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死神少女は修行中-23.「あなた、誰?」

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「ノイ・リリス!英語のレッスンの時間だぞ!どこで何をしている!」
 その声はこっそり家を抜け出した少女には届かない。
 極は高校へ登校し、リジーは家事に勤しんでいる頃、新田家の遊び人組―飛縁魔とノイは学校町の繁華街にある昔ながらのフルーツパーラーで仲良くパフェをたしなんでいた。
 ちなみに柳は同行を拒絶され、敢えなく留守番と相成っている。
「しっかし、お嬢ちゃんが『アレ』を拒否するとは思わなかったわねー」
「そーですか?ボクにはむしろ当然に見えたですよ」
 なぜかちゃっかり同席し、ノイと同じプリンアラモードをつつく幻。
 飛縁魔の言う『アレ』とは―

 ノイが新田家に帰った日。
「みんな、お休み」
「ノイ・リリス、休む前に・・・」
 ムーンストラックがノイの額に手を当てようとする。何をしようとするのか一同は瞬時に悟ったが、皆敢えて止めようとはしない。
 が、小さな手が彼の大きな手を押しとどめた。
「いいの」
「ノイ・リリス・・・?」
 今までにないくらい真剣な面もちで、少女は男を見上げる。
「あたし、忘れたくない」
「全部忘れない。ちゃんと背負って生きていきたい。お父さまとお母さまのこと。その他にも、奪ってしまったいのちのこと。イタルのお母さまのこと」
「もう大丈夫。あたしは背負って生きていける。だから、あたしの記憶をこのままにしてください」
 ノイが深々と頭を下げる。その頭にぽんと大きな手がおかれた。
「・・・わかった」
 お休みなさいと笑って踵を返した少女の背に、彼自身にしか聞こえない程の呟きが漏れる。
「何もわからぬ子供だと思っていたのにな・・・」

「ごちそーさまー!」
 飴色に古びた喫茶店のフロアに少女達の声が響く。
「ボクも完食したのですよ!次はホットケーキが食べたいですよ!」
「あたし、イチゴパフェ!・・・と、その前に」
 ちょっとおトイレ、と些か気恥ずかしそうに、ノイが席を立った。

 手洗いには先客がいた。
 背を向けて鏡に向かっているから顔はわからない。それでも―
 それでも、先客の服装がノイと寸分違わず―帽子まで同じであることに気づかない訳ではない。
「あ」
 お揃いの服の先客がゆっくりと振り向く。
「あ・・・?」
 これはただの人ではない。ノイは戦慄にも似た感覚を覚えた。
 服装どころか、顎で切りそろえた黒髪、大きな薄青い瞳、全てが小作りな体格―
―何もかもが生き写しのように、ノイに瓜二つだった。
「あなた、誰?」
 そう問うたのはノイではなく、瓜二つの少女の方。
「あ、あたし・・・ノイ・リリス・マリアツェル!」
 答えを返された少女は、ふふと花のように笑った。
「そう。じゃね」

「ただいま・・・」
「ノイー!おせーですよ!アイスが溶けちまうですよ?」
「あ、うん!」
「どしたのお嬢ちゃん、・・・具合でも悪いの?」
 飛縁魔が心配げに、ノイの顔をのぞき込む。
「あ!う、ううん?」
 少々ぼうっとしていたような少女は慌てて頭を振り、イチゴパフェの置かれた席に着いた。

「仕掛けは終了、ですわ」
「そう、よくやってくれたね」
 色素の薄い青年―新橋蒼に駆け寄ったノイと瓜二つの少女の頭を、蒼は目を細めて撫でた。
「『組織』と関係のないところで動いていてくれたなら、強行手段が取れたんだけどね」
 あろう事か上層部と繋がりが出来たから、厄介なことになってしまった。
 呟く蒼の腕を少女が取る。
「私がいる限り心配は要りませんわ、蒼さま、目的のことだけをお考えなさいませ」
「ただ―あの子は契約者だ。契約している都市伝説の目だけは誤魔化せないね」
「ええ、それは何とかしないといけませんわ」
「・・・まあ、いいよ。時間はまだあるし、他にも排さねばならない要素はあるからね。君は予定通り続けて」
「かしこまりました」
 少女は頷くと、繁華街の雑踏にその姿を消した。

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