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  • 炎と氷(後編)

魔法少女を集めてバトロワするスレ@ ウィキ

炎と氷(後編)

最終更新:2024年04月25日 23:53

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だれでも歓迎! 編集
◇

  絶対のクライオニクスを攻略せんと挑んだ者は多い。
 その中で最もポピュラーな手段が「火」である。
 彼女を始末するために炎系魔法少女を雇い、ぶつける。
 セオリー通りであり、対魔法少女戦闘において、相性は最も重要な要素。
 現にジャスティスファイアは、クライオニクスと相対し、未だ冷却されていない。
 ——そうやって、炎系であることに胡坐をかいた魔法少女を、クライオニクスは全て葬って来た。

「さようなら」

 翼が動く。
 弾丸を超える速度で動く翼に、大抵の魔法少女は対応できない。
 触れれば凍る。
 それは、死を意味する。
 空気さえも冷却された空間で氷の天使の翼がはためき
 ——空を切る。
 一瞬で側面に回り込んだジャスティスファイアの口がガシャンと開き——業火が放たれる。

「ジャスティス・ファイア!」

 魔法少女を一撃で焼死させる程の火力。
 ジャスティスファイアは、一つの兵器である。
 クライオニクスの守りの要である翼は攻撃に使ってしまい、コートのポケットに両手を突っ込んだまま無防備を晒している。
 一切の容赦なく放たれる炎。
 正義の炎はクライオニクスを呑み込まんと迫り——翼の壁に阻まれる。

「「速い」」

 二人の声が重なる。
 クライオニクスはジャスティスファイアの機動力を称賛し、ジャスティスファイアはクライオニクスの翼の速度に戦慄していた。
 一筋縄ではいかない相手。

「なら、面で攻めるわ」

 クライオニクスの翼がさざめく。

(何をするつもりだ……?)

 次なる攻撃に備え、ジャスティスファイアは四肢に力を籠める。
 ——ジャスティスファイアの視界を、翼が覆い隠した。

「——な」

 クライオニクスの取った手段はシンプルだった。
 翼を構成している氷の羽根一枚一枚を、分離させ、ジャスティスファイアへと射出したのだ。
 弾丸のように放たれる羽根。それが一枚であればジャスティスファイアは難なく躱したであろう。
 だが、放たれた羽根は、当然一枚ではない。
 百を軽く超える羽根が、ジャスティスファイアの逃げ場を塞ぐように襲いかかる。
 質量が減ったから安全、なわけがない。
 触れれば凍らされる。
 それは、翼が羽根に変わっても何も変わらない。
 被弾ゼロで逃げることは出来ない。
 ならば、取れる手段は一つ。
 ガシャンとジャスティスファイアの口が開き、炎が羽根を迎撃する。
 羽根は瞬時に溶けていくが、足りない。
 消失を逃れた翼が、正義の犬を凍らさんと迫り

「ジャスティス・シールド!」

 展開されるのは、ドーム状の炎の壁。
 翼はジャスティスファイアに届くことなく消えていく。

「器用ね」

「そんなものですか、クライオニクス。
 貴女の噂は聞いていますよ……上に命令されればどんな外道な行為にも手を染める、冷酷無比な……『小悪党』だと……」

「そう。ごめんなさい。私はあなたのことを知らないわ。捨て犬なのかしら」

 能力が噛み合う。噛み合うが故の膠着状態。
 ただの炎系なら翼の速さに適応できず、触れられ終わっていた。
 だが、ジャスティスファイアは、速い。
 そして炎を操る魔法も使いこなしている。

(戦闘が成立したのなんて、随分と久しぶりだわ……)

 クライオニクスは白い息を吐く。

(ああ、なんて、忌々しい……)

 クライオニクスの心に、戦闘を楽しむ余分は無い。
 より早く、より確実に、任務を達成する。
 どこまでも無感情に。どこまでも冷酷に。

(……まさかこれを使うことになるなんてね)

 なるほど、翼でも羽根でも、ジャスティスファイアを捉えられない。
 クライオニクスは、地を蹴った。
 翼がはためく。
 そのままクライオニクスは——浮上した。

「飛んだ!?」

「あら、翼が生えているのだから、当然でしょう」

 翼がはためく度にクライオニクスの高度は上昇する。

「逃げるつもりですか……?」

「それもいいのだけれど」

 クライオニクスの指が眼下を、ジャスティスファイアを指差す。
 魔法陣が展開される。
 最初は指先程の大きさしかなかったが、一瞬でクライオニクスを超え、際限なく広がり続ける。

「凍らせられないなら——潰すわ」

 月光が遮られる。
 ぐるる……とジャスティスファイアは唸った。
 かつてこの地には旅館が建っていた。
 温泉、エステ、美容院が付随したリラクゼーションテーマパークだった。
 その旅館を——優に超える質量の、大氷塊が空から堕ちてくる。

