「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 次世代の子供達-18b

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匿名ユーザー

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               Red Cape








 じわじわと、蒸し暑さが続くある日の事
 空井 雀は夕方頃、買い物の為に一人で歩いていた
 商店街への買い物を終えて、帰路についていると

「あ、すずっち。お買い物っす?」

 声をかけられ、振り返る
 そこに居たのは、制服姿の憐

「あれ、荒神君、まだ制服?」
「俺っち、アーチェリー部の練習あったんで、今帰りっす」

 ほら、と、アーチェリー部で使う道具の入ったケースを見せる
 練習で、これくらい遅くなってしまう事もよくあるようだ

「で、その帰りにー、よく行く喫茶店に行って、そこの看板犬のお散歩代理引き受けてきたっす」
「お、お散歩代理?」
「そうっす。いつも、じゃないけど。時々お手伝いしてるんで」
「なるほど………あれ。でも。その犬は」
「途中で、弟と合流したんで、今、弟がリード持って………」

 憐が答えようとしていた、その時
 きゃんきゃん、と子犬の声がした
 へっへっへっ、と、しっぽを千切れんばかりに振った柴の子犬が、てちちちちちちっ、と駆けてくる
 その首輪には「XI」の形をしたチャームが下げられている
 そして、その犬の首輪から伸びたリードを持っているのは

「にぃに?お友達?」

 ぽてぽてっ、とリードを手に歩み寄ってきたのは、「天使」と言う言葉がとてもよく似合う、美少年だった
 ふわふわの金髪に、よく似た色の金の瞳。色素の薄い肌。小柄な体躯は、人形を少し思わせる。浮かべる笑顔は、憐が浮かべるへらっとしたものとは違い、にぱっ、とした感じだ

「うん、そうっすよ、凛」
「凛?……その子が、荒神君の弟さん?」
「そうっすー。かわいい弟っす」

 へら~っ、と笑う憐。若干、でれっとしているようにも見えるかもしれない
 てととっ、と二人に近づいた凛は、ぺとっ、と憐にくっつく
 子犬の方は、雀をじーっ、と見上げて、きゅぅん?と首を傾げる
 ご挨拶、と言われて、凛と言う名前らしいその少年は、にぱ~っ、と雀を見上げて笑った

「はじめまして、ぼく、荒神 凛って言います」
「は、はじめまして。ボクは、空井 雀です」
「すずめ?………すずめおにいちゃん!」

 にぱぱー、と、凛は更に笑みを浮かべた
 きゅん!と、子犬も声を上げる

「すずめおにいちゃん、お買い物の帰り?じゃあ、ぼく達と一緒に帰ろうよ」
「え?えっと………」
「最近ね、ぶっそーな事件が多いから、なるべくみんなで帰ったほうがいい、って先生言ってたよ」

 だから一緒!と凛は主張する
 えっと、と、雀が憐を見ると、憐はへららんっ、といつも通りの笑みを浮かべている

「確かに、この所ちょっと物騒なのは事実っすしー。帰る方向、ってか、ポチの……この子犬を喫茶店に帰すまでのコースまで、ご一緒しないっす?そのお店、住宅街にあるお店っすから、ご一緒できると思うっすー」
「そ、そう?…………そ、それなら」

 そもそも、雀はどちらかと言えば、怖がりだ
 物騒、などと言われると少し怖くなる………それこそ、「都市伝説」と言う存在を知った今なら、なおさらだ
 雀が了承してくれた事で、凛が嬉しそうな声を上げる

 住宅街に入っていくに連れて、だんだんと道行く人の数は減っていく
 確かに、こうして人通りが少ないと、万が一の時、助けを呼ぶにも一苦労だろう

(まぁ、これだけの人数で歩いていれば、不審者とかは出ないよね………)

 雀が、そう考えていた時だった

 きゃんきゃんきゃんっ!!と、ポチと言う名前らしい子犬が吠え声をあげはじめた
 それと同時、三人の頭上を、何かの影が、横切る

「…………え」

 視線を、上へと上げる
 夕焼けが沈んでいく、闇と紅が交じり合った空を………不気味なものが、飛んでいた
 体調はだいたい1,8メートルくらいだろうか
 馬のような、羊のような、鹿のような………そんな面長な顔立ち。真っ赤な目。黒っぽい毛で覆われた胴体。その背中からはコウモリを思わせる翼が生えていて、細長い尾がっyらると揺れる。後ろ足は馬のそれによく似ていた

 悪魔、と
 そんな単語が、脳裏をよぎる
 空を飛ぶ悪魔のようなそれは、くるり、と身を翻して…………

「きゅんっ!」
「え?………っわ!?」

 ポチが、雀に飛びかかった
 子犬タックルを食らって、押し倒されるような形になった雀
 その結果、ひゅんっ、と急襲してきたジャージーデビルの攻撃を、避けることができた

「え、あ……あ、あれは」
「…………凛、すずっちとポチと一緒に、ちょっと離れてて!」

 混乱している雀を庇うように、憐が前に出た
 はーい、と、この場の空気にそぐわぬ凛の声がして、くっ、と雀は手を引かれる

「すずめおにーちゃん、こっちー」
「え、えぇ………ち、ちょっと待って………!?」

 きゃんきゃんきゃんきゃん!!と、ポチが吠えている声が辺りに響き渡る
 急襲してきたその悪魔は再び空へと飛び上がり、旋回していた
 再び、狙いをこの場にいる誰かへと、定めようとしているかのようだ

