駅に着くと、もうそこには父の姿があった
あちらもすぐに息子に気づいたのか、顔を上げてくる
あちらもすぐに息子に気づいたのか、顔を上げてくる
「…来たか。診療所の手伝いはいいのか?」
「向こうも、お袋が今日帰ってくるってのはわかってるし、こっちが連絡するよりも先に、今日は来なくて大丈夫だって言われた。親父こそ、部活の顧問やってるだろ。そっちは大丈夫なのか」
「化学部なら、今の部長はまともだから放置しても問題ない。そうじゃなくとも、昔から自由にやらせていたしな」
「向こうも、お袋が今日帰ってくるってのはわかってるし、こっちが連絡するよりも先に、今日は来なくて大丈夫だって言われた。親父こそ、部活の顧問やってるだろ。そっちは大丈夫なのか」
「化学部なら、今の部長はまともだから放置しても問題ない。そうじゃなくとも、昔から自由にやらせていたしな」
我が父親ながらこれでいいのか、と、荒神 灰人は父親である荒神 秀の言葉に呆れた
父が教師を務めている高校に通うのは気まずい事この上ない為、別の高校に通っている今現在、父の学校での働きっぷりは実の弟同然の従兄弟や一つ年下の幼馴染達から聞くしかない訳だが、正直不安しかない
一応、生徒からはそれなりに慕われているし校長からの信頼も厚いとは聞くが、本当に大丈夫なのだろうか
父が教師を務めている高校に通うのは気まずい事この上ない為、別の高校に通っている今現在、父の学校での働きっぷりは実の弟同然の従兄弟や一つ年下の幼馴染達から聞くしかない訳だが、正直不安しかない
一応、生徒からはそれなりに慕われているし校長からの信頼も厚いとは聞くが、本当に大丈夫なのだろうか
(まぁ、信頼されてるのは、都市伝説契約者としての実力やらその辺も含んでだろうが………)
都市伝説事件の発生率が、20年前までと比べると格段に減っているとはいえ、元々中央高校は都市伝説事件が学校町内でもひときわ、野生の都市伝説が出現し易いエリアなのだ
今でも、教師なり生徒なりで都市伝説と契約していて、戦闘能力をある程度保有している者が、学校の敷地内に出現した都市伝説の相手をする事は多いと聞く
自身が通う高校でもちらほらと都市伝説が出没する事はあるが、正直、中央高校程ではない
それらに対して対応出来るだけの戦力を中央高校は保有している、とも言えるだろう
実際、「組織」等も、中央高校関係者をあまり巻き込みたがらない、と言う話を聞いたことはある
今でも、教師なり生徒なりで都市伝説と契約していて、戦闘能力をある程度保有している者が、学校の敷地内に出現した都市伝説の相手をする事は多いと聞く
自身が通う高校でもちらほらと都市伝説が出没する事はあるが、正直、中央高校程ではない
それらに対して対応出来るだけの戦力を中央高校は保有している、とも言えるだろう
実際、「組織」等も、中央高校関係者をあまり巻き込みたがらない、と言う話を聞いたことはある
(………そもそも。親父が働いてる場所で何かあったら、叔父が黙ってないか)
未だに「組織」でも最強クラスの一角と呼ばれる父の弟の事をふっと考える
……叔父の場合、当人の戦闘能力や契約都市伝説だけではなく、性格とか性格とか性格の面でそう言われている可能性も高いという事実からは、そっと目をそらしながら
……叔父の場合、当人の戦闘能力や契約都市伝説だけではなく、性格とか性格とか性格の面でそう言われている可能性も高いという事実からは、そっと目をそらしながら
「…………」
と、父の視線が、改札へと向いた
自然と、灰人もそちらに視線を向ける
自然と、灰人もそちらに視線を向ける
駅の改札を抜けて、母がこちらに近づいてくる様子が、見えた
少し疲れているようではあるが、出かけていった時と、特に変わった様子はない
