第5話 NEXT BATTLE
桃尻が気づくとどこか別の場所に移動していた。どうやら室内のようだ。
無機質な体育館のような空間で人の姿も何もない。
どうやら、全員がこの場に移動しているらしい。しかし、オドール氏の姿は見えない。
「何があったんだ…?」
「オドール氏の能力か?」
それぞれが憶測を述べる。
「オドール氏!!」
「くっ…」
ポンシーノとイワシが悲痛な叫びをこだまさせる。
どうしようもない絶望感とやるせなさ、そして戸惑いが場を支配していた。
「オドール氏の能力、ダンスインザダーク。対象者を移動させる能力です」
部屋の隅に気づくと小柄な青年がいた。ラフなスタイルにメガネをかけ、髪を逆立てている。
「誰だお前は…」
「…!!」
イワシがその顔を見て驚きの声をあげる。
「赤黄色、お前は死んだはずでは…」
赤黄色と呼ばれた少年はニコリと懐かしそうに笑みを浮かべる。
「イワシくん、久しぶりだね」
そんな微笑みを浮かべたのもつかの間、還元は一瞬で回り込みハウンド・ドッグのキバをたてる。
赤黄色も微動だにしない。
「説明してもらおうか」
「言われなくても説明しますよ」
落ち着ききって殺気立つ還元は拍子抜けだが、それを無視して赤黄色は話はじめた。
それを誰もが大人しく真剣に耳を傾ける。
「イワシ、私、オドール氏はチームゼロというチームで活動していました」
「そして、チームゼロの一員としてロハンはいました。彼は素直な青年でした」
「そして、しばらくは彼は従順な戦士の一人として、影を潜めていました」
「我々も信頼をしていました。そして、幹部の一人となったのです」
「幹部になった彼は鍵の場所を知りました。封印を守る者の一人として」
「そして彼は封印を破壊したのです」
「私は鍵を守るために戦い、一度は死にかけました。イワシが死んだと思っていたように」
「彼は全てを計算し、挑む男でした。憎たらしいほどに」
「そして、オドール氏の計画がはじまりました。自分では勝てない事を理解していたあの人は別の誰かを仕立て上げる事にしたのです」
「私はサポートするために死んだ事にしました。敵を欺くにはまずは味方から、という事でイワシくんにも知らせませんでした」
「対象はオドール氏が自ら探しました」
「そう、それがあなた達です。だから我々はあなた方を争わせたのです、オドール氏と私が動き回りましてね」
還元が声を荒げて反論する。
「俺達を争わせてどうするんだ! 敵はロハンだろ!?」
桃尻がそれに納得する。
「そうか。だから俺達を争わせてレベルアップを謀りたかったわけだ」
赤黄色が頷く。
「その通りです、さすが桃尻さん」
「なんという還元」
還元は悲しそうに桃尻を見つめる。
「しかし、計画が失敗しました。想像以上に早くロハンが動いたのです」
「理解した」
桃尻の頭の中で全ての図式が理解できた。
「つまり、俺達がロハンを追い詰めてお前らがロハンを叩く計画だったわけか」
「ええ。鍵の一次封印は解かれましたが三つに分けて所在を眩ませましたからね。もっお時間を稼げるはずでした」
そこまで聞いてポンシーノが扉を出て行こうとする。
遮るように桃尻が前に現れる。
「どこに行く気だ?」
「決まってるでしょ、オドール氏を助けに行くのよ」
舌打ちを桃尻はうつ。
どうしてこの女は冷静に判断できないのだ。
「やれやれだ。今の俺達ではあいつに勝てない」
「オドール氏を見殺しにするとでも?」
ピリピリと場に緊張感が溢れる。
一種即発の空気を赤黄色が察して慌てて間に入る。
「今の我々では勝てません。それにロハンは利用できる物は最大限に利用します。オドール氏も始末されないでしょう」
「それに、始末されてるならもう遅い。生かしておく価値がなければもう始末されてる」
還元の一言に安堵と不安を隠せないポンシーノは歯痒くて仕方がなかった。
自分がもっと強ければ、そう思ってもどうしようもない。
「だがあの鍵は世界を滅ぼす力があるんだろ? どうすんだよ。時間ねーだろ」
ポスティングが唇を尖らせる。