 「——アイズベルク」

  氷山を意味する言葉をクライオニクスは呟く。
  かくして、全てを潰す一撃が放たれた。


◇

 氷山が、降って来る。
 人界では絶対にあり得ないことも、魔法は容易く実現する。
 迫る絶望的な大質量を前に、ジャスティスファイアは動じなかった。
 ——分かってますよ、ジョン。この程度の攻撃は、既に想定済みです。
 ジャスティスファイアには、魔法少女の経験が極めて薄い。
 半年程度のブラックブレイドと比較してもなお短く、実質的には三か月程度である。
 だがそれは、ジャスティスファイアの戦闘経験が未熟であることを示さない。
 あにまん市への潜入のために魔法少女へ『改造』されたジャスティスファイアは、訪日する前から様々な状況をシミュレーションした戦闘実験をクリアしている。
 それは、あにまん市最強の魔法少女、ティターニアとの戦闘までも含まれ、万が一、彼女と交戦状態に陥ってもジャスティスファイアは十分に戦えるとFBIからお墨付きが出ている。
 故に、落下する大氷塊を前にしても、ジャスティスファイアに焦りは視られなかった。
 ジャスティスファイアの目が発光する! 
 正義の炎が熱く燃えている! あの日の星条旗に誓った約束を果たす時!

『USA! USA! USA!』

 ジャスティスファイアの脳内にUSA因子が巡り、大規模魔法の発動準備が整う。
 頭上に魔法陣が出現した。最初は直径30センチにも満たない大きさだったが、アメリカ合衆国が常に経済成長を続けることを証明するかのように円は一瞬で拡大する。

『魔法名・ジャスティスメテオ。発動準備完了。承認しますか?』

『承認』

『ジャスティスメテオ、発射します。グッドラック』

 ——一瞬で、周囲の温度が100℃上昇した。
 極寒から灼熱へ。
 人類が活動できない領域の中、大氷塊に向かって打ち上げられるのは、流星。
 其れは、氷山落下と同程度にが、人知を超えた現象だった。
 燃え滾ったケイ酸塩鉱物が、空中に向かって撃たれる。
 ジャスティスファイアが生成できるのは炎だけではない。
 マグマ……岩石が溶けて生じた、高温で溶融状態にある造岩物質もまた、生成できる。
 撃ちだされたマグマと大氷塊が衝突する。
 氷山VS隕石。かつて地球の何処かで起こったかもしれない激突。異なるのは、今回は氷山が上で、隕石が下である。
 大質量の氷山が瞬く間に蒸発する。マグマが冷えて固まっていく。
 賭けでもあった。
 もし、ジャスティスメテオが敗北すれば、氷山だけでなく、冷却され固体へと戻ったマグマも一緒に落ちてくる。落下する質量を徒に増やす愚行かもしれない。
 だが、勝利すれば。

(——正義は、負けない)

 冷戦で勝利したのはどちらだったか、歴史が証明している。
 宇宙開発競争で勝利したのもどちらだったのかも。
 ジャスティスファイアは自らの性能を信じる。
 アメリカ合衆国の技術を、人材を、そして正義を信じる。
 彼女の燃え盛る正義に応えるように、ジャスティスメテオは氷山を気体に変えていく。
 明らかに、勢いが勝っている。
 とうとう大氷塊は半ばまで消失した。
 マグマも三割ほど冷えてしまったが、それでも大質量をクライオニクスにぶつけることが出来る。
 これだけの大質量を凍結させることは容易には出来ないだろう。
 ジャスティスファイアは勝利を確信する。

「驚いたわ」

 クライオニクスは大氷塊を消しながら自らに迫る正義の鉄槌を見下ろしていた。
 勝負が成立するだけでも珍しいのに、まさかアイズベルクまで攻略されるとは。
 クライオニクスはジャスティスファイアを自らを殺しうる魔法少女だと評価を上方修正する。

「じゃあ、二峰はどうかしら?」

「……そんな馬鹿な」

 空を見上げ、ジャスティスファイアの口から掠れ声が漏れた。
 氷山が、降ってくる。
 半ば以上溶けた一つ目の大氷塊、その上方に同程度の大きさの大氷塊が出現している。
 重力に従い、大氷塊は落下する。
 溶けかかっていた最初の氷塊を呑み込み、ジャスティスメテオと接触する。
 ——足りない。
 二峰の氷山を溶かす程の熱量を、ジャスティスメテオは持ちえない。
 魔法が解け、リアル(物理法則)が顕れる。
 物質は、上から下へと落ちる。
 月光が遮られ、夜の濃度が深くなる。
 質量の暴力が、大地を蹂躙する。
 地面は捲れ上がり、土煙が天高く昇っていく。
 皮肉にもそれは、隕石の衝突に酷似していた。
 翼を優雅にはためかせながら、クライオニクスは自らが起こした大破壊を見下ろす。
 命を奪った感慨も無く、強敵を葬った歓喜も無く。
 絶対は、静寂の空で女王の如く君臨した。

