侍も飛べば棒に当たる ◆r39666tJr2
弥彦は夜風を体全体に浴びながら、思考の波へと沈んでいた。
シャナは二人分の体重を抱えて飛ぶことに集中しているようで、弥彦に視線を向けることはない。
だから、弥彦もその集中に水を差さないように己の思考へ没頭した。
シャナは二人分の体重を抱えて飛ぶことに集中しているようで、弥彦に視線を向けることはない。
だから、弥彦もその集中に水を差さないように己の思考へ没頭した。
空を飛んでいる。普段ならそんな有り得ない現象に、弥彦は心奪われたのかもしれない。空を飛ぶということは人類の夢である。
弥彦が生きていた時代に、空を飛ぶ手段など有りはしなかった。体に感じる浮遊感。すべてか新鮮で、不思議だった。
でも、そんなことよりも――
弥彦の脳裏に白髪のひ弱な少年の姿が思い浮かぶ。
(……ニア)
弥彦が生きていた時代に、空を飛ぶ手段など有りはしなかった。体に感じる浮遊感。すべてか新鮮で、不思議だった。
でも、そんなことよりも――
弥彦の脳裏に白髪のひ弱な少年の姿が思い浮かぶ。
(……ニア)
また、助けられなかったのだろうか。未だに背後から立ち上る『眠り火』の煙が弥彦の感情を煽る。
(死体はなかった。争った後もない。上手く逃げることが出来た?いや、……。)
弥彦は浮かんだ自分に都合の良い考えを即座に打ち消す。
――相手はあのジェダの部下だ。自分のようにそう都合良く眠り火が効くだろうか?
ニアは己の貧弱さを弥彦に披露してみせた。細い身体、口調にも覇気はなかった。エレベーターも故障していたし、ニアに弥彦のようにあの長い階段を逃げ切れる体力があるとも思えない。
ニアは確かに機転は利く。頭も弥彦の何十倍も良いだろう。だが、場所が悪すぎる。
地上から何百メートルも離れた展望台。止められている電気。逃げ場のない密室。
そこから導かれる結論は、ただ一つ。死体がないからなどと楽観視することなんて出来なかった。
(死体はなかった。争った後もない。上手く逃げることが出来た?いや、……。)
弥彦は浮かんだ自分に都合の良い考えを即座に打ち消す。
――相手はあのジェダの部下だ。自分のようにそう都合良く眠り火が効くだろうか?
ニアは己の貧弱さを弥彦に披露してみせた。細い身体、口調にも覇気はなかった。エレベーターも故障していたし、ニアに弥彦のようにあの長い階段を逃げ切れる体力があるとも思えない。
ニアは確かに機転は利く。頭も弥彦の何十倍も良いだろう。だが、場所が悪すぎる。
地上から何百メートルも離れた展望台。止められている電気。逃げ場のない密室。
そこから導かれる結論は、ただ一つ。死体がないからなどと楽観視することなんて出来なかった。
弥彦は拳を強く握り締めた。
もっと早くこの情報を知っていれば。一度、タワーに戻っていたら。有り得ないIFを想像して弥彦は唇を強く噛み締める。
剣心の刀を手に入れ、決意を新たにした矢先にこの有様だ。悔しくて、情けなくて、涙が零れる前に――
もっと早くこの情報を知っていれば。一度、タワーに戻っていたら。有り得ないIFを想像して弥彦は唇を強く噛み締める。
