人外と人間

河童×人間♀「カワエロ」 和姦

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カワエロ ◆y2MJUhpJNw様

16才で夏だった。記録的な猛暑だと気象予報士が騒いでいた。
昼下がり、私は制服に身を包んで自転車をこいでいた。
確か補習の帰りだったと思う。
身内の不幸で期末試験を受けそびれたのだったか、おたふく風邪にかかったせいで課題の提出が間に合わなかったか。
何しろうちは山奥で、バスも朝晩一本ずつ走ってはいるのだが朝のバスに乗ってしまえば当然夜まで帰れない。
ゲームもエアコンも冷蔵庫もない学校で夏の午後を過ごすくらいなら、数十kmを自転車で往復するほうがずっとずっとマシだった。
渓谷の断崖にすがりつくような山道は狭い上に川筋そのままのカーブの連続で、バスも大した速度は出せない。
時間的にもむしろ自転車のほうが早いくらいだ。
とは言え、暑い。
こんなにも暑くて日差しが強いと道路の左手、崖下でしゃぼしゃぼと音を立てる川の水が魅力的で、あまりに魅力的で。
私はガードレールの切れ目で自転車を止め、足を滑らせないように気をつけながら自転車を抱えて川原に下りた。
上る時の事を考えると気が重いが、道端に自転車を止めていては万が一車が来たときに通れない。そのくらい細い道なのだ。
急な階段を下り終えた私は木陰に自転車を置き、裸足になって灼けついた川原を駆け出した。清涼飲料水のCMみたいで少し可笑しい。

山の水は夏でも冷たい。
両手をついて顔を突っ込めばじゅっと音がしそうな心地よさだ。
濡れた前髪をかきあげ、改めて手足を水に浸すとじん、と痺れるような感覚の後に少し遅れて清涼感につつまれる。
スカートをたくし上げて、中瀬に向かい水を跳ね上げて歩いていたらくふくふと笑いがこみ上げてきた。
手足と頭を冷やして人心地が付くと、背中を伝う汗が気になりだした。
制服の上着は汗に濡れて肌に張り付き、絞れば塩が取れそうな有様で、ペパーミントグリーンのブラがくっきりと浮き上がってしまっている。
流れた汗がブラとスカートの触れる部分に溜まってじくじくと熱を持つ。
ここまで汗だくならいまさら水に濡れてもそんなに変わらないし、どうせ濡れるなら汗より冷たい水のほうが気持ちいいに決まってるし、この日差しならスカートだってうちに着く前に乾くだろうし。
私はなぜか自分に向けて言い訳をしながらスカートをつかんでいた手を離し、ふくらはぎほどの深さの水の中に座りこんだ。
プリーツスカートが空気を孕んでぷわりと丸く浮いた後、流れに浮いて腰に纏わりつく。
スカートの中にこもっていた生暖かい空気に代わって冷たい水がぱんつに染みこんでくる。
体幹が冷水に晒される刺激とは別に、“とりかえしがつかない”感じがして後ろめたい快感がぞくぞくと背筋を這い上がる。
下着くらい洗って干せば元通りだというのに何が“とりかえしがつかない”のかよくわからないけれど。

手をひろげ仰向けに転がって髪を水に弄らせる。
このときは確かに何もいなかった。
瞼を突き抜ける日光が眩しいので半回転してうつ伏せになり、この際だから少し遠いけど深瀞まで行って泳いじゃおうか、などとしばらく考え事をして水から顔をあげると目の前にそれがいた。
浅黒くぬめる肌。長い腕と貧相な脚。水かきに覆われた細い手指。
絵本や水墨画で見るのとはかなり違うが、それでも見間違えようがない。
「うわ、河童さんだ」
ものすごく間抜けな声だったと自分でも思う。
「さん付けで呼ばれたのは初めてだ」
しゃがれた声で河童が答える。見た目から想像したよりずっと低い声だ。
「服のまま倒れているから、おぼれたのかと思った」
間違いなく日本語だ。訛りがすくない分私より流暢ですらある。
「お、お騒がせしました…?」
白目のない目が細まり、大きく裂けた口の両側があがる。笑ってる。
「あんた、いいな。肝が据わってるしヒトにしては息も長い。
 面白いし……なによりべっぴんだ」
会話というほどの会話はしてない気がするのだが一体何が面白かったのか。
「そりゃ、どうも。君も男前だと思うよ。女の子がほっとかないでしょ?」
まるっきり社交辞令ってわけじゃない。
形が違いすぎて人の美醜を当てはめることはできないが、笑うと牙が見えてかわいいし、それに声が渋くていい。

