呼び出すと彼女は結構な勢いでゴクゴクと水を飲んでいた。
こ「いやー美味いのぉー。五臓六腑に染み渡るわ。」

そんなコックリさんを尻目に、そういや神社のまわりの細かい砂のとこで遊んだなあと、懐かしい遊びを思い出した。
手ごろな細い枝を拾い、砂の地面に綺麗にできたすり鉢上の穴を掘る。

築「はっこはっこ出て来い お茶のみ出て来い」

うろ覚えのフレーズを口ずさみながらしばらくその作業を続けるとターゲットは姿を見せる。
このあたりでは「はっこ」と呼ばれるそれ、アリジゴクだ。成虫であるウスバカゲロウは変にうすらデカく、カゲロウの名前のワリに儚さがない。

築「神社の裏のほうがいっぱいいるんだよな。」

最初に捕まえたやつをキャッチ&リリースした後、裏手に向かう。
別にこれ以上アリジゴクの巣を荒らそうとしているわけではなく、いまでもあの頃と変わりないかと、そういう気持ちで。


裏手に来たとき、俺はアリジゴクとかそんなものをすっかり忘れさせられた。
木々の隙間から見える青空、風、アブラゼミの鳴声、暑くも清々しい夏の空気の中
ジブリっぽさを感じさせる御神木に寄りかかり気持ちよさそうに眠る美女に意識を全部もっていかれたからだ。

コックリさんのような狐耳、九本の尻尾、長く癖のあるピンクががった銀髪、豊満な胸、見るだけでも柔らかさの伝わる胸。
いままで見たどんなおっぱいよりも魅力的な胸だった。
特に露出が多いわけでもないのに、息子が反応しかねんほどに官能的で扇情的で、それでいて上品な絶世の美女。

ああ、このひとは九尾の狐だ。と、すぐにわかった。不思議と驚きや恐怖はなかった。

築「一応念のためコックリさんを呼んで来たほうが無難か。」

コックリさんを呼びに行ったとき、コックリさんは足と尻尾を小川に入れて涼んでいた。

築「コックリさん、ちょっと…。」




コックリさんをつれて再び神社の裏手に行くと、そこにはまだ九尾の狐(暫定)が眠っている。

築「あのひと放っておいて平気かn
こ「ね、姉さま…?間違いない、姉さまじゃ…。」


神社裏で眠る色白の美女
こっくりさんは彼女に見覚えがあったらしい

こ「姉さま…」

はじめは信じられないというような面持ちだったが、目の前にいる彼女が現実であることを飲み込むと

こ「姉さまああああ!!!姉さm「ちょいまち!!」ふぎっ!!」

感極まって飛び掛ろうとしたもんだから止めようとした。つか止めた。
ただ咄嗟の出来事だったので、コックリさんの尻尾を掴んでしまい、コックリさんはビターンと地面に…

こ「なにをするんじゃ築城!!」
築「寝てる人に飛び掛るのはたとえ知り合いでも良くないでしょーが!!」
こ「じゃからって尻尾を掴むな!!」

手が出なかったのか顔から落ちたようで鼻を赤くした涙目のこっくりさんとあーだこーだ言い合いをしていると

「ん…うん…んんーっ…」

その喧騒がうるさかったのか、声とも吐息ともつかぬセクシーな音をたて、美女は目覚めた
コックリさんは俺との言い合いなんて忘れて再度
寝起きで呆け気味でほわあーってなってる【姉さま】に飛び込んだ

こ「姉さまああああ!!」
き「きゃっ…あら、こっちゃんじゃない?久しぶりねぇ」

起きるや否や抱きつかれても、相手を即座に認識してあまり取り乱さないあたり、
この姉さま、おっとりしているようで寝起きは良いらしい。

それからしばらくは矢継ぎ早に話しかけるこっくりさん、おっとりした相槌をうつお姉さま、俺蚊帳の外だった。
しかし傍から見ていると落ち着きが無くハイペースで話すこっくりさんと、落ち着いてゆったりとそれを聞くお姉さま、
それでいて会話が破綻しない様が面白い。時折口の動きと声が合っていなかったり、狐の言葉でも使ったのか「いまなんつった?」
と思うこともしばしばだが。