少なくとも目に見える怪我はなかったようで、そこにはほっとした
少し疲れているようではあるが、出かけていった時と、特に変わった様子はない
少なくとも目に見える怪我はなかったようで、そこにはほっとした
「おかえり、お袋」
「あぁ、ただいま」
「あぁ、ただいま」
こちらが手を振ると、母もひらり、と手をふって答えてきた
母の顔の右半分を隠している長い前髪が、軽く揺れる
母の顔の右半分を隠している長い前髪が、軽く揺れる
「……お帰り、ウル。無事か」
「無事だよ。秀と灰人こそ、何か問題はなかったか?」
「無事だよ。秀と灰人こそ、何か問題はなかったか?」
いつも通りの男っぽい口調で母はそう聞いてきた
特に無い、と答えようとして………いや、あるか、と、すぐに切り替える
特に無い、と答えようとして………いや、あるか、と、すぐに切り替える
「ここんとこ、都市伝説による事件が増えてる」
「中央高校だけで見ても、20年前程ではないものの、増えているな」
「中央高校だけで見ても、20年前程ではないものの、増えているな」
灰人が答えれば、父もまた答える
そうか、と、母はため息を付いた
そうか、と、母はため息を付いた
「ヨーロッパでも、「狐」が通った後に都市伝説事件が増えててな………「アヴァロン」に侵入しかけた奴がいて、流石に大騒ぎになった」
「それで、帰りが遅れたのか」
「それで、帰りが遅れたのか」
そういう事だ、と、母は溜息をつく
本当ならば、もう数ヶ月早く、日本に帰ってくるはずだったのだ。ヨーロッパに戻ったのは、あくまでも届け物をするためだけだったはずなのだから
しかし、母がヨーロッパへと戻っていた間に、白面九尾の狐が出現し、その影響であちらこちらで事件が起きた
その結果、それなりに強力な力を持っている母が戦力として駆りだされ、足止めを食らってしまったのだ
………無事で帰って来てくれたから、いいのだが
本当ならば、もう数ヶ月早く、日本に帰ってくるはずだったのだ。ヨーロッパに戻ったのは、あくまでも届け物をするためだけだったはずなのだから
しかし、母がヨーロッパへと戻っていた間に、白面九尾の狐が出現し、その影響であちらこちらで事件が起きた
その結果、それなりに強力な力を持っている母が戦力として駆りだされ、足止めを食らってしまったのだ
………無事で帰って来てくれたから、いいのだが
「しばらく、面倒な相手は懲り懲りだ………とはいえ、学校町に「狐」が来ている可能性が高い以上、そうも言っていられないんだろうが」
「お袋じゃないと手に負えないような相手が学校町に来ていない事を祈るよ」
「お袋じゃないと手に負えないような相手が学校町に来ていない事を祈るよ」
そんな会話をしながら、駅の駐車場へと向かう
父の車の助手席に乗り込んで、母はようやく本格的に落ち着いたようだった
車が、ゆっくりと動き出す
父の車の助手席に乗り込んで、母はようやく本格的に落ち着いたようだった
車が、ゆっくりと動き出す
「………そうだ。「教会」のジェルトヴァがこっちに来ているらしいが。フェリシテは接触したのか?」
「あぁ、しているようだ。「教会」直轄の教会に毎週通っているんだしな。フェリシテと憐の話からすると、完全に追加の人員として来た形になっているな」
「おかげで、遥が機嫌が悪いらしいぞ」
「遥はそうか………涼は?」
「相手にしていないから、今のところ問題はないな。凛の方は、特にあの男とは関わっていないから、そちらも問題はない」
「あぁ、しているようだ。「教会」直轄の教会に毎週通っているんだしな。フェリシテと憐の話からすると、完全に追加の人員として来た形になっているな」
「おかげで、遥が機嫌が悪いらしいぞ」
「遥はそうか………涼は?」