「女の子はいない」
そうかいないのか、キャラクターものはともかく昔話には女の河童は出てこないもんな、と思ったがそういうことでもないらしい。
「百年ほど前から男しか生まれない。
 俺の母がこの辺りで最後の女だが俺を最後に子を為せなくなった」
いきなりめちゃくちゃ重いな、おい。
「じゃぁ、君がこの辺で一番若い河童さん?」
河童がゆっくりと首を振る。ジェスチャーも私たちと同じらしい。
「何十年か前までは野菜や服を洗いに川に来るヒトの女に
 胎を借りることがあったらしい」
言葉の意味も、衝撃的な内容であることも理解できたし、それが自分にどう関わるかもはっきりわかっていたはずだ。
――暑いのに帽子をかぶらずにお外で遊ぶと馬鹿になるよと幼い頃何度も母に言われた。
あれは本当のことで、きっと日差しに脳が溶け出して私は馬鹿になっていたのだろう。
「あんたに頼みたい。俺の仔を産んでほしい」
「うん。わかった」
目の前にいる自分とは形の違う生き物に触れたくて、触れられたくてたまらない。
考えたことなんてただそれだけで、いつの間にそんな風に思っていたのか自分でも全くわからない。
どうやって産むんだとか、家族や学校に何と言い訳するんだとかそんな事を考えたのはずっとずっと後のことで、ましてや絶滅の危機とか生物の種の多様性から見た混血の問題とかそんなことはどうでもよくて、ただ暑くて眩しくて水だけが冷たくて。

都合のいい場所に案内してくれると言うので差し出された手につかまったらそのまま膝を掬われて抱き上げられた。
いろいろ言おうとした文句をおなかに飲み込む。
肌の触れた部分がじんわりと疼いてすごく気持ちいい。
口を開けばなにかとんでもないことを口走ってしまいそうだ。
河童は私を抱えたまま泳ぎだした。
脚だけで気楽そうに泳いでいるのにとてつもなく早い。
直にあたらないよう守られているが、水流がすごくて川を上っているのか下っているのかすらわからない。
そもそも山間の渓流なんて流れは速いし浅いし岩がごろごろ転がっているしそんなすいすい泳げる所ではないはずなのに。
しがみついた体から、青くさいような泥くさいような独特のにおいがする。
草を刈ったあぜ道みたいな感じで嫌なにおいじゃない。
こんなに近いときっと河童にも私の体臭が届いているだろう、と気づいて顔が熱くなる。どうかしてる。
恥ずかしくて耳から脳がこぼれそうなのに、嫌だと思わないなんて。
「すこし潜るから準備ができたら顔をつけて」
河童にとっては少しでも人にとっては…なんてことにならないかと河童を見上げると、蛇に似た大きな目で見つめ返された。
それだけで不安が消し飛んでしまう。
私のことを『人にしては息が長い』と評価していた。
人の息の長さを知っているのだ。心配なんか何もない。
言われたとおり大きく息を吸って顔を水に沈める。
かくん、とちょっとした加速を感じたと思ったらすでに水の上にいた。

