21世紀深夜アニメバトルロワイアル@ウィキ

教会と銃声

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教会と銃声 ◆JnTFjVKio2


例えばこんな話。
未練を無くし、安らかに天に召された少女。
過去の悲しみを背負い、愛した少女と永久の別れをした男性。

前者の少女、名はユイ
後者の男性、名は火村夕。
今回語られるはこの二人の物語。


  ◇  ◇  ◇

「殺し合い、趣味の悪いことを考える奴もいるもんだな」

火村は半ば呆れた口調で道を歩く。
彼は今、最初に飛ばされた場所から見て、偶然に自分の視界に入った教会を目指している。
教会。かつて愛した人を待ち合わせをして、そして悲劇に見舞われた場所である。
いわば彼の運命の分岐点となった場所。

「結局どこにいてもやる事は変わらないか。千尋も蓮治も……久瀬の奴も多分ここに居たら集まるだろ」

既に名簿の確認を済ませている。
雨宮優子の名は気になったが、それが本当に自分の知るあの『雨宮優子』なのかは半信半疑だ。

(死んだ人間は生き返らないか。なら優子はどうしてここに居る?………本当に優子が俺の知る優子なら間違いなく
教会に来るはずだ。それならここで待つのが一番か)

結局彼は不確かながらも、確信を持っている。
そのようなおかしな感覚を覚えながら、教会に辿り着き、そして扉を開く。
そこには彼が音羽の街の教会ではあまり見ない光景。
いつも無人のはずの教会が今回はそうではない。
つまり早い話、先客がいたのだ。


  ◇  ◇  ◇




  ◇  ◇  ◇


(どうしてこんな事になったんだろ)

ユイは少し、いやかなり怯えている。
身体はかなり小刻みに震えている。
彼女自身の愛らしい外見も加味すれば、それは小動物さながらである。

「日向先輩に結婚してもらってあたし、成仏しちゃったと思ったのに……けど他にも天使とかいたし……………いったい
どうなってるの?あたし………殺されるなんていやだよ!」

ユイは銃を握り締める。
実は陽動部隊に所属していた彼女は銃を撃った経験はほとんどない。
つまり今彼女の手にはほとんどなじみのない無骨な鉄の感触があった。

(大丈夫。みんな普通に撃ってたんだ。あたしだって………あたしだって!!!)

自分に言い聞かせる。
この独特の空気と手に持った銃の発する恐怖に打ち勝つ。
それにはただ、何度も心の中で強く反芻する他に術はない。
例えそれが、間違った方向としてもだ。

突如、扉が開く音が教会内に響き渡る。

「誰!?」

音の方へ拳銃を向けて、問いかける。

(日向先輩か音無先輩だといいけど……この際ゆりさんでも天使でもいいから知ってる人でお願い!)

心の中で強く願う。
けれど、世の中は甘くない。

「誰って名前聞いてるのか?」

それは日向でも音無でもない男の声だった。

(知らない声?っていうかこれ大人の男の声)

その声にわずかばかりの恐怖を覚える。
けれど、いつまでも怯えてばかりでは駄目だ。

「ああそうだ!アタシ……ユイにゃん………ってこっちが名乗ったんだからお前も名乗れやごらあっ!!!」

途中で得意のアイドル系自己紹介を入れつつ、かなり柄が悪く好感度に過大な影響を与える口調で怒鳴った。
半ば虚勢であった。


  ◇  ◇  ◇



「火村夕。見てのとおりの普通の男だ」

名乗り返してユイへと近づく。
向けられた銃口は依然として、予断を許さない状況であった。

「来るなっ!来たら撃ちます……って言ってんだろオラ!、さっさと行けよ!」

ユイは銃を向けて威嚇を繰り返す。
だが、火村にも引き返せない理由があった。

(かなり怯えているか………参ったな。だが、このまま引き返したら優子に二度と会える気がしない)

「落ち着け。何も俺はお前を……」
「ひっ!」

火村が一歩近づいたと同時、弾みでユイが銃弾を放った。
教会内で銃声が響き渡り、銃弾は火村の背後の壁へとめり込んだ。
狙いは大きく逸れていた。

(想像以上に混乱が酷い。これはどう扱えばいいんだっけな)

「別に俺はお前を殺そうとか言ってない。ただ教会で人を待つだけだ。それにここはお前の場所じゃないだろ」
「うるさいっ、来るな来るな来るな来るなくるなクルナ狂なくるな!!!!!!!」

自分が無害であるとアピールをしながら近づくが、ユイは一歩近づくたびに銃弾を撃ち続ける。


  ◇  ◇  ◇


(どうして当たらないの?まさかこいつも天使みたいな力持ってんの!?)