「いいえ、あの鍵は封印を解いてから融合させるまでに時間がかかります」
へぇーとポッスンがへぇボタンを連打する。
「その間にあなた達には強くなってもらいます」
「強くってどうやって…」
その声を聞いたかのように、ガラッと扉が開いた。
「おうおう、集まってるな」
その姿を見て桃尻とクロが驚きの声をあげる。
「あんたは、アカツキ…!!」
暁の騎士と呼ばれた男がその場にいた。
相変わらず圧倒的なオーラを兼ね備えている。
「久しぶりじゃな、桃尻、クロ、ヒャック」
「あんたが俺を鍛えてくれるのか?」
その言葉に首を振る。
「わしだけじゃない。さっさと出てくるんじゃな」
後ろを振り向き手招きをすると謎の二人が現れる。
一人はジャージに身を包んだ背の低い可愛い女の子、おそらく年齢も若々しい。
そしてもう一人はよれよれの服を着た青年だった。年齢は少し上だろうか。やる気なさそうにアクビをしている。
「こいつらが鍛えるひよっこかぁ」
そう言うとまじまじと眺める。少女は幼いのに成熟した雰囲気を持っている。
「めんどくさい…」
だるそうに相変わらずしている。
「じゃあさー、あんた達殺し合ってよ」
けらけら笑いながら少女は語りかける。
「殺し合う!?」
一同が驚きの声をあげる。
「あんた達の実力も把握したいし、それに誰が一番か知りたくない?」
にかわかにざわめく。
一部は明らかに殺気を帯びて楽しそうにしている。
「おもしれぇ」
「誰が一番かハッキリさせたかった所よ」
「下克上…!!」
「じゃ、その扉の中に入って。これは科学の結晶よ、作ったのはそこの赤黄色だけど。
二人が別のフィールドに飛ばされて勝者が次のフィールドに飛ばされる。最終的に一人残るわ」
「トーナメントなわけか、事実的に」
桃尻は面白そうだ、と単純に思った。
それ以上に彼の心にはロハンに負けた怒りが支配していた。
やり場のない怒り。それをぶつける場所が欲しかった。
何人かは離脱するかと思ったが、一人を除いて全ての人間が中に入っていく。
他の奴らも負けたのが応えてるのかもしれない。
頼もしい奴らだ。
そう思いつつ桃尻は前に歩を進める。俺はもう負けるわけにはいかない、そう思いつつ。
「みんな頑張るでやんす~」
一人、みんなを見送り手を振るマタスケ。
その姿を見てジャンピングキックで少女がフィールドに送りこむ。
「あんたも行きなさいだわさ!」
「うぎゃぁぁぁ!!」
悲鳴をあげてマタスケがフィールドに送りこまれる。
「さーて、面白くなってきたわね」
「そうかなぁ…。めんどくさいよ…」
対照的な二人の様子を見てアカツキは苦笑する。
「見る目、岡田。相変わらずじゃな、お前らも…」
フィールドの中を進んでいく。暗闇で先がよく分からない。
だが、自然と足は前に進んでいた。
そして、光に包まれその場を一瞬にして姿を変えさせた。
目を開くとまるで闘技場のような場所に移動していた。狭くも広くもない、丁度いい空間だ。
「…、お前がよりによって相手か」
相手は桃尻の姿を見て途端に嫌な顔をする。
そして、桃尻自信もその姿を見て桃尻は微妙な気分になる。
「俺も同じ気分だよ」
NEXT BATTLE
「桃尻 VS 還元」
第6話 「桃尻 VS 還元」
「ハウンド・ドッグ!!」
還元の掛け声と共にハウンド・ドッグが飛び掛かる。
しかし、瞬きをするような一瞬のうちに桃尻の姿が消える。
そして、還元への体に指を叩き込む。
「な…に…!? 服も脱がずに…、今何をした!!」
体を貫くような痛みに驚き還元は問いかける。
その言葉に応える必要はないが桃尻は語り出す。その後のために。
「オレは自分のビッグ・マグナムに頼りすぎていた。オレの強さはそこだけではないと気づいていなかったんだ」
桃尻の能力ピンクフロイドは肉体を限界まで強化し操る能力だ。
その強さに自信を持っているからこそ股間を最大限に強化していた。
しかし、その股間への自信はロハンによって握りつぶされたのだ。
その時初めて自分という人間を思い直した。
オレの強さとは、なんだ?