そうこうして蚊帳の外にされること小一時間

こ「それでのそれでの
き「ところでこっちゃん?」
こ「なんじゃろか?姉さま?」
き「あのこっちゃんと一緒にきた男の子はだれ?」

やっとお姉さまが俺のことにふれてくれた

こ「あれはワシの飯係じゃ。気にしないでその辺に放っておけば…」
き「こっちゃん、そういうのは良くないわ。私は初対面なんだもの、挨拶しなくちゃ。」

子供に言い聞かせるようにたしなめると目の前までやってきた

き「はじめまして、見てのとおりの九尾狐の貴夕日貴津音、17歳です。」
築「おいおい」
き「いつもこっちゃんがお世話になってます♪きつ姉ぇってよんでください」

隣に越してきた美人人妻の引越しの挨拶のようだった。

築「あ、こちらこそ…俺は(ry

それから自己紹介とこっくりさんとの馴れ初めのざっくりとした説明を済ませたところで
こっくりさんが入ってきた

こ「それでの、姉さま。これからこやつの実家に行くんじゃが、姉さまも来るわけには行かんじゃろうか?
  こやつも料理が美味いが実家も雑誌に載るほどの食事処らしいんじゃ、じゃから…」
き「ええ、築城くんが良ければ。いい?築城君?」
築「もちろん構いませんよ。」

パーティーにきつ姉ぇを加えて実家に向かって歩き始めた。






神社の敷地から出る林道でのこと。



築「そういえば、きつ姉ぇさんは他の人間から見えるんですよね?」
き「ええ。」
築「こっくりさんもだけど、一応耳と尻尾はなんとかした方が…」
他の客もいるし。まあ、現代日本ではレイヤー扱いでスルーされるかもしれないけど

き「そうねぇ、ちょっと苦しいけど、じゃあ久しぶりにしまっちゃおうかしら」

と言うと歩を止め、

き「う…ん…ふあっ…あふぅ…んん…」

エロいトコ触られたように悩ましい声を上げると耳と尻尾がしゅるしゅるとひっこんでいった。
き「はぁ…やっぱり変な感じだわ。」

一方こっくりさんは
こ「むううううううう!!ぬうううううううううう!!」
風船を膨らまそうとしても膨らませられない子供のように顔を真っ赤にして力んでいた。
が、引っ込まない。耳も尻尾もぴーんと立っている。

築「こっくりさん?あまり無理しなくても…」
き「こっちゃんは尻尾が一本だからちょっと腰に巻いたり工夫すればファッションみたいで大丈夫よ。
  それにひっこめてもご馳走を前にしたらぱったぱった振り回しちゃうのが目に見えてるわ。」

結局、耳も尻尾もファッションとかコスプレで押し通すことに落ち着いたがこっくりさんは悔しそうだった。





実家に到着


しばらく歩き、実家に着いたころには6時少し前だった。6時を告げる地元の寺の鐘の一発目が響く。
3階建てで一階が食堂、2階より上が住居となり、店の入り口と家の玄関は別れている。
玄関から入っても良かったが、こっくりさんが「腹が減ったー腹が減ったー」とうるさいし少し早いが夕飯時なので店で食うことにし店に入る。

母「いらっしゃいm…あら、こっちから入ってきたの?」

当然のことながら事前に帰ると連絡をしてあるので、帰ってきたことに関してはあまり驚かない。

築「うん。腹減っちゃって。…ツレが。」

母「あらまー、可愛いコと綺麗な人…て、貴津音さんじゃない。どうしたの?今日は尻尾しまっちゃって。」

築「へ?」

思わずきつ姉ぇの方を見ると

き「お店に着いたときに言おうと思ってたんだけど。」
母「貴津音さんはうちの常連さんだよ。九尾狐なのもしってる。」
築「はあ!?」

聞けば人の姿を成してよく来るらしいが尻尾も耳も隠して無かったらしい。
もともと母は細かいことを気にしないトコロがあったりするので「ああ、こういうこともあるのか」と納得
別に悪さをするわけでもないし、いい人っぽいし縁起もよさそうなので普通に客扱いを続けてきたらしい。

