初出 1210話
S2W16に引き続き、雲海が広がっている。
この空域では出現するのは魔竜ばかり。
マップ中央付近には雲海から突き出た円形に連なるカルデラのような山脈。中央には緑が見え、深い広葉樹の森がある。
森の中、向かい合わせに2枚の石版の間に左に赤、右に青と2つ並んで人魂が浮かんでいた。
両方とも取るといういつもの
キースの選択のせいか、ポータル解放戦は
英霊召喚関係者が出現し、さらに2ラウンド目が存在した。但し、何故か剣豪勢に
護法魔王尊はいなかった。
いつもの中庸選択による両方との戦闘を望む姿勢に、さすがにインフォも呆れ果て、「もう聞かない」宣言をした。
+
|
ポータルボス戦開始・終了インフォ |
《汝、中庸を貫く者よ》
《再び問うとしよう》
《汝は制約があっても秩序ある世界を望むか?》
《汝は自由ではあるが混沌とした世界を望むか?》
《秩序を望むならば青を選ぶがよい》
《混沌を望むならば赤を選ぶがよい》
手を伸ばす。
勿論、この場合は両方だ!
「ッ?」
人魂は同時に消えた。
《汝、中庸を貫く者よ》
《再び問う事は最早あるまい》
《秩序ある世界に汝を受け入れる余地は無い》
《混沌とした世界にも汝を解き放つ事も無い》
《全ては汝の選択の結露》
《後悔する時がいずれ汝に訪れるであろう》
《我等はただ、その時を座して待つのみ》
|
+
|
転生煙晶竜と紫晶竜の会話 |
『ところで煙晶竜様、お話があるのですが』
『何かな?』
『戦いが始まる前です。世界を放浪した理由、その一端を見る事になると聞きましたが』
『ふむ、そんな事も言ったかのう』
『太陽神の化身、でしたか。一体あれは?』
『存在する事だけで歪みを生んでおるのだ。太陽はな、歪みの象徴でもある』
『他にもあのような存在が?』
『いる。あらゆる世界から、その垣根を超越してここに集って来ているのだ』
『何故に?』
『それを知る為に我は後事を紅晶竜に託したのじゃがな』
『儂の事よりもあっちを気にした方がええじゃろうな』
『黄晶竜ですか』
『うむ。急に何もかも詰め込むような鍛え方は感心せんぞ?』
『いずれは長たるドラゴンには避けられぬ事でもあります。多少、早かったとは思いますが』
『厳しいのう。紅晶竜にもそういう所があった』
『ええ』
その黄晶竜だけど、体躯が震えているぞ?
しかも全身の鱗が逆立っているような。
苦しんでいる。
何かを産み出そうとしているかのような有様だ。
そうでなければ、便秘かな?
いや、どこかでこんな様子を見た事がある。
アイソトープが魔竜になりかけた時と状況が似てはいないだろうか?
「あの、あれって大丈夫ですか?」
『体が成長しようとしておるのじゃ。何、心配は無用じゃ』
「いや、結構苦しんでますよ!」
『我もまた何度もあの試練を乗り越えてきた。それに黄晶竜もあの試練は初めてではない』
「そうなんですか?」
『うむ。水晶竜の域に到達するには更なる時間と経験を要するであろうな』
転生煙晶竜の言葉を紫晶竜が継ぐ。
あれで初めてじゃないって。
レベルアップやクラスチェンジのようなものなんだろうか?
それにしてはかなり様相が異なるぞ?
『クォォォォォォーーーーーーーッン!』
「わっ!」
『驚かずとも良い』
『ドラゴンを統べる存在であればこそ、苦痛もまた乗り越えねばならんのだ』
オレの目の前で黄晶竜の体躯が大きくなって行く。
極端に、ではない。
ドラゴン級の体躯がグレータードラゴン級に?
いや、そこまで大きくはならないようだ。
だが気になるのは全身に奔る筋、その色は黒光りしている。
そう、まるで転生煙晶竜のように。
どこか邪悪な雰囲気すらあるぞ?
『キースよ、悪いが暫し待てるか? 黄晶竜をもう少し飛ばせておかねばならぬ』
「島の上空で出来ますか?」
『うむ。まあ大丈夫じゃろ』
エルダードラゴンの長老様の周囲で黄晶竜が飛び回っている。
まるで曲技飛行だ!
ロールやループならまだいい。
バレルロール、テールスライド、シザーズまでして見せているぞ?
その動きはどこまでも軽かった。
全身に奔っていた黒い筋はもう見えない。
|
最終更新:2016年12月04日 01:04