◇

 クライオニクス——ナターリヤ・ミシェンコフが「魔法少女」を知ったのは四歳のときだった。
 テレビで放送されていた日本のアニメ、そこに描かれた正義のために悪者をやっつける魔法少女に、ナターリヤは憧れた。
 可愛い服を着て、かっこよく魔法を振るって、皆に褒められる。
 私も、魔法少女になりたい。
 ナターリヤの両親は幼い娘の幼気な妄想を否定することはしなかった。
 ナターリヤは可愛いからきっとなれるぞ、と父は言った。
 いい子にしていたらなれるわ、と母は言った。
 だからナターリヤはいつも可愛くて、いつもいい子になろうと思った。
 五歳の時に、自分の衣装を描いた。衣装はアニメそのままだったが、『氷の翼』というアイデアには自信があった。事実、センスがある、絵心があると両親は褒めてくれた。
 六歳の誕生日に、魔法のステッキを買ってもらった。日本から取り寄せてもらった。ナターリヤは嬉しくて、一日中ステッキを振り回し、家中に魔法をかけた。
 七歳になっても、まだナターリヤは魔法少女になれると思っていた。学校(シュコーラ)では、子どもっぽいと笑われたが、ナターリヤは気にしなかった。
 八歳のある日、空から爆弾が落ちてきて、両親はいなくなった。ナターリヤは魔法が存在しないことに気づいた。

◇

 クライオニクスは、白い息を吐いた。
 普段以上に疲労を感じる。
 久しぶりに本気を出したから? 違う。

(此処は、消費魔力が増大するのね……)

 あにまん市が特殊なのか、このゲームが特殊なのか。
 序盤で気づくことが出来たのは僥倖だ。
 未だキルスコアは三。最初の空間に居た参加者の数を考えれば、日が昇る前に十は殺しておきたい。

(一度地上に戻ろうかしら。飛んでいるだけで魔力を消費するし)

 飛行能力を持つ魔法少女は希少であり、保有しているだけで大きなアドバンテージを得る。
 だが、総じて飛行能力者は魔力消費が激しい。
 戦闘機の魔法少女、フライフィアーもまた、燃料補給という戦闘機の特性を引き摺っている故か、飛行可能時間は限られている。
 歩くのと変わらない消費量で空中飛行を可能にしていたスカイウィッチという天才も居るが、例外事項である。
 クライオニクスもまた、未だ魔力量に余裕はあるが、消費されていることは変わらない。
 翼をはためかせ、下界に降りようとし。

「うん……?」

 妙だ、と思った。
 二峰の氷山落下により、土煙が巻き上がっている。そのせいで下界の様子はよく見えない。身体スペックは魔法少女の平均を逸脱しないクライオニクスは、土煙が晴れるまで下の状況は見えない。
 ……土煙の数が、異様に多い。地質の問題だろうか。

「…………おかしい」

 土煙が落下していない。永遠に巻き上がり続けている。
 違う、これは土煙ではない。もっと細かく、もっと乾いた……。

「……砂?」

「ジャスティススピン!」

 ——砂の煙幕の中から、一つの影が飛び出してくる。
 ドリルのように螺旋状に回転する、機械仕掛けの猟犬。
 正義の炎がクライオニクスの眼前に迫る。
 どうして? と思考する暇も、どうすれば? と思考する時間もクライオニクスには無かった。
 背中のロケットブースターで加速しているジャスティスファイアはミサイルに匹敵する速度であり、対するクライオニクスの反応速度は人類の十倍程度でしかなかった。
 クライオニクスがジャスティスファイアを視認できたときには、二人の距離は十mもなく、クライオニクスの脳はここからジャスティスファイアに最適行動を取れない。
 炎の弾丸となってジャスティスファイアは呆然とするクライオニクスに特攻し——氷の翼に直撃する。
 クライオニクスが反応できない。
 そんなことは彼女にとってまったく問題ではなかった。
 本体が反応できなくても、全自動で防御する氷の翼がある。
 迫撃砲も耐えきり、触れた相手を即座に凍結する絶対の矛であり盾。
 ジャスティスファイアの特攻は、絶対に阻まれ。

