その出会いは偶然だった。
(――――――どうして)
学校からの帰り道、瑞鶴は【響】との待ち合わせ場所に一人で直行した。
自分も同行しようかと提案はしたが、罠だった時の為に、彼女一人で向かわせることに渋々ではあるが同意するしかなかった。
スタンがいると、動きも阻害され、逃げられる場面でも逃げられなくなってしまう。
戦場慣れしている彼女の意見を否定する要素もなく、スタンは一人で帰宅路を歩く。
自分も同行しようかと提案はしたが、罠だった時の為に、彼女一人で向かわせることに渋々ではあるが同意するしかなかった。
スタンがいると、動きも阻害され、逃げられる場面でも逃げられなくなってしまう。
戦場慣れしている彼女の意見を否定する要素もなく、スタンは一人で帰宅路を歩く。
(――――――どうして、だよ)
剣道部の友人と他愛ない雑談をして少々遅くなってはしまったが、暗くなる前に帰ってしまえば問題はないだろう。
別行動をしている間に何かがあったら令呪で呼び出せばいい。
聖杯戦争が始まったとはいえ、こんな他愛のない帰宅途中で修羅場など起こるはずがない。
そう思っていた数時間前の自分を殴りたくなる。
もしも、彼女に無理を言って付いて行けばこんな想いをしなくても済んだのだろうか。
考えた所でどうしようもないのに。口からは弱気な言葉が漏れ出してしまう。
別行動をしている間に何かがあったら令呪で呼び出せばいい。
聖杯戦争が始まったとはいえ、こんな他愛のない帰宅途中で修羅場など起こるはずがない。
そう思っていた数時間前の自分を殴りたくなる。
もしも、彼女に無理を言って付いて行けばこんな想いをしなくても済んだのだろうか。
考えた所でどうしようもないのに。口からは弱気な言葉が漏れ出してしまう。
(はやてちゃんが、マスター?)
それは道行く人の中に見た奇妙な人影だった。
この街に住む人間にしては違和感を抱かせる服装。例えるなら、異世界。浮世離れという言葉では言い表せない違和感。
目を凝らしてみた時には、総てを察していた。
そして、もう一つ。
サーヴァントらしき男に抱えられた少女ははどこからどう見ても、八神はやてであった。
いつの日か、困っている彼女を助けた記憶はまだ新鮮なままで残っている。
あの時見せた笑顔も、言葉も。サーヴァントと一緒にいるという事実が塗り変えていく。
無理やり拉致されたという可能性も、サーヴァントの男と親しげに話してる様子から掻き消されてしまう。
彼女もまた、自分と同じく願いを求めてこの聖杯戦争にやってきた【敵】だった。
八神はやてはマスターである。その事実がスタンを奈落の底へと引きずり込む。
この街に住む人間にしては違和感を抱かせる服装。例えるなら、異世界。浮世離れという言葉では言い表せない違和感。
目を凝らしてみた時には、総てを察していた。
そして、もう一つ。
サーヴァントらしき男に抱えられた少女ははどこからどう見ても、八神はやてであった。
いつの日か、困っている彼女を助けた記憶はまだ新鮮なままで残っている。
あの時見せた笑顔も、言葉も。サーヴァントと一緒にいるという事実が塗り変えていく。
無理やり拉致されたという可能性も、サーヴァントの男と親しげに話してる様子から掻き消されてしまう。
彼女もまた、自分と同じく願いを求めてこの聖杯戦争にやってきた【敵】だった。
八神はやてはマスターである。その事実がスタンを奈落の底へと引きずり込む。
(じゃあ、殺さなきゃ……いけないよな?)
ぎゅっと掌を握り締め、背負っている竹刀へと手をかける。
これを頭部へ目掛けて一振り。竹刀といえど、立派な凶器だ。
幼い女子などスタンからすると、命を奪うなど容易である。
これを頭部へ目掛けて一振り。竹刀といえど、立派な凶器だ。
幼い女子などスタンからすると、命を奪うなど容易である。
(……ッ! 何、考えてんだよ、落ち着け、俺ッ! あっちはサーヴァントがいるってのに勝てるかよ!?)
サーヴァント。自分のような矮小な存在が到底敵うはずがないとわかっているはずだ。
駄目だ、全然駄目である。冷静の一欠片も今の自分に含まれていない。
サーヴァントとマスター、どちらが強いかなんてわかりきった事実ではないか。
駄目だ、全然駄目である。冷静の一欠片も今の自分に含まれていない。
サーヴァントとマスター、どちらが強いかなんてわかりきった事実ではないか。
(瑞鶴を呼ぶか? いや、それは短慮が過ぎるか? 勝てるとは限らない勝負を挑む為だけに戦いを挑むのはどうなんだ。
あのサーヴァントがどんな力を持っているか、俺は何も知らないっていうのに。
ああ、くそっ! どうしたらいいんだよ! 俺は、俺は――――!)
