M.A.I.D.ORIGIN's 七話

(投稿者:ししゃも)







 洞窟の中に響く銃声。その一発は、モレイスの左肩に命中した。だがモレイスは痛みに堪え、その場から一歩も動かない。一方、クリスチーノに向かった銃弾は彼の右頬を切り裂いただけだった。横一文字に頬が切れ、その隙間から少量の血が滴り落ちる。
「つくづく甘い人ですね、貴方は」
 情けをかけたモレイスに、クリスチーノは嘲笑った。ここで自分を殺さなければ、大変なことになると知っているのに、モレイスは殺さなかった。そんな彼の情けが、滑稽に見えたからだ。クリスチーノは苦痛に顔を歪めるモレイスの額に照準を合わせた。
「さようなら、中佐。ヴァルハラで会いましょう」
 別れの言葉を言ったクリスチーノはトリガーを引いた。乾いた銃声が洞窟の中に響き、やがてモレイスはうつ伏せのまま倒れてしまう。彼が持っていたランプが地面に落下し、割れてしまう。それは、少量の油や炎を冷たい地面に撒き散らした。
 クリスチーノは低い笑い声を上げると、薄暗闇の洞窟に反響してしまう。彼はやがて気を取り戻し、モレイスの背後に置かれた鉄の扉に近づいた。
 クリスチーノは、軍服のポケットに入れていた『鍵』が反応していることに気がつく。それは扉に近づくごとに強い光を発し、薄暗闇の中をランプよりも強烈に照らしていた。彼は、そんなポケットの中に目もくれず、アドルフによって封印された扉の前に立ち止まった。扉には、赤い字で書かれたルーン文字が刻まれている。
 そしてクリスチーノは、ポケットから強烈な光を放っている鍵を取り出した。それは、人あるいは動物の眼球だった。綺麗に肉が削ぎ落とされたそれは、赤黒い光を放っている。
 クリスチーノはそれを右手の掌に置くと、扉に向かって差し出すように突き出した。
「耳を塞ぎ、目を瞑り、口を閉ざし、祷りを請え」
 ルーン文字で刻まれた言葉を、彼は一字一句間違えることなく音読する。クリスチーノの言葉に反応するかのように、扉が蒼白く発光した。彼の掌で置かれている『鍵』がそれに同調するかのように、赤黒く光る。
 その瞬間、クリスチーノの身体は閃光に包まれた。



第七話 『乱戦』



「キリが無いですわ!」
 ライサたちの護衛を頼まれたMAID……ジョーヌは、教員校舎一階の通路で悪態を突く。彼女の背後には教員用の寝室が立ち並んでいる。その一室では、ライサとホラーツが待機していた。鉄火場の中で、二人の身を危険に晒すわけにはいかないジョーヌの判断だ。
 そんなジョーヌの視線の先には、ガスマスクを装着し、黒装束の戦闘服を着た『アサシン』たちが道を塞いでいる。彼らは、自分の両手に装着されら『爪』を、光らせていた。彼らはジョーヌたちがあと少しで出口に行ける所を急に現れ、道を防いでいる。
 ジョーヌはホラーツとライサを引っ張り出して、飛行し安全地帯に移動したい。だがライサたちを運ぶ為の道具や、飛行中に狙撃される恐れがある。世の中、空戦MAIDだけで上手くいくとは限らない、模範的な状況。ジョーヌはグリップを握ったMG42を前へ突き出し、右手にはバトルナイフが握られている。近接戦闘が苦手なジョーヌにとって、暗殺作戦に導入される彼らと同じ土俵に立つことは難しい。こちらが質で勝負するなら、相手は量で攻めてくる。
 そのとき、先陣を切っていたアサシンの一人が中腰の体勢でジョーヌに向かって走り出す。その動きは早いものだったが、身体能力を強化されたジョーヌにとって、辛うじて捉えきれるものだった
「甘いですわ!」
 ジョーヌは見栄を張った言葉を言うと、MG42の銃身を振り回し接近したアサシンの顔面に叩きつけた。猛烈な勢いで叩きつけられた本人は、何とも形容しがたい奇声を発し、その場で倒れる。間髪居れずにジョーヌは、仰向けに倒れたアサシンの腹部にMG42の弾丸を叩き込んだ。乾いた銃声が通路に響いた。その光景に、アサシンの集団が一歩前へ後ずさりをする。
 ジョーヌは相手が臆したことを悟り、奇襲をかけるべくMG42のトリガーを引いた。その瞬間、ジョーヌの動きを察知したのか黒ずくめの集団たちは一斉に散る。しかし、MG42から放たれる弾丸は三人を葬った。だが、残る二人が運良く銃弾を回避。その一人が、ジョーヌに肉薄していた。
「くっ!」
