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ときわのおまけ

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ときわのおまけ


(自宅においてあるときわのおやすみ(前・中・後)を二つに分けています。
このページは「後」の部分です)

降りしきる雨の中、一人で泣くクレセリアがいた。普段大人びた振る舞いをする彼女には似つかわしくない、子供のような泣き方で、ぼろぼろと涙をこぼす。
へたりこんだ彼女のその目の前には、赤く血に染まった神父の死体。
そして真後ろには、真っ黒な<ダークライ>。

「ほら、言っただろう?…君がちょっかいを出すから」
「っ……るさい……!!」
「君だって分かっていたんじゃないのか、夢に干渉しすぎては後々よくないことが起こると」
「うるさいうるさいうるさい!!!」

右手をダークライに向かって勢い良く向けると、彼女の指に巻き付いた鋭利な糸がダークライに襲いかかる。だが糸は急に速度を落とすと、ひらりと地面に落ちた。ダークライはさも愉快そうに口の端を歪めて魅せる。

「今回は特別だ」

ふわふわ浮かんだダークライはゆっくりクレセリアに近づいた。やがてその白く細い手を彼女の肩に乗せ、耳元で囁く。

「頑張りたまえ、輝く三日月」
「……っるさ…」
「君が動くから、また面白くなるんだ」

酷く優しい声は、酷く残酷にクレセリアの耳に残った。



気がつくと空はいつも通りの赤い空。
雨はやんでいた。
血塗れのローブと赤いぐしゃぐしゃの本は傍に置かれていた。
神父が震えている自分を抱き締めていたと気づいたのは、それらに気づいたのよりも後だった。

*


「……鉄」
「ん?どしたの紅」
「…雨、降ってる」
「そだねー、そういや久しぶりな気がするね」
「……そう、じゃなくて……」
紅は窓の外を示す。白い布や冥用の包帯は空から落ちる雫に濡れていた。鉄はうわと声を上げると、慌ててドアを開け放って外に出る。

「手伝いま……おや」

冥もその後に着いて行こうとドアの方へ足を出した。だがその間をすり抜けるようにして、紅が外へと出ていく。半ば強引な風にも見えたその動作にやや疑問を感じつつも、冥は出した足を引っ込めた。
外に出た紅は、大きなシーツを取り込みながら雨を浴びる。丸まったそれを抱えながら、一度大きく空を見上げた。
そして、口元を少し緩ませる。
目をきゅっと、細くして。

「うーぁ、びっしょびしょだ…ちくしょう」

そんな様子も気にかけること無く、鉄は建物の中へと戻る。鉄は玄関から紅、と名前を呼んだが、本人には聞こえていないようだった。首をかしげてもう一度、呼び掛ける。

「紅?」
「…あ」
「早く入らないと風邪ひいちゃうぞー?」
「ん、うん」

弾かれたように、紅はぱっといつものお家の方を向く。

――もう少しだけ
もう少しだけ、この世界が壊れないでいてくれれば。






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