オイシイとこだけツマミ食い ◆uOOKVmx.oM
暖かい木漏れ日の中、一人でジッと座って待っているのは少し寂しい。
例え生き延びたとしても、もうみんなと仲良くできないと思うともっと寂しい。
感傷に浸りながら、なんとなく手を太陽に向かって伸ばしてみた。
ここで蝶や小鳥が慰めてくれると絵になるんだけど、そういうサービスはないみたい。
ちょっと残念。もっと落ち込むかと思ったけど、私ってまだまだ余裕あるわね。
そんな下らないことやってて気が付いたけど、この森は何か変。
森の中だというのに小鳥の囀りが聞こえないどころか、地面を透視しても虫一匹いない。
まるで丁寧に作られた箱庭の中に入っているみたい。
やぶ蚊がいないのは大歓迎だけど、なんだか奇妙な感じ。
私の寄りかかっている病院にしたってそうだ。
例え生き延びたとしても、もうみんなと仲良くできないと思うともっと寂しい。
感傷に浸りながら、なんとなく手を太陽に向かって伸ばしてみた。
ここで蝶や小鳥が慰めてくれると絵になるんだけど、そういうサービスはないみたい。
ちょっと残念。もっと落ち込むかと思ったけど、私ってまだまだ余裕あるわね。
そんな下らないことやってて気が付いたけど、この森は何か変。
森の中だというのに小鳥の囀りが聞こえないどころか、地面を透視しても虫一匹いない。
まるで丁寧に作られた箱庭の中に入っているみたい。
やぶ蚊がいないのは大歓迎だけど、なんだか奇妙な感じ。
私の寄りかかっている病院にしたってそうだ。
年季の入った風格ある建物――というよりも良く見れば単純に朽ち果てているだけ。
もう少し立派な建物だったと記憶していたけど、思い出ってすぐ美化されるものなのね。
それはともかく、窓から覗いた病院の内部は壁も床も変な蔦だらけだったの。
まるで古代遺跡みたい。どれだけ放置したらこんな有様になるのかしら。
映画とかだと”謎の病原菌のため隔離された”とか妙に凝った設定が付いてくるけど
旧日本軍の超能力実験施設とか、そんな都合の良いオチはないわよね。
そんな軽い気持ちで蔦の張った外壁から素性を調べてみたけれど、やっぱり変。
このLv7サイコメトラーである私が、たった数時間前までしか”透視”出来ないなんて。
まるで数時間前まで、こんな場所は存在しなかったかのように情報が途切れている。
透視を遮断する事は自体はそんなに難しい事じゃないけれど、重要人物じゃあるまいし
わざわざ部分的にプロテクトを掛ける必要性が分からないわ。
もう少し立派な建物だったと記憶していたけど、思い出ってすぐ美化されるものなのね。
それはともかく、窓から覗いた病院の内部は壁も床も変な蔦だらけだったの。
まるで古代遺跡みたい。どれだけ放置したらこんな有様になるのかしら。
映画とかだと”謎の病原菌のため隔離された”とか妙に凝った設定が付いてくるけど
旧日本軍の超能力実験施設とか、そんな都合の良いオチはないわよね。
そんな軽い気持ちで蔦の張った外壁から素性を調べてみたけれど、やっぱり変。
このLv7サイコメトラーである私が、たった数時間前までしか”透視”出来ないなんて。
まるで数時間前まで、こんな場所は存在しなかったかのように情報が途切れている。
透視を遮断する事は自体はそんなに難しい事じゃないけれど、重要人物じゃあるまいし
わざわざ部分的にプロテクトを掛ける必要性が分からないわ。
そもそも神社からこの病院へ戻ってきたのは翼を持った少女を調べるため。
コナン君やネギ君は東へ向かったみたいだし、逆方向に進むことにしたの。
だって次に会う時には雪辱を晴らせるようになっていたいじゃない。
闇雲に動いてネギ君みたいな好戦的なお猿さんに出会うよりは、病院に残った情報を
確実に掴んだ方が後々の為になると思っていたの。でも考えが甘かったわ。
中に入るのを少し躊躇していたら、次から次へと女の子達が押し寄せてくるなんて。
そりゃあ私だって薬や包帯が残っていたらラッキーって思っていたけどね。