あのサーヴァントがどんな力を持っているか、俺は何も知らないっていうのに。
ああ、くそっ! どうしたらいいんだよ! 俺は、俺は――――!)
結局、スタンにできたのは、はやて達を横目で見ることだけだった。
何もできない。いや、何もしようとしない。
所詮、アリーザに対しての思いなんてその程度だったのか。
鬱屈した自己嫌悪は強まり、畜生と小さくつぶやきが漏れ出した。
何もできない。いや、何もしようとしない。
所詮、アリーザに対しての思いなんてその程度だったのか。
鬱屈した自己嫌悪は強まり、畜生と小さくつぶやきが漏れ出した。
(そんな簡単に殺せるはず、ねぇだろ! 魔物や星晶獣、どうしようもねぇ悪人じゃねぇんだぞ!?
ほんの少ししか話してないけど、はやてちゃんが悪い娘に見えたか!? 見えねえだろうが!)
ほんの少ししか話してないけど、はやてちゃんが悪い娘に見えたか!? 見えねえだろうが!)
果たして、スタンは本当に覚悟をしていたのか。
この聖杯戦争を望んだ参加者が悪人ばかりではないことに。
そして、彼女のように接点を持った人間がその中にいる可能性に。
この聖杯戦争を望んだ参加者が悪人ばかりではないことに。
そして、彼女のように接点を持った人間がその中にいる可能性に。
(きっと、あの娘が願ったのは――あの動かない足を治すことだ。
それとも、別の理由か。何にせよ、俺は……殺せるのか?
あの娘のこれからを奪う覚悟を本当にしていたのか?)
それとも、別の理由か。何にせよ、俺は……殺せるのか?
あの娘のこれからを奪う覚悟を本当にしていたのか?)
それでも、もうスタートは切ってしまった。
この手を汚してでも、願いたい想いがあると自覚したはずだ。
この手を汚してでも、願いたい想いがあると自覚したはずだ。
(……迷うな。一人の為に他の全部を犠牲にするって決めただろ。
それに、今の俺が背負っているのは俺の願いだけじゃない。
瑞鶴のやり直したいって願いも背負っているんだ)
それに、今の俺が背負っているのは俺の願いだけじゃない。
瑞鶴のやり直したいって願いも背負っているんだ)
もうこの身は自分一人のものだけではない。
相棒の、瑞鶴のこれからもかかっている大切な身体である。
いくら、はやてが優しい女の子であろうとも、例外はない。
相棒の、瑞鶴のこれからもかかっている大切な身体である。
いくら、はやてが優しい女の子であろうとも、例外はない。
【おい、瑞鶴……聞こえるか?】
やるしかない、やらなくちゃけない。
そうしなくてはならない状況だし、しなくては進めない。
そうしなくてはならない状況だし、しなくては進めない。
【おいったら】
【――ッ!!】
【――ッ!!】
しかし、聞こえたのは切迫した彼女の声であり、彼女が置かれた状況が芳しくないと悟らせるには十分なものであった。
■
(来ないわねぇ、【響】)
スタンによる念話がかかる数分前。瑞鶴は手に持った弓をくるくると回しながら待ち人のこない現状に嘆いていた。
夕日が落ちかけた赤い空。人っ子一人いない小さな公園。
そこからちょっと離れたマンションの屋上で、瑞鶴は目を一瞬だけ閉じた。
瑞鶴は一向にこない待ち合わせ相手の行く末を、思案する。
待ち合わせ場所に艦載機を飛ばしてみても、彼女の姿も魔力も感じられない。
真面目な彼女のことだ、遅刻などありえまい。
それとも、襲われていて予定が狂ったのか。
いつ如何なる時に不確定な出来事が起こってもおかしくないのが聖杯戦争だ、その可能性は十分に有り得る。
夕日が落ちかけた赤い空。人っ子一人いない小さな公園。
そこからちょっと離れたマンションの屋上で、瑞鶴は目を一瞬だけ閉じた。
瑞鶴は一向にこない待ち合わせ相手の行く末を、思案する。
待ち合わせ場所に艦載機を飛ばしてみても、彼女の姿も魔力も感じられない。
真面目な彼女のことだ、遅刻などありえまい。
それとも、襲われていて予定が狂ったのか。
いつ如何なる時に不確定な出来事が起こってもおかしくないのが聖杯戦争だ、その可能性は十分に有り得る。
(……もう死んじゃったのかもね。あの子は律義で愚直に過ぎるのよ。何か、厄介事にでも巻き込まれたのか。
最初の提案時に受け入れてくれたらよかったのに。出会えただけで運が良かったって思うしかないわね)
最初の提案時に受け入れてくれたらよかったのに。出会えただけで運が良かったって思うしかないわね)
はぁ、と溜息をつき、瑞鶴はこれ以上待った所で時間の無駄だと悟った。
勘ではあるが、もう彼女とは会えない気がする。