 肉薄した男からの爪が、ジョーヌの頬を横切る。横髪が数本、切り裂かれただけだが、危機的状況に変わりは無い。ジョーヌが防いだ爪とは別に、片方の爪が腹部に突き刺さろうとした。ジョーヌは思いっきり歯を噛み締めると、逆手で持ったバトルナイフをアサシンの首に突き刺した。目にも止まらぬ速度で繰り出されたそれを回避することはできなく、アサシンは息絶える。
「もらったァ!」
 ガスマスク越しの、くぐもった叫び声がジョーヌの耳に入った。首にナイフが刺されて死んだアサシンの背後から、跳躍する黒い影。最後に残ったアサシンの追撃が、彼女に襲い掛かった。MG42もトリガーを引き、相手に照準を合わせる時間も無く、バトルナイフは死体の首に突き刺さったままだった。アサシンは、両手の爪をジョーヌの顔に向かって叩きつけようとした。
「ジョーヌ!伏せろ!!」
 中年男性の威勢の良い叫び声がした瞬間、ジョーヌは咄嗟に伏せた。廊下に伏せた瞬間、ジョーヌの頭上をMG42の弾幕が襲い掛かった。射線に入ったアサシンの身体に、MG42の弾幕が突き刺さる。銃弾を食らったアサシンは、そのまま仰向けの状態で廊下へ倒れた。
 何が何だが分からないジョーヌは、立ち上がると、背後を振り返る。そこには、MG42を脇に挟み、グリップを握ったホラーツ・ヴォルゲン中将の姿が居た。いかにも軍人らしい顔に、中年太りのおかげで少し膨れた軍服を着たホラーツは「大丈夫か?」とジョーヌに話しかける。
 隣には、相変わらず下着姿のライサがショットガンを手に持っていた。
「……ええ。助かりましたわ、中将」
「そりゃよかった。ライサ、お前は早く服を着替えろ。脱出するぞ」
 ホラーツはそう言うと、下着姿のライサはこくりと頷いた。
「迂闊に外へ出られないぞ、ホラーツ。私の部下がこちらに向かっているので、合流しよう」
 ホラーツとジョーヌは頷くと、ライサの着替えを待って、直ぐに教員校舎のロビーへ向かった。ロビーには人一人すら居なく、真っ暗な闇が支配していた。ベンチと、受付係が応対するカウンターが置かれているだけだった。
 黒旗と武装SSの接点を他に知られたくないライサの計らいによって、夜勤や護衛の教員たちは自宅での休養を命令している。その情報をわざとリークさせて黒旗をおびき寄せ、一網打尽にするのがライサの作戦だった。しかし、MAIDやMALEが来るとは思いもしなかったが、予想の範疇。戦況は、こちらに傾いていた。
「こちら、ルイス。三名の護衛を連れて、教員校舎前に到着」
 ライサの腰に引っ掛けていた小型無線機から女性の声が聞こえると、ライサは「入れ」と合図する。ロビーの玄関が開くと、活発的なセミロングヘヤの女性を筆頭に、二人の女性と一人の男性が入ってきた。彼女らは野戦服に身を包んでいる。一人は無線機を背負い、もう一人は二丁のハンドガンを腰のホルスターに納め、最後の男性はジェリコ941を右手で持っていた。
「遅れてしまって、申し訳ない」
 先ほどの無線の声の主と思わしき女性……ルイスは小走りでライサたちが待機しているロビーに走り、合流する。突如現れた数人の女性にジョーヌはMAIDかと思ったが、装備や雰囲気からして、軍人だと悟った。
「現在の状況を教えてくれ、『ヴィーシニャ』」
 ホラーツはMG42を近くの壁へ立てかけると、現れた『部隊』に状況を確認させる。ヴィーシニャ。それはヴォ連の言語だと分かったジョーヌは、少しだけ頭がこんがらがった。なぜヴォ連の部隊らしき彼女らが、此処に居るのか、とジョーヌは考える。
「では、私から」
 無線機を背負った女は一歩前へ出ると、ホラーツとライサに敬礼をした。
「現在、スケルトンのゴーストバスターズが帝都入場門周辺を警戒警備中。帝都への侵入はまず無いと言って過言ではありません。恐らく、此処を狙った作戦です」
「予定調和だな。ルイス、マイアは?」
 ライサはこの場に居ないマイアの名前を言うと、ルイスは彼女に敬礼をし、口を開いた。
「マイアはスケルトンと共にマイスターシャーレに展開する敵部隊を狙撃する作戦の為、不在です」
「……そうか。それならいい」
「で、ライサよ。今からどうするんだ?」
 ロビーに置かれたベンチに座るホラーツは、ライサにそう尋ねた。
「ここが本命である限り、迂闊な手出しをして帝都に逃げ込まれるよりか、ここで迎撃した方がいい」
「妥当案だな。レーニシルヴィは戦っているし、ジョーヌ。お前は彼女らの援護に向かってくれ」
「いいや、待ってくれ」