コナン君やネギ君は東へ向かったみたいだし、逆方向に進むことにしたの。
だって次に会う時には雪辱を晴らせるようになっていたいじゃない。
闇雲に動いてネギ君みたいな好戦的なお猿さんに出会うよりは、病院に残った情報を
確実に掴んだ方が後々の為になると思っていたの。でも考えが甘かったわ。
中に入るのを少し躊躇していたら、次から次へと女の子達が押し寄せてくるなんて。
そりゃあ私だって薬や包帯が残っていたらラッキーって思っていたけどね。
(はぁ……みんな考える事は同じなのね)
なんか自分の浅はかさを突きつけられたみたいで、少しショック。
でも挫けたりはしない。私は能力はサイコメトラー、人の心を覗く以外にも
物品の記憶を通して過去を覗くことだって出来る。
そうして幾つもの迷宮入り事件を解決してきたから、今回だって大丈夫。
きっと彼女達はコナン君たちみたいに多くの情報を残してくれるはず。
名探偵は事件を阻止するんじゃないわ。事件が起こった後に証拠を集めるのよ。
でも挫けたりはしない。私は能力はサイコメトラー、人の心を覗く以外にも
物品の記憶を通して過去を覗くことだって出来る。
そうして幾つもの迷宮入り事件を解決してきたから、今回だって大丈夫。
きっと彼女達はコナン君たちみたいに多くの情報を残してくれるはず。
名探偵は事件を阻止するんじゃないわ。事件が起こった後に証拠を集めるのよ。
そんなこんなで暖かい木漏れ日の中、一人でジッと座って待っているの。
○ ○ ○
少し前のこと。
殺風景だった神社の境内は派手に暴れたネギ君の魔法で荒れ果てていたわ。
周囲の砂利は突風で吹き飛ばされ、中年の頭みたいな惨めな姿を晒していたし
頑丈な石畳も沢山砕けていたの。まるで怪獣でも暴れまわったみたいだった。
その内の半分くらいは私がやったんだけどね。もう一度やれって言われても無理だけど。
でもそんな被害はその時の私の目には入らなかったの。もっと重要なことがあったから。
戦いで残された被害のうち最も重かったのが、バベルの制服を消された事。
生まれたままの姿にされちゃったのよ。皆本さん以外の男の人には見せたくないのに。
だいたい魔法で服を脱がせるなんて、男の人って何を考えているのかしら、最低。
薫ちゃんの妄想じゃあるまいし。
魔法使いは女の子を素敵な衣装に着替えさせるものでしょ、常識的に考えて。
殺風景だった神社の境内は派手に暴れたネギ君の魔法で荒れ果てていたわ。
周囲の砂利は突風で吹き飛ばされ、中年の頭みたいな惨めな姿を晒していたし
頑丈な石畳も沢山砕けていたの。まるで怪獣でも暴れまわったみたいだった。
その内の半分くらいは私がやったんだけどね。もう一度やれって言われても無理だけど。
でもそんな被害はその時の私の目には入らなかったの。もっと重要なことがあったから。
戦いで残された被害のうち最も重かったのが、バベルの制服を消された事。
生まれたままの姿にされちゃったのよ。皆本さん以外の男の人には見せたくないのに。
だいたい魔法で服を脱がせるなんて、男の人って何を考えているのかしら、最低。
薫ちゃんの妄想じゃあるまいし。
魔法使いは女の子を素敵な衣装に着替えさせるものでしょ、常識的に考えて。
私の前に残された衣服は二つ。スクール水着と全身タイツ。
こんなものでも裸よりはマシだけど、何でこんな物があるのか不思議で堪らない。
剣や銃は分かるわ、人を殺すためだもの。変なノートも元は人殺しの道具だと分かる。
でも水着やタイツでどうやって人を殺せというのかしら。
『次回、スクール水着殺人事件!』『Next Conan's HINT! 全身タイツ!』
何故か頭の中でコナン君の声が響いたような気がして、目眩を覚えた。
男の人ってこういうのが好きなのかしら。そう呆れながら水着を手に取ったの。
そうしたら――
こんなものでも裸よりはマシだけど、何でこんな物があるのか不思議で堪らない。
剣や銃は分かるわ、人を殺すためだもの。変なノートも元は人殺しの道具だと分かる。
でも水着やタイツでどうやって人を殺せというのかしら。