剣心の刀を手に入れ、決意を新たにした矢先にこの有様だ。悔しくて、情けなくて、涙が零れる前に――
「――ぐあっ!」
何かが弥彦の顎に命中した。
※ ※ ※
シャナは突然の弥彦の呻きに、反射的に体が動いていた。
どこからか飛んできて弥彦に命中した黒い物体を、シャナは空中でキャッチする。
その際、弥彦が「うわあああ、――あ?」と叫んだことは無視しておく。
シャナが掴み、弥彦に命中したのは黒いランドセルだった。それを詳しく検証する前に、
どこからか飛んできて弥彦に命中した黒い物体を、シャナは空中でキャッチする。
その際、弥彦が「うわあああ、――あ?」と叫んだことは無視しておく。
シャナが掴み、弥彦に命中したのは黒いランドセルだった。それを詳しく検証する前に、
「え?」
ぐらり、とシャナの体が傾く。ランドセルを掴むために、片手で弥彦を支えているせいだ。
制限がある今、シャナであっても人を抱えて飛ぶのは難しい。バランスを崩したら、最後。
制限がある今、シャナであっても人を抱えて飛ぶのは難しい。バランスを崩したら、最後。
「うわあああああああああああああああ」
「くっ――」
「くっ――」
先ほどの叫びとは比べ物にならないぐらいの声で、弥彦は高度を失くしていく我が身の危機を嘆く。
落下は避けられない。シャナは翼を広げて、衝撃を出来るだけ軽くなるように務めるが――
落下は避けられない。シャナは翼を広げて、衝撃を出来るだけ軽くなるように務めるが――
「ぐえっ」
「もう!なんなのよ、これは!」
「もう!なんなのよ、これは!」
弥彦とシャナは、とあるビルの屋上へと墜落した。
衝撃はそれほどでもなかった。弥彦は頑丈だし、シャナは弥彦を下敷きにしたおかげで、ダメージは皆無だ。
シャナはまだ蹲っている弥彦を視界の隅に捉えつつも、黒いランドセルを取り出した。
衝撃はそれほどでもなかった。弥彦は頑丈だし、シャナは弥彦を下敷きにしたおかげで、ダメージは皆無だ。
シャナはまだ蹲っている弥彦を視界の隅に捉えつつも、黒いランドセルを取り出した。
『シャナ、それは?』
「さっきどこからか飛んできたのよ。こいつのせいで……もう散々だわ」
「さっきどこからか飛んできたのよ。こいつのせいで……もう散々だわ」
ぼんやりと空を眺めている弥彦は後回しにして、シャナは黒いランドセルに手をかけた。
どうしてあんな上空まで飛んできたのか。誰の持ち物なのか。
このランドセルは、ジェダが参加者にひとつずつ配ったものである。
不思議なもので、どんなに大きなアイテムでもこのランドセルには収まってしまう。物量法則を無視した品物だ。
何を入れても重さを感じることはない優れもの。普通、好き好んでこのランドセルを手放そうと思う奴がいるだろうか?
どうしてあんな上空まで飛んできたのか。誰の持ち物なのか。
このランドセルは、ジェダが参加者にひとつずつ配ったものである。
不思議なもので、どんなに大きなアイテムでもこのランドセルには収まってしまう。物量法則を無視した品物だ。
何を入れても重さを感じることはない優れもの。普通、好き好んでこのランドセルを手放そうと思う奴がいるだろうか?