寡黙ながらも、その内には熱い魂を秘めた白髪の少女はこの世界で敗れ去った。
そもそもの話、自分達は既に死者であり、死を恐れぬサーヴァントである。
加えて、自分は願いの為に、マスターの為に、彼女を本気で殺そうとしたのだ。
勘ではあるが、もう彼女とは会えない気がする。
寡黙ながらも、その内には熱い魂を秘めた白髪の少女はこの世界で敗れ去った。
そもそもの話、自分達は既に死者であり、死を恐れぬサーヴァントである。
加えて、自分は願いの為に、マスターの為に、彼女を本気で殺そうとしたのだ。
(さようなら、【響】。貴方は私の戦友だった。こんな場所でも、会えて嬉しかったわ)
それでも、彼女とは戦友だった。
あの地獄のような戦場で藻掻いたあの勇姿を、この世界でも貫いたのだ。
振り返らない。けれど、忘れない。
彼女がいたことを、戦ったことを、瑞鶴は心に刻もう。
あの地獄のような戦場で藻掻いたあの勇姿を、この世界でも貫いたのだ。
振り返らない。けれど、忘れない。
彼女がいたことを、戦ったことを、瑞鶴は心に刻もう。
(……それよりも、今は目の前の獲物に集中するべきよね)
瑞鶴の視線の先では、少年と少女が何やら言い争いをしている。
その片割れは先程も遭遇した例の気持ち悪いサーヴァントであったから驚きだ。
もう片方の少女は名前までは思い出せないが、確かスタンのクラスメイトであったはずだ。
その片割れは先程も遭遇した例の気持ち悪いサーヴァントであったから驚きだ。
もう片方の少女は名前までは思い出せないが、確かスタンのクラスメイトであったはずだ。
(轟音に釣られて様子見をしにきたけど、まさか途中で遭遇するなんてね。
察するに、戦闘から逃げてきたのかしら? 幸いなことに、まだ、相手は気づいていない。
ここから狙撃しても倒せる可能性は高いはず)
察するに、戦闘から逃げてきたのかしら? 幸いなことに、まだ、相手は気づいていない。
ここから狙撃しても倒せる可能性は高いはず)
さてと、どうする。
まだ、喝采の巻き起こる戦場は創り出せる。
ぱちりと指を鳴らすだけで、旋回している艦載機は彼らに容赦無い爆撃を繰り出すだろう。
たったそれだけ。たった一動作で彼らの命運は爆炎の中へと放り込まれるのだ。
まだ、喝采の巻き起こる戦場は創り出せる。
ぱちりと指を鳴らすだけで、旋回している艦載機は彼らに容赦無い爆撃を繰り出すだろう。
たったそれだけ。たった一動作で彼らの命運は爆炎の中へと放り込まれるのだ。
(できれば、狙いたい。あんなにも無防備だもの、絶好の機会だっていうのはわかる。
けれど、時間帯が最悪ね。まだ陽の光が残っているけれど、直に夜になる。
もしも一撃で仕留められなかったら、拙い。追撃を躱し切れるなんてうぬぼれはない。
時間が経つにつれて不利になるのは私。そこんところを理解して、選ばないとね)
けれど、時間帯が最悪ね。まだ陽の光が残っているけれど、直に夜になる。
もしも一撃で仕留められなかったら、拙い。追撃を躱し切れるなんてうぬぼれはない。
時間が経つにつれて不利になるのは私。そこんところを理解して、選ばないとね)
正直、不安要素は大きい。
あの気持ち悪いサーヴァントは得体が知れず、できれば自分以外の手で仕留められてほしい。
下手に手を出すと、こちらが痛い目に合う可能性が高過ぎる。
故に、不干渉であろうと決めてはいた。しかし、屠るチャンスがあるなら話は別だ。
生命は一つきり。焦って、仕損じたら手痛い反撃が来ることはわかっている。
そんな理屈を抜きにしても、ぶら下がったチャンスには食いつきたくなるのだ。
とはいっても、下手に手を出すと、こちらが痛い目に合う可能性だってある。
そう。こんな風に。ひゅいん、と風切り音が鳴り、矢が手首へと。突き刺さる一筋の閃光に、瑞鶴は痛みと共に気づいた。
あの気持ち悪いサーヴァントは得体が知れず、できれば自分以外の手で仕留められてほしい。
下手に手を出すと、こちらが痛い目に合う可能性が高過ぎる。
故に、不干渉であろうと決めてはいた。しかし、屠るチャンスがあるなら話は別だ。
生命は一つきり。焦って、仕損じたら手痛い反撃が来ることはわかっている。
そんな理屈を抜きにしても、ぶら下がったチャンスには食いつきたくなるのだ。
とはいっても、下手に手を出すと、こちらが痛い目に合う可能性だってある。
そう。こんな風に。ひゅいん、と風切り音が鳴り、矢が手首へと。突き刺さる一筋の閃光に、瑞鶴は痛みと共に気づいた。
(っ!? 第三者っ!? 私以外の射手が此処にいたっていうの!?)