「ジャスティスブースター! フルスロットル!」

 翼に触れた瞬間、ジャスティスファイアは再加速した。
 背のロケットブースターが悲鳴のような音を立てる。
 それを掻き消すように、纏う炎の勢いが増す。

「ジャスティスッッッ! ジャスティスッッッ! ジャスティスッッッ!」

 狂気さえ感じる咆哮。炎は赤から青へ変化し、やがて透き通る。
 その温度、4000℃。
 原子爆弾に匹敵する火力が、一点に収束する。
 ジャスティスファイアの装甲が溶け始める。自らの炎に、ボディの耐久値をオーバーしている。
 ——そして、クライオニクスの翼は、それ以下の耐熱性だった。
 翼が溶ける。絶対防御が消失する。
 後は瞬き程の時間も要らなかった。ジャスティスファイアがクライオニクスを『通過』する。
 それだけで良かった。たったそれだけで、クライオニクスの右半身は焼失していた。
 火傷、焦げる、炭化などの現象すら発生しない。ただこの世から消失する。
 4000℃の一点収束は魔法少女の肉体の頑丈性などまるで問題にしない。

「…………ぁ」

 片翼の天使は、堕ちていく。
 何が起きたのか、何故自分が負けたのか、理解できないといいたげな、不思議そうな表情で。

【ナターリヤ・ミシェンコフ/クライオニクス 死亡】
【残り33人】

◇

 ナターリヤが八歳のとき、戦争が始まった。
 子どもだったナターリヤにとって、それは兆候も無く突然のことだった。
 ある日爆弾が落ちてきて、両親は死んだ。
 それは、ナターリヤの子供時代の終わりを意味していた。
 爆弾が落ちた時に両親だけでなく、感情までも持って行ってしまったのか、ナターリヤは氷のように笑わない少女になった。
 美貌は損なわれず、成績もトップクラスに優秀で、しかし周囲と孤立した少女。
 7年生の時に、勧誘を受けた。
 モデルなどの勧誘は日常茶飯事だったので、冷徹に断ろうとして。

「魔法少女に、興味はありませんか」

 ——ナターリヤが、魔法少女の実在を知ったのは十三歳の時だった。
 彼女には、才能があった。
 『触れたものを凍らせるよ』。殆どの相手に何もさせずに完勝する魔法。
 肉体の脆弱性(といっても魔法少女の平均程度はあったが)を補う氷の翼の発明。
 何より——彼女の一番の素養は、冷静沈着で冷酷無比なことだった。
 任務の達成率は100%。その過程で仲間が死のうが、一般人が死のうが頓着しない。
 必然、他の魔法少女からは嫌われ、事務所の運営スタッフも難色を示し、しかし一部のクライアントからは重宝された。
 クライオニクスは、ただ自らの市場価値を高め続けた。
 初等部を終える頃には、所属事務所で最強の存在となっていた。
 そして、中等部に上がるとき、とある北の大国から専属契約の申し出があった。
 クライオニクスは事務所に籍を残したまま、大国へ移住した。
 あらゆる汚れ仕事をこなした。たった三年で、彼女は大国最強の魔法少女と呼ばれるようになった。
 もっと歴戦のものは居た。もっと魔法の規模が大きい者も、もっと肉体スペックに優れた者はいた。それでも、クライオニクスが最強だったのは、他者を凍死させることに眉一つ動かさないその冷酷さにあった。

『お前、何処目指してんの?』

 それは、戦争屋と呼ばれた魔法少女との共同任務の時だったか。
 氷漬けにした魔法少女を砕きながら、クライオニクスは全身を返り血で汚した灰色の異形に振り向いた。

『一生懸命任務こなしてるけどよぉ、お前あの国に忠誠心とか欠片もねぇだろ。かといって守銭奴でもねぇし、げっげっげ、俺っちみたいに殺しが大好きってわけでもねぇしな』

 普段のクライオニクスなら、同僚の言葉など無視した。ならばその時言葉を、それも本音を返したのは、何故だったのか。
 闇の世界を生きていたクライオニクスの目から見ても戦争屋は異常者だったからか。
 あるいは、今しがた殺した魔法少女は同じく大国に雇われていた元同僚であり、かつては共に任務をこなした相手だったことの感傷か。

『ねぇグレンデル。あなた、こんな話を知っている?
 全ての魔法少女は——天使なんだって』

『…………げっげっげ、メルヘン趣味かよクライオニクス』

『さぁ、どうだったかしら。それに天使はあくまで比喩よ。
 重要なのは、魔法少女には『天』に至る『翼』を……『資格』を持ってるってこと』

『へぇ、天に至ると魔法少女はどうなるんだ? 神様にでもなるのか?』

『そうよ。天に至った魔法少女は、神に等しい権能を手にする』

 この世界を、思い通りに出来るの。
 と、クライオニクスは断言した。

『げっげっげ。とても信じられねぇな』

『そうね。人間界に居たんじゃ、夢物語。けれど、魔法の本場、魔法の国なら——』

『…………まさか、お前、それが目的なのか?』

 クライオニクスは自らの価値を高め続ける。
 絶対に任務を達成する魔法少女。大国で最強の魔法少女。

『今までのお前の軌跡は——魔法の国へのアピールだったってことか?』

『教えてあげるグレンデル』

 両親の教え。
 可愛ければ、いい子であれば。

『努力し続ければ——【天上(まほうしょうじょ)】になれるの』

◇

 ——凍る。
 落下するクライオニクスの遺体は、徐々に凍りついていく。
 体の表面が凍り、断面が凍る。
 ——氷が結晶のように咲き誇る。
 失った半身を埋めるように、氷が積み上がり、人型を形作っていく。
 クライオニクス……人体冷凍保存技術とは、治療が不可能な人体を、未来技術に希望を託し冷凍させることである。
 ある意味それは、死という結果を引き延ばす行為なのだろう。
 魔法少女クライオニクスは致命傷を負った。
 彼女の死は確定した。
 だがそれは、今ではない。
 残った生身の瞳に意志の炎が揺らめく。