 ホラーツはそう言うと、ジョーヌはMG42をもってロビーから去ろうとする。だが、ライサはそれを静止した。
「その必要は無い。スケルトンとマイアが援護してくれるだろう。いざってときに頼りになるのがMAIDだ。そうだろ?」
 ライサがそう言うと、ホラーツはやれやれといった表情で、壁に立てていたMG42を再び持った。そのとき、ルイスたちが入ってきた玄関から大きな物音が聞こえた。
「お客さんだな。カウンターへ隠れて!」
 ルイスはそう言うと、STG45のロックを外した。



「……」
 マイスターシャーレ旧校舎の屋上で、二人の男女が居た。彼女、彼らは無言のまま己の得物を構え、その時をじっと待っていた。少し離れた場所から、大なり小なりの音が木霊する。しかしそれは二人にとって、ただの雑音に過ぎなかった。シルヴィは両手に拳銃を。対する時雨は、鞘に納められたムラマサに手をかけようとしている。
 屋上の広さは、暴れまわるには些か狭いぐらいだったが、刀あるいは拳銃の有効的な範囲であることに変わりは無い。特に、飛び道具を持ったシルヴィは多少のアドバンテージがある。
 シルヴィは自分が有利な立場に居ることに、自覚は無かった。なぜなら、時雨が放つオーラに圧倒されている。蛇に睨まれた蛙のような錯覚に陥るシルヴィ。時雨は無の気迫を身体中から出しながら、両目を閉じている。
(くそっ!)
 シルヴィはそのオーラに負けてしまい、両手に握られたシグマのトリガーを引く。シグマから発射された複数の銃弾に対し、時雨は流れる水のような、滑らかな動作で鞘からムラマサを抜く。
「覇!」
 掛け声と同時に、時雨はムラマサを振りかぶった。その一連の流れは、一秒間に何回もの斬撃を繰り出し、シルヴィが放った銃弾を全て切り払った。乾いた音と同時に、時雨の周辺に真っ二つにされた銃弾が転がる。彼は刀を両手で握り、切っ先をシルヴィの喉へ突き刺すようにずっしりと構えた。
「……MALEか」
 教員校舎の屋上から、旧校舎の屋上までの跳躍。さらに銃弾を叩き切るほどの動体視力、刀の扱い……シルヴィはこの男がMALEということしか思いつかない。
「左様。それがし、時雨は間違いなくMALEだ」
 時雨はそう言うと、シルヴィは身を屈めて中腰の体勢に入った。両手を前に向けて交差したシルヴィは、シグマの銃口を時雨に向ける。
「だったら、遠慮なんていらないね!」
 得物に食らいつく獣の様に、シルヴィは時雨に突進。対する時雨は摺り足を使って、大きく後ろへ後退。そして、刀を反るように頭上の上まで押し上げ、一気に振り下ろす。時雨の間合いには、すでにシルヴィが肉薄していた。
「面ァ!!!」
 痩せこげた顔とは想像がつかない大声を張り上げ、時雨はシルヴィに引き面打ちを繰り出す。身体を後ろに下げて、振り下ろされた刀はシルヴィの頭に到達し、叩き切った。
「何っ!?」
 しかし、彼が引き裂いたのはシルヴィの『影』だった。蜃気楼のようにシルヴィの影が消え失せる。彼女を切ったという手応えが無いことに時雨が気が付き、殺気を感じたのか頭上を見上げる。
 夜空に輝く星たちに見守られながら、シルヴィが空中に居た。身体を回転させながら、シグマのトリガーを引く瞬間だった。
「こざかしい真似を!」
 銃弾を切るおろか弾くことすら諦めた時雨は悪態を突きながら、摺り足で後ろへ下がる。刹那、空中のシルヴィからシグマの銃弾が降り注いだ。 時雨が着ている剣道着や、彼の頬を銃弾が掠める。シルヴィは舌打ちをすると、腰を低くした体勢で着地。数メートル離れた先で、こちらを睨みつける時雨を見た。彼は頬に銃弾が掠めたのか、縦に切った傷口から血が流れる。二丁のシグマから放たれた十数発の銃弾は、時雨の頬を裂いたぐらいの働きしかしなかった。
「へぇ、やるじゃん」
 一筋縄ではいかないと悟ったシルヴィだが、あくまでこちらが有利であることをアピールする。そんな彼女に対し、時雨は鼻で笑った。
「できれば剣や刀で闘いたかったが、それは無理のようだな。アサガワといい、お前といい、良き相手に恵まれる」
「あんたがアサガワ教官に、ひどいことしたんだってね。本当っ、最低な野郎だ!」
 シルヴィにとってアサガワは、大切な上司であり尊敬する人物であった。そんな彼女を、手荒な真似で痛めつけた時雨を許せるはずもない。先手を切ろうとするシルヴィは、二丁のシグマを両脇のホルスターへ収納。腰に帯びていたホルスターから、リボルバータイプのレイジングエイクを取り出す。