『次回、スクール水着殺人事件!』『Next Conan's HINT! 全身タイツ!』
何故か頭の中でコナン君の声が響いたような気がして、目眩を覚えた。
男の人ってこういうのが好きなのかしら。そう呆れながら水着を手に取ったの。
そうしたら――
『ふぅーん。男の子ってぇ、こーいうのが好きなんだ』
水着からリリスって子の声が伝わってきたわ。誰でもそう思うのね、少し安心。
飾り気のない濃紺のスクール水着は見るからに怪しくて、胸には平仮名で
『えう゛ぁ』書かれていたけど、これの持ち主は基本が分かっていないようね。
普通に授業で着用するものなら『クラスとフルネーム』を書くものなのよ。
考えたくはないけど、大きなお友達向けってイメージがグッと大きくなっちゃった。
せめてもの救いはアイロン掛けした折り目が残っていたことくらい。
洗濯後に誰も着用してないと分かるだけでも、何とか我慢できるかなって気になれた。
人間って、こうして妥協してしながら一歩づつ大人の階段を登っていくのね。
飾り気のない濃紺のスクール水着は見るからに怪しくて、胸には平仮名で
『えう゛ぁ』書かれていたけど、これの持ち主は基本が分かっていないようね。
普通に授業で着用するものなら『クラスとフルネーム』を書くものなのよ。
考えたくはないけど、大きなお友達向けってイメージがグッと大きくなっちゃった。
せめてもの救いはアイロン掛けした折り目が残っていたことくらい。
洗濯後に誰も着用してないと分かるだけでも、何とか我慢できるかなって気になれた。
人間って、こうして妥協してしながら一歩づつ大人の階段を登っていくのね。
一方で全身タイツの方にはあまり悪いイメージはなかったわ。
善良で一般的な生活をする私は、黒尽くめの真犯人など連想するはずもなく、
演劇などにでてくる黒子が思い浮かべたの。これからの私を考えればピッタリの衣装ね。
でも残念な事に、姿を黒く覆うだけの衣装に保温性なんてなかったの。
簡単に言えば通気性が良い代わりに、薄くて部分的に透けちゃうってこと。
近くで注視されなければ大丈夫だけど、見えないと見えるかもしれないは雲泥の差よ。
それを素肌に着て歩き回るなんて、裸で歩き回るよりも恥ずかしいじゃない。
善良で一般的な生活をする私は、黒尽くめの真犯人など連想するはずもなく、
演劇などにでてくる黒子が思い浮かべたの。これからの私を考えればピッタリの衣装ね。
でも残念な事に、姿を黒く覆うだけの衣装に保温性なんてなかったの。
簡単に言えば通気性が良い代わりに、薄くて部分的に透けちゃうってこと。
近くで注視されなければ大丈夫だけど、見えないと見えるかもしれないは雲泥の差よ。
それを素肌に着て歩き回るなんて、裸で歩き回るよりも恥ずかしいじゃない。
結局、ベストの選択肢なんて最初からなくて、ベターな選択肢を選ぶしかなかった。
水着を下着代わりにして、そしてそれを全身タイツで隠す。ギリギリの妥協点ね。
大き目に見えたタイツは、オーダーメイド品のようピッタリと私の体を包み込んだ。
頭の天辺から爪先まで綺麗に覆われると、なんだか目の形や体型までも違う人間に
なったような錯覚すら覚えるくらい、奇妙なフィット感が気持ちよかった。
今なら凄く悪いことでも平気でできそうな気分になる。私って悪人向きなのかしらね。
少し透視してみると良く理解できない残留思念、それと困惑しながらもネギ君を止める
コナン君の姿が見て取れた。そういえばこの二人は殺し合いに乗っていたっけ。
水着を下着代わりにして、そしてそれを全身タイツで隠す。ギリギリの妥協点ね。
大き目に見えたタイツは、オーダーメイド品のようピッタリと私の体を包み込んだ。
頭の天辺から爪先まで綺麗に覆われると、なんだか目の形や体型までも違う人間に
なったような錯覚すら覚えるくらい、奇妙なフィット感が気持ちよかった。
今なら凄く悪いことでも平気でできそうな気分になる。私って悪人向きなのかしらね。