姿を隠しながら、この正確無比な射撃、推測するに極上の射手に相違ない。
追撃の矢を躱しながら、瑞鶴は艦載機を繰り、見えぬ射手に対して足止めに向かわせる。
片腕が負傷した今、この戦場に留まる理由はない。
同じ射手として、格の違いを見せつけられ、悔しいし、やり返したい気持ちは強い。
けれど、今は自分の命が第一であるし、感情に身を任せて熱くなっては、相手の思う壺だ。
敗北の血潮を流し、苦渋の唾を飲み込みながら、瑞鶴は一心不乱に駆け抜ける。
それは、誉れ高き艦娘としては屈辱であり、認めなくてはいけない油断だった。
追撃の矢を躱しながら、瑞鶴は艦載機を繰り、見えぬ射手に対して足止めに向かわせる。
片腕が負傷した今、この戦場に留まる理由はない。
同じ射手として、格の違いを見せつけられ、悔しいし、やり返したい気持ちは強い。
けれど、今は自分の命が第一であるし、感情に身を任せて熱くなっては、相手の思う壺だ。
敗北の血潮を流し、苦渋の唾を飲み込みながら、瑞鶴は一心不乱に駆け抜ける。
それは、誉れ高き艦娘としては屈辱であり、認めなくてはいけない油断だった。
■
「そんなの……お断りっ!」
それは、球磨川からすると予想外の事だった。
携帯電話に映し出された通話ボタンを閉じ、前川みくは真っ直ぐと自分の濁った瞳を見返した。
当然、その様子は見ていられず、ガタガタと震え、目の焦点も定まっていない。
所詮は、普通(ノーマル)。
普段の彼にはそれなりに慣れても、正真正銘の本気であるマイナスには到底及ばない。
けれど。彼女ははっきりと球磨川に対して、否定の言葉を投げつけた。
携帯電話に映し出された通話ボタンを閉じ、前川みくは真っ直ぐと自分の濁った瞳を見返した。
当然、その様子は見ていられず、ガタガタと震え、目の焦点も定まっていない。
所詮は、普通(ノーマル)。
普段の彼にはそれなりに慣れても、正真正銘の本気であるマイナスには到底及ばない。
けれど。彼女ははっきりと球磨川に対して、否定の言葉を投げつけた。
『……ふーん?』
「何か、文句でもあるの!」
『別にぃ? 僕は君のサーヴァントな訳だし、黙って従うさ。
せっかくの善意を無碍にされて涙が止まらないのはともかく、どうしてだい?
君にとって、得すれど損はないと思ったんだけど』
「何か、文句でもあるの!」
『別にぃ? 僕は君のサーヴァントな訳だし、黙って従うさ。
せっかくの善意を無碍にされて涙が止まらないのはともかく、どうしてだい?
