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死神少女は修行中-前章.死を携えし少女-b

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 小さい子なら公園くらいは知っているかと思ったあては外れた。
 ノイという少女は物心ついた頃から自宅の外に出たことがなく、公園どころか自分の家の外は見たことがないと言った。
「何で外に出られないのかな?」
「しらない。お外はテレビで見るとキレイだけど、ホントはこわいからダメなんだって」
 彼女にとっては公園も、学校も、そこで遊ぶ同じくらいの子供達も全て
 テレビや本でしか知らない、お伽話のようなものなのだ。
 まだ数日しか見たことのないウィーンの街並みやら、柳がやってきた日本という国の自然や景色、
 子どもたちの遊びについてやら話してやると、目を輝かせて聞き入り、もっともっとと次から次へと話をせがんだ。

(なんで・・・こんな子どもが、外も見た事ない、監禁同然の生活を?)

 親は何をしているのかと思いきや、彼女は4年前に両親を亡くしその両親の記憶は彼女には無い。
 でも写真で見るおとうさまとおかあさまはとってもキレイなんだよと
 にこにこ笑いながら話す少女がなおさら不憫に思えて
 柳はその場に座り込んでサンドイッチの包みを広げ、少女にも食べさせてやった。
 好奇心も食欲も旺盛な少女が目を輝かせてフルーツサンドを摘んでいると二人の頭上に影が落ちた。
「ここで何をしている」
 厳しい眼差しと声音。明らかに好意的ではないそれに柳は怯み、危うくチーズサンドを喉に詰まらせ掛ける。
「あ、えっと・・・むぐっ」
(この人、都市伝説だ・・・それも、結構強い力を持ってる)
「ムーンストラック!」
 ノイがしがみついたその人影は、青年と言うにはやや年嵩の、長身の赤毛の男。グレーの眼光が柳を鋭く見据えている。
「ヤナギはここでお弁当食べてるだけだよ」
 あたしももらったよ、おいしかったよとノイが弁護するが、ムーンストラックと呼ばれた男の眼光はますます厳しくなる。
「知らない人から物など貰ってはいかん」
 来なさいと手を引かれて連れ戻されるノイが柳に向かって叫んだ。
「さよなら」でも「ありがとう」でもなく

「そのサンドイッチ、おいしいからまたちょうだい!」

 これは婉曲的な「また来てね」だろうかと、一人になった門の前で柳はくすりと笑った。

 その翌日、辻弾きのヴァイオリンに耳を澄ませる柳の服の裾を誰かが引いた。
「あ・・・」
「しーっ!・・・あのね、こっそりお家から出てきちゃったんだ」
 昨日の少女、ノイがそこにいた。

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