「あやつは武士としての自覚がない。それを知る為にやっただけだ」
「黙れ!!」
 シルヴィは、右手で握ったレイジングエイクのトリガーを引く。シリンダーが回転し、銃声と同時に『属性弾』が発射された。
「甘いぞ、小童」
 時雨は頭を横に逸らし、銃弾を回避。あまりにも見え透いた攻撃に、時雨は笑ってしまう。
「甘いのは、そっちだ」
 シルヴィはこちらに向かって走り出しながら、時雨に忠告じみた言葉を投げかける。そのとき、時雨の第六感が何かを感じ取った。急いで後ろへ振り返ると、光を纏った何かが時雨の元へ向かっていた。それは、先ほどシルヴィが放った銃弾だということに時雨は気づく。
「銃弾を操れるのか!」
 額を抉ろうとする銃弾を、時雨はムラマサの刀身で切り裂こうとする。だが弾丸はそれを回避し、空中へ向かった。
 シルヴィのレイジングエイクの属性弾は、レーニが持つそれとは毛色が違っていた。シルヴィが持つ操作スキルによって、属性弾を操り、精密動作などを可能とする。それは、至近距離での間合いに特化した時雨にとって、厄介なものだった。本体に近づこうとも、操られた銃弾がそれを妨害する。さらに銃弾に機を取られていては、本体からの攻撃を防ぐことが難しくなる。一気に時雨は、不利な状況に陥った。
「こざかしい、こざかしいぞ!」
 罵倒する時雨に対し、シルヴィはその場で立ち止まったまま、シリンダーに残っているレイジングエイクの残弾を発射。さらにそれをコントロールする。六発の弾丸が、時雨の周囲を取り囲むように回っていた。
 時雨は右手でムラマサを握ったまま、右腰に帯びていた脇差しを左手で鞘から抜く。右手を突き出し、空いた腹部を防御するかのように左手を下げる。二刀流の構えをする時雨は瞳を閉じ、感覚だけで銃弾を防ごうとしていた。
 その瞬間、周囲を漂っていた銃弾が時雨に襲い掛かった。
「左頚動脈、右頚動脈!!」
 ムラマサを使い、左右の頚動脈を抉ろうとしていた銃弾を叩き切った。
「心臓!」
 真正面から来る銃弾を、脇差しで真っ二つに切り裂く。
「急所!」
 時雨の股間を貫こうとした銃弾は、ムラマサによって縦に裂かれた。
 残る二発の弾丸は、まだ彼の周囲を漂っていた。時雨は短い深呼吸を行い、精神を研ぎ澄ます。計四発の弾丸を凌いだ時雨は、ずっと両目を閉じたままだった。空を切り裂く音が鳴ると、時雨の後頭部と額に目掛けて、最後の銃弾が迫った。
「頭部!」
 時雨がそう叫んだ瞬間、ムラマサの刀身が額に向かう銃弾を切り裂く。さらに流れる水のような動作で踵を返した。後頭部へ向かう銃弾を脇差しで切ろうと振りかぶる。だが最後の銃弾は、蛇のような動作で脇差しの刀身から逃れた。
「六発は苦しいけど、一発だけならあんたの太刀筋は避けれる!」
 シルヴィはそう言うと、時雨の左肩にマグナム弾が直撃した。肉を抉った銃弾は、そのまま左肩を貫通。彼の肩に空洞を開けた弾丸は、そのまま真っ直ぐ飛。そして、追い討ちをかけるかのようにターンをし、時雨へ向かう。
「銃は剣よりも強し、だ」
 シルヴィは手負いの時雨に止めを刺そうとする。だが時雨は冷静だった。脇差しを一旦、鞘へ納めると同時に踏み込んだ。その踏み込みは一気に両者の距離を詰める。
 ムラマサの間合いに入り込まれたシルヴィに、時雨は両腕を振り上げ、ムラマサごと振り下ろした。その一方で、シルヴィは自分の能力で操作している銃弾を時雨に直撃させようとする。
「くっ!!」
 ムラマサの刀身は、シルヴィの頭をかち割ろうとしていた。だが彼女は、抜群の反射神経で回避。ムラマサの刀身が、肌を掠めた。
 ありとあらゆる箇所が隙になっている時雨に、シルヴィは銃弾を彼の後頭部に直撃させる命令を送った。そのとき、不意に時雨と視線が合う。彼は大きく見開いた目で、こちらを睨んでいた。ムラマサが回避されたことに、大して驚きを見せない。
「剣は銃より強し、だ」
 時雨は呟くと、ムラマサを握っていた左手を離し、右腰に帯びていた脇差しを鞘から抜いた。それはシルヴィの銃弾が向かうよりも早く抜き取り、居合いの要領でシルヴィの腹部を斬った。シルヴィの腹部に、浅い刀傷が出来るが致命傷にならなかった。
 だが彼女は痛みに感覚を気取られ、銃弾のコントロールが疎かになる。現に、時雨の後頭部に向かうはずだった銃弾は彼の右肩を撃ち抜いただけだ。