母「あ、でも一応狐なのよね。もしかして狐が食べれないもの出しちゃったりしてた?イヌは玉葱で死ぬとかいうじゃない?」
き「いえ、とくに問題ありませんわ。」
おほほほと、それなりに長い付き合いの奥様の井戸端会議のノリで笑う二人

築「でも他の客とかさ。地元の人ならともかく、県外からわざわざ来る人も少なくないんだよ!?」
母「大丈夫よー。ほら、貴津音さんを見てごらんなさい?」
築「?」
母「みんなこの器量のいい顔と胸しか見てないからwww」
き「あら、おばさまったらwww」

そんなテキトーでいいのか。でもまあ、いままでそれで問題無いみたいだし、なんとかなるのだろう。
見た目が良ければ大抵のことは許されるとはいうが、ここまでイロイロスルーしてもらえるのは珍しいだろう…。

築「じゃあ、こっくりさんも尻尾自由にしても大丈夫だな。」
こ「・・・」
ぷらんと尻尾を開放するがなんか元気が無い。
母「こっくりさん?ああ、お母さんたちがあんた位のとき流行ったわぁー。
  可愛いこじゃない。両手に花?いやあ、お母さん嬉しい!。」
もはや母を驚かせるオカルトは存在しないんじゃないか?
そういえば昔常連で母の親友のオッサンが酔ったときに
【お決まりパターンで「これでもぉ!?」と襲い掛かろうとした口裂け女に対して、たまたま近くを歩いていた見た目のよろしくない同級生を捕まえ
「だーいじょうぶ!!こいつの方がブスだから!!!」と大笑いしながら豪快に言い放ち、その同級生も不細工をネタにするほど明るい人気者タイプであったのでつられて大笑い
困ったようなちょっと自信を持てたようなで撤退した口裂け女をさして
「ちょっと、あれ本物の口裂け女!!すげえ、口裂け女撃退するとかwwwあんたブスすぎブヒャヒャヒャ!!!」
「私凄い!!すっごいブスwww口裂け女をブスで倒した!!!こりゃ自慢できるわ!!!げひゃひゃひゃひゃ!!!!!」
と笑い転げ、口ではなく腹筋が裂けた】という逸話を聞いたが…
あれは酔っ払いの戯言ではなかったと確信できた。

こ「もうワシは限界じゃ~、早く何か食わせるんじゃ…」
母「じゃあ、奥の座敷席に行ってて。」
築「とりあえずきんちゃく何個かもってきて。」
母「はいよ。」







とりあえず母に、こっくりさんようのきんちゃくを頼み、母が厨房に向かった後、自分たちが食べるものを決めることにする。

築「うーん、久しぶりに洋カツにしようかな。大盛りで。」
き「じゃあ私は豆腐ステーキにしようかしら?」
築「こっくりさんは他に頼みたいもn…聞こえてないな。」

力んだ正座をして、座っている位置からチラリと見える厨房の方をガン見して怖いくらいだ。
きんちゃくを頼んで2分後くらいになるが、俺ときつ姉ぇの分を追加注文
さらに待つこと数分、まずはこっくりさんのきんちゃくが届く

カセットコンロとうすらデカイ土鍋がテーブルの上、こっくりさんの目の前に置かれ、着火。
すぐにコトコトと蓋が鳴り始めた。

母「もう少ししたら食べていいわよ。」

こ「・・・どのくらいじゃ?」

母「あとの二人のを持ってきたらちょうどイイくらいかな。」

聞こえてるんだかわからないこっくりさんに笑いかけ、母はまた厨房に戻っていった


こ「い、良いにおいじゃぁ…」

見開いた目で鍋を睨み、蓋を開けるときを待つ姿は、あまりに必死すぎて可愛さや楽しそうな様子ではない。
待つこと数分、俺ときつ姉ぇの分が運ばれ、テーブルに置かれコトンと音をたてるとその刹那、こっくりさんは蓋をオープンした。