君にとって、得すれど損はないと思ったんだけど』
事実、球磨川が出した案はみくには全く不利益がかぶらないものだ。
敵対した音無を窮地に立たせることに、何の躊躇いがあろうか。
敵対した音無を窮地に立たせることに、何の躊躇いがあろうか。
「嫌なの。何も知らないまま、乗せられるままに乗せられて。
みくは音無センパイのことを何も知らない。
どんな願いを持って此処にいるのか。それは人を殺さなきゃ叶えられない願いなのか」
みくは音無センパイのことを何も知らない。
どんな願いを持って此処にいるのか。それは人を殺さなきゃ叶えられない願いなのか」
しかし、前川みくはまだ知らない。
音無結弦という人間を全く知らない。
彼が生徒会長で品行方正だというのはあくまでも、この世界での話だ。
彼の端正な表情が悲痛に歪み、それでもと聖杯に手を伸ばす理由。
未央を殺してでも、叶えたいと言い切れる願いの源。
みくは、この世界で何も成せていない。
逃げてばかりで、誰かに委ねてばかりで、真正面から物事を見たことなんてあっただろうか。
音無結弦という人間を全く知らない。
彼が生徒会長で品行方正だというのはあくまでも、この世界での話だ。
彼の端正な表情が悲痛に歪み、それでもと聖杯に手を伸ばす理由。
未央を殺してでも、叶えたいと言い切れる願いの源。
みくは、この世界で何も成せていない。
逃げてばかりで、誰かに委ねてばかりで、真正面から物事を見たことなんてあっただろうか。
「何よりも嫌なのはっ――! ルーザーに言われるがままにしか動いていないみくの情けなさ!」
ここで、球磨川の言う通りに動けば簡単だ。
彼の思うがままに委ねていたら、考える必要だってない。
楽で安心な選択肢を選べれば、どれだけよかったことか。
彼の思うがままに委ねていたら、考える必要だってない。
楽で安心な選択肢を選べれば、どれだけよかったことか。
「だから、みくは自分で考えて、確かめる! 音無センパイにもう一度会って、決着をつける!
未央チャンにしたことは許せないけど、理由も聞かないで、何も知らないまま傷つけ合うのは、嫌にゃ!」
『その想いは、聖杯を取ることよりも大事なのかい?
このまま陰湿にねっとりと追い詰めて、僕らの預かり知らぬ所でご退場してもらった方が楽だと思うんだけどね』
「言ったでしょ、ルーザーの思い通りに動くなんてお断りだにゃ。自分を曲げて、やるべきこともやらないまま進むよりはよっぽどましっ」
未央チャンにしたことは許せないけど、理由も聞かないで、何も知らないまま傷つけ合うのは、嫌にゃ!」
『その想いは、聖杯を取ることよりも大事なのかい?
このまま陰湿にねっとりと追い詰めて、僕らの預かり知らぬ所でご退場してもらった方が楽だと思うんだけどね』
「言ったでしょ、ルーザーの思い通りに動くなんてお断りだにゃ。自分を曲げて、やるべきこともやらないまま進むよりはよっぽどましっ」
けれど、もう迷わないし揺らがない。
やるべきことは定まった。
やるべきことは定まった。
「みくは知らなくちゃいけない。聖杯戦争だけじゃなく、この街にいる人達のことを。
聖杯なんていらない、なんて思えないけど。奇跡に踊らされるまま、戦うなんて間違っている!」
聖杯なんていらない、なんて思えないけど。奇跡に踊らされるまま、戦うなんて間違っている!」
知ろう、総てを。この不揃いな物語を、解きほぐしていこう。
そして、それから前川みくの聖杯戦争を始めよう。
そして、それから前川みくの聖杯戦争を始めよう。
『――あぁ、全く。また、勝てなかった』
過負荷を押し退けるように、視線を強く向ける彼女の姿に、球磨川は思わず見惚れてしまった。
どうしてこうも、自分が知り合う女の子は面白いのか。
簡単に自分へとなびかず、ひたすらに貪欲に。
これだから、ますます弄り倒したくなってしまう。
どうしてこうも、自分が知り合う女の子は面白いのか。
簡単に自分へとなびかず、ひたすらに貪欲に。
これだから、ますます弄り倒したくなってしまう。
「ルーザー、わかってるよね? みくに隠れて変なことでもしたら」
『はいはい、今はしないよ。今は、ね』
『はいはい、今はしないよ。今は、ね』
球磨川はくるりと取り出した螺子を回し、指で弾く。
刹那、甲高い金属音が数度。そして、痛々しい球磨川の呻き声。
刹那、甲高い金属音が数度。そして、痛々しい球磨川の呻き声。
『それよりも、ますは切り抜けなくちゃいけない事態があるみたいだ。
カッコつけられる余裕がある内に、逃げなくちゃね』
カッコつけられる余裕がある内に、逃げなくちゃね』
飛んでくる弓矢を螺子で相殺しながら、みくを抱き抱え、球磨川は後方へと飛び退る。
柄にもなく、切迫した表情で球磨川は額から汗を一滴垂らし、にやりと笑う。
腕に突き刺さった矢を抜きながら、思考する。
さあ、どうする。