「肉を切らせ骨を断つ。小童、こざかしい真似は終わりだ!」
 両肩に走る激痛を堪える時雨は、後ろへもたついたシルヴィに対し、ムラマサを持った右手の力を込めた。気迫で迫る時雨に、シルヴィは彼の右肩を打ちぬいた銃弾のコントロールを忘れている。
 そして死を悟ったシルヴィに対して、時雨は今まさにムラマサを振り下ろそうとしていた。だがそんな時雨の胸部を、一発の弾丸が貫いた。貫通したそれは、シルヴィの頬を掠り、コンクリートで出来た屋上の地面を兆弾。遅れてくるかのように、乾いた銃声が響いた。
 時雨は、何が起こったかわからずに、その場で立ち尽くしていた。シルヴィは、呆然と立ち尽くす時雨の返り血を顔に浴びていた。



「チェスト・ヒット。対象、一時停止」
 胡坐の姿勢のチャップマンはそう言うと、両手で持った双眼鏡で捉えているMALEの胸部にM1狙撃銃の7.62mm弾が命中したことを報告する。ランドセル型の無線機を背負い、迷彩柄のブッシュハットを被った彼の両脇に、二人の男女が居た。そのうちの男性は、頭蓋骨を模様したバラクラバを被っている、スケルトンだった。
 彼は仰向けに寝転がり、二脚で固定されたアルトメリア製M1狙撃銃のスコープに映る時雨を捉えていた。距離は八〇〇メートル。まずまずだった。本当なら頭部への狙撃を試みたのだが、激しく動く時雨を正確に射抜くことは難しかった。無論、胸部への狙撃は貫通した弾丸がシルヴィに命する危険性があったのは、致し方ない。
 スケルトンが狙撃した場所は、マイスターシャーレの監視塔の屋上。屋上には遮蔽物が無く、旧校舎及び教員宿舎周囲を完全に把握できる絶好の狙撃ポイントだった。難点といえば、地上へ戻るのに十数分はかかる事だけ。
「……ぅって……いぃ?」
 首にまでかかる銀髪のセミロングヘヤをした、ヴォ連出身らしき女性が、弱々しい口調でスケルトンに問いかける。女性……ライサの私設部隊『ヴィーシニャ』の一員であるマイアは対戦車ライフルのスコープを覗き込みながら、指にトリガーを引きかけようとしていた。彼女はヴォ連らしい色白の肌をしているが、その陰鬱とした表情がさらに拍車をかけている。一種の、病的じみた目と表情は見るものを怖がらせた。
 無論、チャップマンはともかくスケルトンも『スタイルは抜群だが、あまり近寄りたくない』と口を揃えて言うほどだった。
「ヘッド・ショット、エイム。隊長、いつでもどうぞ」
 チャップマンは双眼鏡で時雨の動向を確認し、ワンショット・ワンキルの手本となる『頭部への狙撃』をマイアに指示した。
「……撃て」
 シルヴィがこちらの狙撃に気づき、時雨から離れたことを確認したスケルトンは狙撃の許可を下した。彼はM1狙撃銃の空薬莢を排莢する為、ボルトをコッキングする。その間に、マイアはザハーラ製の対物ライフル『ダネルNTW』のトリガーを引いた。機関砲と見間違うぐらいの外見をしたダネルNTWは、M1狙撃銃の銃声とは比べ物にならない轟音を張り上げる。同時に、対空機関砲に用いられる20mm弾が発射された。
「バ……バッバラバラにぃ……なっ…なっちゃうかなぁ……へへへへ」
 マイアは嬉しそうに呟くと、スコープの中央に捉えているMALE……時雨が急に動き出した。彼に向かっていた20㎜弾は、辛うじて時雨に命中せず、コンクリートの地面を粉砕した。
「対象、動きました!馬鹿な、胸部に命中しているのに!?」
「チャップマン、マイア!お前たちはすぐに地上へ行け!シルヴィと合流しろ!」
 スケルトンは二人にそう言うと、ぎこちない動きで屋上を走っている時雨をスコープで捉え続ける。
「バラバラできなかったぁ……いやだ、もう死にたぃ……」
「さぁ早く行きましょう!」
 狙撃に失敗し、落胆というよりか自己嫌悪に陥ったマイアをチャップマンは無理やり立ち上がらせ、下へ降りるように促す。彼女は渋々、スリングベルトで引っ掛けたダネルNTWを背負って、チャップマンの後を追った。
 スケルトンはスコープ越しの時雨を補足しながら、ワンショット・ワンキルで仕留めるまでトリガーを引かなかった。胸部から血を流し、旧校舎から飛び降りた時雨。だが彼はこのままスケルトンの狙撃範囲から逃げるおろか、こちらに向かっていた。距離は約七〇〇メートル。徐々に距離が詰められる。
