第1話 新たなる旅路
桃尻は気づくと見慣れない部屋にいた。ベットで寝かされ、体には包帯が巻かれている。
段々と痛みで記憶も蘇ってきた。あの水の男との戦いで負傷したのだった。
「またこの天井だ…、嫌だな…」
それにしてもここは、どこだ? 周りを見渡すが誰の姿も見えない。窓もない部屋は怪しい、早く脱出を…。
その時、ギギーッと扉が開いた。
ベットから飛びかかろうと動こうとした瞬間、首筋を圧迫される感覚に陥る。
「おっと」
感覚ではなく、実際に首筋を決められていた。
「若い者は威勢がいいの」
老人だと思われるが、気骨溢れる若者のように感じられた。
戦わないでも理解できた、この男は想像を遙かに越えて強いと。
「あんたは誰なんだ?」
老人は複雑そうな顔で視線をそらし、再び視線を戻した。
「…、天才とでも呼んでくれ」
「大層な名前だな、爺さん」
老人は笑みを零し、「天才はここにいた、ってな」と漏らした。
「どうして私はここに…」
「お前さんが倒れてたから俺が……」
桃尻は違うな、と横やりを入れる。
「…なんとなくあんたがどういう人間かは分かってるさ」
「面白い奴だな」
「桃尻さん!」
その時、ドアを開けて同じく傷だらけの黒婆さんが飛び込んでくる。
ずっと懸念していた事なので安心を覚えた。
「気づかれましたか?」
ああ、と首を振る。
「鍵がどうとか、言ってたが何の事だろうな」
鍵を寄こせ、とどいつもこいつも言っていた。
単なる言いがかりだと思ってたが、独りで済まない事を考えると言いがかりとも思えない。
「鍵、か。かつて天地を制覇できる鍵があった。そして、それを三つに分けたという」
老人がなにやら感慨深そうに呟く。適当な事を言っている雰囲気ではない。
それを聞いたクロは何やらポケットをごそごそしている。
「ひょっとして、これのことですかね?」
「あ、それそれ」
爺さんが指を指す。
Σ(゚Д゚
Σ(゚Д゚
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Σ(゚Д゚
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Σ(゚Д゚
Σ(゚Д゚
「なんで持ってるんじゃぁぁぁぁぁ!!」
二人のツッコミが響く。
「師匠にお前これ持ってろって…」
梅銀、桜青の二人が託したということか。
ひょっとすると、二人ともこれを狙われて…。
「クロ、目的がはっきりしたな」
意味が分からない、といった表情で目を丸くする。
「鍵を探してる奴の中に二人をやった奴らがいる。捕まえて拷問だ」
「拷問て!!」
そんな事を言いつつも、クロはやる気に燃えていた。
あのなみくじとかいう男にもリベンジせねばなるまい。忙しくなりそうだ。
「おっと、話は聞かせて貰った!!」
ベッドの下からヒーローが現れた。
「な、なんでお前が! つーか、お前誰だよ!」
ヒーローはポーズを取り、かっこよく決める。
「私の名前はヒャック! ヒャックマンだ!!」
マスクをめくる、すると…。
「めくらないでください!! 恥ずかしいじゃないですか!」
正体は、あどけなさも残る小柄で可愛い女の子だった。
「小柄だな、全体的に」
なめ回すように眺める。
「体を見て言わないでください!! わたしはヒーローだからいいんです! マスク返して!」
しかし、返す様子はいっこうにない。
「うー!!」
暴れるヒャックのアゴを掴んでキラキラしている。
「な、なに?」
「君の事が聞きたいな」
アゴを話して、と赤面し焦りつつ言うのを可愛く思いつつアゴから手を離す。
「な、なんなのよ…。わたしはヒーロー、ヒャック! 本名は秘密!」
「なんでヒーローになったんだい?」
キラキラ進行中。
「色々あるけど…、まぁ悪即斬だよ! あんた達の周りに悪の匂いがするから一緒に戦うの!」
クロはため息をついて桃尻とヒャックの間に入る。
「桃尻さん。こんな奴置いて早くいきましょう」
「いや、一緒に行こう。私たちと一緒に戦ってくれないか?」
両手を握って桃尻はキラキラしている。
「ちょっ、桃尻さん」
「べ、別にいいけど! マスク早く返してよ!!」
相変わらずキラキラしている中、マスクをつける。
「助かったぜ、爺さん」
「ありがとうございました!」
「さぁ、いくぞ二人とも!!」
二人は包帯を無理矢理はずして部屋から出て行く。
老人は一人天井を見つめて呟く。
「これで良かったんだな、オドール……」
声は風で吹き消された。
三人の後ろ姿を見つめ、自分の時代は終わった、そう思いをはせていた。
「あんたが情報屋?」
ハットをかぶった男の前にポンシーノが腰掛ける。
「ああ、そうだが」
「協力してください」
「金なら払う」
後ろに立つ二人が情報屋に詰め寄ると、首を横に振った。
「どういう事よ?」
「おれっちは気に入った人にしか情報は提供しないでやんすよ」
ニヤニヤ笑っていやがる。
初めて顔が見えたが、年齢は自分と同じぐらいだろうか。どこか地方出身の匂いがした。
「じゃあ、どうすればいいんですか?」
「一勝負しましょうでやんすよ」
手元からトランプを出して一枚置く。
そして、それをぺらっとめくる。
「7ですね。これより次のカードが大きいか、少ないか。それを当ててください」
8,9,10,11,12,13。大きくても、少なくてもどちらも同じ数だ。
「同じ数字だったら私の勝ちです」
勝負、というが本当にこの男の情報が当てになるのだろうか? そんな思いが頭によぎる。
「あんた、本当に情報持ってるの?」
鼻でふっ、と笑う。
「ポスティング、ポンシーノ、イワシーノ。欲しい情報は誰の居場所かな?」
こいつ…!!
