アットウィキロゴ
第5話 鍵

「なに、ここ? 廃屋じゃん」
ポンシーノとオドール氏がやってきたのは今にも崩れそうな廃屋だった。
「ここでいいんだ」
オドール氏はポンシーノの声に耳を傾けず奥に進んでいく。
ここはTOKYO SITYの東、葛飾区SITY。
ポンシーノにとってはどこの場所もよく分からなかった。心の迷子だ。
心の迷子って表現はなかなか詩的でカッコいい。あとでメモっておこう!
だけど、この年になって道が分からないとか言うとバカにされそうなのでやめた。

廃ビルの中を進んでいき、一番奥の扉を開く。
中にはメガネをかけた青年がいた。おそらく自分よりは年下だろうか。まだ青い。
「オドール氏、遅かったですね」
「色々手間取ってな」
「パフェ食べたりしてればそりゃ遅れますよ」
誰?とポンシーノがまごまごしてるとオドール氏がアイコンタクトを送る。
「初めまして。オサカッナ・イワッコーヒーシー・メロンパンです」
はにかむ顔が若々しくて眩しかった。しかし、何故パフェを食べるのを付き合わせた事を知っているのか。
気になったが、すぐに考えるのが面倒になってやめた。
「オドール氏とは色々親交がありましてね」
「ふーん。で、なんでここに連れてきたの?」
いい加減説明するか、という感じでオドール氏は椅子に腰掛ける。
「私が説明しましょう。あなたを呼んだのは今までバランスが取れていた投稿者界のバランスを正すためです」
それは分かってる、とポンシーノは頷く。
「今までバランスが取れていた世界が急に崩れました。北、南、東、西。猛者達が動き始めました」
「なんで?」
オドール氏は懐から鍵を取り出す。
「なにこれ?」
「その鍵が三つ揃えば世界を破壊しつくすキーになると言われています」
「この鍵が欲しくて争奪戦が起きたわけだ。その話を流したのは、おそらく封印を解いた奴だろう」
はぁ?とポンシーノは呆れた。そんな漫画みたいな話があるわけないじゃないか。
「残念ながら本当なんだな」
オドール氏は表情一つ変えずに答える。
「そんなのあったなら、なんで今更争奪戦が起きるのさ? つーか、その鍵がどうしたの?」
「封印が解けたのさ。過去の投稿者が封印してたのがな。年々封印は弱まっていっていたからな」
…。
「厳密には、封印が解かれたんだ。何者かにな」
「何者?」
その言葉に頷く。
「三つの鍵は別の場所に封印されていた。一つが解かれれば全ての封印が解かれる」
何故だろう。
それじゃあ封印の意味がないんじゃないか。
「危険だからな。鍵の守り手の三人は正義の意志で封印したが、その三人の意志がいつまで続くかは分からない」
特に時間が経てば意志も変わるかもしれない。100年に一度じゃ本人だけの意志ではないだろう。
だから封印が解かれれば、残りの二人が気づくようにしたんだ。
「残りの二つを封印しちゃえばいいじゃん。それなら鍵も意味ないでしょ」
「三つ同時に封印しないと完全な封印は出来ないんだ。そろそろ封印するはずだったのさ、100年に一度のあの日にな。魔力が最高に高まるあの日にしか封印は出来ない」
そう言われてはどうしようもない。
どうせ100年に一回じゃ、封印が解けるような奴がいたら封印が残っていたって無駄だしなー。
「事実、他の投稿者が襲ってきたのが証拠だろ?」
「確かにそうかもね…」
…。
「あーあー!!! もーう、めんどくさい! 分かった分かった!! あたしはどうすりゃいいんだ!!」
大声を出すと二人は怯んでいた。だが、オドール氏はすぐに平生を取り戻しニッと笑った。
「三つの鍵のうち、この鍵以外の行方は分からん。少なくとも一つは封印を解いた奴が持っているんだろう」
「で?」
「オレは封印を解いた奴を捜しつつ、残りの一つの鍵を探す。私は行方をくらますから、君に鍵を欲しい奴の矛先が向かうだろう。そいつを倒してくれ」
シンプルで分かりやすい。あたしにはその方が性に合ってる。
「中に封印を解いた奴の手先や残りの一つの鍵の手がかりが見つかるかもしれん。それを頼む」
「任せなさい! で、なんであんたが鍵持ってるの?」
「私は封印せし者の子孫だからな」
ふーん。…って、それ結構凄いんじゃないか? 恩を売れば恩恵あるかも! かしこいぞあたし!
「どうした、気持ち悪い顔して」
思わずよだれをふく。
あの僕は…と尋ねるイワシにオドール氏はポンシーノを指さす。
「私は危険だからな、こいつと一緒にいくんだ。ここも危険だからな」
「え、あたし? 男の人と二人きりだなんて…」
「僕はロリコンじゃな…」