「……カメラ?」
「?」
「?」
入っていたのは何の変哲もなさそうなカメラと、基本支給品一式。
シャナは他におかしなものが入っていないかと探すが、本当にそれだけだった。
「誰がこんなものを……」
『うむ。此処ではどんな些細な物資でも貴重だというのに。おそらく捨てなければならない理由があったのだろう』
アラストールの言葉でシャナが一つの答えに辿り着く。
「……なるほどね。殺した奴の支給品なんか持ってたら色々不都合だもの」
それにしても捨てることはないとは思うが、シャナは素早くそう結論付けた。細かい理由などどうでもいい。
もしかしたらこの殺し合いに乗っている奴が近くにいるかもしれないのだ。
リリスかもしれない。丁度、場所も近い。タワーで肩透かしのような目にあったのだ。何か結果が欲しい。
わざわざこの場所まで飛んできたのに、収穫が弥彦一人というのは寂しすぎる。
シャナは他におかしなものが入っていないかと探すが、本当にそれだけだった。
「誰がこんなものを……」
『うむ。此処ではどんな些細な物資でも貴重だというのに。おそらく捨てなければならない理由があったのだろう』
アラストールの言葉でシャナが一つの答えに辿り着く。
「……なるほどね。殺した奴の支給品なんか持ってたら色々不都合だもの」
それにしても捨てることはないとは思うが、シャナは素早くそう結論付けた。細かい理由などどうでもいい。
もしかしたらこの殺し合いに乗っている奴が近くにいるかもしれないのだ。
リリスかもしれない。丁度、場所も近い。タワーで肩透かしのような目にあったのだ。何か結果が欲しい。
わざわざこの場所まで飛んできたのに、収穫が弥彦一人というのは寂しすぎる。
「なあ……」
しばらく黙り込んでいた弥彦が言葉を発した。
屋上の柵を掴み、暗い森の先へと双眸を向けている。シャナは黒いランドセルの中に荷物を戻しながら、弥彦の言葉の続きを待った。
しばらく黙り込んでいた弥彦が言葉を発した。
屋上の柵を掴み、暗い森の先へと双眸を向けている。シャナは黒いランドセルの中に荷物を戻しながら、弥彦の言葉の続きを待った。
「あそこに、誰かいなかったか」
「――え?」
「――え?」
弥彦が指しているのはたくさんの岩山が密集している辺りだ。ここからでは遠くて、暗くて細部を確認することは難しい。シャナが目を凝らしても特に目新しいものは見当たらない。
オフィス街から離れているそこは、明かりというものがないのだ。
オフィス街から離れているそこは、明かりというものがないのだ。
「さっき空に居たとき、一瞬だけ見えた気がするんだ。あの辺りに白っぽいような、……人影みたいな奴が。
動いてたし、……落ちてる間にどこか行っちゃったみたいだけどさ」
動いてたし、……落ちてる間にどこか行っちゃったみたいだけどさ」
男か女か、それすらも分からないけれど弥彦は何かを見たのだ。弥彦の証言とランドセルが飛んできた方向は一致する。
シャナは見間違いだ、と笑い飛ばすことは出来なかった。リリスについての情報だったらなんだって欲しい。ニアの情報を聞くのはひとまず後回しだ。
微かな手がかりを逃がさないように、シャナは足に力を込める。
シャナは見間違いだ、と笑い飛ばすことは出来なかった。リリスについての情報だったらなんだって欲しい。ニアの情報を聞くのはひとまず後回しだ。
微かな手がかりを逃がさないように、シャナは足に力を込める。
「何か手がかりがあるかも。確かめに行くわよ――!」
「え?――うわっ」
「え?――うわっ」
シャナは再び弥彦を抱え、ビルの屋上から翼を広げていた
【D-7/空中/1日目/夜】
【明神弥彦@るろうに剣心】
[状態]:両腕に軽い火傷、疲労(中)、四肢に打撲と擦り傷、背中に打ち身、シャナに抱えられている
[装備]:逆刃刀・真打@るろうに剣心、サラマンデルの短剣@ベルセルク
[道具]:基本支給品一式、首輪(美浜ちよ)
[服装]:道着(ドロ塗れで血が結構隠れた。右腕部分が半焼け、左側袖も少し焼けてる)
[思考]:見間違いじゃないよな?