あいも変わらず不利な戦闘。勝ち筋は見えず、このまま封殺される可能性だってある。
柄にもなく、切迫した表情で球磨川は額から汗を一滴垂らし、にやりと笑う。
腕に突き刺さった矢を抜きながら、思考する。
さあ、どうする。
あいも変わらず不利な戦闘。勝ち筋は見えず、このまま封殺される可能性だってある。
『ま、いつものことさ』
『――――はっ、楽勝だね』
諦めることを、決してしない。
貪欲に、可能性を拾い上げていこうじゃないか。
貪欲に、可能性を拾い上げていこうじゃないか。
■
(和装の射手は退却。あの気持ちの悪い青年も打って出ることをせずに逃走。
どちらも、感情を高ぶらせて特攻などせずに、即座に逃げの一手を打ち出す冷静さを持っている。
はぁ、やはり、数多の英霊が集う戦なだけはありますわね。楽観視など、以ての外ですわ)
どちらも、感情を高ぶらせて特攻などせずに、即座に逃げの一手を打ち出す冷静さを持っている。
はぁ、やはり、数多の英霊が集う戦なだけはありますわね。楽観視など、以ての外ですわ)
今川ヨシモトは撃ち放った矢への対応からして、彼らが容易に打ち崩せる存在ではないと認識を改めた。
やはり、強い。聖杯戦争に呼ばれるだけあって、どの英霊も鎧袖一触とはいかない。
無論、自分が彼らよりも弱く、負けてしまうとは露程にも思っていないけれど。
やはり、強い。聖杯戦争に呼ばれるだけあって、どの英霊も鎧袖一触とはいかない。
無論、自分が彼らよりも弱く、負けてしまうとは露程にも思っていないけれど。
(もっとも、どのような窮地であっても、万物、尽く撃ち貫くのが、私の流儀。
狙いを定めたからには逃しはしません)
狙いを定めたからには逃しはしません)
脇目もふらず逃走する二つの点の内、ヨシモトは球磨川達を見定めた。
判断材料はどちらが討ち取りやすいか。
一瞬だけ目を閉じて、思考する。
そして、ヨシモトが下した結論は足手まといであろうマスターを連れている球磨川達だった。
あの独特の精神汚染系統の気持ち悪さには少し不安を覚えるが、近づかずに遠くから矢を放ち続けば問題はないだろう。
判断材料はどちらが討ち取りやすいか。
一瞬だけ目を閉じて、思考する。
そして、ヨシモトが下した結論は足手まといであろうマスターを連れている球磨川達だった。
あの独特の精神汚染系統の気持ち悪さには少し不安を覚えるが、近づかずに遠くから矢を放ち続けば問題はないだろう。
(アーチャー故、先程の校庭での挑発には乗れなかったのは業腹でしたが、まあいいでしょう)
校庭への狙撃は成功したが、参加者を炙りだすといった目的はほぼ失敗した。
牽制目的の電撃こそあったが、サーヴァントの姿は現れず、刃を交えることは成されていない。
あまりにもぷんすこぷんぷんで昼食を多めに頂いたのはうら若き乙女として恥ずかしい記憶の一端だ。
牽制目的の電撃こそあったが、サーヴァントの姿は現れず、刃を交えることは成されていない。
あまりにもぷんすこぷんぷんで昼食を多めに頂いたのはうら若き乙女として恥ずかしい記憶の一端だ。
(マスターの考えに則って、攻めの姿勢は崩さない。マスターも彼らを討ち取ることに異論はないと合意した。
後は私だけ。私が、矢を放つだけ。存分に、戦の酔いを肴に踊り狂うことができる)
後は私だけ。私が、矢を放つだけ。存分に、戦の酔いを肴に踊り狂うことができる)
思考を切り替える。
彼らがどんな想いで聖杯戦争に望もうが、自分達にとってはただの敵だ。
願いの理由が尊かろうが、醜かろうが、関係ない。
天下泰平を成し遂げた英雄の弓術を前に、果たしてどれだけ抵抗を続けていられるか。
ヨシモトの矢を貫くに値する足掻きを見せてみるがいい。
これは傲慢ではなく、自負だ。一つの国を平らげた結果から基づく、強さだ。
彼らがどんな想いで聖杯戦争に望もうが、自分達にとってはただの敵だ。
願いの理由が尊かろうが、醜かろうが、関係ない。
天下泰平を成し遂げた英雄の弓術を前に、果たしてどれだけ抵抗を続けていられるか。
ヨシモトの矢を貫くに値する足掻きを見せてみるがいい。
これは傲慢ではなく、自負だ。一つの国を平らげた結果から基づく、強さだ。
(全く。私もマスターと同じく、生き急いでいると言われても反論できませんわね)
身体は戦場に興奮している。
腕は未だ、武の頂きを辿っている。
指は、矢へと番われている。
腕は、弓からの離反を待っている。
腕は未だ、武の頂きを辿っている。
指は、矢へと番われている。
腕は、弓からの離反を待っている。
(ですが、これもまた私ですわね。武将として、抑えきれぬ性はどうにもなりませんわ)
心臓は、撃つ間だけ、静になる。
集中し、加速。確定された一瞬の死を乗せて、矢を解き放つ。
加速の限界で、刹那の息を戻し、止まっていた呼吸を蘇らせる。
射手として、武将として。瞬くくらい短く撃ち放て。