「相手にしていないから、今のところ問題はないな。凛の方は、特にあの男とは関わっていないから、そちらも問題はない」
車の中で、そんな会話をする
叔母のフェリシテと従兄弟たる憐は毎週教会に通っているし、憐に至ってはよく手伝いに行っているから、「教会」所属のその男とはよく遭遇する
そもそも、叔母は「教会」所属であり、ジェルトヴァとは前々から顔見知りなのだ
だからこそ、母は少し心配しているのだろう。叔母とジェルトヴァは昔、何かあった………と言うより、ジェルトヴァの方から一方的に何かしらあったようだから。叔母は一切気づいてない上に気にしていないが
叔母のフェリシテと従兄弟たる憐は毎週教会に通っているし、憐に至ってはよく手伝いに行っているから、「教会」所属のその男とはよく遭遇する
そもそも、叔母は「教会」所属であり、ジェルトヴァとは前々から顔見知りなのだ
だからこそ、母は少し心配しているのだろう。叔母とジェルトヴァは昔、何かあった………と言うより、ジェルトヴァの方から一方的に何かしらあったようだから。叔母は一切気づいてない上に気にしていないが
そんな、会話をしていた時だった
どんっ!!と大きな音がして、車が揺れる
どんっ!!と大きな音がして、車が揺れる
音の原因は、すぐにわかった
原因が、車のボンネットに、居る
原因が、車のボンネットに、居る
「ひ、ひ、ひ」
それは、老婆だった
一人の老婆が、自分達の乗る車のボンネットにしがみつき、けたけたと不気味な笑い声を上げている
突然の奇怪な状況に、しかし車の運転を誤らずにすんだ父はさすが、と言うべきだろうか
小さく舌打ちしながらも、ハンドルからは手を離さない
一人の老婆が、自分達の乗る車のボンネットにしがみつき、けたけたと不気味な笑い声を上げている
突然の奇怪な状況に、しかし車の運転を誤らずにすんだ父はさすが、と言うべきだろうか
小さく舌打ちしながらも、ハンドルからは手を離さない
「………ったく。前が見えづらいのは、面倒だな」
「この状況で言うのがそれだってのは流石だよ………灰人、この婆さん、「何」なのかわかるか?」
「この状況で言うのがそれだってのは流石だよ………灰人、この婆さん、「何」なのかわかるか?」
母の言葉に、後部座席からやや身を乗り出し、その老婆を観察する
ボンネットにしがみつき、老婆はけたけた、けたけたと笑い続けており、ボンネットにしがみついているだけで、それ以上、攻撃してくる様子は見えない。と、なると………
ボンネットにしがみつき、老婆はけたけた、けたけたと笑い続けており、ボンネットにしがみついているだけで、それ以上、攻撃してくる様子は見えない。と、なると………
「高確率で、「ボンネットババア」!」
そう、「ボンネットババア」だ
全国各地、様々なバリエーションが存在する、俗にいう「ババア系都市伝説」のうちの一種類だ
国道を走っていると、突然、老婆がボンネットに飛び乗ってくる。その時に、運転を誤ると死んでしまう………車を追いかけてくる「ダッシュババア」や「ターボババア」なんかと比べるとどちらがマシなのかわからないが、ドリブルしているボールをぶつけてきて事故を発生させる「ドリブルババア」と比べると、直接攻撃してこないだけマシと言える
全国各地、様々なバリエーションが存在する、俗にいう「ババア系都市伝説」のうちの一種類だ
国道を走っていると、突然、老婆がボンネットに飛び乗ってくる。その時に、運転を誤ると死んでしまう………車を追いかけてくる「ダッシュババア」や「ターボババア」なんかと比べるとどちらがマシなのかわからないが、ドリブルしているボールをぶつけてきて事故を発生させる「ドリブルババア」と比べると、直接攻撃してこないだけマシと言える
「対処法は?」
「そのまま、7km走り続けるのが良いらしいが………」
