第9話 女性収集家とact2
「アタックC!!」
ポンシーノは手に持っていたバケツで中の液体をクルクルと周りにまく。
「なんだ水か? まぁ、いい!」
「アォン!!」
還元は手を叩くとハウンド・ドッグは牙をむきポンシーノへと飛びかかる。
「!?」
しかし。
「キャンッ!!」
飛びかかろうとした刹那、ズサーッとあさっての方向に滑っていく。
「ドッグ!!」
「なんやねん!」
ルフィは驚きの声をあげる。白いヌルッとした液体が原因なのは明らかだった。
「ヒャヒャー!!」
そう、ポンシーノがまいたのはワックスだった。
これならそう簡単に近づく事は出来ず、周りへのけん制も準備も狩野だ。
「なら、飛びかかればいいんだろ?」
太田はワックスを飛び越え、ポンシーノへと斬りかかる。
「アナログ・フィッシュ!!」
イワシのパソコンが姿を変え、人の形となり太田へと飛びかかる。
「なっ……」
太田は慌てて避けようとするが、空中で動きが取れずみ吹き飛ばされる。
「何を遊んでいるんだ」
手をクイッと動かし、さわだけが能力を発動しようとした。
「そうはいかないってね!」
ドガァァンと大きな音を立てて土煙が起こる。
「なにっ?」
ポンシーノは地面を思いっきり打ち壊し、土煙を起こしたのだった。
「ちぃっ!」
ダンシング・クイーンの弱点は目で確認しなければ相手を束縛できない事だった。
使える距離も限られている。そうでなければ、わざわざ目の前に出てくる危険を冒す事はない。
「……」
さわだけはいつ襲ってくるか警戒を強める。
一人だけでなく、全員がいつ襲ってくるか警戒していた。
「……」
「……」
「……?」
砂煙がなくなり、姿を現わす。
「いない?」
「なにっ!?」
単純な事だった、後ろから逃げたのだ。
「追うぞ!!」
ハウンド・ドッグを先頭に各自が追いかける。
「……」
「……」
「行った?」
「みたいですね」
壊した土の中から三人が現れる。
「緊張したなー」
「何を…したんだ…?」
男はダメージか息絶え絶えになっていた。
「僕の能力、アナログ・フィッシュ。普段は魚の形をした諜報スタンドですが、情報を蓄え成長する能力があります。容量がいっぱいになれば能力は選びますがね」
今は魚の姿に戻ってふよふよ浮いている。
「電磁波で見えないようにしました。短い時間ですが、効果が…それより、早くなんとかしないと…。医者に…」
医者に連れてこうとすると、男が肩を掴み静止する。
「オレは医者に行けるような男じゃない……」
「でも…」
「あたしがなんとかするわ」
ポンシーノの姿が変わっていく。
「紹介するわ、女性収集家(ガールズ・バイキング)のクッキィちゃん」
ピンクのナース服へと姿を変える。
「この能力は回復能力の強化……が出来るのよ……」
そう言うと、オーラが体を覆っていく。
そして慎重に切れた腕と足を能力で引き寄せ、くっつける。
「すげぇ…、いてぇ!!」
「痛みを消せるわけじゃないからね……」
汗をダラダラと流している、一瞬でくっついたわけでもなく今も治療は進行中のようだった。
「凄い…、他にはどんな能力が?」
「他にもスチュワーデス、お姫様、魔法使い…いっぱいあるわさ!!」
「役に立ちそうにねぇぇぇぇ!!」
イワシは派手なツッコミをする。
「あの犬の能力は匂いが追えるのかもしれません。早くなんとかしないと…。貴方は…って、放っておけませんよね」
「助けてくれたしね! あんたの名前なんてーの?」
痛みがあるのか、首を軽くあげて男は話す。
「オレか? オレは……、ポスティングとでも呼んでくれ。オレが言う場所なら安全なはずだ…」
「桃尻さぁぁぁん!!」
爆発に巻き込まれ桃尻の体は負傷し、本人も意識はないようだった。
クロは体を引っ張り揺するが反応はない。
「うあぁぁぁ!!」
水人形は未だにターゲットを探してうろうろしている。
どうすればいい。逃げる事も出来ない、敵を倒す事もできない。
頭の意識が朦朧としていた。
どうする?