「死ねない……」

 五体が復活する。

「まだ死ねない……」

 片翼の翼が、両翼へと回帰する。

「やっと掴んだチャンスなの……」

 翼がはためく。

「天上へ至るまでは……」

 クライオニクスは空中で静止した。
 右半身を氷に置き換え、死さえも凍らせ、絶対は再び空へと昇る。

「——パパとママを生き返らせるまでは、私は絶対に死なない!」

 【ナターリヤ・ミシェンコフ/クライオニクス 死亡≪凍結≫】
 【残り 34人】

 ◇

 時は僅かに遡る。
 落下する氷山を前に、ジャスティスファイアは呆然としていた。

(もう一度ジャスティスメテオを……けれど、これ以上は負荷が……)

 化学班曰く、一度使えば二時間のインターバルは必要。短時間で連続使用すれば死の危険性すらある、という。
 ジャスティスファイアは死を恐れない。二発目のジャスティスメテオで決着がつくなら望むところだ。

(けど、底が見えない)

 果たしてクライオニクスに残された体力はいくらか。
 至近距離なら顔色から探れたかもしれないが、空高く飛び上がった彼女の状態は図れない。
 二度のジャスティスメテオを撃って消耗したところをクライオニクスに追撃されれば敗北は免れない。

(どうすれば……)

「焦らないで、ジャスティスファイア」

 ベリーダンサーのような恰好の少女が、声をかけてきた。
 クライオニクスに冷却され身動きが取れていなかった子だ。

「もう、動けるのですか」

「貴女が温めてくれたおかげよ」

 ジャスティスメテオを発動したことにより、周囲の気温は一気に上昇した。
 必然、冨島千秋も自由を取り戻す。

「ジャスティスファイア、貴女はあの大氷塊を溶かす必要は無い。
 私は、あの攻撃を無効化して受け流せる。あの大氷塊は——落としていい」

 実演するように、千秋は右手を砂化させる。
 物理攻撃を無効化するタイプの魔法少女。
 本来なら本当に大丈夫なの念入りに確認するが、そんな時間は残されていない。

(溶かさなくていいなら、やりようはある)

 必要なのは通り道だ。
 自分一人だけが通れる小さい穴。
 それさえ開けられれば、クライオニクスに奇襲攻撃ができる。

「ジャスティスブースター! 起動」

 ガシャン、という機械音と共に、ジャスティスファイアの背から翼を模したロケットブースターが出現する。

「点火(ファイア)!」

 ジャスティスファイアの言葉に合わせ、ロケットブースターは点火した。
 空を飛べるのはクライオニクスだけではない。アメリカの開発した、汎用犬型魔法兵器・ジャスティスファイアは、氷山に風穴を開けるべく、空に飛び立った。

◇

「…………つくづく、魔法少女は非常識ですね」

 既に立ち位置は入れ替わっている。
 ジャスティスファイアが上を取り、下からクライオニクスが昇ってくる。
 失った右半身を氷に置き換え、致命傷を踏み倒し、女王が帰還する。

(こちらのダメージも大きい……科学班の試算によれば、問題なく運用できるのは3000℃まで。それ以上は危険域。事実、代償は大きかった……)

 ジャスティスファイアの装甲は溶け始めている。
 直ちに死に直結するわけではない。
 だが、無茶をできるのはここまでだ。これ以上は、身がもたない。

(……と、言いたいところだけど)

 翼をはためかせ、異形と化した女王が帰還する。
 半身の消失。どう考えても致命傷のはずなのに、クライオニクスは依然五体満足で空中に君臨している。
 魔法少女は、不死身なのか。

(そんなはずはない。不死身の生物など存在しない。クライオニクスだって、きっと右半身を構成する氷を溶かせば今度こそ死亡するはず……)

 ——逃げるべきか、とジャスティスファイアは逡巡した。
 クライオニクスから見ても、自身の生命維持機能を溶かす可能性が高いジャスティスファイアとは戦いたくないだろう。
 逃げれば、きっと追ってこない。
 ジャスティスファイアも、これ以上無茶をせずに済む。

(馬鹿馬鹿しい)

