第7話 野性と頭脳
「本来彼は攻撃的な人間なんだわさ。それを完全にハウンド・ドッグに委ねていた。今の彼が本当の軟式だわね」
「圧倒的な戦闘能力だな」
だが。
それが戦闘において有利に働くとは限らない、それはこの三人は重々理解していた。
早すぎる…。
桃尻は精神的にも肉体的にも疲弊していた。
圧倒的な軟式の速さ、そしてパワー。為す術が見つからない。
「!?」
鈍くエグい音が場内に響いた。軟式の牙が桃尻に深く抉りこまれる。
思わず膝から崩れ、その場に倒れ込む。
やべぇな、体が暖かくなってきやがった。なんだなんだ、血流しすぎたな。
だが、これがオレの望んでいた展開だ。
おもしれぇだろ軟式よ。なのによ。なんでそんな悲しそうな顔してんだよ。
情けねぇ。強さが怖いのか。なら、本当の強さってもんを教え…。
「……」
光が見えた。
「……死んでる場合じゃないねぇぇ!! 軟式。もうお前の動きは通用しない!!」
軟式の打撃に桃尻は打撃を打ち返す。
しかし、軟式の打撃も当っているためカウンターにはなりきれてない。
そんなブサイクな打撃の応酬が続いていた。
「軟式の攻撃力は群を抜いているはず。それなのに、どうして桃尻が耐えてんだろ」
見る目の疑問に岡田が嘲笑する。
「あんたも現場から離れすぎね。あれはね…」
「軟式は動きに無駄がありすぎる。それに大して桃尻の動きは正確だ」
岡田の横からアカツキが口を挟む。
「それあたいのやー!!」
「元々桃尻は天才肌のようじゃな。軟式の無駄な動きを完全に予測して見切っている」
まさに、天才と呼ぶに相応しい。
「だけど、二人とも能力を出す余裕はもうない。つまりは」
-意志の強い方が勝つ。
「うがぁぁぁ!!」
「おらぁ!!」
「うがぁぁ!!」
「はぁはぁ……。オレはなぁ、強さから逃げた人間なんかには負けられないんだよ!! マリアから逃げ、ロハンには負け…。もう失うものなんかなにもないんだよ!」
その時、意識を完全に野性へと投げている軟式に動揺が走った。
その一瞬の隙を桃尻は見逃すことがなかった。
「輝き叫べと人は言う! 行くぜ、マグナムフィンガァァァァー!!」
桃尻の指が火に包まれる。
軟式に語りかけるかのように、桃尻は叫ぶ。
「そうやって逃げてるばかりじゃ前には進めないんだよ!!」
その言葉に軟式は反応しようとしていた。
今まで我を忘れた表情をしていたのが、段々と光を取り戻していく。
「……。オレは、オレは、逃げん!! 」
その時、軟式の目には輝きが戻っていた。そして、力を振り絞る。
その場が火の海に包まれ、立っていたのは一人だけだった。
ゆっくりと出口へと歩いていく。
「……、次はお互い初めから本気でやりたいもんだな。軟式」
「一昨日きやがれ……」
WINNER 桃尻
NEXT BATTLE「イッスン・ポンシーノ VS 赤黄色」
第8話 扉
「口ほどにもない。これが本当にあなたが言っていた戦士なのですか」
赤黄色は遠い目をして屍を見つめた。
赤黄色の能力、熊の惑星。
巨大に具現化された熊を自在に操る能力である。
パワー、スピード、申し分ないが近距離でしか戦えず精密動作に欠ける。
油断していたポンシーノは一瞬で潰された。
あまりのあっけの無さに赤黄色は勝利の恍惚以上に憎しみを憶えた。
なんのためにオドール氏は命を賭けたのか。
「立て、ポンシーノ!! 君たちは立つ義務がある!!」
しかし、反応はない。
虚しく声がこだまする。
歯ぎしりをして赤黄色は出口へと向かう。
「弱いことは罪だ」
「あたしも同感だね」
その声に驚き後ろを慌てて振り向く。
振り向いた瞬間。
「うぐっ…」
とてつもない衝撃が赤黄色を吹き飛ばす。
「もうあたしは負けるわけにはいかない」
ー第三の会場。
(ポスティング失敗 VS イワシ)
「その程度の実力でよくここまで来れたな」
「残念だが、お前はここまでだ」
イワシは実感していた。自分の能力は付け焼き刃でしかないことを。
敗北の中で拳を握りしめる。オドール氏を救える力を身につけなければ。
自分はここで終わりたくない。新たな力を身につけなければ。
ポッスンはイワシの顔を決して見ずに前へ進む。表情を見られたくないのは男ならば誰もが理解しているからだ。
ー第四の会場。
「マタスケ VS クロ」
「……、久々に力を使ったな。おい、見てるんだろ。俺はもういい」
マタスケは叫ぶ。
クロの倒れた姿を横目に見ながら。
「目的のためにはまだ気づかれるわけにはいかない。なぁ、こいな氏。さて、戻るか……でやんす」
桃尻、満身創痍。
失敗、余裕。
マタスケ、棄権。
そして、最後の一枠。
ポンシーノは自らに憤慨していた。
この熊を叩きつぶす力が自分にない事に。
ポスティング、桃尻、ロハン。彼らには純粋な力が溢れている。
力が欲しい。
「うあぁぁぁぁぁぁ!!」
子供のように暴れ回る。純粋に能力を使うのではなく力をぶつけるだけ。
その行動にはなに一つとして意味などなかった。自分の感情を思うままに吐露したいだけだった。
「はぁはぁ……」
赤黄色にはポンシーノの辛さが分かった。
この熊の惑星は自らの非力を疎んで発動した能力である。
「だから、こそ! 君を殴るのをやめない!!」
"モンブラン!!"
熊の手が乱舞のように激しく動き回り、
"ショートケーキ!!"
そして、ポンシーノをショートレンジからの拳で叩きつぶす。
防御というものを放棄したポンシーノはあっさり叩きつぶされた。
「……、これで終わりとはあっけないもんだな」
「オドール氏は何故あなた達に託したのか」
「理解に苦しむ」
ぴくりともヤムチャのように動かないポンシーノを悲しそうに赤黄色は見つめる。
そして、次のフィールドへと進んだ。
「……」
ポンシーノは脳内で語りかける。
「これで終わり?」
いや、終われない。終わっていいはずがない!
「そうだよね」
まだ、戦える。戦いたい。
「壁を」
ぶちやぶれ!!!!!
ぶっ壊す!!
全てを壊したいと願い、ガムシャラに願った人間に新たな扉が開く。
「……」
満身創痍の桃尻。
「お前らなら手応えがありそうだ」
やる気満々のポッスン。
「私を失望させないでください」
事実上の決勝戦、その三つどもえが今始まる。
「三つどもえじゃなぁぁぁぁい!!!」
そして、ポンシーノ。
壁をぶち破った人間の怖さが今ぶつかり合う。
最終更新:2010年01月16日 01:19