人外と人間

桜嫌い 後編

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桜嫌い 後編 0-79様

『美幸…。』

頭に響くドラムの声はあるはずもない吐息が感じられるほど熱い。

「ドラム…どうしたの?」

息が詰まりそうな沈黙に問い返すとドラムはギュッと更に触腕に力を込めた。
ドクドクと背中越しに彼の心臓の音が聞こえてきそうだ。

「ドラム、苦しい…。」

いくら手代わりの触腕と言えども、四本の巻きつかれて締められるとさすがに辛い。
小さく身じろぎをしてそう告げるとドラムは『ごめん!!』と触腕を引いた。
慌てて目の下の二本を体の中にしまう。何を焦っているのかグルグルと四本の触腕から別れた触指が絡む。
…自分の腕を絡ます触手型宇宙人って初めて見た気がする。
振り返って廊下に座ったまま唖然としている私の前でなんとか触腕を仕舞うとドラムは『あ〜、え〜とぉ〜。』と困ったように、いつもの左側の端の触指で目の下を掻く。
…もしかして…。彼の熱い声と触腕の強さに微かに感じた希望に私は賭けた。

「もしかして、本当は私の顔を見る以外にも何か用があって来たの?」

ビクリとライトグリーンのモノアイが震える。
彼の目の下で動いている不器用な触指をそっと掴んで引き寄せるとドラムは観念したように瞬きして、私の首から頬に右の触指を這わせた。

『美幸にどうしても会いたくて来たんだ。』

柔らかな触指の感触が懐かしい。

『美幸にどうしてももう一度会いたくて、上司に頼んで地球支社の社員にして貰ったんだ。』
「ドラム…。」

ピクリと手の中で触指が震える。

『篤とうまくいっているんなら、もう黙っていようと思った。でも…さっき別れたって聞いて、そうしたら我慢出来なくなって、もう一度あの三年前の花見をやり直したくなって…。』

ドラムの触腕が背中に伸びる。そのまま私の身体を彼は自分の身体に引き寄せた。
ドラムの灰色の胸が暖かい。今度は力を込め過ぎないように優しく触腕を絡ませるとドラムの真剣な声が頭に響いた。

『こんなこと言っても美幸には迷惑なだけかもしれない。でも…。』

希望が少しずつ確信に変わる。私は小さく息を飲んだ。

『美幸、僕、美幸のことが好きだ。』
『ごめん。こんなこと言って。』

頭の中に苦しげなドラムの声が響く。彼は私の身体から触腕を引くと、ただ目を見張ることしか出来ない私を見詰めた。

「…それって、昔のように幼馴染の友達として…?」

震える声で恐る恐る確認する私にドラムがモノアイの下の瞼を引くつかせる。
これは彼の緊張したときの癖だ。私の声同様震える声が頭の中に響いた。

『違う。異性として、女性としてだ。』

思っても見なかった、でも欲しくてたまらなかった言葉に息が詰まってしまう。
そんな私の強張った顔を嫌悪と取ったのだろう。ドラムは目を逸らして『ごめん。』ともう一度謝った。

『気持ち悪いだけだろ。触手型宇宙人にこんなこと言われても。
ずっと、すっと好きだったんだ。でも僕は地球人にとっては気味が悪いだけの存在だから。』

ライトグリーンの瞳が震える。幼馴染だからこそ、いつもいっしょにいたからこそ知っている彼に浴びせられた地球人の偏見を思い出して胸が痛む。

『友達で良いって、そばに居られれば良いって思ってたんだ。
美幸は可愛いから他の地球人の男にモテたしね。』
「嘘…。」

そんな記憶は微塵も無い。ふるふると首を振って見せるとクスリと小さな笑い声が頭に響く。

『美幸は余り男性に興味無かったからね。でも本当にモテたんだよ。
その度に美幸を遠慮なく好きになれる男達が羨ましくて仕方が無かった。』

そうか…たぶんそれは私がドラムしか見てなかったからだ。
他の男なんて地球人だろうと宇宙人だろうと見えてなかったからだ。…ずっと彼が好きだったから。

『特に篤は美幸に夢中だった。アイツなら美幸を幸せに出来るって思ったんだ。
だから、美幸を諦めるためにもアイツを美幸に紹介した。』
「だから、あの時、私に篤の恋人になれって言ったの?」