集中し、加速。確定された一瞬の死を乗せて、矢を解き放つ。
加速の限界で、刹那の息を戻し、止まっていた呼吸を蘇らせる。
射手として、武将として。瞬くくらい短く撃ち放て。
「――楽しみましょう。骨の髄まで熱く、蕩けるまで」
いつだって、どんな時だって。
それを実行してきたのが、今川ヨシモトなのだから。
それを実行してきたのが、今川ヨシモトなのだから。
【B-4/1日目 夜】
【スタン@グランブルーファンタジー】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]竹刀
[道具]教材一式
[金銭状況]学生並み
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取る。
1.――――畜生。
[備考]
装備の剣はアパートに置いてきています。
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]竹刀
[道具]教材一式
[金銭状況]学生並み
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取る。
1.――――畜生。
[備考]
装備の剣はアパートに置いてきています。
【B-3/1日目 夜】
【アーチャー(瑞鶴)@艦隊これくしょん】
[状態]健康、右手に刺突痕
[装備]
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取る。
1. 逃げる。
2.気分は乗らないが、球磨川を敵に回したくない為、不干渉程度の同盟を締結しておきたい。
[備考]
※はやて主従、みく主従、超、クレア、ゾル、加蓮を把握。
※チャットルームへと誘われましたが、球磨川の気持ち悪さから乗り気ではありません。
[状態]健康、右手に刺突痕
[装備]
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取る。
1. 逃げる。
2.気分は乗らないが、球磨川を敵に回したくない為、不干渉程度の同盟を締結しておきたい。
[備考]
※はやて主従、みく主従、超、クレア、ゾル、加蓮を把握。
※チャットルームへと誘われましたが、球磨川の気持ち悪さから乗り気ではありません。
【今川ヨシモト@戦国乙女シリーズ】
[状態]健康
[装備]ヨシモトの弓矢
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに従いますわ!
1. みく主従を討ち取る。
2.同時に、チコの周囲を警戒。サーヴァントらしき人物がいたらチコに報告して牽制を加える。
3.夜間、遠方からC-7の橋を監視。怪しい動きをしている人物が居れば襲撃。
[状態]健康
[装備]ヨシモトの弓矢
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに従いますわ!
1. みく主従を討ち取る。
2.同時に、チコの周囲を警戒。サーヴァントらしき人物がいたらチコに報告して牽制を加える。
3.夜間、遠方からC-7の橋を監視。怪しい動きをしている人物が居れば襲撃。
[備考]
※本人の技量+スキル「海道一の弓取り」によって超ロングレンジの射撃が可能です。
ただし、エリアを跨ぐような超ロングレンジ射撃の場合は目標物が大きくないと命中精度は著しく下がります。
宝具『烈風真空波』であろうと人を撃ちぬくのは限りなく不可能に近いです。
※瑞鶴、みく主従を把握。
※チコはヨシモトの視界内にいます。
※本人の技量+スキル「海道一の弓取り」によって超ロングレンジの射撃が可能です。
ただし、エリアを跨ぐような超ロングレンジ射撃の場合は目標物が大きくないと命中精度は著しく下がります。
宝具『烈風真空波』であろうと人を撃ちぬくのは限りなく不可能に近いです。
※瑞鶴、みく主従を把握。
※チコはヨシモトの視界内にいます。
【前川みく@アイドルマスターシンデレラガールズ(アニメ)】
[状態]魔力消費(中)、決意、『感染』
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]学生服、ネコミミ(しまってある)
[金銭状況]普通。
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取る。けれど、何も知らないままその方針に則って動くのはもうやめる。
1.人を殺すからには、ちゃんと相手のことを知らなくちゃいけない。無知のままではいない。
2.音無結弦に会う。未央を殺した理由、願い含めて問い詰める。許す許さないはそれから。
[備考]
本田未央と同じクラスです。学級委員長です。
本田未央と同じ事務所に所属しています、デビューはまだしていません。
