すらりと伸びた背、適度に見栄えよく鍛えられている引き締まった体。
顔立ちも決して悪い訳ではなく、家事万能であり根は真面目で素直な青年。
これだけ見れば、彼が女性にあまり縁がないと言う事実を不思議に思う者もいる
顔立ちも決して悪い訳ではなく、家事万能であり根は真面目で素直な青年。
これだけ見れば、彼が女性にあまり縁がないと言う事実を不思議に思う者もいる
…だが、実際には、それなりの理由が確実に存在するのだ
中華料理屋の昼時の厨房
そこで青年はアルバイトをしていた
高校の頃から(学校には届け出は出さずに)バイトを続けているこの職場では、青年はバイトの中では古株の方である
正式に就職しないかなどとも言われているが、今のところその気はない
いつ何時、都市伝説絡みの事件に巻き込まれるかわからない身として、自由な時間を必要としていたからだ
半ば怒号も飛び交う忙しいその時間帯、青年は手際よく調理を進めていっている
そこで青年はアルバイトをしていた
高校の頃から(学校には届け出は出さずに)バイトを続けているこの職場では、青年はバイトの中では古株の方である
正式に就職しないかなどとも言われているが、今のところその気はない
いつ何時、都市伝説絡みの事件に巻き込まれるかわからない身として、自由な時間を必要としていたからだ
半ば怒号も飛び交う忙しいその時間帯、青年は手際よく調理を進めていっている
「海老チャーハン二人前できたぞ……………っげ」
「どうした?」
「…すんません、店長、ちょっと……」
「どうした?」
「…すんません、店長、ちょっと……」
出来上がった料理を出した直後
青年は、こそこそと店長に耳打ちした
あぁ、と店長は察して、ちらり、厨房から見えるその客席を覗く
…そこに座っている、独りの女性客
青年は、それに気づいたのだ
青年は、こそこそと店長に耳打ちした
あぁ、と店長は察して、ちらり、厨房から見えるその客席を覗く
…そこに座っている、独りの女性客
青年は、それに気づいたのだ
「ほら、出前行って来い」
「……すんません」
「……すんません」
申し訳無さそうな表情を浮かべて、青年は出前を持って店を出た
その様子を、女性従業員の一人が不思議そうに見送る
その様子を、女性従業員の一人が不思議そうに見送る
「…どうしたの?彼」
「あぁ…何か、顔合わせたくない客がいるらしいぞ」
「あぁ…何か、顔合わせたくない客がいるらしいぞ」
新入りであるその女性従業員に、青年よりも古株の従業員が答えた
高校生の頃からここでバイトをしていて…いつも、とある客を見かけると、青年はそれとは決して顔を合わせたくない、顔を見られたくない、とでも言うように、隠れたり逃げたりしようとする
店長としては、以前は学校の教師と顔を合わせたくないないのだろうかと考えていたようだが、高校を卒業した今でも、となると…
……何らかの理由があるのだろう
理解ある店長はそう察して、その客が青年と顔を合わせないよう、配慮してくれているのだ
高校生の頃からここでバイトをしていて…いつも、とある客を見かけると、青年はそれとは決して顔を合わせたくない、顔を見られたくない、とでも言うように、隠れたり逃げたりしようとする
店長としては、以前は学校の教師と顔を合わせたくないないのだろうかと考えていたようだが、高校を卒業した今でも、となると…
……何らかの理由があるのだろう
理解ある店長はそう察して、その客が青年と顔を合わせないよう、配慮してくれているのだ
「結構な美人さん相手なんだけどなぁ。まぁ、あいつの好みの範疇からは外れてるけど」
「あの人の好みって……確か…」
「あの人の好みって……確か…」
…若干、引いているような……否、むしろ、ちょっぴり興味津々の様子の女性従業員
こそこそ、呟く
こそこそ、呟く
「男性でしたっけ?生真面目な様子のスーツを着た年上の」
「ピンポイントすぎるし。でも、そうらしいよなぁ……言い寄ってるの見たことあるし」
「ピンポイントすぎるし。でも、そうらしいよなぁ……言い寄ってるの見たことあるし」
本人がいない事をいい事に、勝手に話す従業員たち
今ごろ、青年はくしゃみしているところだろう
今ごろ、青年はくしゃみしているところだろう
「あら?でも、最近ちっちゃな女の子と一緒に生活はじめたって聞きましたよ?」
「いや、それに生真面目スーツも一緒らしいぞ?」
「え?幼女と生真面目スーツでダブル嫁?」
「…むしろ、こっちは幼女だけでも欲しいな…」
「いや、もしかしらたら、チャラ男×生真面目スーツ×幼女とか…」
「こら、お前ら!この忙しい時間に馬鹿な事くっちゃべるな!!」
「いや、それに生真面目スーツも一緒らしいぞ?」
「え?幼女と生真面目スーツでダブル嫁?」
「…むしろ、こっちは幼女だけでも欲しいな…」
「いや、もしかしらたら、チャラ男×生真面目スーツ×幼女とか…」
「こら、お前ら!この忙しい時間に馬鹿な事くっちゃべるな!!」
店長の怒号で、身勝手な噂は一旦終了する
…まぁ、つまりは
こう言う理由なのだろう、あの青年が女性に縁がないのは
何故、この職場にも青年と黒服の事が知れ渡っているか?
…青年がバイトをし始めの頃、心配した黒服が、度々様子を見にきていて
その度に、青年が嬉しそうに駆け寄っていったせいだ
それ以外でも、路地裏で壁際に追い詰めて「首塚」に誘っている様子を遠目で見られた事もあるからなのだろうが
こう言う理由なのだろう、あの青年が女性に縁がないのは
何故、この職場にも青年と黒服の事が知れ渡っているか?