 と、ジャスティスファイアは自身の中に僅かにでもあった怯えを焼いた。

(クライオニクスは強い。恐らく、殆どの魔法少女は『戦う』ことすら出来ない。
 今ここで私が逃げれば、どれだけ犠牲者が出る?
 彼女を沈黙させられるのは、私だけだ)

「とことんやりましょう」

「——ええ、どちらかが死ぬまで」

 あるいは、両方が死ぬまで。
 その可能性も、ジャスティスファイアは許容する。

◇

 先手を取ったのは、クライオニクスだった。以前の攻撃をなぞるように、氷の羽根をジャスティスファイアに飛ばす。
 半身を失っているにも関わらず、その速さ、その精度は、以前となんら遜色ない。

「ジャスティス・シールド!」

 炎の膜がジャスティスファイアを覆い、羽根をガードする。
 膜に触れた羽根は一瞬で消失する。
 ここまでも、以前の焼き直し。
 同じ攻防を、一流の戦闘者である両少女が繰り返すはずもなく。

 「——アイスベルク」

 羽根は牽制に過ぎなかった。本日三度目の氷山召喚。
 異なるのは、魔法陣の展開がジャスティスファイアの上方ではなく、正面だった。
 そして、出現する物質も、氷山というにはあまりに小さく、せいぜい乗用車程度のサイズ。旅館一つを圧し潰す大氷塊と比べて、あまりに矮小。
 ——だからこそ、速度が段違いだった。

「Ого́нь!(撃て)」

 叫びと共に放たれた氷塊は、弾丸の速度を優に超えていた。
 ジャスティスファイアは背中のブースターを駆使し、ぎりぎりで氷塊を躱しきる。

「лед дождь(氷の雨)」

 それさえも、陽動だった。
 本命は、上。
 何時の間に展開されていたのか。ジャスティスファイアの位置から遥か上空に幾つもの無数の魔法陣が浮かび上がり、そこから無数の氷の矢が放たれる。

「っ……ジャスティス・シールド!」

 再び炎の膜を展開し全ての矢を防ぎきる。が、

「アイスベルク」

 またもや、氷塊の射出。

(さすがクライオニクス。もう気づいているか……)

 ジャスティス・シールドを展開している間は、空中で高速移動は出来ない。
 よりダメージの大きい氷塊の回避を優先し、ジャスティスファイアはシールドを引っ込める。
 矢が、外装に当たる。
 当たった箇所が凍結を開始するが、氷塊を回避した後炎で解凍すれば問題ない。
 リスク管理をしながら、ジャスティスファイアは問題なく氷塊を回避し——右前脚が瞬時に凍結された。

「何だと!?」

 感覚が無い。外装だけでなく、中身まで凍りついている。
 氷の雨の中に、強く魔力を込めた「絶対零度の矢」が混じっていた。
 氷の矢は問題ないと判断したジャスティスファイアの油断を責めるように、凍結は浸蝕を始め

「くっ……ジャスティス・」

「遅い」

 炎で右前足の解答をしようとしたその隙を、クライオニクスは見逃さない。
 放たれた氷塊が、ジャスティスファイアに直撃する。

「ガッ……」

 大氷塊でなくとも、人間ならミンチにする程の威力である。魔法少女といえども、ただでは済まない。
 そして、一度崩れた均衡はもう元には戻らない。
 氷で出来た十字剣が四方からジャスティスファイアに迫り

「これで終わりよ」

 ジャスティスファイアを貫いた。

◇

 勝った、とクライオニクスは勝利を確信した。
 それは、久方ぶりの感覚だった。クライオニクスにとって、戦闘は自身の勝利が確定している予定調和であり、半ば作業に近いものだ。
 ジャスティスファイアが、自身を炎化できないことは、ここまでの戦闘で把握済みだ。
 自身のように死からの復活がありえないように、確実に心臓と脳を貫く。
 四方から串刺しになったジャスティスファイアは、断末魔の悲鳴をあげることなく、瞬時に絶命した。
 空中で四肢を硬直させ——その場に留まる。
 そして、さらさらと崩れ出した。

「——まさか」

「ジャスティス・ファイア!」

 殺したのは砂で出来た偽物だと気づいたときには手遅れだった。
 上空から放たれた炎が、クライオニクスを呑み込む。
 ——絶対防御のはずの翼は、動くことは無かった。
 何のことは無い。
 どれだけ取り繕うが、クライオニクスは、死人である。
 生前と同じスペックを発揮できるはずがなかったのだ。
 炎に包まれながら、クライオニクスは落ちていく。
 構成した右半身が焼失していく。それに合わせてしがみついていた命が少しずつ零れていく。
 今までの人生が、記憶が、零れていく。
 勝利を積み重ね、成功を積み重ね、死体を積み重ね。
 冷酷な軌跡が、溶けていく。
 残るものは。

(パパ、ママ……私が死んだら、パパとママが生き返らない……)