少し透視してみると良く理解できない残留思念、それと困惑しながらもネギ君を止める
コナン君の姿が見て取れた。そういえばこの二人は殺し合いに乗っていたっけ。
(とりあえず透視できるものは透視しとこうかしら。捜査の基本は現場からって言うし)
真犯人の格好をした私は名探偵として、逃走した犯罪者の痕跡を調べ始めた。
さっきの『剣』の二の舞にならないように、新たに手に入れた支給品や石畳などを
注意して透視したわ。こういう捜査には慣れてるの。
迷宮入りするような難事件、凶悪犯罪、私の力は真実を暴く為に適していたから。
そして支給品や石畳などの記憶を色々と調べて分かったことは少なくなかったわ。
さっきの『剣』の二の舞にならないように、新たに手に入れた支給品や石畳などを
注意して透視したわ。こういう捜査には慣れてるの。
迷宮入りするような難事件、凶悪犯罪、私の力は真実を暴く為に適していたから。
そして支給品や石畳などの記憶を色々と調べて分かったことは少なくなかったわ。
リリス……最初に会ったジェダの手下。透視した水着とワルサーの情報を総合すると
遊びながら追加の支給品を渡しに来たみたい。色ボケで頭も悪そうで何考えているか
良くわからないけど、たぶん強い女悪魔。こういうタイプは相手にしたくない。
ネギ君……好戦的な魔法使い。リリスに従っているようで何人も殺す気みたい。
短刀の持つ情報からは真面目な様子も見えるけど、すぐデレデレになってた。
服を脱がす魔法を使うくらいだから、カッコイイのに凄いスケベな子かもしれない。
コナン君……同じくリリスの手下。甘いのか度胸がないのか、殺しはしたくないみたい。
ワルサーの持つ情報からリリスには猫被りでゴマスリ、ネギには強気という人格が
見て取れた。いわゆるガキ大将の腰巾着タイプね。確かに小賢しそうなメガネ君だし。
遊びながら追加の支給品を渡しに来たみたい。色ボケで頭も悪そうで何考えているか
良くわからないけど、たぶん強い女悪魔。こういうタイプは相手にしたくない。
ネギ君……好戦的な魔法使い。リリスに従っているようで何人も殺す気みたい。
短刀の持つ情報からは真面目な様子も見えるけど、すぐデレデレになってた。
服を脱がす魔法を使うくらいだから、カッコイイのに凄いスケベな子かもしれない。
コナン君……同じくリリスの手下。甘いのか度胸がないのか、殺しはしたくないみたい。
ワルサーの持つ情報からリリスには猫被りでゴマスリ、ネギには強気という人格が
見て取れた。いわゆるガキ大将の腰巾着タイプね。確かに小賢しそうなメガネ君だし。
他にもランドセルや石畳から二人は東へ向かったこと、リリスが南に飛び去ったこと
18時に南のタワーに集合するということが感じ取れたわ。大漁って感じね。
支給品から簡単に読み取っただけだから、少しズレがあるかもしれないけど大丈夫。
三人の進行方向、持っている支給品、グルで殺し合いに乗っていると分かれば十分よ。
相手の行動が分かれば遭遇を避けることも、他の人に危険人物と流言したりして
罠にはめることも思いのままなんだから。
18時に南のタワーに集合するということが感じ取れたわ。大漁って感じね。
支給品から簡単に読み取っただけだから、少しズレがあるかもしれないけど大丈夫。
三人の進行方向、持っている支給品、グルで殺し合いに乗っていると分かれば十分よ。
相手の行動が分かれば遭遇を避けることも、他の人に危険人物と流言したりして
罠にはめることも思いのままなんだから。
(さーて、どっちに行こうかしら)
着替えと現場検証を終えた私は首を捻った。
リリスの飛び去った南は却下ね。上手く口車で丸め込んで操れるかもしれないけど、
頭が弱すぎて何をするか分からない怖さがあるから、出来れば接触したい相手じゃない。
すぐ東にある学校はどうだろう。コナン君やネギ君の進行方向であり、一番近い場所。
これも却下。学校には人も集まってくるだろうけど、コナン君達に顔を覚えられて
いるから動きにくい。私自身が他の子に危険人物扱いされたら目も当てられないわ。