 時雨が居る所は、帝都へ向かう為の大通りとなっており、遮蔽物は少ない。位置を気取られているとはいえ、スケルトンが絶対的な有利な立場に置かれている。
「面白い。フロレンツの雪辱だ」
 スケルトンは歯軋りをしながら、こちらへ向かって行く時雨をスコープで捉え続ける。そして、トリガーを引いた。リコイルショックと同時に、銃弾が発射。スコープが揺れてしまうが反動を押さえ、時雨を補足する。だが彼は、銃弾を回避したのか走り続けていた。すぐさまスケルトンはコッキング動作を行い、次に備える。距離は六〇〇メートル。
 頭部への狙撃を諦めたスケルトンは、次に胸部への狙撃を試みる。深手を負っているとはいえ、全力でこちらへ向かう時雨の姿にスケルトンは不気味に思えた。普通の人間であれば、胸部に命中した時点で瀕死の重傷か、死亡している。やはり、MAIDないしMALEとして、身体能力が強化されている証拠だった。だがスケルトンは、そんな彼に嫌悪感を持たなかった。互いの主張主義のために、自分たちは闘っている。ただそれだけだ。
 そのとき、傷に耐え切れなくなったのか時雨が膝を突いてその場で倒れこむ。彼は血反吐を吐きながら、こちらを見ていた。スコープ越しの、時雨の形相を見たスケルトンは、無情……あるいは、敬意を払うかのようにトリガーを引いた。狙いは、時雨の胸部。
「安らかに、眠ってくれ」
 スケルトンはそう言うと、トリガーを引いた。スコープの中央に捉えた時雨に向かって、弾丸が発射される。だがそれよりも早く、黒い衣服を見に包んだ女性が急に現れ、時雨を抱えた。彼女は、弾丸から時雨を助けるように跳躍。M1狙撃銃から発射された弾丸が、誰も居ない地面に着弾した。
「……エーアリヒかっ!」
 スケルトンはその女性が、フロレンツ事件で闘ったMAID、エーアリヒだということに気づいた。ヘッドドレスを身に着け、青髪の眼鏡をかけたエーアリヒは時雨を抱えたまま、全力疾走でM1狙撃銃の射程圏内へ遠ざかる。スケルトンは狙撃を止め、スコープで彼女を捉えたまま、何処へ向かうのか探る。南西へと向かう彼女に対し、スケルトンは帝都へ逃げ込まないと悟った。
「チャップマン、こちらスケルトン。対象、『サムライ』は救援者によってロスト」
 スケルトンは腰に装着した小型の短距離無線機を使って、チャップマンに連絡する。彼からの返信が来る間に、仰向けの状態から胡坐の姿勢へ直した。横に置いてあった、双眼鏡とSTG45、それのマガジンを手元へ寄せる。
「隊長、こちらチャップマン。了解しました。こちらはシルヴィと合流。指示をお願いします」
 手元に寄せた双眼鏡を使って、スケルトンは先程まで時雨が倒れかけた場所をチェックする。彼の血が地面に付着したそこに、奇妙なものがあった。
「お前はマイアとシルヴィを引き連れて、ホラーツ中将及びライサ少将の下へ。俺は後から合流する、以上」
「了解です。通信、オーヴァ」
 無線が切れたことを確認する一方で、時雨が居た場所に落ちていた奇妙なものは、鞘に納められた脇差しだった。恐らく、時雨の忘れ物だろうか。スケルトンはスコープ越しで確認すると、立ち上がった。遠くの方から銃声が轟き、風に乗ってスケルトンの耳へ届く。
 ふと顔を見上げると、夜空に輝く月がマイスターシャーレを照らしている。夜が明ける頃には、全てが終わっていることをスケルトンは切に願った。



「玩具ですよ、所詮は」
 レイジング・エイクから放たれた高威力属性弾は、全て千早が纏う『風』によって相殺された。頑丈な屋上の屋根の大部分が吹き飛び、その破片がレーニの着ていたスーツを裂いた。銃撃による攻撃が無意味だとレーニは悟ると、レイジングエイクを腰のホルスターに仕舞う。そして、右太腿に固定されたバトルナイフを鞘から抜いた。レーニは、左手に投げナイフを数本。右手に、バトルナイフを握っていた。
 バトルナイフは、分厚い刃を持っているものの、千早が持つ『刀』に比べると頼りない。あちらの間合いは、バトルナイフの間合いと比べると雲泥の差。バトルナイフ片手に接近するリスクと、離れた場所から銃弾を撃つリスクも、雲泥の差だ。
 埒が明かないまま、突っ立っている場合ではなかった。近接戦闘の能力は物足りないが、それでも千早を倒すには接近するしかない。無論、千早も接近戦しいては刀を使った剣術のエキスパートであることは、十分に分かる。
「どうしたのですか?行かないのならば、こちらから行くまでですよ」
