カマイタチと悪戯な春風◆3k3x1UI5IA氏
――この俺、江戸川コナンこと工藤進一が、迂闊にも忘れていた事が2つあった。
1つは、事件が起きるに相応しい『場』とでも呼ぶべき空間が存在する、ということ。
古い洋館や豪華客船、山奥のペンションに走行中の新幹線。
環境こそ様々だが、事件が起こるよりも前に「なんか嫌な場所だな」と感じられることがたまにある。
探偵のカン、とでも言うのかな。何か共通する「ひっかかり」を感じる時があるんだ。
そして、今いるこの場所――地図の上ではC-4エリア、森に半分囲まれたこの神社の境内は。
冷静になってみれば明らかに、その種の「いかにも事件が起きそうな場所」だったんだ。
俺たちがあのリリスとかいう奴に出くわしちまったのも、こんな怪しげな場所に留まってたせいじゃないか?
自分でも論理的とは言えない考えだとは思うが、しかしかなり本気でそう感じてしまう。
古い洋館や豪華客船、山奥のペンションに走行中の新幹線。
環境こそ様々だが、事件が起こるよりも前に「なんか嫌な場所だな」と感じられることがたまにある。
探偵のカン、とでも言うのかな。何か共通する「ひっかかり」を感じる時があるんだ。
そして、今いるこの場所――地図の上ではC-4エリア、森に半分囲まれたこの神社の境内は。
冷静になってみれば明らかに、その種の「いかにも事件が起きそうな場所」だったんだ。
俺たちがあのリリスとかいう奴に出くわしちまったのも、こんな怪しげな場所に留まってたせいじゃないか?
自分でも論理的とは言えない考えだとは思うが、しかしかなり本気でそう感じてしまう。
そして、もう1つ。
事件というのは1つだけとは限らない、というある意味当たり前のことだった。
ある事件が起きた時、体勢を立て直すよりも早く、連続して次の事件が起きる可能性もあるんだ。
1つ目の事件をなんとか凌げたからといって、決して安心してはいけなかったんだ。
これが劇場版とかなら、2時間ほどの間ノンストップで事件が連続発生、ってこともよくあるわけだしな――
事件というのは1つだけとは限らない、というある意味当たり前のことだった。
ある事件が起きた時、体勢を立て直すよりも早く、連続して次の事件が起きる可能性もあるんだ。
1つ目の事件をなんとか凌げたからといって、決して安心してはいけなかったんだ。
これが劇場版とかなら、2時間ほどの間ノンストップで事件が連続発生、ってこともよくあるわけだしな――
……あれ? ぼく、なにか変なこといった? 「とうじょうじんぶつにあるまじきはつげん」?
ぼく、こどもだからよくわかんないや。きっときのせいだよ、うん。
ぼく、こどもだからよくわかんないや。きっときのせいだよ、うん。
ってまあ、それはさておき。
ともかく俺は、油断しちゃぁいけない場所で、すっかり油断してた。
激しい自己嫌悪に陥りつつも、どこかで「リリスを丸め込んだからとりあえず大丈夫」って思い込んでた。
一息つく時間くらいあると思ってたんだ。
それが『推理』でなく『願望』に過ぎないことくらい、自分でも分かったはずだってぇのに……!
ともかく俺は、油断しちゃぁいけない場所で、すっかり油断してた。
激しい自己嫌悪に陥りつつも、どこかで「リリスを丸め込んだからとりあえず大丈夫」って思い込んでた。
一息つく時間くらいあると思ってたんだ。
それが『推理』でなく『願望』に過ぎないことくらい、自分でも分かったはずだってぇのに……!
* * *
「痛っ……! くそッ、今頃になって、折れた腕が疼いてきやがった……!」
リリスが去った直後の神社の境内。
散らばった品々を拾い集めながら、俺は顔を歪めた。
生き残れたことそれ自体、本来なら感謝するべきところなんだろうが……やはり、痛いものは痛い。
それに開始早々に利き腕を折られたってのは、今後の長い戦いを考えると結構厄介かもしれない。
リリスが落としていった品物をランドセルに放り込む、というだけの作業でさえ、やりづらくて仕方ないのだ。
俺は思わず素に戻って怒鳴りつける。
散らばった品々を拾い集めながら、俺は顔を歪めた。
生き残れたことそれ自体、本来なら感謝するべきところなんだろうが……やはり、痛いものは痛い。
それに開始早々に利き腕を折られたってのは、今後の長い戦いを考えると結構厄介かもしれない。
リリスが落としていった品物をランドセルに放り込む、というだけの作業でさえ、やりづらくて仕方ないのだ。
俺は思わず素に戻って怒鳴りつける。
「おいネギ! お前も手伝え! ったく、ガキのくせに色ボケしやがって……」
「…………」
「…………」
しかし怒鳴られたソイツは何の反応もない。
相変わらずのボーッとした表情で、リリスが飛び去った方角を見上げているだけだ。
俺は思わず溜息をつく。
相変わらずのボーッとした表情で、リリスが飛び去った方角を見上げているだけだ。
俺は思わず溜息をつく。
ネギ・スプリングフィールド。
本人が言うことには、イギリスはウェールズ出身の10歳。だから、体格だけなら今の俺より大きいわけだが。
なんでもコイツは、『麻帆良学園』とかいう所で中学校の英語教師をやっているという。
……先生!? いや、飛び級で中学校通ってます、くらいなら納得できなくもないが、流石に先生となるとな。
かなり眉唾な話ではあるんだが、少し会話を交わした感じでは、嘘を言ってる風にも見えない。
勉強はできそうだがツメが甘く、性格は素直で嘘が下手――それが俺のネギに対する第一印象だった。
本人が言うことには、イギリスはウェールズ出身の10歳。だから、体格だけなら今の俺より大きいわけだが。