 人は、忘れなければ本当の意味で死なない。そんな戯言を聞いたのはいつだったか。

(私が死んだら、パパもママも死んじゃう……)

 だから。
 残った魔力をかき集める。
 クライオニクス。いつか必ず両親を生き返らせると誓ったとき、ナターリヤは自らをそう名乗った。——それはもう、叶わない。
 粒子化が始まる。

(ああ……せめて……)

 せめて、これだけでも。
 その思考を最後に、クライオニクスの肉体は光となって消え去った。

【ナターリヤ・ミシェンコフ/クライオニクス 凍結解除——死亡】
【残り 33人】

◇

 クライオニクス。
 氷を操る魔法少女。
 彼女が何のために戦っていたのか、冨島千秋には分からない。
 知っているのは彼女の悪名高い伝説だけ。内面については、何も知らない。そして、もう二度と知ることもない。
 それでも、彼女は人間だった。
 冷酷に見えた仮面の下には、血肉が通っていた。
 それを、実感する。
 クライオニクスの落下地点。
 其処には、氷像が屹立していた。
 恰幅の良い男と、長身の女と、10歳にも届いていなさそうな、子どもの氷像。
 三体の氷像は寄り添うように立っている。
 ——家族だ、と千秋は察した。
 そして、これがクライオニクスの最期の魔法によるものだと。
 罠の類いではない、と思う、
 むしろこれは、遺作……遺言に近いものだろう。

「そう。これが、貴女の戦う理由だったのね、クライオニクス」

 ——本当に、えげつない。
 怪物のように、神のように、女王のように君臨しながらも、最後の最後に、少女であることを晒して去って行った。
 ジャスティスファイアと冨島千秋は、家族思いの女の子を殺したのだ、と事実を突きつけて死んでいった。

(……知ってるわ。魔法少女の中身が人間だってことも、殆どの魔法少女は、魔法を手にする前にはごく普通の少女だってことも)

 殺したのは怪物ではない。人だ。直接手を下していない、という言い訳をするつもりもない。

「クライオニクスは、ゲームに乗っていました。今ここで殺さなければ、犠牲者が出ていた」

「けど、殺したのは事実よ」

「はい。そして、クライオニクスが恐らくこのゲームに招かれる前から殺人者だったのもまた、事実です」

「私たちは正しいって言いたいの?」

 ジャスティスファイアは命の恩人だ。そして、共に戦った戦友だ。
 けれど、その価値観は、千秋とは異なると思った。
 きっと噂は事実なのだろう。クライオニクスは殺人者、世間一般の価値観で鑑みれば「悪」の魔法少女だったのだろう。
 だからといって、千秋たちが殺した事実は変わらない。
 何より、死に際に家族の氷像を残すような人間性を持っていたことが明らかになった後で、正義や悪を語ることは、千秋のポリシーに反していた。

「はい、私たちは正しいです。
 ——正しいと確信できないのなら、こんな力は振るうべきじゃない。
 魔法少女の力は、一個人が保有していい暴力の範疇を逸脱しているのですから」

「……それはきっと、正しい考えね」

「それに、仕留めたのは私です。私の手柄です」

「貴女ねぇ……」

 憎まれ役が下手過ぎる……と千秋は溜息をついた。
 おおかた、千秋の罪悪感を少しでも解消するための言動なのだろう。
 不器用な人だ。

「さて、この氷像ですが、クライオニクスが遺したもの……油断はできませんね」

「——まさか、溶かしちゃうの?」

 分かっている。絶対に罠ではないと言い切れないのだ。
 クライオニクスが最期に残したものが、家族への想いではなく、他者への悪意でないと、どうして言い切れようか。
 ジャスティスファイアの火力で溶かすのが正解だ。
 けれど、そうなることに、千秋の心は悲しみを覚えていた。

(……感傷が過ぎるわ。ここで残しておいても、ここは温泉地帯。一日も保てないでしょうに)

 罠でなくとも、すぐに原型を失う。
 けど、残念だと、そう思ってしまうのは、千秋が弱いからか。
 ジャスティスファイアは、変身を解いた。
 現れたのは、ボーイッシュな10歳程度の少女だった。
 何となく年上だと思っていたから、そのギャップに惑う。
 ボーイッシュな少女は、スマホを取り出し、氷像に向けた。
 シャッター音が響いた。

「クライオニクスの遺したもの……殺し合いの、重要な資料です——画像データとして、保存しておきましょう」

「……そうね」

 価値観が違う。きっと育ってきた環境も違うし、常識も異なる。
 けれど、冨島千秋は、ジャスティスファイアと、一緒に戦えると思った。
 彼女は、信頼に足る人だと。
 ——だから、手札を晒した。