「勝負受けるわ!! 勝ったら情報を提供、負けたら?」
「これは遊びですからね、負けてもなんもないですよ。これは遊び、ですからね」
なにやら遊びというのを強調しているのが気になった。
いや、今は勝負に集中しよう。向こうの方が有利だ。どちらが可能性が高いという事もない。
どうしよう?
「俺は上だな。アイアムナンバーワン!」
「僕は下ですかね…」
二人とも割れてるし!!
「えーとえーと……」
答えはどちらでもない、全ての数がハズレ!!
情報屋である彼は手先が以上に器用で気づかれずカードを好感するなぞお茶の子さいさいだ。
「決めた!! 上!! 上が好きだから!!」
「野心家!! いいぞ!」
「も、もっと冷静に……」
「じゃあ、いきますよ。いいですね?」
仕方ない、といわしも頷く。
「?」
張り付いているのか、カードが離れづらく、なにやら少しばかり焦っているようだった。
剥がすとピリッと静電気のようなものが走る。
「……、あなた達の負けです」
カードも見ずに情報屋は顔を上げる。三人の視線がカードに集中する。
「……」
「……」
「……」
「どうして負けなのわさ?」
はぁ?、と言った具合に情報屋はカードを見る。
「え?」
出た数字は8だった。
信じられないのか何度もカードとポンシーノの顔を見比べる。
「おかしい、ちゃんと……」
「なーに?」
聞き返すと誤魔化すようにハットをかぶる。
しかし、ポンシーノは純粋に勝負に勝ったと思っていたので自信満々だった。だが。
「数字の電子情報を書き換えました」
小声でいわしがボソリと呟く。アナログ・フィッシュの能力か!!
いわしの鞄の中からひょこっと顔を出す。
あたしの最強運だと思ったのに…。に、しても。
いわしも死線を潜って一皮むけたみたいだな、とポンシーノは親心で安心すると共に驚いていた。
「じゃあ、情報を売ってもらおうか? その前に、あんた名前なんて言うの?」
ため息をついて情報屋は答えた。
「マタスケレケレ。茹でられてとでも呼んでくれやんすよ」
「奇術師、マタスケ……!!」
いわしが驚きを見せる。
「有名なの?」
「全てを司る魔法の指の持ち主…!!」
のっぺりした顔で全然有名に見えない。顔は関係ないけど。
に、してもこの男は全てが嘘をついてる。騙すためのフラグで発言している。口調もそうだ。
「茹っで茹でにしてやんよ!!」
魔法の指先が輝きを放つ。
この男の情報で何かが変わるかもしれない、そんな予感がした。
第2話 三つの歯車
ポンシーノの行方を見失った。
夥しいあの男の血の臭いを辿れば問題なかったはずなのだが。
ポンシーノの香水の匂いは刺激臭のためドッグは苦手としている。
つまり。
「何故見つからないんだ?」
帽子の男、さわだけが冷たい瞳で問いかける。
「刺激臭の中にいるのだろうな」
「刺激臭…?」
坊主の男、太田が首をかしげる。
「つまりは薬品、もしくは酒などだな」
「そういう事か…」
目的を共にする者として協力するように求められたがこの男達を完全に信用する事はできない。
むしろ、敵であるオドール氏の方が信用できる人間だ。どちらも何かを企んでいるのは間違いないが。
今はこの男達と協力して奴らを捜す事に異論はない。ルフィは戸惑っているようだが、余計な事は言わないよう口止めするがベストだな。
「まぁ、匂いが辿れるようになれば問題ない。同じ場所に一生いるなど不可能だからな」
「悠長な事を言っているな」
その声に後ろを振り向くと、何やら輝いている男がいる。このオーラは尋常ではない。全てを超越するオーラ…。
「急ぐんだな」
ははぁ、と二人がひれ伏す。なんなんだこいつは…。
「そこの二人は見ない顔だが、少しはやるようだな。しかし」
不敵な目でこちらを睨む。
「平伏せ」
ドガァァン!と地面に意志とは無関係に叩きつけられる。
圧倒的な威圧感、雰囲気、なんなんだこの男は。
「君たちは奴隷の器のようだな。励むがよい」