なんでもコイツは、『麻帆良学園』とかいう所で中学校の英語教師をやっているという。
……先生!? いや、飛び級で中学校通ってます、くらいなら納得できなくもないが、流石に先生となるとな。
かなり眉唾な話ではあるんだが、少し会話を交わした感じでは、嘘を言ってる風にも見えない。
勉強はできそうだがツメが甘く、性格は素直で嘘が下手――それが俺のネギに対する第一印象だった。
そんなコイツが、あのリリスって奴にキスされてからというもの、明らかに様子がおかしい。
目の焦点が合ってない。言動がおかしい。俺の呼びかけの半分も聞こえてない。
付き合いは長くない……というか、俺たちが出会ってから何時間も経ってはいないが、それでも分かる。
これは、普段のネギじゃない。普段のコイツは、こんな奴じゃない。
ったく、どうすりゃ治るんだよ、コイツのこの色ボケ状態。
目の焦点が合ってない。言動がおかしい。俺の呼びかけの半分も聞こえてない。
付き合いは長くない……というか、俺たちが出会ってから何時間も経ってはいないが、それでも分かる。
これは、普段のネギじゃない。普段のコイツは、こんな奴じゃない。
ったく、どうすりゃ治るんだよ、コイツのこの色ボケ状態。
「っと、これで全部かな――お、あれもそうか」
悩みながらも、リリスが撒き散らした品々を拾っていた俺は、あたりを見回して気付く。
全部拾い終えたか、と思ったが、よく見れば古ぼけた指輪が1つ、石畳の隙間に隠れるように残っていた。
これもあの性悪リリスの捨ててった「支給品」の1つか。
俺は飲みかけの水が入ったペットボトルをランドセルに放り込むと、その指輪に左手を伸ばして――
全部拾い終えたか、と思ったが、よく見れば古ぼけた指輪が1つ、石畳の隙間に隠れるように残っていた。
これもあの性悪リリスの捨ててった「支給品」の1つか。
俺は飲みかけの水が入ったペットボトルをランドセルに放り込むと、その指輪に左手を伸ばして――
俺の手が、指輪に触れるかと思ったその瞬間。ネギに、先を越された。
「……これは……この指輪は……」
「おい、ネギ? 正気に戻ったのか? おいネギ!」
「……どこの国のものだろう? 術式はだいぶ違うけど……間違いなく、『魔法』の発動体だ……。
うん、僕にも十分使えそうだ……」
「おい、ネギ? 正気に戻ったのか? おいネギ!」
「……どこの国のものだろう? 術式はだいぶ違うけど……間違いなく、『魔法』の発動体だ……。
うん、僕にも十分使えそうだ……」
指輪を手の平に載せ、何やらブツブツ呟いている。
お前、何度呼びかけても動かなかったくせに。いつの間に復活してたんだよ……
と思ったら、コイツ全然復活なんかしていねぇ。その表情や目は、相変わらず色ボケ状態のままだ。
お前、何度呼びかけても動かなかったくせに。いつの間に復活してたんだよ……
と思ったら、コイツ全然復活なんかしていねぇ。その表情や目は、相変わらず色ボケ状態のままだ。
「これがあれば……『魔法』が使える。リリスさんとの競争に、勝てるかもしれない……!」
「ハァ!? おいネギ、なんだよその『魔法』ってのは?」
「ハァ!? おいネギ、なんだよその『魔法』ってのは?」
そういえばコイツ、教師ってだけでなく、『魔法使い』だとか名乗ってたっけ。リリスと向き合ったあの時だ。
結局『魔法使い』らしいことは何もしなかったし、他に考えることが多すぎて判断を保留してたんだが……。
結局『魔法使い』らしいことは何もしなかったし、他に考えることが多すぎて判断を保留してたんだが……。
「リリスさんを僕のモノにするためにも――あなたには、死んでもらいます!」
「!!」
「!!」
そんなネギが、こっちを向いて宣言する。俺を殺すだって!?
百歩譲ってあの馬鹿リリスとの話に乗るとしても、俺とお前は同じ「チーム」なんだろ!?
と、一瞬驚いたが――すぐに気付く。
その焦点の合ってない目で、ネギは俺を見ていない。俺よりも遠く、俺の背後を見ている。
はッとして振り返れば、そこには――
百歩譲ってあの馬鹿リリスとの話に乗るとしても、俺とお前は同じ「チーム」なんだろ!?
と、一瞬驚いたが――すぐに気付く。
その焦点の合ってない目で、ネギは俺を見ていない。俺よりも遠く、俺の背後を見ている。
はッとして振り返れば、そこには――
いつの間にそこにいたんだろう。
森の中から歩み出てくる、1人の女の子の姿があった。
どこの学校のものなのか、可愛い制服を着て、ふわふわの髪を揺らして。まるっきり普通の女の子だ。
でもその瞳には、知性の色が無い。今のネギにも似た、虚ろな瞳。虚ろな微笑み。
そしてその両手に提げていたのは、それぞれ異なる装飾の施された剣。
細身だがとても扱いきれそうには見えない、2本の長い凶器――!
森の中から歩み出てくる、1人の女の子の姿があった。
どこの学校のものなのか、可愛い制服を着て、ふわふわの髪を揺らして。まるっきり普通の女の子だ。
でもその瞳には、知性の色が無い。今のネギにも似た、虚ろな瞳。虚ろな微笑み。
そしてその両手に提げていたのは、それぞれ異なる装飾の施された剣。
細身だがとても扱いきれそうには見えない、2本の長い凶器――!
* * *
……カードではない方の剣から、サイコメトリーで読み取れたことがあるの。
それは遥かな古代、遠くも近い異世界に存在した、禁断の技。
呪われた『はかいのつるぎ』と軽やかなる『はやぶさのけん』の、ありうるはずのない二刀流!
それは遥かな古代、遠くも近い異世界に存在した、禁断の技。
呪われた『はかいのつるぎ』と軽やかなる『はやぶさのけん』の、ありうるはずのない二刀流!