リリスの飛び去った南は却下ね。上手く口車で丸め込んで操れるかもしれないけど、
頭が弱すぎて何をするか分からない怖さがあるから、出来れば接触したい相手じゃない。
すぐ東にある学校はどうだろう。コナン君やネギ君の進行方向であり、一番近い場所。
これも却下。学校には人も集まってくるだろうけど、コナン君達に顔を覚えられて
いるから動きにくい。私自身が他の子に危険人物扱いされたら目も当てられないわ。
(そういえば翼を持った子がいたわね。あの子も悪魔や魔法使いなのかしら)
ふと病院から飛び立った天使のような羽根を持った少女を思い出したの。
病院まで戻れば、彼女に関する何らかの情報が読み取れる。
南はダメ、東もダメ。残るは北と西なのだから方向もバッチリ。
腐っても鯛、廃れていても病院。薬がある可能性も、誰か来る可能性も高いはず。
わざわざ来た道を引き返すことになるけど、それは危険の少ない道ってことだし。
病院まで戻れば、彼女に関する何らかの情報が読み取れる。
南はダメ、東もダメ。残るは北と西なのだから方向もバッチリ。
腐っても鯛、廃れていても病院。薬がある可能性も、誰か来る可能性も高いはず。
わざわざ来た道を引き返すことになるけど、それは危険の少ない道ってことだし。
(とりあえずは病院かな。誰かがいたって直接会う必要なんてないしね)
私が絶対に接触を避けなければいけないのは、話の通じない相手。
例えばネギのような好戦的な子。だからまず誰かがいたなら、いなくなるまで待つ。
そしてその場所から情報を引き出して、じっくり吟味してから接触するか決めれば良い。
サイコメトラーである私にとっては、触れるもの全てが記憶媒体であり親切な目撃者。
過去を慣れ流しながら走り続ける子に、逃げ道などありはしないわ。
だから慌てないでジワジワと外堀を埋めながら追い込んであげればいいの。
例えばネギのような好戦的な子。だからまず誰かがいたなら、いなくなるまで待つ。
そしてその場所から情報を引き出して、じっくり吟味してから接触するか決めれば良い。
サイコメトラーである私にとっては、触れるもの全てが記憶媒体であり親切な目撃者。
過去を慣れ流しながら走り続ける子に、逃げ道などありはしないわ。
だから慌てないでジワジワと外堀を埋めながら追い込んであげればいいの。
(温厚で甘そうな子達だし……いいえ、ダメね。もっと用心深くいかなきゃ)
壁越しに感じる雰囲気は和気藹々としているようでピンと張り詰めている。
口喧嘩とまではいかないが、相手の揚げ足を取りながら追い詰める様は、
学校でも良く見られる仲良しグループ内でのイジメとでもいえばいいのだろうか。
紫穂の隠れている外壁部から、少女達のいる二階ロビーまで直線距離では僅か十数m。
建物を通して会話を”透視”することは、紫穂にとって難しいことではなかった。
手にした物品から情報を引き出すように、建物が見聞きしている情報を読み取ればいい。
そうすれば廃病院自体が紫穂の目となり耳となり、内部の状況を生中継してくれる。
土砂崩れなどの災害現場、殺人事件現場で培った技術だ。
そしてサイコメトラーが嫌われる理由の一つでもある。
口喧嘩とまではいかないが、相手の揚げ足を取りながら追い詰める様は、
学校でも良く見られる仲良しグループ内でのイジメとでもいえばいいのだろうか。
紫穂の隠れている外壁部から、少女達のいる二階ロビーまで直線距離では僅か十数m。
建物を通して会話を”透視”することは、紫穂にとって難しいことではなかった。
手にした物品から情報を引き出すように、建物が見聞きしている情報を読み取ればいい。
そうすれば廃病院自体が紫穂の目となり耳となり、内部の状況を生中継してくれる。
土砂崩れなどの災害現場、殺人事件現場で培った技術だ。
そしてサイコメトラーが嫌われる理由の一つでもある。
『双葉、病院に来た時に『殺し合いする気はない』って言ってたけど……
怪我したから、『殺し合いする気が無くなった』だけじゃないの?