獣道すらない鬱蒼とした森の中、滝の周囲だけぽっかりとひらけて日差しが降り注ぎ、水しぶきが輝く。
召喚獣とか伝説のアイテムとかが封印されてそうな滝つぼ、と言えばRPGをやる人にはわかってもらえるだろうか。
粒子の粗い白っぽい砂が沈む浅瀬にそっと下ろされる。
上からは足首ほどの深さに見えたのに、浸かってみると座り込んだ胸ほどもある。水の透明度が信じられない程高い。
離れて行く肌が惜しくてしがみつきそうになるのをぐっとこらえる。
黒っぽい岩が水面から出ている。もたれかかるとすべらかで暖かい。
水中に投げ出した私の脚の隣に膝をつき、河童が体を寄せてきた。
期待がおなかの底で暴れて鳥肌がたつ。
ずぶ濡れなのにくちびるが乾いていくような気がする。
湿そうとした舌のほうが熱く乾いていて驚く。
スカートをつかんで膝に押し付ける。
そうしていないと手が勝手に何かをはじめてしまいそうだ。
きっといまの私のような表情をもの欲しそうと言うんだろう。
「どうしたらいい?」
こらえきれずに口をひらく。
この期に及んでどうすればなんて白々しいと思われても仕方がないが実際のところ男性経験のない私はどうしていいかわからない。
「じっとしてて」
河童はそう言うと制服の上着に手をかけた。

どう見ても裸だし手ぶらだし、ボタンやファスナーを扱いなれているとは思えないのに、危なげのない手つきでタイを解き、前を寛げられてしまう。
布地が肌から離れる感覚に息を呑む。濡れた肌に日光が刺さる。熱い。
河童は少しだけブラをいじっていたが、自分でホックをはずしたほうがいいだろうかなどと私が思いつく前にへろっとカップをめくって真ん中から右胸を露出させてしまった。
「あ…」
恥ずかしくて声が出る。
その声が自分でもどうかと思うほど甘くてまたものすごく恥ずかしい。
左もずらされた。肩紐の間から両胸がはみ出ている形だが肩紐自体、腕にずり落ちてすでに役に立っていない。
見られてる。胸、先まで全部、河童が見てる。
触られてすらいないのに、恥ずかしくて気持ちよくて息が上がる。
轟々と水音が響いているのに鼓動が聞こえてしまいそうだ。
河童が水かきのついた指を伸ばし、丸みに沿って乳房をなぞった。
「…っ!」
それだけで喉がのけぞり、声すら出せず背をそらせてしまう。
ひはひはと咽を鳴らす私を河童が心配そうに覗き込む。
「ここは痛いか」
「ちがう。……きもちいい」
なんでこんな恥ずかしいことを言わなきゃいけないんだろう。
河童の指が胸に伸びる。はじめは恐る恐るなぞるだけだったがじきに胸の上を大胆に踊りだす。
河童は明らかに私の反応を観察して、楽しんでいる。恥ずかしくて涙が滲む。

「ひっ、あぁ……!」
悲鳴がこぼれた。
先端を指が掠めただけなのに脚が跳ね上がり、目の奥で火花が散る。
河童が驚いている。わざとしたわけではないらしい。
見開いた目からぼろぼろと涙を流し、快感の余韻に怯えて足掻く。
私を見下ろして、河童はニタリと笑った。
「これも、きもちいいのか」
指の背で両胸の先端をくすぐられる。
コクコクとうなずいてからいやいやをするように首を振る。
きもちよくてくるしくて頭が焼き切れてしまいそう。
背中が岩に擦れることをを心配した河童に促され、岩に手をつくように体勢を変える。
水面に引きずられて上着がはだけ、肩がむき出しになる。

河童が何をしようとしているのか見えないのは不安だがそれがかえって期待を煽る。
わきを通って腕を前に回された。冷たい胸に自分から背中を押し付ける。
再度胸のふくらみを悪戯される。
「…あっ、ぁう、ん…く、ぅう、…ふ」
声をあげることを覚えた咽が私の意思とは無関係に悦びをつむぐ。
恥ずかしくて耳をふさいでしまいたい。