ユイはパニックに陥っていた。
相手は一歩ずつ確実に近づいている。
照準は少しずつだが会ってきているはずだ。
なのに一発も命中しない。
そして、やがて全弾を打ちつくし、トリガーを引いても銃弾が発射されなくなる。

「ちっ、くそ、出ろってんだごらあっ!!」

急いでポケットから新しいマガジンに取り替えようとする。
しかし、そこでようやく気付く。

(あたし………震えてる?)

マガジンの取替えに手間取り、ユイは自分が正常な思考を失っていた事を自覚する。
けれど、その時既に火村はユイの視界正面から姿を消していた。

「えっ!?」

背後を振り返る。
火村は教会の長いすの最前列に座り、丁度ユイから背を向ける形になっていた。

「どういうつもり!」

火村の背中に向けて銃口を向けながら問いかける。


  ◇  ◇  ◇


「別にどういうつもりもない。ただ俺はここで人を待っている。それだけだ」

(ああそうだ。冷静に考えれば最後の一人しか生き残れないから、それは蓮治か千尋にやるべきだ。俺よりも
あいつ等の方がよほど生き残る価値があるだろう。俺は優子と同じように……ここで優子を待つことにするよ)

達観した表情で、目を閉じる。
それは諦めとはまた別の、特別な感情が込められていた。
背後のユイには見えないが、その背中からは何かを感じ取れた。

「あたしが撃ってもいいんですか」
「さっきも撃っただろ」
「さっきとは違います。今は距離が近いから当たります」

その声はかなり近くから聞こえる。
今撃てば確実に当たるだろう。
それはまず間違いがない。

「そうか。出来れば止めてほしいな」
「今更命乞いですか」
「違うよ。俺は別に死ぬ事は怖くない。だけど優子がここに来るかもしれない。あいつがこの世界のどこかにいるなら
間違いなくここに来る。だからせめてその間生きていたい。それだけだ」
「なら、その後はどうするんですか?」
「さあな。少なくとも俺はあのわけのわからない首を飛ばすような奴を相手にする気は無い」
「諦めてるつもりですか」
「諦め………そう言われても否定はしないな。ただ…………俺は死んだときは優子と同じ場所に行ってやりたい。
随分とあいつには迷惑も掛けたからな。だから人を殺すような真似は絶対に出来ないというだけだよ」
「……甘ちゃんですね。それに何だか無性にイライラします。」
「よく言われるよ」
「はい。ですけど、優子さんはとても愛されてると言うのは分かりました。あたしも馬に蹴られる気はない無いので
今は貴方を殺しません」
「そうか」

ユイは銃口を下げると、火村から少し離れた椅子へと座る。


  ◇  ◇  ◇


(死んだときは同じ場所か。死んだ後よりも今を大事にした方がいいと思うんだけどな)

そっと一つの溜息と悲しい目をユイはしていた。
火村の行動がユイには哀しいことにしか思えない。

(生きているなら優子さんと二人で生きることだけを考えなくちゃ駄目だと思う)

ユイは口に出さず、火村の背中を見つめる。
そしてやがて気付く。
自分が落ち着いていることに。

(もう夜も遅いから、明るくなったら町に出て、先輩達を探しますか)

コロコロと表情を変えて、ユイは明日への希望に胸を膨らませた。


【一日目 B-5 教会 深夜】

【火村夕@ef - a tale of memories./melodies.】
[状態]:健康
[装備]:無し
[道具]:基本支給品 ランダムアイテム1~3(本人未確認)
[思考]
基本:雨宮優子が自分の知ってる雨宮優子か確認する
1:雨宮優子がここに来るまで待つ
2:千尋、蓮治、久瀬は機会があれば合流

【ユイ@Angel Beats!】
[状態]:健康
[装備]:ベレッタM92(15/15)@Phantom ~Requiem for the Phantom~
[道具]:基本支給品 ベレッタM92の予備マガジン×4 ランダムアイテム0~2(本人確認済)
[思考]
基本:日向、音無と合流
1:明るくなるまでここにいる
2:明るくなったら二人を探す。


001:邪気乱遊戯 投下順に読む 002:守りたいから私は殺る!
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000:胎動 火村夕 015:鮫は地を這い、竜は天を撃つ
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