どうする?
「可愛いものに突っ込む……。確かに桃尻さんの股間は可愛いが……」
クロは吹っ切れた。冷静になって考えれば、こんな奴。
「ちくしょう、なんでオレがこんな奴に怯えないといけないんだ!!」
壁を打ち抜き、可愛い顔が完成する。
水人形はそっちに突撃していく。クロよりも可愛いなにかを奴は優先しているようだ。
「一生壁を攻撃してろ」
さて、どうするか。さっさと桃尻さんを病院に連れて行かないと。
爆発が起きすぎたせいで周りに人が見えない。思えば携帯電話も爆発で吹き飛ばされてしまった。
ドカン ドカン ドカン と不毛な音をたてている。アホらしい。
「……!?」
爆発を暫く見ない間に建物という建物が吹き飛ばされている。
ミドリの射程距離の場所に何もない。これはマズい。
「地面に撃てば……」
地面へと銃を構える。が、気づくと銃は錆びていて動こうとしない。
「錆びてる…? なんだとっ!? オレの精神がさび付いたとでもいうのかぁ!?」
絶望したまま、水人間が向かってくる。
「うあぁっぁあ」
その時、銃が光り姿を変えていく。
銃が二つへと分解してき、クロの手に収まった。
「二丁拳銃に……!?」
撃つと明らかに威力も上がっている。水人間の中から生えた巨大な木が人間を踏みつぶす。
「ひょっとして僕成長したんですか~!」
「驚いたな、また生き残りがいましたか」
前から一人の男が現れる。凄まじいオーラがクロを圧倒していた。
第10話 酒場語録
「なんだ、失敗。珍しいな、人連れとは」
腰掛けると姿を見かけて、一人の男が話しかけてくる。
ラフな格好をしてはいるが、渋い良い男だ。年は大体ポッスンより年上だろうか。
「骨食、うるせぇな。酒くれ酒」
骨食と呼ばれた男は笑いながら酒を持ってくる。
「骨食とか失敗ってなんなの?」
「俺達ははぐれ者だからな、まともな名前なんて持たないんだよ」
二人は顔を見合わせて笑う。
「おっと、客だ。ゆっくりしてな」
「じゃあな、マスター」
マスターは忙しげに客の元へ行く。
「お前らのことを聞かせてくれ。よければな」
二人はアイコンタクトで相談し、首を縦に頷く。
ポンシーノは今まであった事を軽く話した。ポスティングは何も言わずに聞き込んでいた。
そして、最後まで話し終えると間を置いて大きく頷いた。
「オレは強い奴と戦いたい。それにお前らにも恩義がある、オレはお前らのために戦おう」
ニヤッと顔を見合わせて微笑む。
「決まりだな。で、どうするんだ?」
「あたしはオドール氏を捜す」
「僕もそうしたいです」
二人の意見は同じだった。
何かがおかしい、影で動いているとしか思えない。オドール氏の動きは鍵を探すためなのだろうか?