肩をなにか冷たいものがぬらりと這った。
続いて聞こえた声の位置でそれが河童の舌だと気づく。
「いい声で鳴く。もっと聞かせておくれ」
この声でそんなことを言われてしまったら体の芯がとろけてくずれて、もう元に戻れそうにない。
「ぅ、ぁ…!……!……っ」
赤く充血した先端をつまみあげられ、視界が白く焼け付く。
息をするだけで精一杯で、もっと鳴けという要望にはとても応えられそうにないのに、河童はかまわずそれを弄ぶ。
乾いた岩にぽたぽたとしずくが落ちて染みができては消えていく。
前髪から水滴が、目から涙が、あご先から汗が、口元から……
それで気づいてしまった。
私は鱗と水かきを持つ異形の手に胸を弄られて涎をたらして悦んでいる。
指が岩をかきむしる。このままでは擦り切れて爪がはがれてしまうな、と思った途端、上半身を河童に引き寄せられた。
「もたれれば背中、つかませれば指。心配をかける女だ。」
誰のせいだと思っているのか。私は抗議をこめて河童の膝を強くつかむ。
人のものとは感触の違う肌は、ぬめりの下にやすりで磨いた木材のような不思議な硬さとやわらかさがあって心地いい。
河童が両手で胸の重さを確かめるようにやわやわと揉み解しながら囁いた。
「これだけではもの足りないな?」
羞恥に胸が燃え上がる。一体何を言わせるのかと怒りたいくらいなのに、実際にはだらしなく口を開いたまま何度もうなずき、膝にすがりつき首元に頭をこすり付けて続きを乞うている。

水流に踊るスカートに河童が片手を伸ばす。
脚を開くのはあまりに恥ずかしいので軽く右の膝を立てる。
結局は同じことだ。
脚の間に手を入れる隙間を作って、早く触れてほしいと誘っている。
自分の浅ましさが信じられない。
「もって」
めくりあげたスカートのすそを手渡された。
握りしめ胸元に引き寄せる。
恥ずかしい格好なのに感覚が麻痺し始めている。
白い太ももを黒い手が撫でさすった。
「ふゃ、ぃやぁあん!!」
嘘でした。麻痺なんかしてない。
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしいきもちいい恥ずかしい。
こんな悲鳴を上げたらまた河童に尋ねられて恥ずかしい返事をしなくちゃいけない。
「いやか?」
「いやじゃない、きもち、い…ううん、やめちゃ、いや」
なぜさらに恥ずかしいことを口にしてしまうのか。
膝から太もも、足の付け根へと河童の指が這い上がる。
今度は悲鳴は無視される。下着に触れた河童が耳元で笑う。
ブラとおそろいのペパーミントグリーンのぱんつにはすでに冷たい水流の中でもわかるほど熱い体液が滲んでいる。

下着越しに深くなぞられてガクガクと痙攣が走り、腰がのたうつ。
上半身は暴れないように固く押さえ込まれている。
喉をそらせ鼻を鳴らしてくちづけをせがむ。
河童は少し逡巡した後、舌を絡めて応えてくれた。
そっか。くちびる、ないもんね。
河童の冷たい舌で嘗め回されて、自分の口がからからに乾いていたことに気づく。
くちびるの端からたらたらと涎をたらしながら、その湿り気を口内に満たすことができないほどひたすら鳴き続けていたことを知って恥ずかしさに目が眩む。
私の体が淫らに火照っていることを教え込むかのようにかすかに苦い舌も、すがりついた肌もひんやりと冷たい。
流し込まれる唾液だけが驚くほど熱い。
舌先をしゃぶり、吸いつき、咽を鳴らして嚥下する。
飲み込んでも飲み込んでも、全て胎の底に流れこみ河童に掻きだされ下着に滲んで清流に洗われる。
河童の指はずっと、深く浅く、単調な動きでそこを撫でつづけている。
お気に入りのぱんつだけど、溶けて擦り切れて破れてしまえばいいと思う。
直接触られたい。
河童の舌が離れるたびにとりかえしのつかないおねだりをしてしまいそうになるが、口からこぼれるのは声にすらならない嬌声ばかり。
「もういいか」
独り言とも話しかけられたとも判断のつかない口調で待ちわびた言葉を与えられて体が震える。