「…頼んだぞ?」
「はーい!」
「これ以上のダメージはないかと…」
血だらけのイワシを尻目にオドール氏は闇に消えていった。
「さて、どうしましょうか?」
「名所でも行って炙り出しましょ。年賀状作戦だ!!」
ここにポンシーノ&イワシコンビが誕生したのだった。
「それはみかん汁とかのあぶり出しって意味ですか? 年賀状って…」
子供みたいな大人にイワシは不安でいっぱいだった。
「僕がしっかりしないと…」


同時刻、某所。
黒いスーツにサングラス。頭は短く刈り上げ、手には刃。しとしとと雨が降りしきっていた。
「さーて、狩りをはじめるとするかぁ! ヒャヒャヒャ!!」
ニット帽をまといスキーマスク、耳にはヘッドフォン。男がビルの上から遠くを見つめる。
「ゲームの時間だ」
その言葉に刃の男は高笑いをする。
「あのお方のために頑張りますかねぇ!!」
「ああ」

そして、同時刻。
「どっちに行ってるんですか?」
「右だよ、右!!」
「右って適当すぎますよ~!」
こっちのパーティには緊張感が微塵もなかった。敵の足音が聞こえる事も知らずに。

第6話 凛として時雨

「もう…、あれから何時間経ったと思ってるんですか!」
廃屋から半日程たってすっかり夜になろうとしていた。
「いいじゃない!」
ポンシーノはすっかりご満悦だった。
「時間かかりすぎですよ! なんで衣装をわざわざ変えるんですか!!」
「バカヤロー!!」
右ストレートが炸裂する。
「オシャレは淑女のたしなみじゃー!!」
ポンシーノの服装は今までのフリフリとマイナーチェンジして、シックな黒を基調としたチョッキにハットにネクタイ。
そしてスカートに包まれていた。
「そんな短いスカートなんてはしたな…」
「バカヤロー!!」
アッパーが炸裂する。
「短いスカートはエロいエロイって見えない所から絶対領域までがオシャレじゃー!!」
「ウボー」
「そして、イワシくんもあたしプロデュース!!」
なんとも珍妙な衣装になっていた。スコットランドかどこかの民族衣装のような…。
「どこにこんな服持ってたんですか?」
「ふふふ、それは内緒。女は秘密の数だけ美しくなる!!」
ヒャホーイ!!と走りだすポンシーノをイワシは仕方なく追いかける。


「いやー、やっぱ故郷が一番やなー」
「どうした、変な言葉遣いになって」
「キャラ立ち弱いかと思うてね」
横浜異人館、横浜噛ませ愛好会の本部がある場所だ。
還元、そしてナビー・D・ルフィは戻ってきた。いつもなら人が多いのだが、ひっそりと静まりかえっていた。
「なんだ?」
還元が踏み入れると、組員達が倒れていた。
「奥…に…」
「奥!?」
部屋を進み、奥の扉を開ける。ここには横浜噛ませ愛好会の至宝の品が…。
「!!」
奥にはボロボロに破壊し尽くされた兵器だった物があった。
「凡庸人型兵器、向日葵二号が…!」
来るべき大戦のために取っておいた兵器が…。
部屋も破壊の限りを尽くした残骸と化していた。激しい戦闘があったのを物語って…
「いや、コンセントを切られたのか」
しかしそれでも接近戦なら最強のはず。誰が倒せるというのか。
「還元の旦那、どうなったんすか? 一体誰がこんな事を…」
その時、ボロボロになったスタッフの一人が駆け寄ってきた。
「大丈夫か?」
「誰がこんな事をしたんや?」