そしてこの『クロウカード』の『剣』は、その『はかいのつるぎ』にちょっとだけ似てたみたい。
確かに呪われてると言えば呪われてるようなものだし、威力の高さは言わずもがな、ね。
多少強引かもしれないけれど、それでも私は「使える」と確信したわ。
確かに呪われてると言えば呪われてるようなものだし、威力の高さは言わずもがな、ね。
多少強引かもしれないけれど、それでも私は「使える」と確信したわ。
この私、三宮紫穂が森を掻き分け辿り着いたのは、結構広い神社の境内。
荷物を確認した時に見た地図を思い出せば、南東の方向に進んできたことになるのね。
そして「私の意識」が2人の男の子の姿を確認すると同時に、『剣』のカードも彼らに気がついたみたい。
……仕方ないわよね。そう、仕方ないのよ。
私はカードに支配されちゃってて、男の子たちは隠れもせずに開けた場所に居たりするんですもの。
ここで誰かが死んだとしても、それは仕方のないことなのよ。
荷物を確認した時に見た地図を思い出せば、南東の方向に進んできたことになるのね。
そして「私の意識」が2人の男の子の姿を確認すると同時に、『剣』のカードも彼らに気がついたみたい。
……仕方ないわよね。そう、仕方ないのよ。
私はカードに支配されちゃってて、男の子たちは隠れもせずに開けた場所に居たりするんですもの。
ここで誰かが死んだとしても、それは仕方のないことなのよ。
「私」が心の中でそう呟くと同時に、「私の身体」は2本の剣を手に走り出して、そして――!
* * *
そして始まった戦いは――この俺、江戸川コナンの常識を遥かに超える代物だった。
俺だって探偵だ。何度もヤバい橋を渡ったし、荒事に巻き込まれたこともある。
犯罪者から銃や刃物を向けられたことも数知れない。
でも、俺の目の前で始まった、その戦いは。
俺がそれまでに知ってたどんなものよりも、トンでもない代物だったんだ。
俺だって探偵だ。何度もヤバい橋を渡ったし、荒事に巻き込まれたこともある。
犯罪者から銃や刃物を向けられたことも数知れない。
でも、俺の目の前で始まった、その戦いは。
俺がそれまでに知ってたどんなものよりも、トンでもない代物だったんだ。
「――はぁぁぁぁッ!」
「ラス・テル マ・スキル マギステル 『風精召喚 戦の乙女17柱』!」
「お、おいッ!?」
「ラス・テル マ・スキル マギステル 『風精召喚 戦の乙女17柱』!」
「お、おいッ!?」
どこか可愛らしい気合の声を上げて、2本の剣を提げた女の子が駆けてくる。
対するネギは、何やら早口でラテン語らしき言葉を唱えたかと思うと、指輪を嵌めた左手を突き出す。
呪文に応えて現れたのは、槍を手にした半透明の女性の姿。実にそれが17人も!
文字通り『戦乙女(ヴァルキリー)』としか呼びようのないソレが、素早く女の子に突撃をかける!
対するネギは、何やら早口でラテン語らしき言葉を唱えたかと思うと、指輪を嵌めた左手を突き出す。
呪文に応えて現れたのは、槍を手にした半透明の女性の姿。実にそれが17人も!
文字通り『戦乙女(ヴァルキリー)』としか呼びようのないソレが、素早く女の子に突撃をかける!
だが――その女の子は慌てなかった。
舞い踊るように、全身を使って両手の剣を振り回す。女の子の身体がコマのように回る。
その剣が次々と襲い来る半透明の精霊を斬り払い、一撃の下に消滅させていく。
って、あれ斬れるモンなのかよ!?
……いや、普通なら斬れないはずだ。きっと、あの剣の方が普通じゃないんだ。
舞い踊るように、全身を使って両手の剣を振り回す。女の子の身体がコマのように回る。
その剣が次々と襲い来る半透明の精霊を斬り払い、一撃の下に消滅させていく。
って、あれ斬れるモンなのかよ!?
……いや、普通なら斬れないはずだ。きっと、あの剣の方が普通じゃないんだ。
「『戦いの歌(カントゥス・ベラークス)』……そして、『瞬動』ッ! 」
素人目にも大技と分かる『風精召喚』、それが全部撃ち落されたというのに、ネギの表情は変わらない。
相変わらず色ボケ混じりの、微妙に焦点の合わない目のままで、ネギが突進する。
両手で構えているのは、例の何やら仕掛けがありそうな箒。
それを、持ち手の方を女の子の方に向け、突進――いや、「瞬間移動」する。
そう、瞬間移動のようにしか見えなかった。地面を蹴ったかと思ったら、女の子の背後を取っていた。
即座に容赦のない突きを繰り出す。あの動きは棒術、いや槍術なのか?
ともかくネギも、素人じゃない! 『魔法』だけでなく、相当な武術の心得がある!
相変わらず色ボケ混じりの、微妙に焦点の合わない目のままで、ネギが突進する。
両手で構えているのは、例の何やら仕掛けがありそうな箒。
それを、持ち手の方を女の子の方に向け、突進――いや、「瞬間移動」する。
そう、瞬間移動のようにしか見えなかった。地面を蹴ったかと思ったら、女の子の背後を取っていた。
即座に容赦のない突きを繰り出す。あの動きは棒術、いや槍術なのか?
ともかくネギも、素人じゃない! 『魔法』だけでなく、相当な武術の心得がある!
「『桜華槍衝 太公釣魚勢』!」
「やぁッ!」
「やぁッ!」
ネギの渾身の突き。箒に幾筋もの光が纏わりついて、見るからに迫力のある突きが繰り出される。
でも、女の子はそんな不意打ち気味の攻撃を、なんと振り返りざまに剣の柄頭をぶつけ弾いてしまって。
偶然なんかじゃない、完全に狙っての行動だ。高い技術に裏打ちされた防御行動だ。
そしてネギと女の子は、俺の見ている前で、目にも留まらぬハイスピードな攻防を始める。
嵐のように、カマイタチのように女の子の剣が振り回され、そのことごとくをネギがかわす。
かわしきれない攻撃は、箒で受け払う。やはりその箒の中には何かが仕込んであるのか、金属音が響く。
まるでカンフー映画か何かのワンシーンのような光景。しかしこれは、紛れも無い現実なのだ。
でも、女の子はそんな不意打ち気味の攻撃を、なんと振り返りざまに剣の柄頭をぶつけ弾いてしまって。
偶然なんかじゃない、完全に狙っての行動だ。高い技術に裏打ちされた防御行動だ。
そしてネギと女の子は、俺の見ている前で、目にも留まらぬハイスピードな攻防を始める。
嵐のように、カマイタチのように女の子の剣が振り回され、そのことごとくをネギがかわす。
かわしきれない攻撃は、箒で受け払う。やはりその箒の中には何かが仕込んであるのか、金属音が響く。
まるでカンフー映画か何かのワンシーンのような光景。しかしこれは、紛れも無い現実なのだ。
「な……なんなんだよ、コレ……! お前ら、何モンだよ……!」
思わず声が震える。
訳が分からない。そして、とてもじゃないがついていけない。
震える手で取り出したワルサーを構えようとするが、構えようとして初めて右腕が折れてることを思い出す。
こんな腕の状態じゃ、ネギの援護どころの話じゃない。下手に撃てばネギの方に当たっちまう。
呆然とワルサーを取り落とすが、再び拾う気にもなれない。
訳が分からない。そして、とてもじゃないがついていけない。
震える手で取り出したワルサーを構えようとするが、構えようとして初めて右腕が折れてることを思い出す。
こんな腕の状態じゃ、ネギの援護どころの話じゃない。下手に撃てばネギの方に当たっちまう。
呆然とワルサーを取り落とすが、再び拾う気にもなれない。
それにしても――これが、『魔法』か?! この世界には、こんな奴らがゴロゴロしてるってぇのか!?