元気になったら、チャンスがあったら、また、ころしあい、するんじゃないの? ねぇ?』
怪我したから、『殺し合いする気が無くなった』だけじゃないの?
元気になったら、チャンスがあったら、また、ころしあい、するんじゃないの? ねぇ?』
ブルーという子が積極的に場の空気を乱しているのが感じ取れた。
一見無邪気な感じだが、かなり場慣れしているように感じるのは勘繰りすぎだろうか。
幼児にしては感覚で喋らずに、きちんと正論で固めて反論を許さない。
それでいて的確に急所を突き揺さぶる様は、まるでミスした優等生を虐める不良か、
因縁を付ける職業ヤクザのようにも感じられる。当事者はたまったものではないが
傍から見ている分にはドラマように面白く、グイグイと紫穂を引きつけた。
一見無邪気な感じだが、かなり場慣れしているように感じるのは勘繰りすぎだろうか。
幼児にしては感覚で喋らずに、きちんと正論で固めて反論を許さない。
それでいて的確に急所を突き揺さぶる様は、まるでミスした優等生を虐める不良か、
因縁を付ける職業ヤクザのようにも感じられる。当事者はたまったものではないが
傍から見ている分にはドラマように面白く、グイグイと紫穂を引きつけた。
(なんか、こう、私に似てるような気が……ううん、違うわね。
私はあんな底意地の悪そーな、いやらしい感じじゃないもの。あ、蹴られた)
私はあんな底意地の悪そーな、いやらしい感じじゃないもの。あ、蹴られた)
一発のドロップキックを発端にした大騒動を紫穂は苦笑しながら透視しし続ける。
助けに入るなんてとんでもない。下手な昼ドラよりもよっぽど面白いじゃない。
助けに入るなんてとんでもない。下手な昼ドラよりもよっぽど面白いじゃない。
・
・
・
・
・
紫穂が温かく見守る中、迷走した少女達の運動会は一時中断を告げていた。
少女の一人は瀕死の重傷、また一人は無残な結末を迎え人生の幕を引いた。
そんな猜疑心と偶然の重なった惨劇にも紫穂が驚いた様子はない。
TVでどんな陰惨な事件が流れていても、多くの人が「ふーん」と軽く対応できるだろう。
壁を通して感じ取る惨劇はどこか現実味がなく、ドラマでも見るように全員の行動を
逐一監視していた紫穂に驚きや不安がないのも当然といえよう。
むしろこれからどうなるのかと他人事のように期待感を膨らませていた。
両手が使えていたなら食事を取りながら観察していたかもしれない。
少女の一人は瀕死の重傷、また一人は無残な結末を迎え人生の幕を引いた。
そんな猜疑心と偶然の重なった惨劇にも紫穂が驚いた様子はない。
TVでどんな陰惨な事件が流れていても、多くの人が「ふーん」と軽く対応できるだろう。
壁を通して感じ取る惨劇はどこか現実味がなく、ドラマでも見るように全員の行動を
逐一監視していた紫穂に驚きや不安がないのも当然といえよう。
むしろこれからどうなるのかと他人事のように期待感を膨らませていた。
両手が使えていたなら食事を取りながら観察していたかもしれない。
(あの中に薫ちゃんや葵ちゃんがいるなら話は別だったけど……)
少女たちの中に薫や葵がいれば話は簡単だった。
彼女たちを守るため、そして利用するために合流すれば良いだけだったから。
そして彼女達と一緒にいれば、きっと自分以外全員を殺すなどという考えは有耶無耶に
なって消えてしまうだろうと無意識に望んでいた。
だが現実はそんなに甘くない。
親友たちから学んだ大切なこと、皆本に教えられた大切なこと。
それを上から塗り潰すかのように、少女たちは次々と身を持って紫穂に教えてくれた。