体を水に浸したまま、上体だけを岸の砂地に横たえられた。眩しい。
日光はすぐに河童に遮られた。
足の間に、さっきまではなかったものが反り返っている。
人間のものを見たことは春先に露出狂に見せられた一度きりだけどそれに比べるとずっと大きくてデコラティブな禍々しい形だと思う。
でも、すごく愛しい。
これから始まることへの不安と期待で頭がどうにかなりそうだ。
あぁ、なんだかどんどん人として駄目になっていってる気がする。
河童が脚の間に入ってくる。膝をつかんで大きく足を開かされる。
柔軟性には自信があるほうだけど、体のかたい人はどうするんだろうなどとどうでもいいことを考えるうちに下着を大きくずらされ覗き込まれた。
「ちょ、なん…やだぁ。だめ、見…な」
混乱してうまく言葉が出ない。
逃げることも暴れることもできないように脚を押さえつけたまますぅ、と河童が身を寄せてくる。
「何がいけないんだ?愛らしくて血が滾りそうだ。それに…」
内容よりも耳に当たるほど近くで囁かれる声の響きに酔ってしまう。
河童も私の反応に気づいているのだろう。
続く言葉は耳朶をくすぐり弄ぶ舌に乗せて文字通り耳に流し込まれる。
「これから、もっといけないことをするんだろう」

河童のそれを押し当てられ、甘い感覚とかすかな恐怖に膝が震える。
触れ合う肌からひやりと冷たいものを想像していたのに信じられない程熱い。
ぬらぬらとこすり付けられると、行き交う熱と交互に触れる水の冷たさにため息がこぼれる。
指を絡め合うと薄く延びた水かきにつつまれてなんだかうれしい。
視線を交わし、かすかに頷き合う。
悪友から脅されていたよりはすんなりと、ゆっくり入ってくるそれを受け入れることができた。
「がっ…か、はっ」
とはいえ押し拡げられる痛みに格闘漫画のような声が漏れる。
痛みから逃れようともがくが砂地に縫いとめるように手を握られていてずり上がることも身をよじることもできない。

息を詰めて過呼吸気味の体に二酸化炭素が行き渡ったせいか単に痛みに我に返ったか、突然現実感がよみがえってきた。
処女性にそれを喜ぶ男もいるという以上の価値を見てはいなかったけどそれにしたって純潔を散らした相手が異形の人外というのは相当終わっている。
昼日中に山奥とは言え屋外で、知り合ったばかりの男に身をゆだね着衣のまま貫かれている事実に背筋が凍る。
もっと終わっているのはそれを嫌がっていない私の脳みそで、とりかえしがつかないという思いがうしろめたい快感となり、痛みに引き攣った器官の周りにわだかまって凍ったはずの脊椎を妖しく蕩かす。

ストレッチの要領で何度か大きく息を吐く。引き伸ばされた筋肉の限界が少しだけ延びる。痛みが和らぎ、呼吸に合わせておなかの奥でぬらぬらと蠢く甘い違和感を感じとる余裕ができる。
自分が痛みにこらえるような顔でこちらを伺う河童に小さく微笑んで見せ、胸をこすりつける。薄い鱗がちりちりと肌をくすぐる。
「大丈夫。つづき、して」
我ながらどうしようもないおねだりだけど、河童が悦んでくれたのでもうどうでもいい。
動きはじめると、浅い部分にひりひりした痛みと内臓に圧迫感があって苦しい。
快楽のかけらのようなものも確かに感じるが触れた先から苦痛に散らされる。
抱きしめられた肌は相変わらずじわじわと疼いて気持ちがいいし、精神的な充足感は大きいので、河童には気にせず愉しんで欲しいのだが、私のことを気にかけて感覚に集中できないらしい。
緩い表情と切なげな吐息から判断して良くないってことはないと信じたいけれど。
動くのをやめた河童とどちらからともなく舌を絡める。
おなかの中で脈打つものは熔けそうなほど熱いのに河童の舌はやっぱり冷たくて、感覚の違いにくらくらする。

「やはり痛いか」
「動くと、少し」
「すまない」
「へーき。だいじょぶ、すきにして」
絡めていた指をほどいて背中に導かれる。
しがみつけってことかなと肩に頬を押し付けると不意に耳をかじられた。
「ひゃぅっ!」
のけぞってできた隙間に手が潜りこみ、河童の体液(?)でぬるぬるになった胸をさすりだす。
身をよじると結合部が擦れて痛い。すぐに腰を抱えて固定される。
痛みは消えたけれど腰を押し付けられているせいで圧迫感がものすごい。
「ふぇ…やぁんっ、違…こん、な……だめぇ」
舌と指で悪戯されると押し広げられた部分が甘く疼く。
どうしようすごく気持ちいい。
「好きにしてもいいんだろう」
河童が耳朶をくすぐりながら意地悪く笑う。
こいつけっこう人でなしだ。最初から人ではないけど。
胸に与えられる刺激は先ほどと同じなのに、快感が体内の熱い圧力に響いて増幅される。
とろけて流れ出しそうな意識が耳にかかる吐息に引き戻される。