「な、何あれ………」
「んーとね、確か、「ジャージーデビル」だよ。えっとね、アメリカの方の都市伝説で、「リーズ家の悪魔」とか呼ばれてるんだって」

 緊迫感のない声で、凛が雀にそう告げた
 リーズ家の13番目の子供とも、リーズ家の子供達が拾った正体不明の卵から生まれた存在とも言われている、それ
 本来アメリカに存在しているはずのそれが、当たり前のように学校町の空を飛んでいる
 だらりとあけられたその口が、何か言葉を発しているようなのだが、早口の英語でしかもぼそぼそと話している為、聞き取ることはできない。ただ不気味なうめき声だけが響く

 「都市伝説」
 あれも、確かにそうなのだ
 雀が契約した人面犬のように、弟子になってしまった口裂け女のように
 ……あの、襲ってきた駐車男のように

 空を旋回するジャージーデビルは、明らかに「襲ってきている」
 逃げるなりなんとかしなければ、危ない
 雀一人ならば、逃げる選択肢を選ぶことだろう。人面犬との契約によって強化されたスピードがあれば、逃げきれるはずだ
 ただ、この場には憐と凛と、ポチがいる
 ……「逃げる」選択肢をとった場合、彼らを置き去りにしてしまう

「…大丈夫だよ、すずめおにーちゃん」

 きゅっ、と、凛が雀の手を、少しだけ強く握った
 きゃんきゃんきゃん、とポチが吠え続けている中、やはり、緊迫感を感じさせない声で、にぱーっ、と笑って、告げてくる

「だって、にぃには強いから」

 ……いつの間にか、憐はその手に弓を持っていた
 アーチェリーで使う弓、のように見えたそれは、瞬時に光に包み込まれていった


 狙いを定める
 空を旋回する、それに向けて
 ジャージーデビルの口から漏れだすその言葉を、憐はある程度聞き取れていた

『ーーーーいない、いない、まぁまが、いない』

 あのジャージーデビルの口から漏れだしていたのは、そんな言葉

『まぁま、どこ?ぼくを見つけたまぁまは、どこ?ぼくのまぁまになってくれたまぁまはどこ?』

 それは、母親を恋しがっているような声に思えるかもしれない言葉
 しかし

『まぁま、まぁま、まぁま、まぁま。ねぇねぇどこ?どこ??まぁまの為にご飯持ってくよ。まぁまの大好きなお肉持ってくよ。だからまぁま、見捨てないで』

 その目は、憐達を見るその眼差しは

『まぁま、ニンゲン、大好きだもんね。ぼくが持って行ってあげる。だから早く出てきてね、早く出てきてくれないと、せっかくのお肉が腐っちゃうよ。まぁま、この町のどこに隠れているの?』

 はっきりと、憐達を「食べ物」として見ていた

 ふぅ、と息を吐きだす
 ……せめて、少しでも、苦しみを与えないように
 そんな、憐の思いを載せたように………憐の放った「シェキナーの弓」の矢は、ジャージーデビルの心臓目掛けて、狙い違わず飛んでいった

「ッギ……………!?」

 ジャージーデビルの体が、落下していく
 重力に従うように………否、微妙に抗うように、落ちていく
 そして、最後の抵抗と言わんばかりに、鋭い爪を、振りかぶってきた

「っ!!」
「荒神君!?」

 ぱっ、と、赤が飛ぶ
 爪は憐を掠って、赤い切り傷を作る

 どしゃりっ、と、ジャージーデビルの体は地面に落ちて………それと同時、その肉体はぱぁっ、と光の粒子となって、存在の証すら残さず、消えた

「…………ん、よし。もう大丈夫っすよー」

 へらんっ、としたいつも通りの笑顔を浮かべて、憐は雀と凛へと視線を向けた
 先ほどまで吠え続けていたポチは、もう吠えるのをやめてぱたぱたぱた、としっぽを振っている

「え、い、いや、荒神君の怪我の方が………」
「んー、これくらいは、平気っすよー」

 そう、憐にとってはこの程度の怪我、怪我のうちには入らない
 す、と軽く手をかざし、契約都市伝説の力を開放する
 ぽぅ、と掌から溢れだした白い光は、憐についた傷をあっさりと消していった

「ほらほら、大丈夫すよー。これくらいなら、治せるっすからー」

 へらんっ、と、憐は笑う
 物事を、深刻にしないように、深刻に考えさせないように、大丈夫、と伝えるように

「ほら、にぃに、強いでしょう?にぃには強いから、あれくらいの相手は平気なんだよ」

 えっへん、と言うように、凛は雀にそう告げた
 戸惑っている様子の雀に、憐はさらににまり、と笑ってみせる

「………詳しいお話は、また今度。じっくり、「お話」するっすね」

 自分は、戦っている姿を見せてしまった
 都市伝説を認識しているのだと示してしまった

 ……だから、そろそろ、「お話」するとしよう


 きゅーん、とポチが声を上げる
 静けさを取り戻した住宅街、怪しい影は、もう、いない









    ようこそ
    はじめまして、こんにちは!

    さぁ、非日常の世界へ、ごゆるりと案内いたしましょう!!



               Red Cape










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