事務所の女子寮に住んでいます。他のアイドルもいますが、詳細は後続の書き手に任せます。
本田未央、音無結弦をマスターと認識しました。本田未央をもう助からないものと思い込んでいます。
アサシン(あやめ)を認識しました。物語に感染しています
[状態]魔力消費(中)、決意、『感染』
[令呪]残り三画
[装備]なし
[道具]学生服、ネコミミ(しまってある)
[金銭状況]普通。
[思考・状況]
基本行動方針:聖杯を取る。けれど、何も知らないままその方針に則って動くのはもうやめる。
1.人を殺すからには、ちゃんと相手のことを知らなくちゃいけない。無知のままではいない。
2.音無結弦に会う。未央を殺した理由、願い含めて問い詰める。許す許さないはそれから。
[備考]
本田未央と同じクラスです。学級委員長です。
本田未央と同じ事務所に所属しています、デビューはまだしていません。
事務所の女子寮に住んでいます。他のアイドルもいますが、詳細は後続の書き手に任せます。
本田未央、音無結弦をマスターと認識しました。本田未央をもう助からないものと思い込んでいます。
アサシン(あやめ)を認識しました。物語に感染しています
【ルーザー(球磨川禊)@めだかボックス】
[状態]『物語に感染? 矢を腕に受けてしまった? そういう負傷的なやつはもう慣れたよ』『この不利な状況を覆してこそ、僕が輝くってものさ』
[装備]『いつもの学生服だよ』
[道具]『螺子がたくさんあるよ、お望みとあらば裸エプロンも取り出せるよ!』
[思考・状況]
基本行動方針:『聖杯、ゲットだぜ!』
1.『みくにゃちゃんに惚れちまったぜ、いやぁ見事にやられちゃったよ』
2.『裸エプロンとか言ってられる状況でも無くなってきたみたいだ。でも僕は自分を曲げないよ!』
3.『道化師(ジョーカー)はみんな僕の友達―――だと思ってたんだけどね』
4.『ぬるい友情を深めようぜ、サーヴァントもマスターも関係なくさ。その為にも色々とちょっかいをかけないとね』
5.『色々とあるけど、今回はマスターに従ってあげようかな』
[備考]
瑞鶴、鈴音、クレア、テスラへとチャットルームの誘いをかけました。
帝人と加蓮が使っていた場所です。
本田未央、音無結弦をマスターと認識しました。
アサシン(あやめ)を認識しました。物語に感染しています
※音無主従、南条主従、未央主従、超、クレア、瑞鶴を把握。
※前川みく、ルーザー(球磨川禊)がアサシン(あやめ)を認識、物語に感染しました。
残された猶予の具体的な時間については後続の書き手に任せます。
あと今回の暴露劇だとルーザーが他二人に『紹介』した形になるので、彼だけ受けている影響が小さいです。
[状態]『物語に感染? 矢を腕に受けてしまった? そういう負傷的なやつはもう慣れたよ』『この不利な状況を覆してこそ、僕が輝くってものさ』
[装備]『いつもの学生服だよ』
[道具]『螺子がたくさんあるよ、お望みとあらば裸エプロンも取り出せるよ!』
[思考・状況]
基本行動方針:『聖杯、ゲットだぜ!』
1.『みくにゃちゃんに惚れちまったぜ、いやぁ見事にやられちゃったよ』
2.『裸エプロンとか言ってられる状況でも無くなってきたみたいだ。でも僕は自分を曲げないよ!』
3.『道化師(ジョーカー)はみんな僕の友達―――だと思ってたんだけどね』
4.『ぬるい友情を深めようぜ、サーヴァントもマスターも関係なくさ。その為にも色々とちょっかいをかけないとね』
5.『色々とあるけど、今回はマスターに従ってあげようかな』
[備考]
瑞鶴、鈴音、クレア、テスラへとチャットルームの誘いをかけました。
帝人と加蓮が使っていた場所です。
本田未央、音無結弦をマスターと認識しました。
アサシン(あやめ)を認識しました。物語に感染しています
※音無主従、南条主従、未央主従、超、クレア、瑞鶴を把握。
※前川みく、ルーザー(球磨川禊)がアサシン(あやめ)を認識、物語に感染しました。
残された猶予の具体的な時間については後続の書き手に任せます。
あと今回の暴露劇だとルーザーが他二人に『紹介』した形になるので、彼だけ受けている影響が小さいです。
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042:生贄の逆さ磔 | 投下順 | 044:禍津血染花 |
042:生贄の逆さ磔 | 時系列順 | 044:禍津血染花 |
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036:日常フラグメント | スタン | 054:前川みく抹殺計画 |
アーチャー(瑞鶴) | ||
029:願い潰しの銀幕 | 今川ヨシモト | 047:正【えいゆう】 |
039:感染拡大 | 前川みく | |
ルーザー(球磨川禊) |