自分の無力さを改めて痛感する。何もできないガキの身体しか持たない自分の弱さを改めて思い知る。
自分の無力さを改めて痛感する。何もできないガキの身体しか持たない自分の弱さを改めて思い知る。
何より、俺も空手の達人である蘭を間近に見てたから分かっちまう。
ネギのあの身のこなし、中国拳法っぽい動きは、一朝一夕で身につくようなモンじゃねぇ。
元々才能はあったにせよ、相当の努力を重ねて獲得したモンだ。訓練と経験で培ったものだ。
そりゃぁ、あの信じられないようなスピードとかは、『魔法』とやらで補っているのかもしれないが……。
それにしたって10歳のガキとは思えない動きだ。根は真面目そうな奴だったし、必死に頑張ったんだろう。
ネギのあの身のこなし、中国拳法っぽい動きは、一朝一夕で身につくようなモンじゃねぇ。
元々才能はあったにせよ、相当の努力を重ねて獲得したモンだ。訓練と経験で培ったものだ。
そりゃぁ、あの信じられないようなスピードとかは、『魔法』とやらで補っているのかもしれないが……。
それにしたって10歳のガキとは思えない動きだ。根は真面目そうな奴だったし、必死に頑張ったんだろう。
対して、この俺はどうだ?! 組織の薬で子供の身体にされてから、俺は何をしてきた?!
……何もしてねぇ。
元の身体に戻ることばかり考えて、「今のこの身体で何ができるのか」を全然考えてなかった!
頼るものと言ったら、阿笠博士の発明品ばかり。あとは仲間に助けられ、蘭に助けられ。
こうやって道具を奪われたら、俺には何もできねーじゃねぇか……!
使える道具さえあれば。博士の発明品でなくてもいい、何か道具があれば、使いこなしてみせるのに……!
……何もしてねぇ。
元の身体に戻ることばかり考えて、「今のこの身体で何ができるのか」を全然考えてなかった!
頼るものと言ったら、阿笠博士の発明品ばかり。あとは仲間に助けられ、蘭に助けられ。
こうやって道具を奪われたら、俺には何もできねーじゃねぇか……!
使える道具さえあれば。博士の発明品でなくてもいい、何か道具があれば、使いこなしてみせるのに……!
「――やぁぁぁぁッ!」
「ラス・テル マ・スキル マギステル 来たれ虚空の雷 薙ぎ払え 『雷の斧(ディオス・テュコス)』!
……くッ、これもダメですかッ!」
「ラス・テル マ・スキル マギステル 来たれ虚空の雷 薙ぎ払え 『雷の斧(ディオス・テュコス)』!
……くッ、これもダメですかッ!」
でも――愚痴ってみても始まらねぇ。手元にないモンを悔やんでみても、何にもならねぇ。
目の前でネギが戦ってる。放つ『魔法』はことごとく斬り払われ、防戦一方になりながらも頑張っている。
俺も、今できることを考えよう。
今、俺が持っている能力。誰にも負けないという自信があるもの。
それは、『探偵』としての『観察力』と『推理力』!
よく見ろ。そして考えろ。難事件を前にした時のように、考えるんだ……!
俺は目の前で激闘を繰り広げる2人の姿を、注視する。
目の前でネギが戦ってる。放つ『魔法』はことごとく斬り払われ、防戦一方になりながらも頑張っている。
俺も、今できることを考えよう。
今、俺が持っている能力。誰にも負けないという自信があるもの。
それは、『探偵』としての『観察力』と『推理力』!
よく見ろ。そして考えろ。難事件を前にした時のように、考えるんだ……!
俺は目の前で激闘を繰り広げる2人の姿を、注視する。
――そして俺は、1つの違和感に気付いた。
それは女の子の剣さばき。一呼吸の間に両手の剣が合わせて2回も唸りを上げる、恐るべき剣技。
でもそこには、さっきネギから感じた「相当努力したんだろうな」という印象が無い。
むしろ、全くの素人に、催眠術か何かで剣の扱い方「だけ」を刷り込んだような感じで――
何でだ?! 何で俺はそう感じるんだ!?
この女の子とは出会ったばかり。森から出てきて、すぐに剣を振り回し始めた所しか見てないってのに……
と、そこまで考えて閃いた。
それは女の子の剣さばき。一呼吸の間に両手の剣が合わせて2回も唸りを上げる、恐るべき剣技。
でもそこには、さっきネギから感じた「相当努力したんだろうな」という印象が無い。
むしろ、全くの素人に、催眠術か何かで剣の扱い方「だけ」を刷り込んだような感じで――
何でだ?! 何で俺はそう感じるんだ!?