…『美幸、こいつがさ、美幸のこと好きみたいなんだ。付き合ってみたらどうかな?』…

夕方の桜の下のドラムの背中がよみがえる。
小さくドラムが頷く代わりに瞳を上下させる。

『でも、諦めきれなくて、どうしても諦めきれなくて、星に帰って同じ種族の女の人を好きになろうと頑張ったけど、それも出来なくて…美幸にもう一度だけ会いたくてとうとう戻って来てしまったんだ。』

ドラムがまた私の身体に優しく触腕を這わす。私の唇を触指がそっと撫でる。

『ごめん、美幸。本当にこんな気持ち悪い話をしてごめん。
…でも嫌がらずにちゃんと聞いてくれてありがとう。』

言いたいことを言って気持ちが落ち着いたのか、ドラムは穏やかに瞳で微笑む。

『さようなら。』

ポツリと一言頭の中に呟いて、ゆっくりと短い足を動かして私の横を通り過ぎる。
私は手にまだ残ったドラムの一番不器用な、でも一番彼の感情を素直に表す触指を引っ張った。

『美幸?』

ドラムが振り返る。

「私の返事を聞かなくて良いの?」

私の声に手の中の触指が震える。

『良いよ。解かっているから。大丈夫、もう美幸の前には現れないからさ。』

彼はおどけた声で、しかし微かに語尾を震わせながら告げると背中を向けた。
あの夕日の桜の背中が重なる。私はすがりつくように、それに腕を回した。
あの時、本当はしたかった、でも出来なかったことが今なら出来る。

『美幸!?』

驚いた声が頭に響く。私はそっと触指を離すとそのまま膝を廊下について立ち上がり彼の頭頂の唇に自分のそれを重ねた。
『美幸…。』
「私もドラムのことが好きだよ。男として。」

私の返事にドラムの身体がビクリと震える。触腕が伸びて、包み込むように私の身体に絡まってくる。

『本当に?』
「馬鹿ドラム。」

優しい触腕に抱かれて、私はわざとおどけたようにドラムのモノアイの下に唇を付けた。

「私がこんなこと冗談でも言わないのはドラムが一番良く知っているでしょ。」
『…うん。』
「ずっと好きだったんだよ。あの時、ちゃんと告白してくれれば篤と無理して付き合わずに済んだのに。」
『…楽しそうに見えたけど…無理してたんだ。』
「だから、桜が嫌いになったんだもの。」
『そうか…本当にごめん。』