「そのまま、7km走り続けるのが良いらしいが………」
ちらり、と父の様子を伺う
ボンネットにしがみついている「ボンネットババア」が邪魔で、前方の視界が通りにくい
全く運転出来ない状態ではないが、7kmとなるといけるかどうかわからない
ボンネットにしがみついている「ボンネットババア」が邪魔で、前方の視界が通りにくい
全く運転出来ない状態ではないが、7kmとなるといけるかどうかわからない
「いけそうか?親父」
それでも、一応確認をとってみると
「いけなくもないが、面倒だ」
と、そう返された
いけなくもない、という辺り、本当、父も都市伝説に慣れているからこう言う時、さほど困らない
いけなくもない、という辺り、本当、父も都市伝説に慣れているからこう言う時、さほど困らない
「ま、たしかに面倒だな」
母は、父の言葉にそう言うと………顔の右半分を覆う長い前髪を、軽く掻きあげて
そして、ボンネットにしがみつく「ボンネットババア」を、見た
そして、ボンネットにしがみつく「ボンネットババア」を、見た
「はい…………あぁ。そこら辺に転がしておくから、回収を。念の為、証言を聞き出して………」
自分にとっても知り合いである、母が所属している組織の者へと電話をかける灰人
その間に、両親は車のボンネットの状態を確認していた
その間に、両親は車のボンネットの状態を確認していた
「…少しへこんだくらいだな。これなら、修理に出す必要もないか」
「流石に、重みでへこんだか……修理費用くらい、だすけど」
「いらん。新車でもないからな」
「流石に、重みでへこんだか……修理費用くらい、だすけど」
「いらん。新車でもないからな」
よく見ないとわからないレベルのへこみ
これくらいならば、無視しても問題無いだろう
これくらいならば、無視しても問題無いだろう
「連絡入れておいた。適当に転がしとけば、回収するってよ」
「あぁ、わかった………影んとこに置いておくか。一般人が目撃したら、腰を抜かしかねない」
「あぁ、わかった………影んとこに置いておくか。一般人が目撃したら、腰を抜かしかねない」
ずずっ、と重たいそれ………石と化したボンネットババアを、物陰へと隠しておいた
このリアルすぎる石像は、ちみっこが見たら確実に泣き出しかねないし、人によってはトラウマ間違いなしだ
このリアルすぎる石像は、ちみっこが見たら確実に泣き出しかねないし、人によってはトラウマ間違いなしだ
「……帰って来て早々、能力使わせて悪かったな」
「いいんだよ、相手が弱かったから、すぐに石になったんだし」
「いいんだよ、相手が弱かったから、すぐに石になったんだし」
母の長い前髪の向こう側、一瞬、左目とはい路の違う赤目が輝いた
能力を使って疲労したのか、ふわ、とあくびをしている
能力を使って疲労したのか、ふわ、とあくびをしている
「………だっる。帰ったら、寝る。時差の関係もあるから、余計に眠たい」
「おぅ、帰ったら安心して寝ておけ」
「おぅ、帰ったら安心して寝ておけ」
父が軽く母の頭を撫でると、母は少し安心したように父に寄り添った
………仲が良いのは悪いことではないし、二人はさほどいちゃつく方でもないから、大目に見ておく
………仲が良いのは悪いことではないし、二人はさほどいちゃつく方でもないから、大目に見ておく
学校町に在住している「レジスタンス」構成員の中でもトップクラス
否、「レジスタンス」全体でも、その能力の強力さで知られる、母の敵対者を石化させる能力は、やはりすごいものなのである、と
灰人はこの日、改めてそう認識したのだった
否、「レジスタンス」全体でも、その能力の強力さで知られる、母の敵対者を石化させる能力は、やはりすごいものなのである、と
灰人はこの日、改めてそう認識したのだった
to be … ?