男は去っていった。後ろ姿ですら顔を上げる事ができない圧倒的な存在感。何者なんだ。
「…、あれが我々の王だ」
「カリスマ性に匹敵する人物はおるまい。お前らも従う事を許可しよう」
油断できない。
だが、どうすればいいか冷静に判断しなければ。
我々の目的は平和でありこの地の平静。こいつらは平和主義とは思えない。
ぶつかり合う運命かもしれない。
「お前らは何故あいつらを追っている?」
「王に会った以上話してやろう。世界を征服できる鍵を奴らは持っている。それは…」
ルフィが驚いているが、聞いたことがある。
鍵の話を。こいつらは、敵だ。
「敵意を剥き出しにするとは未熟者が」
再び地面にひれ伏せられる。
「この男を追え。鍵の一つを持っている」
写真を投げ、それが壁へと突き刺さる。
「我は王。鍵の行方など感知できる。さっさと行くんだな」
写真の男を見ると、そこにはある一人の男がいた。
ガーリックトースト…、いや、ミルドキック。
何を企んでいるかは知らないが平和のために俺も鍵を手に入れなければならない。
離れられない運命か、これ。
「マタスケー、なにこの部屋?」
バーの奥にはいくつものパソコンが置かれた部屋が存在していた。
興味を引いているのか目を輝かせてイワシは眺めている。
「あっしの情報源は耳だけじゃなくて、目と耳全ての五感を使ってるんでやんす!」
映像には町中の映像が映し出されている。これって盗…ゲフンゲフン。
パソコンのコードを頭にあるパーマの機械のような物体に繋げる。
「これで五感の全てが情報源! 注入でやんすよ!!」
ボタンを押すと電磁波が流れ、頭の機械に全てが集まっていく。
これって犯罪じゃなかろーか。まぁ、いいや。
「機械は好かん」
ポッスンは目を背けてゴロゴロしている。
「分かりましたでやんすよ。オドール氏は…、この男の近くにいます」
見たことがない男だった。
その映像を見てイワシが驚きの声をあげる。
「東北の黄色い竜、ミルドキック…!!! 何故オドール氏がこいつと…?」
こいつが東北の黄色い竜か。
腕が鳴ってきた。
「直接聞けばいいよ。やったるかい!」
「なぁ、オドール氏。そのポンシーノってのが鍵を奪ったのか?」
初老の男、オドール氏。
初老いえど若々しさに溢れダンディズム漲る男だ。
「はぁはぁ…」
ヒャックもなにやら興奮している。
この男と出会ったのは数時間前、ボロボロになっている所を見かけ声をかけた。
さすがにオドール氏の名前は当然知っている。
この男をボロボロに出来る人間、そして鍵を奪われたという言葉。興味が沸いた。
「ポンシーノ、そして還元。その二人を倒せば鍵が全て手に入るわけだ」
「一石二鳥だし!!」
段々ヒャックのヒーローキャラが崩れて中の幼女が第一人格になってきている。
「まぁ、鍵なんて興味ない。俺の仲間をやった奴らはその中にいる可能性が強い」
だとしたら、とオドール氏が尋ねる。
「ブッ倒す!!」
「ですわ!!」
「ですね!!」
キャッキャキャッキャしている三人を見つめオドール氏は不敵に微笑む。
計画通り…!!!
「ブッ倒す!!」
ミルドキック。
「やったるでー!!」
ポンシーノ。
「待っていろ、ポンシーノ、ミルドキック!!」
還元ギブソン。
数時間後、
今まで交わることのなかった三つの歯車が、一つになろうとしていた。
KPCと後々呼ばれる三人の血を血で洗う三つどもえが始まろうとしていた。
「早く行きましょう!」
イワシッツーノ。
「もっと強い奴に会いに行く」
ポッスン。
「あっしは帰っていいでやんすか?」
マタスケレケレ。
「やるなのー!!」
ヒャック。
「師匠の敵は僕が打つ!!」
ヨツバーノ・クロワッサン。
「ゴムゴムのー!!」
ナビD。
「ポンシーノ、今度は斬る!!」
太田。
「邪魔者には死を」
DJさわだけ。
「我の前に生きる全ては平伏すが良い」
王と呼ばれる男。
全てが今、一度だけ交わる。
最終更新:2009年11月03日 01:28