その自問自答の末に生み出した一つの結論があった。
「"フィンガー悶絶地獄"!!」
桃尻の指から火花がはじけハウンド・ドッグの体を吹き飛ばす。
「な…!?」
「これがオレの性戯」
桃尻が持つ女性への探求心、そして実技。その個性を最大に生かすのは股間だけではなく、前戯本番のために鍛えられた指がった。
その桃尻は指を最大まで強化していた。その指一本一本がハンマーを叩くほどの破壊力を持っている。恐ろしい武器と化していた。
ハウンド・ドッグと還元の体は痛みを共有している。ハウンド・ドッグに与えられたダメージが還元の体を襲う。
「いけ、ハウンド・ドッグ…、!?」
一瞬のうちに桃尻は還元の横に移動し、再び性戯を炸裂させる。
「うぐっ…!!」
「足にオーラを集中させれば移動スピードもアップする。気づかなかったな」
還元は体を無理矢理動かしハウンド・ドッグを放つが、的確に桃尻の指がハウンド・ドッグを捉える。
「"フィンガーオーガズムアクメ攻め"…!!」
尻が蔑んだ目で還元を見下す。
「お前は弱すぎる」
肩を押えつつ還元は睨付ける。その目には憎しみとどうしようもない情けなさが含まれていた。
「オレ達のクラスになればその速さにも対応はさほど難しくない。ロハンの方が全然速いからな」
あの野郎、と思い出すとムカムカしてきた。チッ、と聞こえるほどの舌打ちを鳴らした。
「さぁ、終わりか?」
尻の言葉にはじけるように還元が声を発した。
「僕はもう自分の手を汚すのは嫌なんだよ!」
泣き喚く子供のように還元は叫ぶ。
「情けねぇ」
「強さが生むのは暴力だけだろ、理不尽なよ!! それが周りを傷つける結果になるんだ!!」
"性戯"
「フィンガーファイブ!!」
尻は還元の言葉に失望し一瞬のうちに距離をつめ奥義を炸裂させる。
五本の指を強化し、絶妙なテクニックで還元の体を吹き飛ばした。宙に浮き体を床にたたき付けられる。
「強ければ周りを傷つける可能性はある。だけどな、強くないと誰も守れねぇだろ」
その言葉が薄れゆく還元の脳裏へと沈んでいった。
お前はその程度のタマではないだろ、と桃尻は理解していた。
「ねぇ、知ってる? 死神と呼ばれた男を」
アカツキは顔をしかめ、見る目は大して興味なさそうに伏し目がちに岡田を見つめる。
「聞いたことあるよ、全てを傷つける死神と呼ばれた男。通り過ぎた後には血の臭いしかしないという」
「それがどうしたんじゃ?」
岡田は楽しそうにケタケタ笑う。
「その男はね、人を守るために強くなったけど強くなればなるほど、自分に火の粉がふりかかって周りを危険にさらしたんだわさ」
本末転倒だね、と乾いた声で笑い声をあげる。
「人を傷つけすぎて自分が傷ついちゃったんだ、笑っちゃうわね。そしてその名前を捨てた」
岡田は、画面をそれから黙って見つめていた。二人も自然と声を出そうとはしない。
倒れている還元を見つめ大きくため息をつく。この程度か、と言わんばかりに。
「じゃあな、還元」
桃尻はそう言い残し、諦めたように扉へと向かう。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
その声とともにドス黒いオーラがあふれ出し、その空間を埋め尽くす。
桃尻は後悔すると同時に期待感が溢れ出ていた。一種の恍惚感が止まる事はなかった。
「おもしれぇ…!!」
恐怖なのか、武者震いなのか。それを止めるために無意識のうちに唇を噛みしめ唇から血が流れ出ていた。
「かかってこ…」
身構えると同時に還元の姿が消え失せる。
一瞬のうちに背後に巨大な恐怖感が現れるのを感じた。しかし、それに気づくのは少し時間が経ってからだった。
「!?」
獣のように野性動物のような還元に吹き飛ばされる。あまりの衝撃に壁に叩きつけられ背中を強打した。
「うぐっ…!」
「うぁぁぁぁぁ!! 消す、消してやる…!!!」
吼えるような咆吼をあげ還元は空に向かって叫ぶ。
今までの誰より強い。そう桃尻は核心した。
岡田はニヤッと笑った。
「あれが"死神"軟式タイカレー」
仮名を捨てた男が今蘇る。本当の強さを手に入れるために。
最終更新:2009年12月30日 04:11