ただ鍵を探しているだけとは思えない何かを感じる。
他は分からないが、あの還元という男は利己的に鍵を探しているだけでないっと感じた。
オドール氏を捜しているのも鍵以外の理由があるように思えた。何故かといえば勘だが。
オドール氏に目的があるとしても、鍵をこちらに預けている以上敵とは思えない。元々敵だと思ったことはない人なのだ。
「そういう人、よね」
「ですね」
「で、どうやって探すんだ?」
どよーんとした空気が場に流れる。
諜報系の能力であるイワシにも行方を探せず、還元という男もオドール氏を捜す事は出来なかった。
なら、どうやって探せばいいのか皆目見当がつかなかった。
「うーん……」
停滞した空気の中、ポッスンはビールを口に入れる。
「マスター、こっち来い」
忙しそうなマスターを呼びつけ、事情を話すとなるほどな、と考えてくれた。そしてすぐに思いついたのか口を開く。
「人捜しなら奥にいる情報屋に聞いたらどうだ?」
「情報屋?」
聞き慣れない言葉に思わず聞き返す。
「ああ、金さえ払えばやってくれるはずだぜ。俺達と同じで変なコードネームを名乗ってたが…」
奥に目を移すと、なにやら男が酒を飲んでいた。ハットをかぶっていてどんな男なのかイマイチ分からない。
「……」
ポンシーノと目が合い、なんとも言えない空気が蔓延していた。
舞台は再びクロの元へ戻る。
「お前は……、誰なんだぁぁぁ!!」
現れた男にクロは冷静と情熱を保ちつつ尋ねる。
「はじめまして、北海の荒れほ乳類、なみのりくじらと言います」
聞いた事がなかった。こいつは師匠をやった奴らかは分からないが、桃尻さんをやられた事で頭が再びカッとなる。
「おまえなんかしんじゃぇぇぇ!!」
クロはその声を聞くと同時に乱射する。
「効きませんよ」
なみくじの水が固まって完全な人の形となり、銃をガードする。
その姿を見てクロの表情が青ざめる。
「どうしてスタンドが二つあるんだぁぁぁ!!」
「エクスプロージョン・テレフォンはワタクシのスタンド、ウォーターワールドの一能力にすぎない」
さようなら、それがクロの脳裏に残っている最後の言葉だった。
一瞬でなみくじはクロの胸を突き刺す。
「ひと思いに吹き飛ばしてあげましょう」
構えを取るなみくじ、そしてウォーターワールドにオーラが集まっていく。
「そこまでだぜ」
怒張した息子がなみくじを吹き飛ばす。
「君はすげーやつだぜクロくん……」
立っていたのは桃尻だった。しかし、先ほどのダメージで体中にダメージを追っているのが目に見えていた。
その血だらけの桃尻の姿を見て驚くと同時になみくじは微笑んだ。
「今のパンチはキャッチボールの球のように軽かった。あなた、ひょっとして立ってるだけで限界なんじゃないですか?」
なみくじは桃尻にゆっくりと襲いかかる。
「ちんっ!!」
桃尻の息子が顔面を捕らえる。
「うがぁ!」
「ちんちんちんちんちんちんちんちんちん!!! ちんっ!!」
間髪を入れずに桃尻のちんちんラッシュが炸裂する。ガードをする暇もなくなみくじは無様に吹き飛ばされた。
同じように顔が朱に染まっているのが尻には分かった。だが。
「ちくしょう……」
その場に桃尻は倒れ込む。
「まだだ……、まだ終わりませんよ!!」
なみくじはしぶとく立ち上がる。
「吹き飛ばして鍵を頂くとしましょう。立っていた私の勝利です」
「ヒーロー参上!! ぐぼぁあ!!」
蘇ったのもつかのま、再びヒーローが吹き飛ばされる。
「しぶとい男です……。まぁ、今度こそ吹き飛ばさせてもらいましょう」
構えを取るなみくじの肩に重いプレッシャーと手がかかった。
「待ちな」
その声に振り返る。と。
一人の老人が立っていた。老人いえど弱々しさはなく、むしろ活力に溢れている。
なみくじは静かに呻いた。
「……」
「待てと言っておるだろう。若い者が頑張っておったからな、わしに免じて見逃してくれんか?」
静かに肩に力が入る。
優しげだが、そこにはもの凄い力が込められていた。
(この爺……)
「それは命令ですか?」
「頼んでおるのだが?」
老人は静かにプレッシャーを放つ。
常人の人間ならこの場に立っている事すら辛いだろう。
「分かりましたよ」
この場の空気を理解し、なみくじは渋々頷いた。
すまないのう、と男は悪気なさげに謝る。なみくじはイラッとしながら続けた。
「ずっと見ていたのは分かってます、白々しいですよ」
ヒッヒッと声をあげる。
「ま、伝説の投稿者の一人に言われれば断れませんよ」
なんの事かな、と男は口笛を吹く。
「昔の話さ」
初老の男は微笑みを浮かべた。
仕方なく、なみくじは倒れている二人から離れていった。
なみくじは一瞬振り返り、ため息を大きくついた。
「暁の騎士……。あの男とはまだぶつかりたくないですね。気まぐれな男なだけに、読めませんが。ま、まだこれからです」
最終更新:2009年10月17日 14:15