「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 次世代の子供達-38

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匿名ユーザー

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 ぺちぺちぺち
 ぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺちぺち

 帰ってくるなり目に飛び込んだ光景に、九十九屋はどんな顔をしたら良いのかわからず、とりあえず立ち止まった
 ぺっちんぺっちんぺっちん、と、可愛らしい少女を模した人形が、大人しく正座している角が生えて大柄な女を叩き続けているその光景は、異様としか言い様がない

「……何をやっているんだ、アナベル」
「あ、九十九屋お兄ちゃん!聞いて聞いて聞いて!!皓夜ったら酷いの!」

 ぷんすか、と言った様子で、アナベルと呼ばれた人形はぴょこんっ、と女の膝から降りると、てちちちちちっ、と九十九屋に近づいていった
 九十九屋がしゃがんでやると、ぴょんっ、と彼の腕まで跳んで、そのまま抱っこされる

「皓夜がね、皓夜がね!私のおもちゃ食べちゃったの!」
「おもちゃ?」

 もしや、と思って、皓夜………角が生えた大柄な女の傍らを、見る
 そこに散らばっているのは、何かの欠片

「あぁ、うん。理解した。腹が減って我慢がきつくなったんだな」
「………ごめんなさい」

 しょぼぼーん、とした様子で皓夜はそう口にした
 何せ、彼女は「人間」しか食えない
 一応、一度食べればある程度食べずとも大丈夫であるはずなのだが、この学校町に来てからと言う物、その食事を得られない時間の方が長い
 どうしても、空腹になってしまうがゆえに、アナベルのおもちゃ………以前の皓夜の食べ残したる頭蓋骨に、手を出してしまったのだろう

「気にするな。なかなか食事を調達してやれないこっちにも責任はある。アナベルも、許してやれ」
「むー………」

 九十九屋の言葉に、アナベルはなかなか機嫌を直さない
 仕方ないな、と、九十九屋は自分のかばんから、何やら取り出した
 それは、長く太い針金を、危なくないよう丸くまとめた物
 針金は九十九屋の掌の上に乗ると………ぐにゃり、と、ひとりでに動き出した
 ぐにゃり、ぐにゃり、ぐにゃり、ぐにゃああああ…………

「……おぉー……」

 目の前で変化していく針金を、アナベルは本来輝くはずなど無い人形の瞳をキラキラと輝かせて見つめていた
 正座したままの皓夜も、きらきらと子供のように目を輝かせて見つめている
 やがて、その針金は。九十九屋の掌の上で複雑に絡み合い、髑髏を模した形へと変化した

「ほら、これやるから。これで我慢しておけ」
「やったー!!九十九屋お兄ちゃん大好きー!」

 きゃっきゃっ、とはしゃぐアナベル
 店に置いたなら、結構な値段を取る代物なのだが、これくらいはいいだろう
 九十九屋の能力を持ってすれば、この程度の物を作り上げる等容易い事なのだから

「あなべる、いいなー………」
「皓夜も欲しいか?」
「う?うー…………うぅん、いらない、こーや、もらっても、きっと、こわす……」

 自身の力が強い事を自覚してか、しょんぼりと皓夜は答える。自身の強すぎる腕力を制御しきれないのは、彼女の弱点だろう

「ヴィットリオとアダムは?」
「まだ、かえってきてない……だいじょーぶかな?」
「アダムはともかくヴィットリオはどうだろうな。あいつ、調子に乗りやすいところあるし……」
「誰のことを心配してんだ?」

 皓夜と話していると、背後から声
 九十九屋が振り返ると、そこにいるのは欧米系の顔立ちの男二人
 一方は、人一人入りそうな樽を傍らに置いている

「あぁ、確保出来たのか………見つかっていないだろうな?」
「もちろん。アダムに周囲見張らせてたし、妙な視線も感じなかった。問題ないぜ」
「ここまでつけてくる気配もなかったし、大丈夫だと思う」

 二人の言葉に、わかった、と九十九屋はうなう居た
 皓夜は、九十九屋が契約都市伝説の能力を発揮していた時よりもさらに瞳を輝かせ、「ごはん?ごはん??」と口にしている。もしも、彼女が犬だったならば、ちぎれんばかりに尻尾を振っていることだろう

「そうだ、皓夜、ご飯だぞ!俺が契約都市伝説の能力で持って生け捕りにしてきた!新鮮だぞ、褒め称えろ!!」
「わーい!う゛ぃっとりおすごーい、だいすきーー!!」

 すっく!と正座状態から立ち上がった皓夜
 そして、ふらつきながらイタリア系の顔立ちの男性、ヴィットリオへと突撃し

「あ、待った、皓夜。お前に抱きしめられると俺は死ねr っぎゃーーーーー!!??」
「何やってんだお前ら」

 皓夜の強烈なタックルを受けて、倒れこむヴィットリオ。なんかすごい音がした気がするのは気のせいか
 「あししびれたー……」と皓夜が呟いているのを見るに、タックルしたと言うよりもヴィットリオの目前ですっ転んで巻き込んだのが正しいのかもしれないが

「…………やれやれ」

 隠れ住まねばならぬのにこんなに騒がしくていいのか、と九十九屋は深々と、ため息を付いたのだった




 その日
 学校町の、どこかで
 生きながら食われる痛みに絶望の叫びを上げた誰かがいたが
 その事実に、誰も気づくことは、なかった



to be … ?





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