 千早はそう言うと、風を纏いながらこちらに向けて走り出す。千早が刀をゆっくりと振り回しながら走り出すと、彼女が纏う風によって脆くなった屋根の一部が吹き飛ぶ。さながらそれは、台風のようだった。
 レーニは舌打ち交じりに跳躍した瞬間、千早の刀が振り下ろされた。刀は、先程までレーニが居た空間を切り裂く。しかし、刀身は屋根にまで達せず、寸前で止められた。一方、空中に浮かんだレーニは左指に挟んだ投げナイフを全部、投擲しようとした。千早との距離は近く、迎え撃つには絶好の間合いだった。さらに、彼女を纏う風が止んでいる。
「そこだ!」
 レーニは絶好のチャンスを物にしようと、ナイフを投擲。しかし千早がゆっくりと刀を振り回すと、纏っていた風が生き物のようにレーニへ襲い掛かる。
「何っ!」
 風によって、もっと遠くに空中へ放り出されたレーニは叫んだ。投擲しようとした投げナイフは、手元から離れる。その間に、千早はこちらに向かって跳躍した。彼女は風を纏っておらず、刀の切っ先を突き立てるようにこちらへ向かっていた。
「……なるほど、そういうことでしたか」
 千早が持つギミックを、レーニは理解できた。風は、千早が刀を振り回さないと発生しない。すなわち、千早が攻撃を仕掛けるときは、風を纏うことが出来ない。殺傷性を持たなく、相手の接近を許せない風は千早本来の能力では、デメリットに過ぎなかった。
「ようやく分かったのですね」
 こちらの風を悟ったレーニに対し、千早はあくまで風はこちらの切り札ではない、といわんばかりだった。肉薄する千早に対し、レーニはバトルナイフを構える。
「ですが、風なんぞ所詮は玩具。この刀と剣術のみが、切り札!」
 千早がそう言った瞬間、千早は刀を横殴りに振った。風を切り裂くそれは、レーニの首を切り裂こうとする。だがレーニは、自身が持つコア・エネルギーの強化能力をバトルナイフに集中。横から襲い掛かる刀を、バトルナイフの脆い刀身で受け止めた。
 刀とバトルナイフがぶつかり合った瞬間、金切り声のような音が響く。それは、刀の力とレーニが持つコア・エネルギーがぶつかり合う音だった。
「あらあら、素晴らしいコア・エネルギーの能力ですわね。増幅させたそれで、刀を受け止めるとは」
 千早が言うことは正解だった。このバトルナイフに埋め込まれた、コア・エネルギーの増幅機と自身のエネルギーによって、千早の刀を受け止められた。しかし、全てのエネルギーをバトルナイフに注入しただけであって、今のレーニ本体の力は人間と同じ身体能力しか持たない。
 二人は、重力によって地上へと落下していく。
「ですが、これはどうでしょう?」
 千早は、そう言うとレーニの腹部に膝蹴りをお見舞いした。レーニはそれに対応する反射神経を持たないため、腹部に衝撃が走る。それによって、レーニの身体は千早から離れた。地上へと落下するレーニに、千早は追い討ちをかける。彼女を追いかけ、一気に距離を詰めた。
 しかし、レーニは声を出さずに笑った。そんな彼女に、千早は不気味に悪寒に駆られる。
「引っ掛かった」
 レーニはそう言うと、ホルスターに納められたレイジングエイクを素早く抜き取った。千早がそれに気づいた瞬間、レーニはトリガーを引く。 銃口から高威力属性弾が発射。千早は即座に刀を振り回し、風を作る。だが、即席で作り上げた風は高威力属性弾を相殺するが、その衝撃を千早の全身に浴びせた。
「やりますね!」
 千早は全身に襲い掛かる痛みを堪えながら、刀を振り回す。千早はもう一度、風を作った。
 風力によって千早は前へと押し出され、レーニとの距離を離し、地上へ着地。千早は周囲を見渡すと、そこは教員宿舎の手前に置かれた広場だった。千早は前を向くと、数十メートル先にレイジングエイクを構えるレーニの姿が居た。レーニが掛けている眼鏡に割れ目が生じており、彼女が着ているスーツもまたボロボロになっていた。千早の眼鏡もまた、ひび割れている。さらに着ている和服も先ほどの衝撃で切り裂かれており、彼女の肌が露になっていた。
「酔狂ですわ。久方ぶりに、いい相手に恵まれましたよ」
 千早は興奮しきった声で、刀を両手で握る。そして刀を地面に対して垂直に構えると、それを身体……主に自分の顔に吸い寄せた。彼女が持っている大きな刀の切っ先が、夜空に向けられている。