こ「わはぁ~・・・」

中身を見た瞬間、さっきまで修行僧かとツッコミたいくらいだった形相が一気にほころび、歓喜のため息をついた。
鍋の中にはきんちゃくが【三個も】入っていた。
一つの大きさが、やたらデカイ。ちょうど別冊コロコロ●ミックくらいだろうか。

こ「よいのか?ほんとうにわしがこれを喰ってよいのじゃな?よいのじゃな!?」

目をキラッキラさせ、ちょっとよだれを垂らし、尻尾をぼっふんぼっふん振り回しているこっくりさんは正直可愛かった。
だが

築「いいけど、その尻尾はなんとかしろよ…埃が舞うから。」








テーブルに並んだ料理に向かい各々食事を始める。
洋カツは楕円の大振りなカレー皿に、おなじく楕円に盛られたホカホカの炊きたて白米、
更にその上にアツアツでサクサクに揚った肉厚の大きなトンカツ、更にその上にはじっくりと作られた、
濃厚で味わい深いデミグラスソースが掛けられている。
白米、トンカツ、デミソースのそれぞれが美味そうな匂いと湯気を発散して食欲をそそる。

築「いただきまーす」

フォークを取り、デミソースのかかったカツを突き刺すとサクっと軽い音を立てた。
一口カツをかじり、白米を口に含み一緒に味わう・・・うめえwww
いわゆるおふくろの味でもあるが、たとえ俺がこの店のせがれじゃなくても常習的に食べたくなるほどのファンになっていただろう。


きつ姉の方を見ると、アッツアツの豆腐をハフハフしながら食べていた。
ステーキ用の鉄板の上、大きな豆腐に焼けたとき卵、その上では鰹節が踊っていて、鉄板で焼けた醤油の匂いと鰹節の匂いが、
こちらまで漂ってきている。
そんな豆腐ステーキの様子を見てから少し視線を上げると、同じように洋カツを見てから視線を上げたきつ姉と目が合った。
なんとなく気まずい感じに苦笑いを浮かべ同じことを思いついた

築「一口食べます?」
き「一口食べる?」


き「じゃあ、あーんして?」

箸でちょうど良い大きさに切った豆腐に焼けた卵部分と鰹節を乗せ、
鉄板上の焦げ醤油につけると、左手を添えてこちらに差し出してきた。
大きめに口を開けて一口に頬張り、ハフりながら食す。
ああ、なにげにきつ姉と間接キスだ・・・ふひひ

間接キスに浮かれて惚けて、我に帰るときつ姉が目を閉じて口を開けて待っていた。
他に誰もいない薄暗いところなら松茸を振舞いたくなるな。

築「熱いんで気をつけて。」

器用に白米とカツとソースを一緒に食えるようにフォークに乗せ、きつ姉の口に運ぶ。
唇が妙にエロい。

き「んー、おいしー♪」
築「唇にソースついてますよ。」
き「あら」
ペロリと舌を出して舐めとる様が妖美だ。
ふと(あわよくばと思って)こっくりさんを見ると・・・

こ「うっ・・・ううっ・・・。」

美味さに号泣しながら食ってる上に視界にはきんちゃくしか入っていない。



き「せっかくだし、あとの二人も呼んでいいかしら?」
築「ちょっとタンマ。あとの二人?こっくりさんって三人もいるの・・・?」
き「うーん、こっくりさんが三人というより、三人でこっくりさんなのよ。漢字で狐、狗、狸と書いてこっくりさん。」
築「こっくりさんって狐の霊とかお稲荷様なんかの神様的なものだとばかり。」
き「それはちょいちょい見かける勘違いね。こっくりさんの狐とお稲荷さんの狐はぜんぜん地位が違う存在なのよ。
  同じ自動車でも中古で型落ちのヴィッツと最新式のF-1じゃ違うでしょ?」