彼女たちを守るため、そして利用するために合流すれば良いだけだったから。
そして彼女達と一緒にいれば、きっと自分以外全員を殺すなどという考えは有耶無耶に
なって消えてしまうだろうと無意識に望んでいた。
だが現実はそんなに甘くない。
親友たちから学んだ大切なこと、皆本に教えられた大切なこと。
それを上から塗り潰すかのように、少女たちは次々と身を持って紫穂に教えてくれた。
姿を変えながら巧みに周囲を操るブルーは、扇動が如何に効果的かを教えてくれた。
人外の力で仲間だった少女を惨殺したイヴは、再度直接戦闘の無謀さを教えてくれた。
仲間によって簡単に命を奪われたビュティは、誰も信用できないことを教えてくれた。
短気さで自ら絶体絶命に窮地に陥った双葉は、落ち着くことの大切さを教えてくれた。
そして新たに来訪した二人小太郎とシャナは、予期せぬ第三者の介入を教えてくれた。
人外の力で仲間だった少女を惨殺したイヴは、再度直接戦闘の無謀さを教えてくれた。
仲間によって簡単に命を奪われたビュティは、誰も信用できないことを教えてくれた。
短気さで自ら絶体絶命に窮地に陥った双葉は、落ち着くことの大切さを教えてくれた。
そして新たに来訪した二人小太郎とシャナは、予期せぬ第三者の介入を教えてくれた。
それらは紫穂に扇動の有効性と問題点を改めて考えさせ、そして学ばせた。
(独り言が少し多めだけど、ホント面白くて良い子ばっかりね)
紫穂はブルーを始めとする少女達の会話を思い出してクスクスと笑った。
彼女は開始から僅か6時間程で、全参加者の1割以上の情報を一方的に握ったことになる。
ブルーの年齢変化やイヴの能力など理解できない物事もあるが気にはしない。
既に魔剣や魔法を体感したのだ。どんな理不尽も事実を受け入れる準備はできていた。
事実を否定したところで何の得もないのだ。三宮紫穂はドライな少女だった。
彼女は開始から僅か6時間程で、全参加者の1割以上の情報を一方的に握ったことになる。
ブルーの年齢変化やイヴの能力など理解できない物事もあるが気にはしない。
既に魔剣や魔法を体感したのだ。どんな理不尽も事実を受け入れる準備はできていた。
事実を否定したところで何の得もないのだ。三宮紫穂はドライな少女だった。
○ ○ ○
新たに廃病院へと来訪した小太郎とシャナ。病院を立ち去るブルーとイヴ。
そして物を考えることさえも許されない双葉とビュティ。
彼女達はその行動の全てを監視されているど想像もしないのだろう。
そして物を考えることさえも許されない双葉とビュティ。
彼女達はその行動の全てを監視されているど想像もしないのだろう。
(あの子達が私に色々教えてくれたのだから、後でたっぷりお礼をしてあげなきゃ)
ブルーの行動には学ぶべき事が多くあった。紫穂の迷いを断ち切らせる何かがあった。
そして紫穂にはブルーよりも優位に立っているという驕りがあった。
自分は彼女の描く脚本を盗み見ながら、自由に書き足すことが出来るという驕りが。
得意気に釈迦の掌で飛び回る孫悟空を連想して、紫穂は怪しい笑みを浮かべる。
そして紫穂にはブルーよりも優位に立っているという驕りがあった。
自分は彼女の描く脚本を盗み見ながら、自由に書き足すことが出来るという驕りが。
得意気に釈迦の掌で飛び回る孫悟空を連想して、紫穂は怪しい笑みを浮かべる。
(最後の最後で脚本と違うドンデン返しなんて、最高じゃない。
思惑が外れたあの子はどんな顔をするかな。泣いちゃったりするのかしら。
想像しただけで凄く楽しくなるなんて。もしかして私、いじめっ子の素質があるかも。