「ジャスティスファイア。貴女に言っておかなきゃいけないことがあるわ」

「何でしょう」

「私は、無茶をし過ぎた。めちゃくちゃアウェーな場所で砂嵐だの砂人形だの作ったり、大氷塊を砂化で凌いだりと、はっきり言って今生きてるのが奇跡。そして、奇跡には代償がある」

 それは、心臓を渡すのに等しい行為だった。
 魔法少女の戦いとは、情報が大きなファクターを占める。
 冨島千秋は、百戦錬磨の魔法少女は、その土俵から降りる。

「私は、後六時間は、魔法が使えない」

 無茶の代償。
 ここから六時間、魔法少女冨島千秋は——死んでいる。

◇

 面白いな、とパンデモニカは思った。
 それは、あにまん市で行われている殺し合いの趨勢のことでもあり、あるいは『運営者』として集められた魔法少女間の不穏な空気でもある。
 外部で蠢く邪神共の動向のことでもあり、あにまんマンションの『王』が死亡したことによる殺し合いの種々の綻びのことでもある。
 そして、目の前で釜茹でになっているアロンダイトのことでもあった。
 「貴族妖精アロンダイト屈辱」「魔法少女に凍結KO!」「魔法城に動画を晒される」
 魔法国にばら撒く号外の見出しを考えながらパンデモニカは、氷漬けのまま湯に浮かぶアロンダイトを眺める。

「だいだい君さ、油断しすぎなんだよ。ステッキ無しとか無茶だって」

 アロンダイトの本領は、死亡した魔法少女の残滓からステッキを創り出す能力にある。
 ステッキを使用するには魔法少女に変身せなばならず、身体能力は生身より低下するが、それを補って余りあるほどアロンダイトの能力は当たりだ。
 というかフィジカルだけで勝てるほど、参加者の魔法少女のレベルは低くない。
 強者を自認するパンデモニカにしても、悪魔召喚無しで魔法少女とステゴロをするのは、少々分が悪いことを自覚している。

「そんなんだから君たち滅んだんだろ」

 かつて、魔法の国は妖精郷と呼ばれていた。
 妖精の国。人間界のように、そこには王が在り、貴族が在り、平民が在った。
 人間界のように幾つかの王国に分かれ、統合と離散を繰り返し、平和と戦乱を繰り返しながら繁栄した。
 ある日、【冒涜の竜】と呼ばれる、一匹の黒竜が姿を表すまでは。
 竜の邪悪な魔法で妖精たちは団結できず、王国同士で、地方同士で、血族同士で、そして家族同士で殺し合った。
 それは、正しく『バトル・ロワイアル』だった。
 王家は滅び、貴族は戦死し、平民たちは虐殺された。
 誰一人、竜の前に立つことすら出来ず、徒に死者だけが増えていく。
 妖精卿が滅びるのは時間の問題であった。

「結局、妖精卿を救ったのは君たち貴族妖精じゃなく——人間の女の子だった」

 戦闘能力を持たない平民妖精の一匹が、人間界へと渡り、一人の少女に助けを求めた。
 原初の魔法少女。魔法王の祖先。妖精郷が「魔法の国」へと生まれ変わった特異点。
 少女と、その友人たちは一年間で魔法の国の様々な混乱を解決し、遂には冒涜の竜を虚空に封印した。

「それ以来、魔法の国の戦闘職は魔法少女に任されるようになり、君たち貴族妖精は実権を失った……そうだろアロンダイト」

「——相変わらず、昔話が好きザマスね、パンデモニカ」

 釜から上がったのは、絵本で描かれるような幼い風貌の少女、妖精貴族アロンダイト。
 忌々しそうにぐーぱーと手を動かしながら、アロンダイトはその場を——パンデモニカに与えられた自室を出て行こうとする。

「どこに行くんだ?」

「決まってるザマス。あの氷女、ぶっ殺してやる」

「もう遅いよ。彼女は今さっき、死亡が確認された」

「はぁ? 誰が死んでいいって言った?」

「落ち着けってアロンダイト。熱くなりやすいのが君の悪い癖だぜ」

 むぅ、とアロンダイトは唸り、どっかりとその場に腰を下ろす。
 分かりやすい、とパンデモニカは内心で評した。
 アロンダイトは、決して狭量ではない。
 同格と認めた相手の言葉にはしっかりと耳を傾けるし、理があると考えれば自身のスタンスを曲げることも厭わない。
 ただ、人間を格下と断じているだけだ。

「もうすぐ第一回放送だ。追加されるルールによっては君の商売道具を使うときも来るかもしれない」

「…………マジで苛々するザマス。温泉入ってただけで砂だらけにされて氷漬けにされて……やっぱ人間はクソ、忌憚のない意見ザマス」

「そだねー」

 自分の行為を棚に上げて愚痴り出したアロンダイトの相手をしながら、パンデモニカは確かな予感を感じていた。
 第一回放送の後、自分たちには、もっと面白いことが起こると。

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