謝るドラムの身体にもう一度唇を押し付ける。ドラムがそっと触指で私の手を持ち上げた。

『僕達は愛情表現に地球人のキスの代わりにこうするんだ。』

そっと左の触指が左手に絡まる。最後の一番端の触指が手の端でピクピク動くのを見て私は小さく笑うと右指で摘んで小指に絡めた。

『美幸、愛してる。』
「私もドラムのこと愛してる。」

暖かな触指が手を包む。代わりに私はドラムの身体に唇を何度も押し付けた。

ドラムの触指がゆっくりと私の身体をなぞるように這っている。
時々ためらう様に胸や足に触っては引いていく様子に私は思わず笑い出した。

「したい?」
『え…?』

目を瞬かせてドラムが聞き返す。

「セックス。」

そう言うとドラムは慌てたように触指を振った。

『でも…!!』
「したいんでしょ。」

重ねて訊くと困ったように左端の触指が目の下を掻く。

『…うん。』
「私もしたい。」

私は灰色の筒のような身体に抱きついた。地球人の男とは全く違う形の身体、でも温かい肌に指を這わす。

「ちゃんと男と女として愛し合えるか確かめたい。」
『僕も。』

私は立ち上がった。そのままドラムの触腕を引いて寝室のドアを開ける。
中に入って窓に歩み寄り、曇の状態の偏光ガラスにカーテンを引く。
薄暗くなった部屋で私はキョトキョトと挙動不審に瞳を動かすドラムを見下ろした。
触腕が部屋の床をソワソワと這っている。
小さく笑うと思い切ってスカートのホックを外した。ストンと床に輪を描いて布が落ちる。
ベッドに腰掛けて靴下を脱ぐとブラウスのボタンに手を掛ける。
さすがに見られながらは恥ずかしいのでドラムに背を向けて全部外して脱ぎ、軽く畳んでスカートの上に置く。
ちょっとためらった後、ブラの後ろのホックも外した。
私の露になった胸にドラムが目を見張るのが解かる。

「この身体で出来る?」

立ち上がって彼の側に座り、不安に思って訊くとドラムはモノアイの縁を赤くして答える。

『美幸を意識し始めてから、地球人の女の人の身体の方に興奮するようになっちゃったから、エアロ星人としては変人だけどね。』
「良かった。」

ブラをブラウスの上に置くとドラムに向き直る。

『綺麗だよ。美幸。』

ドラムが瞳を微笑ます。

「ごめん、初めては篤にあげてしまったけど…。」
『良いんだ。意気地の無かった僕が悪かったんだから。』

だからこそ、思いが通じた今、彼に抱かれたい。ずっと内心嫌々ながら篤に抱かれていたから、大好きなドラムに思いっきり抱いて欲しい。
ドラムが八本の全て触腕を身体から出す。優しく私の身体にそれを這わすとそのまま抱き上げて、私を自分の元に引き寄せた。
ドラムが私の身体を宙に持ち上げる。力のある後方の四本の触腕が両足のふくらはぎとお尻を持ち上げて、私は空中でちょうど膝立ちの状態にされた。

「ドラム、愛してるわ。」
『僕もだよ。美幸。』

もう一度言い交わすと彼の頭頂の口へ口付ける。初めは触れる程度に、次に何度も吸い付く。
チュパ、チュパと小さな音が寝室に響く。
私は唇を開いた。舌を出して口の周りを舐めるとドラムがいつもはしっかりと閉じている口腔を開く。
その中に舌を伸ばして入れる。ザラザラと歯舌の生えた中を舌で嘗め回すとお返しのようにドラムが口腔を広げたり縮めたりしてくる。
と同時に私の裸の上半身を彼の前四本から別れた二十本の触指が撫で始めた。

「…ふっ…ん…。」

深い口付けを続けながら、思わず鼻から甘い息が漏れる。
柔らかな触指が裸の上半身をくまなく撫で回す。胸を触指が這い、こねるように揉まれる。
頂に触れられると思わず彼の口から唇を離して甘い声を上げてしまう。

『ここが良く感じるんだね。』

ドラムが私の胸の頂に触指を絡めて揉み始める。
キュッキュッとリズミカルにこねる様に揉まれると甘い刺激に身体が震える。
篤と遠距離恋愛になって二年。ここ半年は誰にも肌を触れられていない。
自分で慰めたことはあるが、それに物足りない身体がいつも以上に敏感に貪欲になっているようだ。

『ここも弱いみたいだ。』

触指が背中を這う。背骨をなぞるように撫でられると思わず身体が仰け反る。
触指で脇腹を覆われ、私は高い声を上げた。

「…あふっ…ド…ドラム…。」
『気持ち良い?』
「…うん…あっ、ああんっ…。」

恥ずかしいくらい甘い声が出てくる。篤のときは半分演技だったのに、ドラムだと自然に身体が反応して抑えることが出来ない。
大好きな人にようやく触れられて抱かれている。そのことにひどく興奮している。
上半身をくまなく撫でられて、下半身が、あそこが熱くなってくる。
もどかしさに太ももをすり合わせるとドラムのからかうような声が頭に響いた。