さて、その為にはお膳立てに必要な”頼れる仲間”を探さなきゃね)
思惑が外れたあの子はどんな顔をするかな。泣いちゃったりするのかしら。
想像しただけで凄く楽しくなるなんて。もしかして私、いじめっ子の素質があるかも。
さて、その為にはお膳立てに必要な”頼れる仲間”を探さなきゃね)
2Fで双葉を助ける二人に”頼りがい”を感じて紫穂はコッソリと立ち上がる。
原理は分からないが、この二人もまた普通ではないらしい。
原理は分からないが、この二人もまた普通ではないらしい。
「うふふ、楽してズルしていただきかしら♪」
そして彼女は自分が冥王の掌で踊っていることに気が付いていない。
【B-3/廃病院の外壁際/一日目/真昼】
【三宮紫穂@絶対可憐チルドレン】
[状態]:スクール水着の上に全身タイツを重ね着
[装備]:ワルサーPPK(銀の銃弾7/7)@パタリロ!、七夜の短刀@MELTY BLOOD
スクール水着@魔法先生ネギま!、全身黒タイツ@名探偵コナン、
[道具]:支給品一式×2、デスノート(ダミー)@DEATH NOTE、
[思考]:もう少し様子を見ようかしら? それとも……
第一行動方針:2Fの三人(小太郎&シャナ&双葉)の様子見or接触する
第ニ行動方針:真正面からの戦闘に限界を感じ、ステルスor扇動マーダー路線を目指す
第三行動方針:そのために利用できそうな仲間を探す
第四行動方針:機会があればコナンとネギの2人にはきっつい復讐をしてやる
基本行動方針:元の世界に帰るために最後の一人になる
【三宮紫穂@絶対可憐チルドレン】
[状態]:スクール水着の上に全身タイツを重ね着
[装備]:ワルサーPPK(銀の銃弾7/7)@パタリロ!、七夜の短刀@MELTY BLOOD
スクール水着@魔法先生ネギま!、全身黒タイツ@名探偵コナン、
[道具]:支給品一式×2、デスノート(ダミー)@DEATH NOTE、
[思考]:もう少し様子を見ようかしら? それとも……
第一行動方針:2Fの三人(小太郎&シャナ&双葉)の様子見or接触する
第ニ行動方針:真正面からの戦闘に限界を感じ、ステルスor扇動マーダー路線を目指す
第三行動方針:そのために利用できそうな仲間を探す
第四行動方針:機会があればコナンとネギの2人にはきっつい復讐をしてやる
基本行動方針:元の世界に帰るために最後の一人になる
[備考]:
サイコメトリーを駆使し以下のことを知りました
1、神社で起こったコナン&ネギ&リリスの遭遇について、支給品を透視して
大まかに把握しました。先入観による勘違いあり。
2、廃病院内部で起こった事態について客観的に把握しました。
表面的に透視していたので、会話以外の細かい部分は見落としている可能性あり。
サイコメトリーを駆使し以下のことを知りました
1、神社で起こったコナン&ネギ&リリスの遭遇について、支給品を透視して
大まかに把握しました。先入観による勘違いあり。
2、廃病院内部で起こった事態について客観的に把握しました。
表面的に透視していたので、会話以外の細かい部分は見落としている可能性あり。
≪120: | これが僕なりの戦い方――泉光子郎の場合 | 時系列順に読む | 123:それは狂的なまでに(前編)≫ |
≪120: | これが僕なりの戦い方――泉光子郎の場合 | 投下順に読む | 122:カナリアの啼く頃に≫ |
≪057: | カマイタチと悪戯な春風 | 三宮紫穂の登場SSを読む | 127:you-destructiv(前編)≫ |