この女の子とは出会ったばかり。森から出てきて、すぐに剣を振り回し始めた所しか見てないってのに……
と、そこまで考えて閃いた。
「……そうか! 歩き方だ! 森から出てきた時の、歩き方だ!」
そう。訓練を重ねて武術を身につけた奴の場合、自然と普段の立ち居振る舞いにも滲み出る。
蘭とかもそうなんだが、普通に歩いてるだけで、素人の歩き方とは少し違ってくるんだ。
俺がネギの『魔法』に驚いたのに、『拳法』の方には驚かなかったのは、1つにはコレがあったんだ。
蘭とかもそうなんだが、普通に歩いてるだけで、素人の歩き方とは少し違ってくるんだ。
俺がネギの『魔法』に驚いたのに、『拳法』の方には驚かなかったのは、1つにはコレがあったんだ。
一方、この女の子は。
森から出てきた時の足取りは、ごくごく普通の女の子のソレだった。なのにこの剣さばき。
よく見れば、剣を振り下ろす時は確かに達人の動きだけど、その合間に素人丸出しの動きが混じっている。
まるで木に竹を接いだような印象なんだ。まるで自分のものになってない。
森から出てきた時の足取りは、ごくごく普通の女の子のソレだった。なのにこの剣さばき。
よく見れば、剣を振り下ろす時は確かに達人の動きだけど、その合間に素人丸出しの動きが混じっている。
まるで木に竹を接いだような印象なんだ。まるで自分のものになってない。
じゃあ、何がこの子にこの技量を与えたんだ? どうやってこの剣技を手に入れたんだ?
……決まっている。あの剣だ。どう見ても不思議な力を持っていそうな、あの剣だ。
左右の手に持った2本の剣、そのどっちがその力を与えているかは分からない。原理も全く分からない。
けれど、一番疑わしいのはあの剣だ。
それに万が一あの剣が原因でなかったとしても、この子は剣の扱い「だけ」しかできないのだ。
勝機は、ある。
……決まっている。あの剣だ。どう見ても不思議な力を持っていそうな、あの剣だ。
左右の手に持った2本の剣、そのどっちがその力を与えているかは分からない。原理も全く分からない。
けれど、一番疑わしいのはあの剣だ。
それに万が一あの剣が原因でなかったとしても、この子は剣の扱い「だけ」しかできないのだ。
勝機は、ある。
「ネギ! その子の剣を弾き飛ばせるかッ!?」
「コナン君!?」
「剣さえ手放させれば、こっちが勝てるッ! 剣が無ければ、その子は何もできないッ!」
「コナン君!?」
「剣さえ手放させれば、こっちが勝てるッ! 剣が無ければ、その子は何もできないッ!」
両手で剣を振り回す女の子と比べたら、まだネギの方がコントロールできるはず。
この子の剣さえ奪えれば!
俺の叫びに、ネギが改めて身構える。こちらの狙いに気付いたのか、女の子の表情が変わる。
それはまさに、トリックを言い当てられた犯人と、同じ表情! ビンゴだ!
この子の剣さえ奪えれば!
俺の叫びに、ネギが改めて身構える。こちらの狙いに気付いたのか、女の子の表情が変わる。
それはまさに、トリックを言い当てられた犯人と、同じ表情! ビンゴだ!
「ラス・テル マ・スキル マギステル……」
「――ハァァァッ!」
「――ハァァァッ!」
俺の意を受けて、ネギが新たな呪文の詠唱に入る。それを止めんと、女の子が右手の剣を大きく振り回す。
一際大きく振りかぶられたその剣は、受け止めようとしたネギの箒までも一刀両断!
唖然とするネギの胸板を、箒もろとも斜めに切り裂いた!
一際大きく振りかぶられたその剣は、受け止めようとしたネギの箒までも一刀両断!
唖然とするネギの胸板を、箒もろとも斜めに切り裂いた!
「ね、ネギ――ッ!?」
肩紐を斬られたネギのランドセルが宙を舞う。魔剣を振りぬいた女の子がニヤリと笑う。
でも、ネギは。
ネギの奴は――辛うじて無事だった。咄嗟に上体を反らして、必殺の一撃を紙一重で避けていた。
スーツの胸元を斜めに切り裂かれ、そのポケットからは何か黒いモノが飛び出し。
傷口から血を滲ませながらも……そのダメージは、皮一枚。
そして女の子が剣を振りぬいたその刹那の隙に、ネギの呪文が完成する!
でも、ネギは。
ネギの奴は――辛うじて無事だった。咄嗟に上体を反らして、必殺の一撃を紙一重で避けていた。
スーツの胸元を斜めに切り裂かれ、そのポケットからは何か黒いモノが飛び出し。
傷口から血を滲ませながらも……そのダメージは、皮一枚。
そして女の子が剣を振りぬいたその刹那の隙に、ネギの呪文が完成する!
「――『風花 武装解除(フランス・エクセルマティオー)』!
「きゃ、きゃぁッ!?」
「きゃ、きゃぁッ!?」
気まぐれな春の風のような突風。そして舞い散る花びら。
不可解な突風に煽られて、女の子の手から剣が吹き飛ぶ。両手から吹き飛ぶ。
左手に持っていた剣は、カランと音を立てて落下して。
右手に持っていた剣は、空中で一枚のカードに姿を変える。
しっかり肩にかけていたはずの赤いランドセルも、どういう手品か、スルリと抜けて吹き飛んでいく。
そしてそれと同時に、突風は女の子の服を花びらに変えて消し去って――
不可解な突風に煽られて、女の子の手から剣が吹き飛ぶ。両手から吹き飛ぶ。
左手に持っていた剣は、カランと音を立てて落下して。
右手に持っていた剣は、空中で一枚のカードに姿を変える。
しっかり肩にかけていたはずの赤いランドセルも、どういう手品か、スルリと抜けて吹き飛んでいく。
そしてそれと同時に、突風は女の子の服を花びらに変えて消し去って――
「お、おいネギ! 何やってんだっ!」
「ラス・テル マ・スキル マギステル 風の精霊11人 集い来たりて……」
「ラス・テル マ・スキル マギステル 風の精霊11人 集い来たりて……」
2重の意味を持つ俺の怒鳴り声は、ネギの耳に届かない。
おいネギ、何で服まで脱がせる必要があるんだよ! おいネギ、なんでまた呪文なんて唱えてやがんだよ!