『そこも触って欲しい?』
「…うん。」

小さく頷くとドラムの触指が布越しにそこを襲う。何本もの触指に一度に這われ、腰が跳ねる。

「…あああっ!!」

容赦無い刺激に思わず腰が引ける。だが、がっちりと足に絡みついた触腕がそれを許さない。
お尻を支えていた触腕が腰に絡みつき、逃げる身体を押さえつける。

「やぁ!…あっ、ああっ!!…ダメ…スゴすぎるっ!!」

布越しなのに頭がクラクラするほどの快感が襲う。私は目の前のドラムの身体にしがみ付いた。
身体がこの刺激に喜んで蜜をたっぷりと溢れ出させてくる。

『スゴイ、美幸。こんなに濡れてきてる。』

湿ったショーツにドラムの嬉しそうな声が頭に響くが答えられない。
喘ぐしかない私に小さく感情を抑えたような声が聞こえた。

『篤のときもこんなだった?』
「…違うっ!!」

思わず大声で答える。

「ドラムだからすごく気持ち良いの!」
『そうなんだ。』

嬉しそうな満足したような声が頭に響き、ショーツの布と肌の間からドラムの触指が入ってくる。
ヌルヌルと濡れた私のあそこを何本もの触指が蜜をまとって這い回る。

「…あああああっ!!!」

肉芽も花弁もいっしょくたに撫で回される。甲高い声で鳴く私の胸を更にドラムの触指が揉む。

「やあっ!!だめっ!!」

頂きを触指が絡み付く。あそこでは隅々までくまなく触指が這い回る。
肉芽が一番感じると知ったドラムがそこを重点的に責め始めた。

「…やあっ!!あっああああ!!!やめ、ドラムやめて!!!」
敏感な三点を同時に責められて頭が真っ白になる。
無意識に激しい愛撫から逃れようとする腕を突っぱねるとドラムの触腕が押さえ込む。

『ここがこうかな?』

探るようにドラムの触指が肉芽を何度も何度も擦り上げる。
『それとも…。』声が響くと根元を触指が這いキュッと締め上げられる。

「あっ!あああっ!!おかしくなる!!もうおかしくなっちゃう!!」

必死に叫ぶがそれが返ってドラムを興奮させてしまうようだ。
鳴く私を思う存分楽しむようにドラムはグチュグチュと水音を鳴らし、胸を揉む。

「ドラム!!ドラムぅ!!」

強過ぎる刺激が全身を駆け巡る。ガクガクと震える足に更に動きは激しくなる。
息も出来なくなるくらいの快楽の中私は必死にドラムにしがみ付いた。

「も、もうダメっ!!イクっ!!イッちゃう!!」

私の声に胸の頂、肉芽に触指が何本も絡みつき同時にギュッと締め上げ押し潰された。
ぐっと大きく身体が仰け反る。喉から自分でも聞いたことのないような声が上がる。
今までに無い高い絶頂の瞬間、自分の身体が大量の蜜を吐き出したのを私は感じた。


『スゴイな、美幸。もうベトベトだ。』

荒い息を繰り返すしか出来ない私の足からぐっしょりと蜜が染み込んだショーツを外しながらドラムが嬉しそうな声を響かせる。

『そんなに気持ち良かった?』

ぼぉっとした頭で小さく頷く。ドサ…と恥ずかしい音を立てて服の上に脱がされたショーツが落ちた。

『よく見せて。』

ぐっと腰が持ち上がる。腰とお尻を支えたまま大きく足を開かされる。所謂M字開脚というヤツだろう。
空中で私は足を開かされ、あそこをドラムの前に晒された。

「ひっ!!」

ドラムの触指がイったばかりの敏感な所を探る。割れ目を大きく開かされ、蜜まみれのそこをじっくりと隅々まで見られる。

『綺麗な色をしている。篤とはそんなに寝てなかったんだ。』

コクリと頷く。ようやく息を整えた私は全てを晒された恥ずかしい格好のままドラムに尋ねた。

「ドラムのは?どうなってるの?」
『それは…。』

ドラムの短い足の間、前二本の間から棒のようなモノが付いた触肢が出てくる。
地球人の男性器によく似たモノに太い紐がついたようなものだ。

「これがドラムの?」

そう訊くとドラムは目の縁を赤くした。

『そう僕の生殖肢。』

私はそれに手を伸ばした。『美幸!?』と驚く声を聞き流して口に含む。

『みゆ…!?』

舌をチロチロと頭に這わす。思いっきり奥までほうばって口内を締める。
ほうばり切れなかった部分を指でなでながら私はドラムのさっきのお返しとばかりにドラムのモノに愛撫を始めた。

