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永藏の悪夢
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nanasihennkagura
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上官「永藏ーっ!いつまで生き恥をさらすのだ!歯ぁ食いしばれ!」
上官の拳が頬に食い込み、口の端から血が垂れた。
陸軍流の洗礼が永藏に加えられる。
陸軍流の洗礼が永藏に加えられる。
食糧はとっくに底をついている。
気合いで空腹が満たされるものか。
それでも米軍爆撃機B29を落とさんばかりの気合いの空元気で叫ぶ。
気合いで空腹が満たされるものか。
それでも米軍爆撃機B29を落とさんばかりの気合いの空元気で叫ぶ。
永藏「ありがとうございます!!軍曹殿!!」
上官「よし!!回れ右!!!前進!!敵陣に、少しでも打撃を!与えてこい!!」
上官「よし!!回れ右!!!前進!!敵陣に、少しでも打撃を!与えてこい!!」
しかし。
上官「どうした!?」
永藏「…し」
永藏「…し」
永藏「死にたくありません!!」
上官「なぁ!?なにぃぃぃー!?キサマ!それでも大日本帝國軍の軍人かーっ!」
上官「しかもキサマァ!進駐軍の味方をするとは何事かっ!この非国民がっ!!」
上官「なぁ!?なにぃぃぃー!?キサマ!それでも大日本帝國軍の軍人かーっ!」
上官「しかもキサマァ!進駐軍の味方をするとは何事かっ!この非国民がっ!!」
怒りのあまりツバも撒き散らしながら永藏の耳元で叫ぶ上官。
この場で銃殺するのも躊躇しない。
そんな勢いで怒りをぶつけられる。
この場で銃殺するのも躊躇しない。
そんな勢いで怒りをぶつけられる。
上官「日本の恥晒しがっ!キサマなど日本人ではないっ!!キサマのせいで日本はっ!!」

幸せを噛みしめる夫婦
無垢な子供たち
未来のある赤ん坊
すべてが別け隔てなく、一瞬のうちに"溶けた"。
無垢な子供たち
未来のある赤ん坊
すべてが別け隔てなく、一瞬のうちに"溶けた"。
大勢の阿鼻叫喚、苦痛の声が聞こえる。
溶けた彼らは永藏を、血に染まった川へ引きずり込もうとする。
溶けた彼らは永藏を、血に染まった川へ引きずり込もうとする。
永藏「違う…!やめろ!俺のせいじゃない…!」
ただれて赤黒い手が、永藏の足や腕を掴む。
頭ではわかっている。
自分一人が玉砕しても戦争の結果が変わるわけじゃない。
だが、そんな考えを持つ國民ばかりだったから負けたのではないか?
自分を正当化したいだけなのではないか?
一人でも多く「敵」を殺していれば…
運命が変わって故郷が爆撃されることはなかったかもしれない。
自分一人が玉砕しても戦争の結果が変わるわけじゃない。
だが、そんな考えを持つ國民ばかりだったから負けたのではないか?
自分を正当化したいだけなのではないか?
一人でも多く「敵」を殺していれば…
運命が変わって故郷が爆撃されることはなかったかもしれない。
米兵『ヘイ、俺を殺して何か得られたか?』
永藏が射殺したアメリカ人が、英語で問いかける。
頭を撃ち抜かれたそいつは未だにジャングルの中に打ち捨てられていて。
数日も経たないうちに虫が湧いた。
頭を撃ち抜かれたそいつは未だにジャングルの中に打ち捨てられていて。
数日も経たないうちに虫が湧いた。
永藏は、何も答えられない。
アメリカ人を数人殺した程度で、何が変わったのか。
自分がやらなくても誰かが殺したかもしれない。
しかしそれは命を奪った自分を正当化する考えでしかない。
アメリカ人を数人殺した程度で、何が変わったのか。
自分がやらなくても誰かが殺したかもしれない。
しかしそれは命を奪った自分を正当化する考えでしかない。
「俺達が死んだ意味はあったか?」
永藏が助けられなかった、同じ部隊の仲間たちが問いかける。
永藏はふー、ふー、と荒い息遣いで肩を上下させるばかり。
答えはでなかった。
答えはでなかった。

永藏「やめてくれ…」
空爆によって焦土と化した東京で
子供のように身体を震わす永藏。
生き恥を晒しているのはわかっている。
子供のように身体を震わす永藏。
生き恥を晒しているのはわかっている。
それでも死にたくはなかった。
死が怖い。
罪を償う。
死が怖い。
罪を償う。
死んで楽になることは、許されない。
自分が死ねば、彼らの死は忘却の彼方。
死んでいった人たちに、「死んだ意味」をもたせることができるのは、自分だけなのだ。
自分が死ねば、彼らの死は忘却の彼方。
死んでいった人たちに、「死んだ意味」をもたせることができるのは、自分だけなのだ。

「只今より重大なる放送があります。全国の聴取者の皆様、ご起立願います」
「天皇陛下におかせられましては、全国民に対し、畏くも御自ら大詔を宣らせ給うことになりました。これより謹みて玉音をお送り申します……」
瓦礫の山に大詔が流れた。
