握ってきた手は、暖かった
すがるものを求めるように、こちらの手をつかんできた小さな手
ぬくもりなど存在しないこの手をつかんでくるなど愚かしいと感じた
振り払うのも、面倒で放置したら、結局、目を覚ますまで放してこなかった
目を覚ました瞬間に「冷たい」と文句を言ってきた
知るか、自業自得だ
すがるものを求めるように、こちらの手をつかんできた小さな手
ぬくもりなど存在しないこの手をつかんでくるなど愚かしいと感じた
振り払うのも、面倒で放置したら、結局、目を覚ますまで放してこなかった
目を覚ました瞬間に「冷たい」と文句を言ってきた
知るか、自業自得だ
「クロ兄」
その呼び方を止めろ
無視して目を閉じると、のし、と俺の体の上に座ってきた
重たい、やめろ
無視して目を閉じると、のし、と俺の体の上に座ってきた
重たい、やめろ
「なぁ、クロ兄。この城の風呂の温泉、クロ兄が沸かしたって、本当か?」
「………誰から聞きやがった」
「マルファスとハルファスから」
「………誰から聞きやがった」
「マルファスとハルファスから」
あの鳥共
今度、羽をむしってやろうか
今度、羽をむしってやろうか
「…沸かしたんじゃない。見つけたんだ」
「見つけた?」
「見つけた?」
俺に乗ったまま首をかしげるな
まずは、降りろ
まずは、降りろ
「クロ兄の能力って、氷雪系じゃなかったか?」
「水も、俺の能力圏内だ。洪水を起こす、大波を鎮める、どちらも可能だ」
「水も、俺の能力圏内だ。洪水を起こす、大波を鎮める、どちらも可能だ」
……いい加減、重たい
首根っこつかんで、傍らに卸す
首根っこつかんで、傍らに卸す
「……そして。源泉を見つけ出す。それも俺の能力だ」
「…源泉………眠れる才能の暗喩、か?」
「聴いてばかりいないで、自分で考えて判断しろ」
「…源泉………眠れる才能の暗喩、か?」
「聴いてばかりいないで、自分で考えて判断しろ」
……正解だ
人間の才能を発掘するのも、俺の能力の一つ
面倒だから、ほとんど使った事はないが
人間の才能を発掘するのも、俺の能力の一つ
面倒だから、ほとんど使った事はないが
「もう聞くことはないだろ?さっさと消えろ」
「やだ。遊ぼう」
「やだ。遊ぼう」
圧し掛かるな、重い
何故、この子供は俺に懐くんだ
何故、この子供は俺に懐くんだ
「坊やを好いている悪魔共と遊んでくりゃいいだろうが」
「やだ、クロ兄がいい」
「やだ、クロ兄がいい」
鬱陶しい
さっさと、どこかに行ってしまえ
さっさと、どこかに行ってしまえ
諦めずに呼びかけてくる声を無視して、目を閉じる
不満そうな声をだし、だが、子供は離れない
馬鹿な子供だ
他の悪魔に愛されているのだから、そちらとだけ行動すればいいだろうに
不満そうな声をだし、だが、子供は離れない
馬鹿な子供だ
他の悪魔に愛されているのだから、そちらとだけ行動すればいいだろうに
あぁ、馬鹿で、愚かだ
(……だから、こそ)
あの馬鹿な悪魔達は、この子供を愛おしく感じるとでも言うのか?
いつの間に眠っていたのか
この街で活動する間の拠点内の、テレビが置いてあるリビングルーム
餓鬼共に付き合わされて、ソファーに座ってテレビを見ていたはずだったのだが
この街で活動する間の拠点内の、テレビが置いてあるリビングルーム
餓鬼共に付き合わされて、ソファーに座ってテレビを見ていたはずだったのだが
テレビは消されていて、部屋の明かりも消えている
時計を見れば、そろそろ日付が変わる時刻だ
時計を見れば、そろそろ日付が変わる時刻だ
部屋に戻ろうと立ち上がると同時に、扉が開いた
…カイザーが、少し驚いた表情でこちらを見てくる
…カイザーが、少し驚いた表情でこちらを見てくる
「…あぁ、目を覚ましましたか」
「餓鬼共は?」
「先ほど、寝かしつけましたよ」
「餓鬼共は?」
「先ほど、寝かしつけましたよ」
ため息をついてくるカイザーに、そうか、と短く答えた
相変わらず、ご苦労なこった
相変わらず、ご苦労なこった
「ご苦労さん。そろそろ、目標の居場所は絞り込めてきているんだ………体調は整えておけよ?お前には、重要な役割があるんだからな?」
「………わかっています」
「………わかっています」
俯いて答えてくる声
迷いがにじみ出ているのを感じる
あぁ、そうだ、迷え
そして、こちらに堕ちてきてしまえ
迷いがにじみ出ているのを感じる
あぁ、そうだ、迷え
そして、こちらに堕ちてきてしまえ
「……わかっているな?エイブラハム様の言葉は、絶対だ」
「……………わかって、います」
「その時がきたら、お前は役割に集中しろ。餓鬼相手に手助けしようとは思うなよ?あいつらがこの任務でどうなろうと、自己責任なんだからな」
「……………わかって、います」
「その時がきたら、お前は役割に集中しろ。餓鬼相手に手助けしようとは思うなよ?あいつらがこの任務でどうなろうと、自己責任なんだからな」
こちらの言葉に、カイザーの体が小さくはねた
睨みあげてくる視線
まだあきらめず、反抗してくるから
いい加減、諦めてしまえ
睨みあげてくる視線
まだあきらめず、反抗してくるから
いい加減、諦めてしまえ
「何だよ」
「…っあなたは……あの子達を相手に、情を感じてはいないのですか?」
「……はぁ?」
「…っあなたは……あの子達を相手に、情を感じてはいないのですか?」
「……はぁ?」
何を馬鹿を言っているんだ、こいつは
こちらの正体を知っているくせに
こちらの正体を知っているくせに
「俺は、餓鬼は嫌いだよ」
鋭く睨み付けてくる視線を無視して、部屋を出る
あいつがどう反抗しようが、もう遅い
俺とエイブラハム様に、あいつは逆らうことなどできないのだから、放置しても構うまい
あいつがどう反抗しようが、もう遅い
俺とエイブラハム様に、あいつは逆らうことなどできないのだから、放置しても構うまい
「………あぁ、そうだ、餓鬼なんて嫌いだよ」
この氷の悪魔に、子供の暖かさなど不要なのだ
悪魔は悪魔らしく、ぬくもりとは無縁に生きる
ただ、それだけだ
悪魔は悪魔らしく、ぬくもりとは無縁に生きる
ただ、それだけだ
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