『み…美幸…ん…。』

苦しげな声が頭に響く。形状同様感じるところも地球人の男と変わらないようだ。
頭の割れ目に舌を出し入れしながら、全体を指でなぞる。

『う…うん…っ…。』

私を支えるドラムの触腕がブルブルと震え始める。

「気持ち良い?」

口からドラムのそれを外して、指で愛撫しながら訊くとドラムは瞳を上下させた。

『…でも、どこでそんなにうまくなったんだい?』

少し怒ったような声に「ごめん。」とただ謝るとドラムは小さく笑った。
『これからは僕だけだよ。』
「もちろん、…最初はあげられなかったけど、ドラムで最後にするから。」
『じゃあ、ここももう僕だけのものだ。』

ヌルリと胎内に触指が入る。「ああっ…。」久しぶりに身体の中に何かが入ってくる感触にビクリと全身が震えた。
ヌルヌルと触指が胎内で蠢く。『気持ち悪くないかい?』ドラムの声に私は頷いた。

「すごく、良い…。」

蠢く触手が胎内をくまなく探る。普通の地球人の女性なら嫌悪感を伴う感覚だろうと思う。
でも、身も心もドラムにゆだねきった私の身体は普通では味わえない快楽を素直に受け入れる。
力が抜けた上半身を腰を抑えていた触腕がそっと斜めに支えてくれる。

『美幸は良い子だね。ご褒美あげなきゃ。』

ズルリと更に二本、触指が入ってくる。

「…ああ、あああ…。」

増えた触指に素直に甘い息を吐き出すとグチュリ、グチュリと音を響かせてそれは私の胎内を確かめるように動き回った。
奥に響く愛撫に身体が答えドラムの触指をぎゅっと締め付けるのが解かる。

「…はあ…あっ…あああ…。」

空中に身体を横たえ、M字に足を開かれ、そこに三本も触指入れられて喘いでいる私はきっとAV女優にも劣らない淫らな姿を晒しているに違いない。

「…気持ち良い、ドラム…気持ち良いの…お願い…もっと…。」

なのに口から出るのはおねだりの言葉だ。ドラムがクスリとからかうような笑い声を響かせる。

『僕への御奉仕は?』

言われるままに手を休めて胸の上の乗せていたそれを口に含む。しゃぶるように舐め回すと、ドラムの呻き声が響いた。
グチャリ、グチャ…私の上と下で湿った音が鳴る。それに混じって篭った呻き声が響く。
ドラムのモノから塩辛い液が溢れてくる。それを私は喜んで啜り、嘗め回した。

『ちょっ…美幸…待って…。』

制止の声が頭に響くがそれを無視して私はドラムのソレに吸い付く。

『うわぁ!!ちょ、ちょっと出る、出るって!!』

ドラムが慌てた声を上げて、私の中をグイッと抉る。

「ああっ!!!」

それがちょうど中の感じる場所で私は口を大きく開けて声を上げた。
慌ててドラムが私の口から自分のモノを引く。

『危なかった…。』

安堵の声に私はジンジンとうずく胎内に喘ぎながら答えた。

「飲んでも良かったのに…。」
『ダメ。これから嫌というほど飲ませてあげるから、今日はこっちで飲んで。』

ドラムのソレが私の割れ目当てられ上下する。ヌチャリと響く音に私は甘い息を吐くと頷いた。
ドラムの触腕が動き、私の身体を支え直して、もう一度空中で膝立ちの状態にされる。
今度は思いっきり足を開かされた状態だ。
濡れたあそこを固くなったドラムの生殖肢の先が水音を立てて撫で回している。
快楽とこれからの行為への期待に喘ぎながらドラムの円筒形の身体にしがみ付いた私に彼の声が響く。