見れば女の子は未だぼんやりした表情のままながら、さっきまでの凍りつくような殺気がない。そして全裸。
そんな無防備な女の子に、ネギは焦点の合わない目のまま、手に光を集めていて……
ええい、正気に戻りやがれッ! 殺すまでやっちまったら、やりすぎなんだよ!
俺は素早く周囲を見回す。そして見つける。間に合うかッ!?
おいネギ、何で服まで脱がせる必要があるんだよ! おいネギ、なんでまた呪文なんて唱えてやがんだよ!
見れば女の子は未だぼんやりした表情のままながら、さっきまでの凍りつくような殺気がない。そして全裸。
そんな無防備な女の子に、ネギは焦点の合わない目のまま、手に光を集めていて……
ええい、正気に戻りやがれッ! 殺すまでやっちまったら、やりすぎなんだよ!
俺は素早く周囲を見回す。そして見つける。間に合うかッ!?
「『魔法の射手(サギタ・マギカ) 連弾・雷の11矢』!」
「でぇぇいッ!」
「でぇぇいッ!」
バリバリと音を立てて、ネギの放った光の弾が裸の女の子に飛んでいく。
ネギの後頭部目掛けて、俺の蹴った黒い塊が飛んでいく。
それはネギが落としたネギのランドセル! 俺が咄嗟に見つけたボール代わりのもの!
こんな身体になっても、サッカーの技術は残ってる! あのシューズがなくったって、ネギを止める役にくらいは……!
ネギの後頭部目掛けて、俺の蹴った黒い塊が飛んでいく。
それはネギが落としたネギのランドセル! 俺が咄嗟に見つけたボール代わりのもの!
こんな身体になっても、サッカーの技術は残ってる! あのシューズがなくったって、ネギを止める役にくらいは……!
そして連続して響く、2つの音。
バチッ! と弾けるような音と、ドカッ! とぶつかるような音。
それが、この激しい戦いの終わりの合図だった。
バチッ! と弾けるような音と、ドカッ! とぶつかるような音。
それが、この激しい戦いの終わりの合図だった。
* * *
「……さて、どーしたもんかな……」
動く者も居なくなった神社の境内。
女の子の裸体にふわりと全身黒タイツ(他にいいものがなかったんだ)を被せてやりながら、俺は考える。
女の子の裸体にふわりと全身黒タイツ(他にいいものがなかったんだ)を被せてやりながら、俺は考える。
女の子は、ネギのスタンガンみたいな電撃魔法を喰らって気絶したようだ。
あの局面でこういう『魔法』を選んでくれたのは幸いだった。
咄嗟に出たところを見ると、ネギの得意な『魔法』なのかもしれないな。
でもこの女の子、目が覚めたらまた襲い掛かってくるだろう。できるだけ早く、この場を離れた方がいい。
あの局面でこういう『魔法』を選んでくれたのは幸いだった。
咄嗟に出たところを見ると、ネギの得意な『魔法』なのかもしれないな。
でもこの女の子、目が覚めたらまた襲い掛かってくるだろう。できるだけ早く、この場を離れた方がいい。
問題の剣とカードは、俺が素早く拾って取り上げた。
少し調べてみたが、こっちの実体のある剣の方は、どうやらただの剣だ。軽くて丈夫、ってだけの剣だ。
この女の子を剣術の達人にしていたのは、たぶんこっちのカードの方。
よくよく思い出してみれば、ネギの『魔法』を切り払っていたのも、右手に持ったこっちの剣だった気がする。
『魔法』の道具なんだろうか? 剣の絵が描いてあるが、いったいどうすればあの魔剣が出てくるのか。
ともあれ、これが『道具』なら、それが『魔法の道具』だとしても、俺にも使いこなせるかもしれない。
俺たちの今後のためにも、頂いてくことにしよう。
少し調べてみたが、こっちの実体のある剣の方は、どうやらただの剣だ。軽くて丈夫、ってだけの剣だ。
この女の子を剣術の達人にしていたのは、たぶんこっちのカードの方。
よくよく思い出してみれば、ネギの『魔法』を切り払っていたのも、右手に持ったこっちの剣だった気がする。
『魔法』の道具なんだろうか? 剣の絵が描いてあるが、いったいどうすればあの魔剣が出てくるのか。
ともあれ、これが『道具』なら、それが『魔法の道具』だとしても、俺にも使いこなせるかもしれない。
俺たちの今後のためにも、頂いてくことにしよう。
「う、うーん……。あれ? コナン君? 僕……何してたんだろ……?」
と、そこまで考えたところで、ネギが唸りながら起き上がる。
良かった。まだボケた様子は残っているが、だいぶ正気に戻ってきてるようだ。
咄嗟にランドセルをぶつけたショック療法、結果オーライだが、まずまずの正解だったらしいな。
ネギはキョロキョロと辺りを見回し、女の子の姿を見つけてぼんやりと呟く。
良かった。まだボケた様子は残っているが、だいぶ正気に戻ってきてるようだ。
咄嗟にランドセルをぶつけたショック療法、結果オーライだが、まずまずの正解だったらしいな。
ネギはキョロキョロと辺りを見回し、女の子の姿を見つけてぼんやりと呟く。
「う、ううんッ……!」
「あ、そうだ……早くあの子に、トドメ刺さなきゃ……でないと、リリスさんに……」
「あ、そうだ……早くあの子に、トドメ刺さなきゃ……でないと、リリスさんに……」
――って、全然正気に戻ってねぇじゃねぇかッ!