そう語るきつねぇの目に、やや憂鬱な光があったことが少し気にかかったが、新たな美少女登場の予感による昂りにわすれてしまった。 

築「へー、生まれてこの方ずっと勘違いしてましたよ。別に呼んでも平気だと思いますよ?部屋の広さも余裕あるし、母親はアレなんで。」
き「じゃあスマホ貸して?」

きつねぇはこっくりさんアプリを起動し、10円型マウスカーソルに指を沿えてその二人を呼んだ。

き「くーちゃん、りっちゃん、でてらっしゃーい。」

青白い光の鳥居が壁に浮かび上がると、そこをくぐるように二人の美少女が壁を抜けて現れた。心底個室で助かったと思う。
一人はハの字に広がった暗い茶色なポニテで大正な服、狸耳と大きな狸尻尾で胸はまな板。
もう一人は黒髪で片目を隠し、クセのあるおさげ髪、赤いタイの映える黒いセーラー服、胸はこっくりさんといい勝負か。犬耳と、他二人と比べて小さい尻尾だ。
というか、いままでこっくりさんと呼んでたけど、こっちゃん呼びで区別するべきか。

り「自己紹介するね。こっくりさんの狸担当、碧(みどり)。ボクのことはりっちゃんとか適当に呼んでね。」
ボクっ娘か、なかなか悪くない。
り「美少女かと思った?残念、男の子でした♪」
築「なにいいいいいいいい!!!???」
り「信じられない?なら触って確かめてみても良いよ。」
さっき自己紹介をしたばかりの狸がいい具合に履き物をたくし上げ、身を寄せて囁く。
き「こらこら、くうちゃんが自己紹介できないでしょ。」
子供を諭すようにきつ姉が言うと、碧はてへぺろをして離れた。



く「私はくぅ。こっくりさんの狗担当。」
きつ姉の影に隠れて警戒の眼差しを伴う自己紹介だった。
き「この子は超がつくほどシャイだから。気を悪くしないでね?」
築「ええ、まあ平気ですけど。俺は築城、ここは俺の実家だから、まあ好きなの頼んでよ。」
こっくりさん・・・こっちゃんで耐性が付いたか、そこまで焦らなかった。
り「じゃあボクは鶏唐~♪」
く「いらない。」
き「お腹すいてないの?」
く「信用できない。」
き「ほんとにゴメンなさいね。」
築「いえいえ、いきなり呼び出されたら警戒もするでしょ。」
忙しくて注文聞きに出て来にくい母の負担を少しでも軽くする意味も込めて、厨房まで注文しに行く。
ついでに冷蔵庫から適当に食べ物を見繕う。

築「くうちゃんだけ何も無いのも可愛そうだから、持ってきてみたよ。」
冷蔵庫から持ち出したものを片手に戻る。
く「何持ってきても無d・・・」
手からぶら下がる緑色の物体を見るや固まった。
とたんに高速で尻尾を振り始め…
く「た・・・食べる。」
一気に態度を軟化させてきた。
笹の葉にくるまれたあんこ入りの緑色の餅をひとつ食べ終わると、きつ姉えの後ろから出てきて、俺のすぐ隣に。
く「信じる。だからもっと頂戴。」
まるで色仕掛けの意思の無い口調でありながらも、身を摺り寄せられて断れる男ではない。
残りの笹団子を与えると、嬉しそうに、より早く尻尾を振りながら食べ始めた。
き「あら、この子が懐くなんて・・・。」
懐くというか、餌付くの方が適切なんじゃ・・・
しばらく後にできた鶏唐は碧が大喜びで飛びついた。
男は胃袋を捕まえろとか言うが、都市伝説も餌付けがいいのか・・・。

つづく


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