『美幸、もう一度キスしてくれないかな?』
「…うん。」

もう一度、ドラムの頭頂の口に唇を重ねる。細く開いた口腔に舌を差し入れる。
夢中でドラムの口の中を嘗め回す私の頭にドラムのうっとりとした声が響いた。

『挿れるよ、美幸。』

ぐっと固いものが私の中に侵入する。「あああっ!!!」半年振りの男に仰け反る私の頭をぐっとドラムの触指が押さえ付ける。
そのまま、押さえられたまま彼の口の中への愛撫を続けさせられる。
グイグイと入ってくるドラムに腰が揺れる。

「…はっ、んんんっ!!」
『…すごい、美幸の中、僕をどんどん飲み込んでいくみたいだ…。』
「んんっ、ふ…んんん!」

まるで飢えているように私の胎内がドラムを締め付ける。

『…美幸、すごいよ、美幸。やっと美幸を僕のモノに出来る…。』

嬉しそうな声が聞こえる。その声に私はドラムの口腔を貪り、腰を揺らしながら答えた。

「ん!!んんんっ!!!」

ドラムに深い口付けしたまま、私は叫び声を上げた。
彼のモノが奥に、奥の奥に突き進んでいる。
触指のときとは全く違う、太くて固いモノで奥を押し広げられる感覚に足が震える。

『…!!…どこまで…入ればいいのかな…!?』

グイっと奥を抉られ、腰が跳ねると押さえ付けるドラムの触指から逃れようと必死に頭を振る。
だが、彼も今は私を気遣う余裕は無いようだ。『……さっきの感じ…だと…。』
喘ぐ声が聞こえ、更に奥に突き進む。

「んん!!んんんっ!!!」

くぐもった声で叫ぶ私の奥を彼は開いていく。何かが最奥に当たる。

「んんんっ!!!」
『…ここが…美幸の…一番深いところだね…。』

ギュッと触腕が私を抱き締めた。
『…僕はどう?美幸。』

ドラムの少し不安げな声が頭に響く。

「…良い…すごく良いよ…奥までしっかり入っている…。」

ようやくディープキスから開放されて、そう答えるとドラムの安堵した息が頭に響く。
自信の無い子供のような彼に私は思わず笑ってしまった。

『動くよ。』

少し拗ねたような声と共に動き出したドラムに水音が鳴り響き、甘い声が部屋にこだまする。
私の頭の中にはドラムの荒い声が響いてくる。

『ここ…ここ、だよね…美幸の弱いところ…。』
「うっ、うん…ああっ!!」

さっき触指で探り当てられた一番感じるところをドラムのソレが擦り上げる。

「ああ…熱い…あっ、もっと…もっと、ドラムぅ…。」

私は大きく腰を振った。先程からの篤では知らなかった深い快感に貪欲に身体が動き始める。

「…気持ち良い…気持ち良いの…ドラムのが…ドラムが…良いの…。」

うっとりと彼にしがみ付き、腰を動かす私にドラムの笑い声が響いた。

『もう…僕じゃないと…美幸はダメだね。』
「だって…だって…ドラム…良過ぎるもの…。」

この一回でもう私の身体は地球人の男では到底満足出来なくなってしまっただろうと思う。

『美幸…もっと…もっと気持ち良くしてあげる…。』
「…えっ!?あっああああああ!!!」

触指がまた全身を這い始める。胸をあそこを這う。肉芽に絡まれて頭の中に火花が散った。

「無理!!無理、ドラム!!ああっあああ!!」

必死に彼にしがみ付く。重なる刺激に達してしまい胎内がドラムを締め上げる。
なのに止まらない。私の頭が再び真っ白になる。

『美幸、もう僕も限界…イクよ…。』

こっちはとっくに限界を越えている。ドラムの動きがそれまでの愛撫から自分が射精するものに変わる。
ぐんぐんと奥を突かれて、私は仰け反った。
もう、何も解からない。身体は更に高みを登り始める。
口から自分とは思えない声と唾液が零れ、頭が空っぽになり、夢中で腰を振る。