「ぁ、あぁん…ん、いいっ。ひっ…ふ、くぁ…きも、ち、い」
私が河童の声を聞いて気持ちいいように、河童も私の声を聞くとうれしいのだと気づいて気持ちいい気持ちいいとうわごとのように繰り返す。
その多くは言葉にならないけど河童は悦んで私の中に次々と新しい快楽を送り込む。
気がつけば結合部がぬろぬろとかき回されていて目が眩む。
「んぅ〜、まだ…う、ご…あ!ゃん、やぁん」
抗議の声は全く意味を成していなかったけど河童にはきちんと通じて(というか分かってやっているのだ絶対に)
からかうような返事が返ってくる。
「動いているのは俺ではないぞ」
言われてみれば胸を弄られるたびにひくひくと腰を揺らして痛みも苦しみもお構いなしで快楽に酔い、お構いなしというか動くとこすれてきもちいい奥のところにゅるってするのもヒリヒリもごりってひろがるのもぜんぶきもちいい。
きもちいいきもちいいきもちよくてすごくうれしいくるしい。
私が大きすぎる快感を受け止めきれずに意識を手放しかけた頃河童のほうも限界を迎えて暴れだした。
かき乱された私は意識を保つどころか呼吸さえままならない状態で文字通り溺れるように最後の迸りを受け入れた。

最初にもたせかけられた黒い岩の上に河童と並んで転がって冷えた体を温める。
むしろ火照っているような気がしてあまり冷えたという実感はないが指先は白く凍えているし岩の熱さが気持ちいい。
濡れた服は肌に張り付いて不快だしせめて赤く白く体液の滲むぱんつだけでも脱いでしまいたいが河童に強く禁止された。
着衣のままことに及んだのは何も河童の趣味ではなく、ここは人が衣服を忘れて帰ってはいけないような、それでいて脱げば必ず何か忘れてしまうようなそういう感じの場所らしい。
「だいじないか」
「んー、きつかったよ。でも…いや、やっぱ言わない」
自分がどれだけ乱れたか思い出せば自然に口調が固くなる。
“どうしよう初めてなのに感じちゃうっ”ってどうしようもないだろう。
「言わなくていい。たっぷり聞かせてもらった」
だからなんで蒸し返すんだ馬鹿。くそぅ、やっぱ男前だ、こいつ。
「なんだ」
くやしいからわざと際どくて頓珍漢な受け答えをする。
「河童は向かい合ってするんだな、って」
ラッコとかイルカとか水中に住む生き物は腹をすりあうように向かい合って交尾をするが、カバやビーバーなど水辺の生き物は交尾といって普通に思い浮かべるような姿勢で交わる。
生態や体格からいえば河童は後者のほうが無理がない。

「獣の姿勢でしたかったのか」
あー、なんかよろこんでる。失敗したかも。
「では次はそうしよう」
次があるのか、と嬉しくなる。ごめんなさい私も馬鹿です。
この場所は人にはたどり着けないので呼べば川まで迎えに来てくれるという。
また会うための約束をして馬鹿ふたり、えへえへと笑いあった。


河童との蜜月は私が進学のために故郷を離れるまで続いたが結局私が河童の仔を孕むことはなかった。
学生の間は帰省の度に密会を繰り返したが、大学からも少しはなれた地方都市で就職してからは帰省の為の時間自体が取りづらくなった。
先月、故郷の山がダムに沈んだ。
できれば聖域のようなあの秘密の場所は異次元か何か別の世界とつながっていてどこかあの山ではない場所に残っていて欲しいと思う。
そこにはもちろんあの河童がいて、願わくば男女取り混ぜたたくさんの仔河童が泳いでいてくれたらいいと思って私は仕事の帰りに少しだけ泣いた。






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