第一行動方針:目撃した人影について調べる。ニアとリリスの行方も心配。
第二行動方針:チアキを探し出して保護する。「犯人『バンコラン』」らしき人物と先に遭遇したら取り押さえる。
第三行動方針:パタリロを完全には信用できないが、信用したいとは思っている。
第四行動方針:ニアの力量は認めるが考え方には反対(強い不信感)。
第五行動方針:のび太がどうなったか不安。
第六行動方針:出来ればあの子たち(しんのすけ・ちよ・よつば・藤木)を埋めてやりたい。
基本行動方針:ジェダ達を倒す。一人でも多くの人を助ける。
[備考]:パタリロと簡単に情報交換済み。
よつばと藤木の死について、パタリロが語った最初の仮説をほぼ信じきっています。
[状態]:両腕に軽い火傷、疲労(中)、四肢に打撲と擦り傷、背中に打ち身、シャナに抱えられている
[装備]:逆刃刀・真打@るろうに剣心、サラマンデルの短剣@ベルセルク
[道具]:基本支給品一式、首輪(美浜ちよ)
[服装]:道着(ドロ塗れで血が結構隠れた。右腕部分が半焼け、左側袖も少し焼けてる)
[思考]:見間違いじゃないよな?
第一行動方針:目撃した人影について調べる。ニアとリリスの行方も心配。
第二行動方針:チアキを探し出して保護する。「犯人『バンコラン』」らしき人物と先に遭遇したら取り押さえる。
第三行動方針:パタリロを完全には信用できないが、信用したいとは思っている。
第四行動方針:ニアの力量は認めるが考え方には反対(強い不信感)。
第五行動方針:のび太がどうなったか不安。
第六行動方針:出来ればあの子たち(しんのすけ・ちよ・よつば・藤木)を埋めてやりたい。
基本行動方針:ジェダ達を倒す。一人でも多くの人を助ける。
[備考]:パタリロと簡単に情報交換済み。
よつばと藤木の死について、パタリロが語った最初の仮説をほぼ信じきっています。
【シャナ@灼眼のシャナ】
[状態]:しろがね化。炎の翼で飛行中
[装備]:楼観剣(鞘なし)@東方Project、コキュートス@灼眼のシャナ
[道具]:支給品一式(水少量、パン一個消費)、包帯 、小狼のランドセル(基本支給品一式とときせかえカメラ@ドラえもん)
[思考]: リリス……!
第一行動方針:弥彦が洞窟付近で目撃したらしい人影(殺し合いに乗っている奴?)について調べる。
第二行動方針:弥彦を適当な所で下ろし、(リリスの行方を知るために)ニアについて詳しい話を聞く。
第三行動方針:この近辺にまだいるはずのリリスを探す
第四行動方針:夜が明ける前に北東の市街地に向かい、いるはずの自動人形(トリエラ・リルル)を破壊する。
第五行動方針:要件が済んだら、インデックスや双葉たちと合流。
基本行動方針:ジェダを討滅する。自動人形(と認識した相手)は、全て破壊する。
[備考]:義体のトリエラ、及びロボットのリルルを自動人形の一種だと認識しました。
[備考]:これまでのインデックスの行動の全てを知っています。
神社を拠点にする計画も知っています。
[状態]:しろがね化。炎の翼で飛行中
[装備]:楼観剣(鞘なし)@東方Project、コキュートス@灼眼のシャナ
[道具]:支給品一式(水少量、パン一個消費)、包帯 、小狼のランドセル(基本支給品一式とときせかえカメラ@ドラえもん)
[思考]: リリス……!
第一行動方針:弥彦が洞窟付近で目撃したらしい人影(殺し合いに乗っている奴?)について調べる。
第二行動方針:弥彦を適当な所で下ろし、(リリスの行方を知るために)ニアについて詳しい話を聞く。
第三行動方針:この近辺にまだいるはずのリリスを探す
第四行動方針:夜が明ける前に北東の市街地に向かい、いるはずの自動人形(トリエラ・リルル)を破壊する。
第五行動方針:要件が済んだら、インデックスや双葉たちと合流。
基本行動方針:ジェダを討滅する。自動人形(と認識した相手)は、全て破壊する。
[備考]:義体のトリエラ、及びロボットのリルルを自動人形の一種だと認識しました。
[備考]:これまでのインデックスの行動の全てを知っています。
神社を拠点にする計画も知っています。
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