「ああっ!!またイクぅ!!ああっドラム!!ドラムぅ!!!」

辿り着いたことのない遥かに高いところに持ち上げられ、叫び声を上げ、私は宙を仰いだ。

『僕も…美幸っ。』

絶頂の波に飲まれ意識が飛ぶ。その時ドラムの熱いものが私の胎内にほとばしったのを感じた。
気がつくと私は裸のままベッドに寝かされていた。すぐ目の前にドラムが灰色の瞼を閉じて眠っている。
彼から伸びた触腕が身体に何本も絡み付いている。
疲れて寝てしまったんだ…。気だるい全身に思わず苦笑する。
あの後、意識が飛んだ私をドラムが風呂場に連れて行ってくれた。
勝手が解からない彼が私を洗おうとして冷水のシャワーを捻ってしまい、それで意識が戻った後、二人で子供の頃のように洗い合ったのだが…まあ…その…つい、また身体を交えてしまった。
二度目で完全に私がダウンしてしまい、その後、ドラムがベッドまで運んでくれてついでに自分も寝てしまったらしい。

『ずっと、よく眠れなかったんだよ。』

身体を洗っているときにドラムが恥ずかしそうに白状した。
地球に来てから私に会おうか、会うまいか、散々悩んで夜中に部屋を歩き回るので、アパートの人達にうるさいと怒られていたらしい。
そんな彼を起こさないようにそっと身体から触腕を外す。
閉じたままピクピクとひくついている瞼に軽く口付けて私はベッドから出た。
タンスから音を立てないように服を取り出すとそれを身につけ私は部屋を出た。
リビングに行き、カーテンを開けて偏光ガラスを透明に変える。
ガラリと窓を開けると春風と共に夕方の日差しに映える桜並木が目の前に広がった。

「綺麗…。」

思わず感嘆の声が出る。窓の側に座って私は今まで見ることを避けていた夕陽の桜を眺めた。
金色の光に川の水面が光る。薄紅色の桜が川面に腕を差し伸べんばかりに枝を伸ばし、ぼんぼりのような花を咲かせている。
ちらちらと散る桜の花びらさえ見えそうな光景にうっとりと私は見入った。

『美幸。』

優しい声が頭に響く。ペタペタとフローリングを歩く足音が背後から近づくと隣に灰色の円筒形のエイリアンが座る。柔らかな触腕が肩を抱いた。

「ごめん。起こしちゃった?」
『…目が覚めたら美幸が居ないからさ。不安になっちゃって…。』

グイと引き寄せられる。『また夢かと思った。』ドラムの情け無い声に笑い出す。

「あんなに気持ち良いことをたくさんしたのに?」

笑いながらライトグリーンの瞳を覗くと目の縁が真っ赤に染まった。
左の一番端の触指がモノアイの下を掻く。

『夢じゃないよね。』
「夢じゃないよ。」

夢のような幸せな時間だったけど夢じゃない。これからもずっと続くのだから。
私はドラムの身体に寄り掛かった。

『綺麗だね。…桜嫌い治った?』

いっしょに桜を眺めるドラムの声が頭に響く。

「うん。」

頷いて腰に回った触腕を握る。

「ドラム、今夜は泊まっていってよ。私、もう少ししたら夕飯作るから、それを食べたらいっしょに夜桜を見にいかない?」
『良いね。三年ぶりに二人で花見に行こう。』

そう、あの日の花見をやり直そう。今度は本物の恋人になった二人で。
ドラムの触指が左手に絡む。やっぱり端の触指がうまく絡めず手の甲を撫でる。
それを摘んで小指に絡めてあげる。小さく微笑むとドラムも瞳で笑みを返してくる。
彼の身体に腕を回すと優しく触腕が私の身体を抱える。
長い思いが叶った恋人の側で幸せに胸が満たされるのを感じながら、三年ぶりに大好きに戻った夕陽の桜を私は存分に眺め続けた。


(了)





  • 萌えさせていただきました。 -- (裏路地) 2010-02-26 01:57:32
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