…青年がバイトをし始めの頃、心配した黒服が、度々様子を見にきていて
その度に、青年が嬉しそうに駆け寄っていったせいだ
それ以外でも、路地裏で壁際に追い詰めて「首塚」に誘っている様子を遠目で見られた事もあるからなのだろうが
とどの、つまり
少なくともこのバイト先にて、青年は「女性に興味がなく、本命は男」と思われているが為に
少なくとも、このバイト先では、女性と良い雰囲気になる隙など、カケラも存在しないのだった
少なくともこのバイト先にて、青年は「女性に興味がなく、本命は男」と思われているが為に
少なくとも、このバイト先では、女性と良い雰囲気になる隙など、カケラも存在しないのだった
「…………っくし」
出前の帰り道、青年は小さくくしゃみした
この所冷えてきたから、風邪でも引きかけているのだろうか
気をつけないと
そう考えながら、店に戻ろうとしていると
この所冷えてきたから、風邪でも引きかけているのだろうか
気をつけないと
そう考えながら、店に戻ろうとしていると
「……ん?お前、狂犬か?」
「へ?………あ、お前かよ。その呼び方やめろって言ってるだろ」
「へ?………あ、お前かよ。その呼び方やめろって言ってるだろ」
突然、懐かしい…と言っても、高校の頃の事だからせいぜい3年前だが…呼び名で呼ばれ、青年は思わず立ち止まった
声をかけた相手に、むっとした表情を浮かべてやる
声をかけた相手に、むっとした表情を浮かべてやる
「いや、悪い悪い。なんだ、バイト中か?」
「あぁ……お前は?」
「買い物帰り。大食らいの奴と夕食なもんでね」
「あぁ……お前は?」
「買い物帰り。大食らいの奴と夕食なもんでね」
両手に大きな買い物袋を持って、その相手は苦笑してきた
買い物袋の中身は、大半が肉
…どんだけ食う相手なんだろうか
買い物袋の中身は、大半が肉
…どんだけ食う相手なんだろうか
「どうだ?元気でやってるか?」
「まぁ、それなりには。順調なつもりだよ」
「まぁ、それなりには。順調なつもりだよ」
「そうかい……あぁ、呼び止めて悪かったな」
「いや、いい。それじゃあな」
「いや、いい。それじゃあな」
踵を返し、店への帰路に着く
…あの幼馴染と顔を合わせるのは、久しぶりだ
しばらくぶりに会ったけど、様子は変わってないようでほっとした
…あの幼馴染と顔を合わせるのは、久しぶりだ
しばらくぶりに会ったけど、様子は変わってないようでほっとした
「…あれ、でもあいつ………隣町に引っ越したんだったような…?」
帰ってきていたのか
それだったら、連絡くらい寄越してくれても良かったのに
一瞬はそう考えたが、それでも、深くは考えず
…店から、アイツが帰っていてくれればいい
そう願いながら、青年は店へと帰っていった
それだったら、連絡くらい寄越してくれても良かったのに
一瞬はそう考えたが、それでも、深くは考えず
…店から、アイツが帰っていてくれればいい
そう願いながら、青年は店へと帰っていった
「…………」
立ち去る金髪の青年を、その男はじっと見送った
変わっていないな、と思う
こちらの事を、まるで疑いもせずに、友人だと信じ込んだまま
…いや、彼とて、あの青年のことを友人だと思っている
………だが、同時に
高校時代、何度喧嘩しても、決して勝てなかった相手
親元から離れて色々と吹っ切れたあの青年に…彼は、(勉学以外で)ありとあらゆる面で、負け続けた
あの青年に勝ちたい、負かせたい
徹底的に、こちらが勝者であるのだと……中学の頃までの、ありとあらゆる面で勝っていたはずの自分に、戻りたい
…あの青年と顔を合わせて、そのコンプレックスが再び刺激される
変わっていないな、と思う
こちらの事を、まるで疑いもせずに、友人だと信じ込んだまま
…いや、彼とて、あの青年のことを友人だと思っている
………だが、同時に
高校時代、何度喧嘩しても、決して勝てなかった相手
親元から離れて色々と吹っ切れたあの青年に…彼は、(勉学以外で)ありとあらゆる面で、負け続けた
あの青年に勝ちたい、負かせたい
徹底的に、こちらが勝者であるのだと……中学の頃までの、ありとあらゆる面で勝っていたはずの自分に、戻りたい
…あの青年と顔を合わせて、そのコンプレックスが再び刺激される
「ひひっ、どうしたの?」
「いや、懐かしい知り合いにあったんでな」
「いや、懐かしい知り合いにあったんでな」
ひょこり
目当ての物を購入できたらしい魔女の一撃に、男は笑って見せた
……あぁ、そうだ
あいつも、マッドガッサーの能力の餌食にさせてやろうか
そして、女になったあいつを、徹底的に支配してやろう
こちらを友人だと信じ込んでくれているあいつの顔が、どんな風に変わるだろうか
あぁ、楽しみだ
目当ての物を購入できたらしい魔女の一撃に、男は笑って見せた
……あぁ、そうだ
あいつも、マッドガッサーの能力の餌食にさせてやろうか
そして、女になったあいつを、徹底的に支配してやろう
こちらを友人だと信じ込んでくれているあいつの顔が、どんな風に変わるだろうか
あぁ、楽しみだ
「よし、んじゃあ帰るか。マリが腹減らしてるだろうしな」
「ひひっ、そうね」
「ひひっ、そうね」
魔女の一撃と並んで、男は北区の教会へと向かっていく
…その心に、ドス黒い野望を抱えて
to be … ?