女の子も、可愛い声を上げて顔をしかめる。こっちも今にも目を覚ましそうだ。
未だボケボケで殺る気十分なネギと、剣は奪ったが殺る気十分な女の子。
また衝突したら今度こそ止められそうにない。俺は咄嗟にネギの腕を掴むと、走り出した。
女の子も、可愛い声を上げて顔をしかめる。こっちも今にも目を覚ましそうだ。
未だボケボケで殺る気十分なネギと、剣は奪ったが殺る気十分な女の子。
また衝突したら今度こそ止められそうにない。俺は咄嗟にネギの腕を掴むと、走り出した。
「えっ、ちょっ、コナン君!?」
「いいから走れ! そんな状態のお前が『こんな場所』にいると、ややこしいことになるんだよ!」
「いいから走れ! そんな状態のお前が『こんな場所』にいると、ややこしいことになるんだよ!」
裸の女の子を1人残していくのは気が引けたが、今はこれしか思いつかない。
俺に引き摺られるようにしながらも、とりあえずネギは一緒についてきてくれてる。
ひとまずこのまま、一旦距離を置いて……
俺に引き摺られるようにしながらも、とりあえずネギは一緒についてきてくれてる。
ひとまずこのまま、一旦距離を置いて……
あ、やべ。色々置いてきちまった。
でもまあ、仕方ねぇか。俺の左手はネギの腕を掴んでて、右手は折れている。これ以上のモノは持てない。
それに、軽い剣と剣のカードは、既に俺のランドセルの中だ。名簿や地図も1セットあれば十分だろう。
俺は迷いを振り切るように、ネギの手を引いて走る。神社の境内から飛び出していく――
でもまあ、仕方ねぇか。俺の左手はネギの腕を掴んでて、右手は折れている。これ以上のモノは持てない。
それに、軽い剣と剣のカードは、既に俺のランドセルの中だ。名簿や地図も1セットあれば十分だろう。
俺は迷いを振り切るように、ネギの手を引いて走る。神社の境内から飛び出していく――
* * *
「……完敗、か。世の中には凄い人たちがいるものね」
ドタバタと2人が去って、誰も居なくなった神社の境内で。私は大きな溜息をついて起き上がった。
まだ身体が痺れてる。少し手が震えている。
もし、あの小さい男の子が大きい男の子を止めてくれなかったら、私は今頃死んでいたはず。
そう考えると、あの2人には感謝しなければならないわね――
ネギ君と、コナン君だったかしら? あの子たちの甘さに、感謝。
まだ身体が痺れてる。少し手が震えている。
もし、あの小さい男の子が大きい男の子を止めてくれなかったら、私は今頃死んでいたはず。
そう考えると、あの2人には感謝しなければならないわね――
ネギ君と、コナン君だったかしら? あの子たちの甘さに、感謝。
「それにしても……ふふ、相当慌ててたみたいね。大事な荷物を置いてっちゃうなんて」
置き忘れられたランドセルと拳銃を拾って、私は小さく笑う。
はやぶさの剣とクロウカードは持っていかれちゃったようだけど、こっちはランドセル1つと拳銃一丁。
結果だけ見れば、悪い取り引きじゃないわ。
ランドセルの他にも、戦闘の最中にネギという男の子のポケットから零れたものがあった。
『七夜の短刀』? ふうん、でも普通の人が一見しただけじゃ、これが武器とは分からないんじゃないかしら。
誰かの不意を突くには、最適な得物ね。
はやぶさの剣とクロウカードは持っていかれちゃったようだけど、こっちはランドセル1つと拳銃一丁。
結果だけ見れば、悪い取り引きじゃないわ。
ランドセルの他にも、戦闘の最中にネギという男の子のポケットから零れたものがあった。
『七夜の短刀』? ふうん、でも普通の人が一見しただけじゃ、これが武器とは分からないんじゃないかしら。
誰かの不意を突くには、最適な得物ね。
そう――「不意を突く」。
やっぱり、真正面から戦いを挑むのはサイコメトラーの流儀じゃなかったのよ。
人の心を読み、相手の考えの裏をかき、こちらの考える所に誘導する。それが私の戦い方。
あの小さい子を見ても分かる通り、殺し合いに乗っている子ばかりじゃないようだし――
ともかく誰か、利用できそうな人を探さないとね。
危機感やトラウマを上手く煽って、代わりに戦わせてもいいかも。
やっぱり、真正面から戦いを挑むのはサイコメトラーの流儀じゃなかったのよ。
人の心を読み、相手の考えの裏をかき、こちらの考える所に誘導する。それが私の戦い方。
あの小さい子を見ても分かる通り、殺し合いに乗っている子ばかりじゃないようだし――
ともかく誰か、利用できそうな人を探さないとね。
危機感やトラウマを上手く煽って、代わりに戦わせてもいいかも。
「……クシュンッ!」
と、そこまで考えたところでクシャミが出た。そういえば私の服、無くなっちゃったのね。
皆本さん以外の男の人に裸を見られちゃったのは、ちょっとしたショックだわ。
いずれ2人には「お願いですから死なせて下さい」と泣きながら土下座するような目に合わせてあげなくちゃ。
彼らの精神とプライドをズタズタにする復讐の手段を考えながら、私は周囲を見回す。
皆本さん以外の男の人に裸を見られちゃったのは、ちょっとしたショックだわ。
いずれ2人には「お願いですから死なせて下さい」と泣きながら土下座するような目に合わせてあげなくちゃ。
彼らの精神とプライドをズタズタにする復讐の手段を考えながら、私は周囲を見回す。
毛布代わりに身体にかけられてた布は、よくよく見れば黒い全身タイツ。
近くの地面に落ちていたのは、ゼッケンに「えう゛ぁ」と書かれたスクール水着。
裸で歩き回りたくなければ、どちらかを着るしかないんでしょうけれど……思わず溜息が漏れちゃうわね。
近くの地面に落ちていたのは、ゼッケンに「えう゛ぁ」と書かれたスクール水着。
裸で歩き回りたくなければ、どちらかを着るしかないんでしょうけれど……思わず溜息が漏れちゃうわね。
「どっちがいいかしら。というより、どっちの方がマシなのかしらね……?」
バベルの制服と引き換えに、全身タイツかスクール水着かの二択。
これはちょっと、良い取り引きとは言えそうにないわね……?
これはちょっと、良い取り引きとは言えそうにないわね……?
【C-4/神社の外/一日目/午前】
【ネギ=スプリングフィールド@魔法先生ネギま!】
[状態]:胸に斜めに大きく浅い傷痕(ただしダメージはほとんどない)。魔力を相当使ってかなり疲労。
リリスの唾液の催淫作用でまだボケてる?
[装備]:指輪型魔法発動体@新SWリプレイNEXT
[道具]:なし(共通支給品もランドセルもなし!)