「黒服の初老の男…」
その条件に値するこんな芸当が出来る男は、一人しか思い当たらない。
「オドール氏やな…!!」
「おい、行くぞ」
還元の言葉にルフィは戸惑っていた。
「行くってどない…、ああ…」
「オレの力を使う」

「ハウンド・ドッグ…!」
現れたのは美しい毛並みをした銀色の狼。それは人が乗れる程の大きな狼だった。凛々しい顔つきと優しげな瞳が両立している。
その姿は、まるで忠吉さんのようだった。
「\すげえ/」
しかし、還元は難色を示した。何があったのかとルフィは疑問に思う。
「どうしたんすか?」
「オドール氏の匂いが辿れん」
どないして?とルフィは状況を上手く把握できなかった。
「一度会った人間なら全ての匂いを辿れるはずなのに…」
ハウンドドッグはどうしていいか分からず、まごまごと首を振っている。
「仕方ない、ポンシーノの匂いなら辿れるようだ。奴から場所を聞き出すとするか」
ハウンドドッグは勢いよく「ワンッ!」と吼えた。
「やべぇ…可愛い…もふもふしてぇ…」
ルフィはキャラ付けも忘れヨダレをダラッダラ出していた。

「さて、行ったか」
ボロボロのスタッフは覆面を剥がし、どこかへ消えていった。


「しかし、本当にセルフィ高橋とかミトコンドリア大迫とか雑魚しか引っかからないなー」
歩いていても雑魚しか引っかからないのでウンザリしていた。
「ここ知ってる?」
「渋谷ですか?」
「そう、428の舞台!」
「四谷ですか?」
バカヤロー!!とコークスクリューが入る。こんな感じでどうでもいい時間が続いていた。
しかし、この人は緊張感のかけらもないのか、とイワシは呆れながらも頼もしく思った。
「ポンシーノさん…」
急に真面目になるイワシの顔にポンシーノはタダならぬ事態を感じ取った。
「来ます…!!」
ポンシーノは警戒して構える。イワシもポンシーノの裏に隠れた。
「なんで隠れるんじゃー!!」
「僕の能力は戦闘用じゃないんですよ!!」

騒いでいる二人にゆっくりと近づく男。
「いよぉ、お二人さん」
男は厳つい格好をしているが、若く感じられる。ポンシーノは肌年齢でそれを見抜いた。
「坊主…、スーツ…、サングラス…」

「チンピラだー!!!」
「変態だー!!!」

「なんでやねん!!」
男は思わずツッコミを入れるが、すぐに取り直して凄みを入れる。
「なぁ、お前らオドール氏って知らないか?」
「知らなーい!!」
「し、し、し、知りませんとも!!」
この男か…!! ようやく網に引っかかった事を悟った。
だが、倒すよりもこの男を探って巣穴を探し出した方が良いだろう。そう話し合っていたのだ。しかし、演技下手すぎるぞイワシ。

そうか、そうか、と頷く。
「あんがとよ。じゃあ、行っていいぜ」
ヒャー!と走り去っていく二人。
「ああ…、イッスン・ポンシーノ・オニオンブレッド、もしくはオサカッナ・イワッコーヒーシー・メロンパンでも良いんだったな」

「なぁ、お二人さん?」

二人は逃げられない事を悟った。
「だが、逃げる!!」
「なんでですかー!!」

「逃がさんよ」
逃げようとしたポンシーノの前を巨大な水の固まりが行方を遮る。
「水の能力者…!」
「刀使い…!」
刀から水を出したのか、本気で気を引き締めないと危ないかもしれない。
ポンシーノはようやく戦闘態勢に入った。
「ほう、やるってのかい。オレの刀"凛として時雨"のサビにしてやんよ!!」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2009年11月08日 00:31