 レーニは、その異様な構えに千早が何をしようとしているのか、理解できなかった。
 皇国の、刀を扱ったMAIDの構えを見てきたが、このような構え方は見たこと無い。アサガワが実践していた上段の構えに似ていたが、千早の構え方はそれとは異なる意味で違っていた。
「皇国剣道、八双の構えでございますわ」
 そんなレーニの心境を悟ったのか、千早は自分がしている構えを彼女に教える。初めて聞く構え方に、レーニは警戒せざるを得なかった。
「さぁ始めましょう」
 千早がそう言うと、レーニは右手にレイジングエイクを握り、左手でバトルナイフを逆手で持つ。
「言われてなくてもっ!」 
 先手を切ったのはレーニだった。バトルナイフを逆手で握った左手を、右手首に支えるように構えながら、レイジングエイクのトリガーを引く。三発の高威力属性弾が銃口から放たれ、千早に向かって直進。だが千早は、その場で立ち止まったまま、何もしようとしなかった。
 レーニはそれでも、彼女に向かって突貫した。その間にも、追加の高威力属性弾が連続で発射される。
「酔生夢死」 
 千早はぼそりと呟くと、顔に引き寄せていた刀と手を一旦、腰にまで落とした。
「胴!!!」
 大地を揺るがすかのような怒号と同時に、千早は腰にまで落とした刀を使って横に切り裂いた。その剣筋は、夜に染まった空間でも分かるぐらいの軌跡を伴っていた。千早へ命中しようとした高威力属性弾が、その剣筋によって真っ二つに切り裂かれる。
 レーニはその場で立ち止まり、千早の剣筋に驚く。そしてレーニの手前、数センチ先に切り裂かれた銃弾が転がっていた。もし一歩でも前へ進めば、自分もこの銃弾と同じ運命を遂げてしまうかもしれない。彼女本能的にそう思った。
「酔生夢死とはまさにこのこと。酒の味に酔い痴れながら、極楽浄土へ向かいませう」
 千早は横へ振りかぶったままの刀と腕を、八双の構えに直す。
 レーニと千早の距離は、約三メートルだった。
(千早の間合いは、前方約二メートル。それならば!!)
 前方あるいは周囲が千早の間合いとなるのであれば、空中しいては頭上は刀の範囲外。臆することなく、レーニはその場で跳躍しようとした。
 刹那、千早は不敵……否、不気味に吊り上がった笑いを浮かべた。レーニは千早と視線が合う。そのとき、千早は八双の構えを解き、ゆっくりと大きく刀を振り回す。瞬間、彼女の周囲に風が生成された。そして、レーニに向かって走り出す。
 不吉な予感を悟ったレーニは、跳躍した。地面から足が数十センチ離れた瞬間、背中が見えない圧力によって押し出された。
「王手」
 千早はそう言うと、レーニの身体が前のめりに吹き飛ばされた。
「し、しまったァ!!」
 レーニは忘れていた。自分が、千早が持つ『風』の範囲に居ることに。そのことを完全に忘れていたレーニは、吸い寄せられるように千早の元へ向かっていく。右手で握っているレイジングエイクの照準を千早に合わせ、トリガーを引く時間すらなかった。
「酔生夢死!」
 千早はそう叫ぶと何故か、『刀の峰の部分』でレーニの腹部を叩き付けようとした。
「させません」
 レーニ、千早の声とは全く違う女性の声が両者の耳に届いた。そのとき、レーニと千早の間に一人の影が遮る。千早の眼前に、腰まで届く黒髪を靡かせる女性が現れる。
 黒色のメード服に、銀色の甲冑を重ね着した女性だった。肩にスリングベルトを回しており、それにはランチャー型の銃器を引っ掛けていた。
 彼女は千早が繰り出した『峰打ち』を、足蹴りによって弾いた。一方、レーニは自身の背中を押していた風が消滅したことによって、その場で尻餅を突くように倒れる。
 突如現れた女性の後姿を見るなり、レーニはそれが誰であるか一瞬でわかってしまう。
「……まさしく酔狂ですわね」
 千早は眼前で立っているMAID……パラドックスを見るなり、歪んだ笑みを浮かばせた。
「容赦はしませんよ」
 落ち着いた口調でパラドックスは呟くと、スリングベルトによって肩に引っ掛けていた瘴気砲メドゥーサを千早に構えた。



NEXT SCENARIO→ 『存在意義』




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最終更新:2010年02月23日 03:30
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