[思考]:
第一行動方針:リリスさんとの約束のために、コナン以外の人を倒す
第二行動方針:二人(エヴァ&小太郎)と、コナンのお友達(灰原)を探す
第三行動方針:18時のリリスさんとのデート(?)に遅れずに行く
最終行動方針:ロワから脱出する (?)
[備考]:
リリスと殺害数を競う約束をしています。待ち合わせは18時にB-7のタワーです。
リリスの唾液により強力な催淫作用を受けて、かなりボケています(持続時間は次の人任せ)。
惚れ薬とは違い、頭の中がエッチな事で一杯になっていて冷静に思考が出来ないだけです。
[備考]:
「仕込み箒(秘密の業物)@MELTY BLOOD」は、クロウカードの「剣」に一刀両断されました。
残骸がC-4の神社の境内に落ちています。
ネギの肩紐の切れたランドセルが、同じくC-4の神社の境内に落ちています。
【ネギ=スプリングフィールド@魔法先生ネギま!】
[状態]:胸に斜めに大きく浅い傷痕(ただしダメージはほとんどない)。魔力を相当使ってかなり疲労。
リリスの唾液の催淫作用でまだボケてる?
[装備]:指輪型魔法発動体@新SWリプレイNEXT
[道具]:なし(共通支給品もランドセルもなし!)
[思考]:
第一行動方針:リリスさんとの約束のために、コナン以外の人を倒す
第二行動方針:二人(エヴァ&小太郎)と、コナンのお友達(灰原)を探す
第三行動方針:18時のリリスさんとのデート(?)に遅れずに行く
最終行動方針:ロワから脱出する (?)
[備考]:
リリスと殺害数を競う約束をしています。待ち合わせは18時にB-7のタワーです。
リリスの唾液により強力な催淫作用を受けて、かなりボケています(持続時間は次の人任せ)。
惚れ薬とは違い、頭の中がエッチな事で一杯になっていて冷静に思考が出来ないだけです。
[備考]:
「仕込み箒(秘密の業物)@MELTY BLOOD」は、クロウカードの「剣」に一刀両断されました。
残骸がC-4の神社の境内に落ちています。
ネギの肩紐の切れたランドセルが、同じくC-4の神社の境内に落ちています。
【江戸川コナン@名探偵コナン】
[状態]:右腕骨折
[装備]:クロウカード「剣」@CCさくら(カード状態)、はやぶさの剣@ドラクエ
[道具]:支給品一式、バカルディ@ブラックラグーン、銀の銃弾14発、
殺虫剤、リリスの食料と飲み掛けの飲料水
[思考]:俺もこのカードを使えば戦えるようになるのか……?
第一行動方針:ネギが正気に戻るまで、ネギが殺人を犯さないよう監視する
第ニ行動方針:灰原とネギの仲間を早めに見つけたい
最終行動方針:ロワから脱出する
[備考] :
リリスと殺害数を競う約束をしています。待ち合わせは18時にB-7のタワーです。
バカルディと飲み掛けの飲料水は、リリスが口をつけたため弱い催淫効果を持っています。
[状態]:右腕骨折
[装備]:クロウカード「剣」@CCさくら(カード状態)、はやぶさの剣@ドラクエ
[道具]:支給品一式、バカルディ@ブラックラグーン、銀の銃弾14発、
殺虫剤、リリスの食料と飲み掛けの飲料水
[思考]:俺もこのカードを使えば戦えるようになるのか……?
第一行動方針:ネギが正気に戻るまで、ネギが殺人を犯さないよう監視する
第ニ行動方針:灰原とネギの仲間を早めに見つけたい
最終行動方針:ロワから脱出する
[備考] :
リリスと殺害数を競う約束をしています。待ち合わせは18時にB-7のタワーです。
バカルディと飲み掛けの飲料水は、リリスが口をつけたため弱い催淫効果を持っています。
【C-4/神社の境内/一日目/午前】
【三宮紫穂@絶対可憐チルドレン】
[状態]:少し疲労。電撃の痺れが僅かに残る。全裸。
[装備]:ワルサーPPK(銀の銃弾7/7)@パタリロ!、七夜の短刀@MELTY BLOOD
[道具]:支給品一式×2、デスノート(ダミー)@DEATH NOTE、
スクール水着@魔法先生ネギま!、全身黒タイツ@名探偵コナン、
[思考]:スク水と全身黒タイツ、どっちがマシかしら……?
第一行動方針:真正面からの戦闘に限界を感じ、ステルスor扇動マーダー路線を目指す
第二行動方針:そのために利用できそうな仲間を探す
第三行動方針:機会があればコナンとネギの2人にはきっつい復讐をしてやる
基本行動方針:元の世界に帰るために最後の一人になる
【三宮紫穂@絶対可憐チルドレン】
[状態]:少し疲労。電撃の痺れが僅かに残る。全裸。
[装備]:ワルサーPPK(銀の銃弾7/7)@パタリロ!、七夜の短刀@MELTY BLOOD
[道具]:支給品一式×2、デスノート(ダミー)@DEATH NOTE、
スクール水着@魔法先生ネギま!、全身黒タイツ@名探偵コナン、
[思考]:スク水と全身黒タイツ、どっちがマシかしら……?
第一行動方針:真正面からの戦闘に限界を感じ、ステルスor扇動マーダー路線を目指す
第二行動方針:そのために利用できそうな仲間を探す
第三行動方針:機会があればコナンとネギの2人にはきっつい復讐をしてやる
基本行動方針:元の世界に帰るために最後の一人になる
[備考]:
七夜の短刀の使い方をサイコメトリー能力で理解しました。
ワルサーPPKの予備の銀の銃弾は、コナンのランドセルの中です。紫穂の手元にはありません。
ネギのランドセルは、中身だけ自分のランドセルに移して持ち運ぶつもりです。
七夜の短刀の使い方をサイコメトリー能力で理解しました。
ワルサーPPKの予備の銀の銃弾は、コナンのランドセルの中です。紫穂の手元にはありません。
ネギのランドセルは、中身だけ自分のランドセルに移して持ち運ぶつもりです。
≪056:「永沢、再び女の子を襲う」の巻 | 時系列順に読む | 059:銀髪翠眼の導き手≫ |
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